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三章 龍の花嫁
73 ハプスブル家との会談
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ついに、ハプスブル家がやってくる日になりました。いざと言うの時のために、悪魔たちには出来る限りの警戒をお願いしています。
アダムにもゴーレムの作成を頼んでいて、いざと言う時は200近いゴーレムが防衛のために動きますよ。
私も、朝から魔力を練ってるのでいつでも戦えます。
「見えてきましたね、馬車の数は10ほどでしょうか? 護衛もなかなかの強さです」
「いや、主よ。われわれからしたら地平線の粒にしか見えないぞ」
目に魔力をこめてますからね。はっきりと見えますよ。
あ、野党が絡んでます……うわ、容赦ないですね。かなり強そうです。
「アーさん、警備は大丈夫そうですか?」
「大丈夫だ。悪魔は全員配置についている」
しっかりと備えなければいけませ……あれ? ハプスブル家の馬車列。
その先頭に乗ってる大きなムキムキの男の人……こっち見てません? しっかり目が合ってる気がします。
あ、背中に翼がありますね。あれが他種族の血が混ざった結果ですか。
ということはあの人がジッキンデン・ハプスブルですね……なんか馬車列に指示を飛ばしてますね。
馬車列のスピードがあがります。馬を使っているのかと思いましたが、帝国宰相が乗ってきたものと同じやつですね。
ナオキに聞いた話だと、たしか車っていうんでしたか?
「そんなにせずにここに来ますね。みんな、準備を!」
「マーガレット様も、準備なさってください」
「へ? 私もですか?」
「もちろんです。他国の貴族を迎えるのに、まさかいつも通りの服で玉座に座るおつもりですか?」
うぐ……シルフィとルールーが行く手を塞いでいます。これは逃げられませんね。
ちゃんとした服とか、お化粧とか、ちょっと面倒くさいんですよね。仕事しなきゃって気になっちゃいますし……。
仕方がありません。受け入れましょう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「かわいいですよ、マーガレット様」
「ええ、馬子にも衣装です」
「それ、褒めてませんよね?」
シルフィがくすくすと笑ってます。むぅ、からかわれました。
立ち上がって、鏡を見ます。
おお、別人。2人の化粧の技術のおかげというものです。
「たしかに、この化粧と服ならば誰でもかわいくなれます」
「いえ、そんなことはないですよ。さっきのは冗談です。化粧やドレスがなくとも、マーガレット様はかわいいです」
「ワタクシも! そう! 思います!」
ルールーがふんふんと鼻息を荒くしています。
ちょ、ちょっとくすぐったいですよルールー。抱きついてわちゃわちゃしないでください!
「何をやっているのだ……もう玉座のところまで来ているぞ」
フェンが扉の前で呆れています。
危険なものとかはもっていなかったですか? はい、大丈夫みたいです。武器も置いてくれたみたいですし、いまのところは友好的な感じですね。
「主、我は一緒にいるからな」
「我もだ」
「もちろんです。アーさんとフェンは私の隣にいてください。何かあったときはお願いします」
頼りになる2人です。よし、会談に臨みましょう!
「ノアの国女王、マーガレット・グレアム様です」
シルフィの声と共に、わたしが登場します。
声には出ていませんが、王ではなく女王だと分かってかなり驚いてますね。
ジッキンデンさんなんて、顎外れてるんじゃないかってくらい口をぽっかり空けてます。
「あ、憧れの……マーガレット様が……男……男……男……じゃ、ない、なんて……」
「なんか、ごめんなさい? 見ての通り私は女性なんですよ」
「嘘よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ジッキンデンさんの絶叫が響きわたります。ついてきた人達が慌てて身体を抑えていますね。
「ジッキンデン様、お気を確かに!」
「変身を抑えてください! ここはまずいです!」
「だめだ、抑えられない! だれか薬を持ってこい!」
「嘘よ嘘よ嘘よ認めないわ! 私とマーガレット様の夢の新婚生活がぁぁぁぁぁぁ」
私が男だったとして、結婚できるかどうかは微妙なところじゃないですか?
