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三章 龍の花嫁
97 黒い何か(2)
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「我とアーさんで時間を稼ぐ! 主を助けてやってくれ!」
「あなた!」
「止めるなシラユキ!」
フェンとアーさんがすごい勢いで黒い何かに向かっていきます。ダメです! 勝てる相手ではありません!
「ぐぁぁぁあ!」
「アーさん! フェン! やめてください! やめて!」
2人があっという間に吹き飛ばされていきます。みんなも、必死に応戦していますが圧倒的な力の差の前では無力です。
「ルールー! まだ拘束は解けませんか?!」
「今やっております!」
はやく、早く解かないとみんなが! フェンとアーさんはもう満身創痍ですし、スヤリスやバレンタインもまるで歯が立っていません。
ヤニムは……相変わらず逃げる天才ですね。
「マーガレット様! 今俺が魔力を取り戻ーーぎゃぁぁ?!」
「ヤニム?!」
ヤニムが吹き飛ばされてしまいます。し、死んでませんよね?! あぁ……大丈夫そうです。にしても、いまなんて言いました? 魔力を取り戻す……まさか私の魔力が入った魔道具、放置されてるんですか?
探してみると、案外あっさりと見つかりました。
「ルールー! シルフィ! 魔道具です。あの魔道具をこわしてください!」
2人にすぐさま伝えます。魔道具の中に私の魔力が残っているのかどうかは分かりませんが、もし残っていれば戦えます。みんなを守れます。
「アダム! 無事ですか?!」
「大丈夫だよお母さん。そばにいるよ!」
「よかった……」
アダムはそばにいるよう言っておきましたが、拘束されてる状態では見れる範囲も狭いですから、不安でした。アダムもゴーレムを生み出して必死に戦ってくれているみたいです。
「「きゃあ?!」」
ルールーとシルフィの悲鳴が聞こえます。
『ふふふふふ! 素晴らしい、素晴らしいですねぇ! これほどの力、あの時に得ていれば!』
黒い何かは攻撃の手を弛めません。どうしたら、どうしたらいいんでしょう。いえ、やることはわかってます。
「ふぐぐ……!」
拘束魔法は色々な種類があります。そもそもの拘束解除が難しいものや、自力で解除しようとすると苦痛が伴うものなどです。
私が捕まっているこの拘束魔法は、無理矢理とこうとすると身体に大きなダメージが入ると思いますが……やるしかありません。
動こうとする度に体の中から嫌な音が聞こえます。
「マーガレット! やめろ、無茶をするな!」
「いいえ……今こそ無茶をする時です!」
アーさんの制止も聞かず、拘束を解くことを試みます。
ですが、視界の端で何かが動きました。およそこの場には似つかわしく無い、幼い少女の姿です。
「アナスタシアさん……よかった!」
無事なようです。あ、まってください。魔道具があるのはアナスタシアさんのすぐそばです。
同じように気づいたバレンタインがアナスタシアさんに駆け寄って、黒い何かからの攻撃を防ぎます。
「アナスタシア! それぶっ壊せ!」
「な、何なのじゃ?!」
「いいから!」
わけも分からない様子ですが、アナスタシアさんはバレンタインの指示に従って魔道具を手に持ちます。
「ど、どうすればいいのじゃ!」
「投げるでもなんでもいいから壊せばーーうわぁ?!」
「バレンタイン?!」
バレンタイン! アナスタシアさんを庇って吹き飛ばされてしまいました!
『……愚かしいですねぇ。お仲間はみんなそこで地面に横たわっていますし、聖女は……あぁ、頑張っていますね。その身が壊れそうになってもなお、何者かを助けようとするとは……実に愚かしい』
そういって黒い何かはアナスタシアさんの方へと降りていきます。アナスタシアさんは怯えているようで、魔道具を手に取ったまま震えています。お願いです。動いてください! 私の体!
『おや、儀式に使用したのは撒き餌のような目的だったとはいえ、魔力が残っているのですか。それはいい。そこまで穢れのない魔力は珍しいですから。さぁ、渡してください』
「い、嫌なのじゃ……」
黒い何かの腕が伸びます。
『なら、奪うまでです』
「た、助けてなのーーじゃ?!」
伸びた腕は、アナスタシアさんに触れることはありません。真横から凄まじい速度で突っ込んできた勇者が、黒い何かの腕に剣を押し付けています。
「「勇者?!」」
「謝りたいとかそんなつもりじゃねぇからな!」
『おや、そう来ましたか』
勇者の参戦でほんの少しの時間が出来ました。今ですアナスタシアさん!
ナオキとの戦いで勇者もぼろぼろのはずです。稼げる時間は一瞬ですよ。
「あんな龍でもなぁ、俺の仲間なんだよ! くそったれが!」
黒い何かがかなり本気で止めに来てますが、勇者がなんとかもちこたえてます。アナスタシアさんはその間に魔道具を頭上に持ち上げて……!
「壊れろなのじゃ!」
『やめなさい!』
黒い何かが勇者を倒してアナスタシアさんに迫ります。ですが、アナスタシアさんに攻撃が届くことはありません。
『おや……? これは、結界?』
「ありがとうございます、アナスタシアさん、勇者、みんなも」
今なら、この程度の拘束なんて余裕で引き剥がせます。身体中に魔力が充ちていくこの感覚。
「もう、大丈夫ですよ。後は任せてください」
みんなに守ってくれた分、今度は私が守ります。まずはみんなに回復魔法をかけてあげます。ナオキはより入念に。これで命の心配はないでしょう。
『おやおやおやおや。これは凄まじい……ですが、私の新しい肉体には勝てないでしょう』
「関係ありませんよ。ぶちのめします」
身体に力が漲ってます。みんなを傷つけた怒りをぶつけてやります。絶対に泣かしてやりますよ!
