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三章 龍の花嫁
100 勇者と、子供と、宴と。
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「ねぇ、何してんのよアンタ」
「何って……見たらわかんだろうが!」
「そういう話じゃないわよ! なんであんたが農作業なんかしてんのよって聞いてんのよ!」
「知るかよ!」
元気ですねぇ。
龍の里での一件以来、勇者はこの国にいます。別に罪を問う訳では無いですし、引き止めたり拘束した訳では無いんですが……。
勇者側の希望で、この国に居ます。
いまでこそ、ああやって仲間と仲良くケンカしてますが……この国に来た次の日、勇者は私の家にナオキと現れました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『ナオキ? それに勇者。どうしました?』
『どうしてもマーガレットさんに会って話がしたいんだって』
せっかくのお休みでしたが、真剣な表情の勇者を見れば話を聞かない訳には行きません。
招き入れて、ナオキがよく食べている芋のおやつを出します。
『こ、これはまさか……?!』
『気づいた? これは僕が提案したポテチさ!』
『うぉおぉぉぉ!』
なにやら、2人がすごい盛り上がっています。……ナオキと勇者は仲が悪いものだと心配していましたが、この様子なら大丈夫ですね。それとなく見ておくようアラエルに頼んでおいていましたが、大丈夫そうです。
『うっま。マジで美味いわこれ。前の世界の食いもんなんて久々に食ったわ』
『僕なんて毎日食べてるよ』
『あぁ。なるほどな?』
この芋、美味しいんですがすごい太りそうなんですよね。なので
『今僕のお腹を見てなるほどって言った?』
『もちろん』
『よし、この前の続きと行こうか勇者!』
喧嘩するほど仲がいいとはこの事ですか? まぁ、家を壊されても困るので止めますが。
『それで、何のようなんです?』
『頼みがあるんだ』
勇者は姿勢を正して、私を真っ直ぐに見つめます。……ふむ、これは聞かなきゃ行けませんね。
『金は働いて返す。必ずだ。だから、俺が迷惑かけた奴らへの返済を肩代わりして欲しい。もちろん、金を働いて返したら、その後迷惑かけたヤツらには謝って回る。だから頼む!』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そんな会話があって、今にいたります。
少し悩みましたが、ナオキも一緒に頭を下げるものですから、ここは1つ大人の余裕を見せるということで勇者の願いを聞きいれました。
ただ、問題はもちろんありました。勇者、色々やらかしてますからねぇ。
ただ弁償すればいいというものではありません。各国の面子もありますし、元々は王国の勇者です。外向的な問題もありました。
……まぁ、その時の私はそんなことを少しも考えずに願いを受け入れてしまったので、ルールーとシルフィに怒られました。
いや、正確には怒られている。というのが正しいでしょうか。
背後から、ふたつの怖い視線を感じます。
「「マーガレット様?」」
はい、ごめんなさい。仕事に戻ります……。
「そういえばマーガレット様、龍人たちからの要望があるそうです」
仕事が一段落したところで、シルフィがそんなことを言ってきます。
要望、ですか。私が壊してしまった龍の里の復興計画は進んできていますが、それ関係ですかね?
……私に対しての恨み辛みが書かれていたらどうしましょうか。ちょっと聞くのが怖いです。
「ええと、結論から言うと里の復興は必要ないとの事です」
「ええ?! どうしてです?」
私のせいとはいえ、それなりに復興計画を立てるのは大変だったんですよ?
毎日遅くまで頑張ったんですけどね……。
「仕えてきた黒龍の生まれ変わりもここにいる、そしてここの生活が豊かであることが理由なようです」
「なるほど?」
「警備の仕事も出来ますし、一族で長い間暮らしてきたこともあり、建築技術や鍛冶技術を持つものもいるようですから、国の戦力にはなるかと」
断る理由はないということですね。
「私に対しては最終確認ということですか」
「そういう事です。もちろん、マーガレット様の意思が第一ですが」
シルフィとルールーのことです。きちんと情報を整理した上で私に提案してるんでしょうから、断ったりしませんよ。
責任はちゃんと持ちますしね。……復興計画が使われないのは少し悲しいですけど。
「これでよしと。今日は他にありますか?」
「ええと、大きな問題が」
「大きな問題?」
「国が大きくなってきたのはとってもいい事なんですが……そのせいで帝国や神聖国に目をつけられています。神聖国に至ってはちょっかいかけてきてますしね」
「ワタクシも報告書を読みましたが、かなり大変だったようですね」
え、ちょっかい? なんの事です? ルールーもなんの話しです?