というか、なんかジッキンデンさんの身体からバキバキという明らかにおかしい音が聞こえてきます。
「え、えーと、大丈夫ですか?」
「お逃げ下さい! 女王陛下! ジッキンデン様は精神が不安定になるとこうして先祖返りの変身を行ってしまうのです!」
なるほど。先祖返りといっても様々な種族が混ざっていますから、異形の姿ですね。
「ベースは龍ですか?」
「そこに天使と悪魔の翼も加わって三対の翼か。あとは鱗が悪魔の皮膚に近いか?」
「他にもあるぞ、見ろアーさん、主。魔狼の皮膚や牙のようなものも見える」
「頭の上には天使の光輪もありますね、てんこ盛りです」
のんびりとアーさん、フェンと共にジッキンデンさんの様子を眺めます。
なんでこんなに落ち着いてるかと言うと、少し前に文官勢からひとつの報告書が届いたからです。
報告書のタイトルは「マーガレット様の騒動引き寄せ体質への対策について」というめちゃくちゃなものでしたが、そこの中身にはジッキンデンさんの変身に関してやその危険性が報告されてました。
なので落ち着いたものです。ゆっくりとジッキンデンさんの返信を眺めています。
『ぬがぁぁぁぁぁぁ! 男、男はいねぇがぁぁぁぁぁぁ!』
「ジッキンデン様、おちついてーーうわぁ!」
お付きの人たちが吹き飛ばされます。着地は受け止めてあげましょう。どこかにぶつけたら危ないですから。
「ジッキンデン様がこうなってしまえば誰にも止められません! 前の戦争の時は相手国のS級冒険者が束になっても止められなかった!」
『ぬがぁぁぁぁぁぁ!』
巨大化したジッキンデンさんが暴れようとしています。
「マーガレット、どうする?」
「勿論止めますよ」
「と、止められるわけがない! あの方の実力は帝国一、いや、世界の中でも最強格です!」
たしかに、かなり強いでしょうが多分この国には勝てる人がたくさんいます。
ナオキとか、アーさんとか、バレンタインとか、アラエルとか。たぶんその4人は確実に勝てますね。
ただ苦戦はすると思うので、ここは私が行きましょう。
「手を貸さなくて大丈夫か?」
「危なくなったらお願いします」
さぁ、魔法で体を浮かせて、ジッキンデンさんの視界の真ん中にいきます。
「聞こえてますか? ジッキンデンさん」
『ぬがぁ?! 女、女は滅べぇぇぇ!』
ジッキンデンさんが牙をむき出しにして向かってきます。
魔法のかべをつくって防御です。
『がぁ?!』
「あの、これってどうやったら元に戻るんですか?」
「へ? え、えーと、気を失うか目的を果たすかだと思います」
目的……男の人ですか? そっちは無理ですね。
なら、気を失わせるのが一番でしょうか。
よーし、なら思いっきり蹴り飛ばしてみましょうか。ジッキンデンさんには悪いですがせっかくの機会です。
ストレス発散といきましょう。
「それ!」
『ぬがぁぁぁぁぁぁ!!』
うわ、硬いし、一撃で倒れないです。勇者やフォーレイよりも強いかもしれないですね。
「な、なんという事だ……」
「ノアの女王は化け物か」
いやいや、私の目の前の人の方が余程化け物だと思いますよ。私はいたって普通の女の子です。
よーし、もう一度蹴り飛ばしてジッキンデンさんの気を失わせ……あれ? ジッキンデンさんの目線が1箇所に釘付けになってますね。あそこにいるのは……魔王さん?