「あなた!」
「止めるなシラユキ!」
フェンとアーさんがすごい勢いで黒い何かに向かっていきます。ダメです! 勝てる相手ではありません!
「ぐぁぁぁあ!」
「アーさん! フェン! やめてください! やめて!」
2人があっという間に吹き飛ばされていきます。みんなも、必死に応戦していますが圧倒的な力の差の前では無力です。
「ルールー! まだ拘束は解けませんか?!」
「今やっております!」
はやく、早く解かないとみんなが! フェンとアーさんはもう満身創痍ですし、スヤリスやバレンタインもまるで歯が立っていません。
ヤニムは……相変わらず逃げる天才ですね。
「マーガレット様! 今俺が魔力を取り戻ーーぎゃぁぁ?!」
「ヤニム?!」
ヤニムが吹き飛ばされてしまいます。し、死んでませんよね?! あぁ……大丈夫そうです。にしても、いまなんて言いました? 魔力を取り戻す……まさか私の魔力が入った魔道具、放置されてるんですか?
探してみると、案外あっさりと見つかりました。
「ルールー! シルフィ! 魔道具です。あの魔道具をこわしてください!」
2人にすぐさま伝えます。魔道具の中に私の魔力が残っているのかどうかは分かりませんが、もし残っていれば戦えます。みんなを守れます。
「アダム! 無事ですか?!」
「大丈夫だよお母さん。そばにいるよ!」
「よかった……」
アダムはそばにいるよう言っておきましたが、拘束されてる状態では見れる範囲も狭いですから、不安でした。アダムもゴーレムを生み出して必死に戦ってくれているみたいです。
「「きゃあ?!」」
ルールーとシルフィの悲鳴が聞こえます。
『ふふふふふ! 素晴らしい、素晴らしいですねぇ! これほどの力、あの時に得ていれば!』
黒い何かは攻撃の手を弛めません。どうしたら、どうしたらいいんでしょう。いえ、やることはわかってます。
「ふぐぐ……!」
拘束魔法は色々な種類があります。そもそもの拘束解除が難しいものや、自力で解除しようとすると苦痛が伴うものなどです。
私が捕まっているこの拘束魔法は、無理矢理とこうとすると身体に大きなダメージが入ると思いますが……やるしかありません。
動こうとする度に体の中から嫌な音が聞こえます。
「マーガレット! やめろ、無茶をするな!」
「いいえ……今こそ無茶をする時です!」
アーさんの制止も聞かず、拘束を解くことを試みます。
ですが、視界の端で何かが動きました。およそこの場には似つかわしく無い、幼い少女の姿です。
「アナスタシアさん……よかった!」
無事なようです。あ、まってください。魔道具があるのはアナスタシアさんのすぐそばです。
同じように気づいたバレンタインがアナスタシアさんに駆け寄って、黒い何かからの攻撃を防ぎます。
「アナスタシア! それぶっ壊せ!」
「な、何なのじゃ?!」
「いいから!」
わけも分からない様子ですが、アナスタシアさんはバレンタインの指示に従って魔道具を手に持ちます。
「ど、どうすればいいのじゃ!」
「投げるでもなんでもいいから壊せばーーうわぁ?!」
「バレンタイン?!」
バレンタイン! アナスタシアさんを庇って吹き飛ばされてしまいました!
『……愚かしいですねぇ。お仲間はみんなそこで地面に横たわっていますし、聖女は……あぁ、頑張っていますね。その身が壊れそうになってもなお、何者かを助けようとするとは……実に愚かしい』
そういって黒い何かはアナスタシアさんの方へと降りていきます。アナスタシアさんは怯えているようで、魔道具を手に取ったまま震えています。お願いです。動いてください! 私の体!
『おや、儀式に使用したのは撒き餌のような目的だったとはいえ、魔力が残っているのですか。それはいい。そこまで穢れのない魔力は珍しいですから。さぁ、渡してください』
「い、嫌なのじゃ……」
黒い何かの腕が伸びます。
『なら、奪うまでです』
「た、助けてなのーーじゃ?!」
伸びた腕は、アナスタシアさんに触れることはありません。真横から凄まじい速度で突っ込んできた勇者が、黒い何かの腕に剣を押し付けています。
「「勇者?!」」
「謝りたいとかそんなつもりじゃねぇからな!」
『おや、そう来ましたか』
勇者の参戦でほんの少しの時間が出来ました。今ですアナスタシアさん!
ナオキとの戦いで勇者もぼろぼろのはずです。稼げる時間は一瞬ですよ。
「あんな龍でもなぁ、俺の仲間なんだよ! くそったれが!」
黒い何かがかなり本気で止めに来てますが、勇者がなんとかもちこたえてます。アナスタシアさんはその間に魔道具を頭上に持ち上げて……!
「壊れろなのじゃ!」
『やめなさい!』
黒い何かが勇者を倒してアナスタシアさんに迫ります。ですが、アナスタシアさんに攻撃が届くことはありません。
『おや……? これは、結界?』
「ありがとうございます、アナスタシアさん、勇者、みんなも」
今なら、この程度の拘束なんて余裕で引き剥がせます。身体中に魔力が充ちていくこの感覚。
「もう、大丈夫ですよ。後は任せてください」
みんなに守ってくれた分、今度は私が守ります。まずはみんなに回復魔法をかけてあげます。ナオキはより入念に。これで命の心配はないでしょう。
『おやおやおやおや。これは凄まじい……ですが、私の新しい肉体には勝てないでしょう』
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