「まさか……マーガレット様、金髪から聞いてないんですか?」
「金髪?」
なんで金髪が出てくるんです?
「……あ、もしかして私が帰ってきてすぐ、金髪が色々言ってたヤツですか」
とても眠かったので、ほとんど聞いていませんでした。
「いくらなんでも可哀想ですよ」
「いやシルフィ、マーガレット様はお疲れでしたから仕方ないのでは?」
「そうやってルールーは直ぐにマーガレット様を甘やかすんだから」
私としては甘やかしてもらって大変結構なんですが。
ルールーは昔から私にとっても甘いですからね。それどころか、私が何か言ったら何でもしそうな雰囲気があるので気をつけなければいけません。
シルフィは仕事に厳しいです。もともとエルフのみんなをまとめあげていたのもあって、慣れない国の運営という仕事にも力を尽くしてくれています。
……そういえば、みんなに助けて貰ってばかりで私は何も感謝を伝えていませんね。
その時その時にお礼を言うことは意識していますが、なにか検討した方がいいかもしれません。
「マーガレット様? 大丈夫ですか?」
「え? あぁ、大丈夫ですよ。ちょっと考え事をしていただけです」
心配させてしまいました。大丈夫ですよ、私は元気です。
話を戻すと、神聖国や帝国でしたね。
「対処は考えないとだめそうですね」
攻め込まれても困りますし、仲良くするに越したことはないありません。使節団を送る……のは早すぎますかね?
……これは色々と根深い問題になりそうです。ただ、今日はかなり仕事しましたし、二人も上がっていいですよ。
「マーガレット様、この後お時間ありますか?」
え? 私ですか? 今日はこの後何もする予定は無いですよ。
あ、仕事は嫌ですけど。
「エルフのみんなでお酒を飲もうって話をしてて、もし良かったらマーガレット様もいかがですか?」
お酒! いいですねぇ! いやいやシルフィ、目が輝いてなんていませんよ。ただ、たまにはエルフ達との親交を深めるのもいいかなと思いまして。
「あ、ただ私を崇めるのは無しの方向で」
エルフはいつも私を崇めてきますからね。別に供物とかいらないです。普通に飲みましょう。
そうは言ったものの、私が参加するとなったらエルフ達は大騒ぎで準備をし始めました。
あんまり気にしなくてもいいのですけど……こんなことを言うと女王らしくなさってくださいってシルフィに言われてしまいそうです。
「まーがれっと様」
「ん? どうしました?」
ぼーっとエルフの準備を眺めていると、エルフの子供のひとりに話しかけられました。後ろには悪魔の子供や人間の子供がいます。種族を超えて楽しく遊んでいる姿を見ると、この国を作ってよかったと思いますね。
「わたしたちも、さんかしたい! ……です!」
「もちろん、いいですよ。ただ……そうですね、そのままだとシルフィに怒られてしまいそうです」
なんと言っても、この子達は1日遊んで泥まみれですから。
ふふふ、言われて気づきましたか。慌てなくても大丈夫ですよ。
こういうときのための魔法ですから。ほら、指を鳴らせばすぐに綺麗になります。
「わぁ! すごい!」
「まだまだですよ。ほら、じっとしててください」
女の子達の髪に魔力を通して、簡単にですが髪を結ってあげます。あと、全員にお花の髪飾りの贈り物です。
男の子には胸につける様のお花をプレゼントです。これでらしくなったでしょう。
子供たちは次々にお礼を言って、準備をするエルフ立ちに混ざっていきます。かわいいですねぇ。
アダムは最初からある程度大きかったですし、頭もいいですから、少しだけああいう時期の子供に憧れはあります。
「可愛いものだな」
「アーさん。今日の仕事は終わりですか?」
「うむ。といっても、最近の仕事と言えば悪魔共の面倒を見るために色々とやるだけだがな」
その色々が大変なんじゃないですか。
「お互い大変ですねぇ」
「マーガレットほどではない。最近、アダムとの時間は取れているのか? もし時間が取れないのならば我も仕事を手伝うぞ」
「ありがとうございます、アーさん」
優しいですね、アーさん。自分も忙しいでしょうし、実は私の仕事を減らすためにこっそりと仕事をこなしているのは知っていますよ。感謝してます。
「アダムとの時間は取れていると思いますよ。ただ、アダム本人が少しずつ私との時間よりも自分の時間を優先するようになってきている気がします」
アダムが産まれてから1年と半年と言った所でしょうか。
もともと大人だった分、どんどん私の手から離れていくのでしょうね。
「寂しいです」
「そうだな。だがそれが子というものだぞ、マーガレット」
「アーさん、子供がいた経験が?」
そう聞きましたが、いつもアーさんは子供に囲まれていましたね。自分の子供でなくても、可愛がっているということですね。
大人になって、私の手元を離れるアダムを想像してしまいました。
……人の親に成るなんて、まだまだ先の話だと思っていましたが、成ってみるととても寂しいものです。
感慨深い気持ちになっていると、突然首筋に冷たいものを感じます。
「ひゃう?! アダム?」
「あはは! お母さんヤニムと同じ反応だったよ!」
アダムのいたずらだったようです。やりましたね……! というかアーさん、気づいていたでしょう?