ラムさんと慌ててこっちに来たみたいですね。何かあったんでしょうか。
あ、なんか喋ってますね……魔法で聞き取りますか。
「大丈夫か、マーガレットさん」
「大丈夫ですよー、ただ、ジッキンデンさんが魔王さんを見つめているんですよ」
「え?」
『ぬが……いい、いい男よォぉぉぉぉ!』
「ひぃ?!」
ジッキンデンさんが魔王さんに向かって一直線に進んでいきます。
そのままいくと城以外の建物にも被害が出るのでさすがに止めます。
ジッキンデンさんを強制的に浮かせて……全方向からの魔法攻撃です。
『ぬがぁぁぁぁぁぁ!?』
よし、気を失いましたね。大丈夫ですか? 魔王さん。
「今までにない恐怖を感じたのだが……」
魔王さん泣きそうになってます。たしかに、あの見た目でいきなり向かってこられたら怖いですよね……。
アダムにもゴーレムの作成を頼んでいて、いざと言う時は200近いゴーレムが防衛のために動きますよ。
私も、朝から魔力を練ってるのでいつでも戦えます。
「見えてきましたね、馬車の数は10ほどでしょうか? 護衛もなかなかの強さです」
「いや、主よ。われわれからしたら地平線の粒にしか見えないぞ」
目に魔力をこめてますからね。はっきりと見えますよ。
あ、野党が絡んでます……うわ、容赦ないですね。かなり強そうです。
「アーさん、警備は大丈夫そうですか?」
「大丈夫だ。悪魔は全員配置についている」
しっかりと備えなければいけませ……あれ? ハプスブル家の馬車列。
その先頭に乗ってる大きなムキムキの男の人……こっち見てません? しっかり目が合ってる気がします。
あ、背中に翼がありますね。あれが他種族の血が混ざった結果ですか。
ということはあの人がジッキンデン・ハプスブルですね……なんか馬車列に指示を飛ばしてますね。
馬車列のスピードがあがります。馬を使っているのかと思いましたが、帝国宰相が乗ってきたものと同じやつですね。
ナオキに聞いた話だと、たしか車っていうんでしたか?
「そんなにせずにここに来ますね。みんな、準備を!」
「マーガレット様も、準備なさってください」
「へ? 私もですか?」
「もちろんです。他国の貴族を迎えるのに、まさかいつも通りの服で玉座に座るおつもりですか?」
うぐ……シルフィとルールーが行く手を塞いでいます。これは逃げられませんね。
ちゃんとした服とか、お化粧とか、ちょっと面倒くさいんですよね。仕事しなきゃって気になっちゃいますし……。
仕方がありません。受け入れましょう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「かわいいですよ、マーガレット様」
「ええ、馬子にも衣装です」
「それ、褒めてませんよね?」
シルフィがくすくすと笑ってます。むぅ、からかわれました。
立ち上がって、鏡を見ます。
おお、別人。2人の化粧の技術のおかげというものです。
「たしかに、この化粧と服ならば誰でもかわいくなれます」
「いえ、そんなことはないですよ。さっきのは冗談です。化粧やドレスがなくとも、マーガレット様はかわいいです」
「ワタクシも! そう! 思います!」
ルールーがふんふんと鼻息を荒くしています。
ちょ、ちょっとくすぐったいですよルールー。抱きついてわちゃわちゃしないでください!
「何をやっているのだ……もう玉座のところまで来ているぞ」
フェンが扉の前で呆れています。
危険なものとかはもっていなかったですか? はい、大丈夫みたいです。武器も置いてくれたみたいですし、いまのところは友好的な感じですね。
「主、我は一緒にいるからな」
「我もだ」
「もちろんです。アーさんとフェンは私の隣にいてください。何かあったときはお願いします」
頼りになる2人です。よし、会談に臨みましょう!
「ノアの国女王、マーガレット・グレアム様です」
シルフィの声と共に、わたしが登場します。
声には出ていませんが、王ではなく女王だと分かってかなり驚いてますね。
ジッキンデンさんなんて、顎外れてるんじゃないかってくらい口をぽっかり空けてます。
「あ、憧れの……マーガレット様が……男……男……男……じゃ、ない、なんて……」
「なんか、ごめんなさい? 見ての通り私は女性なんですよ」
「嘘よぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
ジッキンデンさんの絶叫が響きわたります。ついてきた人達が慌てて身体を抑えていますね。
「ジッキンデン様、お気を確かに!」
「変身を抑えてください! ここはまずいです!」
「だめだ、抑えられない! だれか薬を持ってこい!」
「嘘よ嘘よ嘘よ認めないわ! 私とマーガレット様の夢の新婚生活がぁぁぁぁぁぁ」
私が男だったとして、結婚できるかどうかは微妙なところじゃないですか?