「ふはは」
ふはは、じゃあないですよもう!
というよりアダム。その氷は一体どこから?
「あそこから!」
アダムに言われて後ろをむくと、すっかり完成した宴会場がありました。もう飲み物をくばっているようです。
「マーガレット様」
「あぁ、シルフィ。ありがとうございます」
……なんか、いつのまにかみんないません?
バレンタインもいますし、勇者もしれっと参加してます。堕天使たちもいますし……あれ? ラムさん?
久しぶりにマトンくんに会えて嬉しそうですけど、魔界の四天王ってそんなにぽんぽんこっちに来ても大丈夫なんですかね?
「大丈夫なわけあるか。連れ戻す!」
あ、魔王さんが来ました。連れ戻そうとしていますが……みんなに囲まれてお酒を注がれています。駆け付けいっぱいというやつです。
このパターンはよく見るヤツですね。このままなんだかんだで宴に参加していくパターンです。
「盛り上がってるな、主よ」
「フェン、ちょうどいい所に。すこし背中を貸してください」
フェンに大きくなってもらって、背中に座ります。もふもふで気持ちがいいです。
宴で盛り上がるみんなの姿を見ながら、今日はゆっくり飲みましょうか。
「いいのか? 向こうじゃなくて」
「たまにはここで。3人でゆっくり飲みましょう。初めてあった日の話なんてどうです? 忘れてしまいましたか?」
「まさか。驚きすぎて一言一句覚えているとも」
あはは。一言一句は言い過ぎじゃないですか? ……いや、本気で覚えてるんですか。なんなら私が使った魔法の形式まで覚えていると。
やりますね2人とも。
まぁなんにせよ、夜は長いです。ゆっくり話しましょう。
「何って……見たらわかんだろうが!」
「そういう話じゃないわよ! なんであんたが農作業なんかしてんのよって聞いてんのよ!」
「知るかよ!」
元気ですねぇ。
龍の里での一件以来、勇者はこの国にいます。別に罪を問う訳では無いですし、引き止めたり拘束した訳では無いんですが……。
勇者側の希望で、この国に居ます。
いまでこそ、ああやって仲間と仲良くケンカしてますが……この国に来た次の日、勇者は私の家にナオキと現れました。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『ナオキ? それに勇者。どうしました?』
『どうしてもマーガレットさんに会って話がしたいんだって』
せっかくのお休みでしたが、真剣な表情の勇者を見れば話を聞かない訳には行きません。
招き入れて、ナオキがよく食べている芋のおやつを出します。
『こ、これはまさか……?!』
『気づいた? これは僕が提案したポテチさ!』
『うぉおぉぉぉ!』
なにやら、2人がすごい盛り上がっています。……ナオキと勇者は仲が悪いものだと心配していましたが、この様子なら大丈夫ですね。それとなく見ておくようアラエルに頼んでおいていましたが、大丈夫そうです。
『うっま。マジで美味いわこれ。前の世界の食いもんなんて久々に食ったわ』
『僕なんて毎日食べてるよ』
『あぁ。なるほどな?』
この芋、美味しいんですがすごい太りそうなんですよね。なので
『今僕のお腹を見てなるほどって言った?』
『もちろん』
『よし、この前の続きと行こうか勇者!』
喧嘩するほど仲がいいとはこの事ですか? まぁ、家を壊されても困るので止めますが。
『それで、何のようなんです?』
『頼みがあるんだ』
勇者は姿勢を正して、私を真っ直ぐに見つめます。……ふむ、これは聞かなきゃ行けませんね。
『金は働いて返す。必ずだ。だから、俺が迷惑かけた奴らへの返済を肩代わりして欲しい。もちろん、金を働いて返したら、その後迷惑かけたヤツらには謝って回る。だから頼む!』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そんな会話があって、今にいたります。
少し悩みましたが、ナオキも一緒に頭を下げるものですから、ここは1つ大人の余裕を見せるということで勇者の願いを聞きいれました。
ただ、問題はもちろんありました。勇者、色々やらかしてますからねぇ。
ただ弁償すればいいというものではありません。各国の面子もありますし、元々は王国の勇者です。外向的な問題もありました。
……まぁ、その時の私はそんなことを少しも考えずに願いを受け入れてしまったので、ルールーとシルフィに怒られました。
いや、正確には怒られている。というのが正しいでしょうか。
背後から、ふたつの怖い視線を感じます。
「「マーガレット様?」」
はい、ごめんなさい。仕事に戻ります……。
「そういえばマーガレット様、龍人たちからの要望があるそうです」
仕事が一段落したところで、シルフィがそんなことを言ってきます。
要望、ですか。私が壊してしまった龍の里の復興計画は進んできていますが、それ関係ですかね?
……私に対しての恨み辛みが書かれていたらどうしましょうか。ちょっと聞くのが怖いです。
「ええと、結論から言うと里の復興は必要ないとの事です」
「ええ?! どうしてです?」
私のせいとはいえ、それなりに復興計画を立てるのは大変だったんですよ?
毎日遅くまで頑張ったんですけどね……。
「仕えてきた黒龍の生まれ変わりもここにいる、そしてここの生活が豊かであることが理由なようです」
「なるほど?」
「警備の仕事も出来ますし、一族で長い間暮らしてきたこともあり、建築技術や鍛冶技術を持つものもいるようですから、国の戦力にはなるかと」
断る理由はないということですね。
「私に対しては最終確認ということですか」
「そういう事です。もちろん、マーガレット様の意思が第一ですが」
シルフィとルールーのことです。きちんと情報を整理した上で私に提案してるんでしょうから、断ったりしませんよ。
責任はちゃんと持ちますしね。……復興計画が使われないのは少し悲しいですけど。
「これでよしと。今日は他にありますか?」
「ええと、大きな問題が」
「大きな問題?」
「国が大きくなってきたのはとってもいい事なんですが……そのせいで帝国や神聖国に目をつけられています。神聖国に至ってはちょっかいかけてきてますしね」
「ワタクシも報告書を読みましたが、かなり大変だったようですね」
え、ちょっかい? なんの事です? ルールーもなんの話しです?
「まさか……マーガレット様、金髪から聞いてないんですか?」
「金髪?」
なんで金髪が出てくるんです?
「……あ、もしかして私が帰ってきてすぐ、金髪が色々言ってたヤツですか」
とても眠かったので、ほとんど聞いていませんでした。
「いくらなんでも可哀想ですよ」
「いやシルフィ、マーガレット様はお疲れでしたから仕方ないのでは?」
「そうやってルールーは直ぐにマーガレット様を甘やかすんだから」
私としては甘やかしてもらって大変結構なんですが。
ルールーは昔から私にとっても甘いですからね。それどころか、私が何か言ったら何でもしそうな雰囲気があるので気をつけなければいけません。
シルフィは仕事に厳しいです。もともとエルフのみんなをまとめあげていたのもあって、慣れない国の運営という仕事にも力を尽くしてくれています。
……そういえば、みんなに助けて貰ってばかりで私は何も感謝を伝えていませんね。
その時その時にお礼を言うことは意識していますが、なにか検討した方がいいかもしれません。
「マーガレット様? 大丈夫ですか?」
「え? あぁ、大丈夫ですよ。ちょっと考え事をしていただけです」
心配させてしまいました。大丈夫ですよ、私は元気です。
話を戻すと、神聖国や帝国でしたね。
「対処は考えないとだめそうですね」
攻め込まれても困りますし、仲良くするに越したことはないありません。使節団を送る……のは早すぎますかね?