というか、なんかジッキンデンさんの身体からバキバキという明らかにおかしい音が聞こえてきます。
「え、えーと、大丈夫ですか?」
「お逃げ下さい! 女王陛下! ジッキンデン様は精神が不安定になるとこうして先祖返りの変身を行ってしまうのです!」
なるほど。先祖返りといっても様々な種族が混ざっていますから、異形の姿ですね。
「ベースは龍ですか?」
「そこに天使と悪魔の翼も加わって三対の翼か。あとは鱗が悪魔の皮膚に近いか?」
「他にもあるぞ、見ろアーさん、主。魔狼の皮膚や牙のようなものも見える」
「頭の上には天使の光輪もありますね、てんこ盛りです」
のんびりとアーさん、フェンと共にジッキンデンさんの様子を眺めます。
なんでこんなに落ち着いてるかと言うと、少し前に文官勢からひとつの報告書が届いたからです。
報告書のタイトルは「マーガレット様の騒動引き寄せ体質への対策について」というめちゃくちゃなものでしたが、そこの中身にはジッキンデンさんの変身に関してやその危険性が報告されてました。
なので落ち着いたものです。ゆっくりとジッキンデンさんの返信を眺めています。
『ぬがぁぁぁぁぁぁ! 男、男はいねぇがぁぁぁぁぁぁ!』
「ジッキンデン様、おちついてーーうわぁ!」
お付きの人たちが吹き飛ばされます。着地は受け止めてあげましょう。どこかにぶつけたら危ないですから。
「ジッキンデン様がこうなってしまえば誰にも止められません! 前の戦争の時は相手国のS級冒険者が束になっても止められなかった!」
『ぬがぁぁぁぁぁぁ!』
巨大化したジッキンデンさんが暴れようとしています。
「マーガレット、どうする?」
「勿論止めますよ」
「と、止められるわけがない! あの方の実力は帝国一、いや、世界の中でも最強格です!」
たしかに、かなり強いでしょうが多分この国には勝てる人がたくさんいます。
ナオキとか、アーさんとか、バレンタインとか、アラエルとか。たぶんその4人は確実に勝てますね。
ただ苦戦はすると思うので、ここは私が行きましょう。
「手を貸さなくて大丈夫か?」
「危なくなったらお願いします」
さぁ、魔法で体を浮かせて、ジッキンデンさんの視界の真ん中にいきます。
「聞こえてますか? ジッキンデンさん」
『ぬがぁ?! 女、女は滅べぇぇぇ!』
ジッキンデンさんが牙をむき出しにして向かってきます。
魔法のかべをつくって防御です。
『がぁ?!』
「あの、これってどうやったら元に戻るんですか?」
「へ? え、えーと、気を失うか目的を果たすかだと思います」
目的……男の人ですか? そっちは無理ですね。
なら、気を失わせるのが一番でしょうか。
よーし、なら思いっきり蹴り飛ばしてみましょうか。ジッキンデンさんには悪いですがせっかくの機会です。
ストレス発散といきましょう。
「それ!」
『ぬがぁぁぁぁぁぁ!!』
うわ、硬いし、一撃で倒れないです。勇者やフォーレイよりも強いかもしれないですね。
「な、なんという事だ……」
「ノアの女王は化け物か」
いやいや、私の目の前の人の方が余程化け物だと思いますよ。私はいたって普通の女の子です。
よーし、もう一度蹴り飛ばしてジッキンデンさんの気を失わせ……あれ? ジッキンデンさんの目線が1箇所に釘付けになってますね。あそこにいるのは……魔王さん?
ラムさんと慌ててこっちに来たみたいですね。何かあったんでしょうか。
あ、なんか喋ってますね……魔法で聞き取りますか。
「大丈夫か、マーガレットさん」
「大丈夫ですよー、ただ、ジッキンデンさんが魔王さんを見つめているんですよ」
「え?」
『ぬが……いい、いい男よォぉぉぉぉ!』
「ひぃ?!」
ジッキンデンさんが魔王さんに向かって一直線に進んでいきます。
そのままいくと城以外の建物にも被害が出るのでさすがに止めます。
ジッキンデンさんを強制的に浮かせて……全方向からの魔法攻撃です。
『ぬがぁぁぁぁぁぁ!?』
よし、気を失いましたね。大丈夫ですか? 魔王さん。
「今までにない恐怖を感じたのだが……」
魔王さん泣きそうになってます。たしかに、あの見た目でいきなり向かってこられたら怖いですよね……。
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