……これは色々と根深い問題になりそうです。ただ、今日はかなり仕事しましたし、二人も上がっていいですよ。
「マーガレット様、この後お時間ありますか?」
え? 私ですか? 今日はこの後何もする予定は無いですよ。
あ、仕事は嫌ですけど。
「エルフのみんなでお酒を飲もうって話をしてて、もし良かったらマーガレット様もいかがですか?」
お酒! いいですねぇ! いやいやシルフィ、目が輝いてなんていませんよ。ただ、たまにはエルフ達との親交を深めるのもいいかなと思いまして。
「あ、ただ私を崇めるのは無しの方向で」
エルフはいつも私を崇めてきますからね。別に供物とかいらないです。普通に飲みましょう。
そうは言ったものの、私が参加するとなったらエルフ達は大騒ぎで準備をし始めました。
あんまり気にしなくてもいいのですけど……こんなことを言うと女王らしくなさってくださいってシルフィに言われてしまいそうです。
「まーがれっと様」
「ん? どうしました?」
ぼーっとエルフの準備を眺めていると、エルフの子供のひとりに話しかけられました。後ろには悪魔の子供や人間の子供がいます。種族を超えて楽しく遊んでいる姿を見ると、この国を作ってよかったと思いますね。
「わたしたちも、さんかしたい! ……です!」
「もちろん、いいですよ。ただ……そうですね、そのままだとシルフィに怒られてしまいそうです」
なんと言っても、この子達は1日遊んで泥まみれですから。
ふふふ、言われて気づきましたか。慌てなくても大丈夫ですよ。
こういうときのための魔法ですから。ほら、指を鳴らせばすぐに綺麗になります。
「わぁ! すごい!」
「まだまだですよ。ほら、じっとしててください」
女の子達の髪に魔力を通して、簡単にですが髪を結ってあげます。あと、全員にお花の髪飾りの贈り物です。
男の子には胸につける様のお花をプレゼントです。これでらしくなったでしょう。
子供たちは次々にお礼を言って、準備をするエルフ立ちに混ざっていきます。かわいいですねぇ。
アダムは最初からある程度大きかったですし、頭もいいですから、少しだけああいう時期の子供に憧れはあります。
「可愛いものだな」
「アーさん。今日の仕事は終わりですか?」
「うむ。といっても、最近の仕事と言えば悪魔共の面倒を見るために色々とやるだけだがな」
その色々が大変なんじゃないですか。
「お互い大変ですねぇ」
「マーガレットほどではない。最近、アダムとの時間は取れているのか? もし時間が取れないのならば我も仕事を手伝うぞ」
「ありがとうございます、アーさん」
優しいですね、アーさん。自分も忙しいでしょうし、実は私の仕事を減らすためにこっそりと仕事をこなしているのは知っていますよ。感謝してます。
「アダムとの時間は取れていると思いますよ。ただ、アダム本人が少しずつ私との時間よりも自分の時間を優先するようになってきている気がします」
アダムが産まれてから1年と半年と言った所でしょうか。
もともと大人だった分、どんどん私の手から離れていくのでしょうね。
「寂しいです」
「そうだな。だがそれが子というものだぞ、マーガレット」
「アーさん、子供がいた経験が?」
そう聞きましたが、いつもアーさんは子供に囲まれていましたね。自分の子供でなくても、可愛がっているということですね。
大人になって、私の手元を離れるアダムを想像してしまいました。
……人の親に成るなんて、まだまだ先の話だと思っていましたが、成ってみるととても寂しいものです。
感慨深い気持ちになっていると、突然首筋に冷たいものを感じます。
「ひゃう?! アダム?」
「あはは! お母さんヤニムと同じ反応だったよ!」
アダムのいたずらだったようです。やりましたね……! というかアーさん、気づいていたでしょう?
「ふはは」
ふはは、じゃあないですよもう!
というよりアダム。その氷は一体どこから?
「あそこから!」
アダムに言われて後ろをむくと、すっかり完成した宴会場がありました。もう飲み物をくばっているようです。
「マーガレット様」
「あぁ、シルフィ。ありがとうございます」
……なんか、いつのまにかみんないません?
バレンタインもいますし、勇者もしれっと参加してます。堕天使たちもいますし……あれ? ラムさん?
久しぶりにマトンくんに会えて嬉しそうですけど、魔界の四天王ってそんなにぽんぽんこっちに来ても大丈夫なんですかね?
「大丈夫なわけあるか。連れ戻す!」
あ、魔王さんが来ました。連れ戻そうとしていますが……みんなに囲まれてお酒を注がれています。駆け付けいっぱいというやつです。
このパターンはよく見るヤツですね。このままなんだかんだで宴に参加していくパターンです。
「盛り上がってるな、主よ」
「フェン、ちょうどいい所に。すこし背中を貸してください」
フェンに大きくなってもらって、背中に座ります。もふもふで気持ちがいいです。
宴で盛り上がるみんなの姿を見ながら、今日はゆっくり飲みましょうか。
「いいのか? 向こうじゃなくて」
「たまにはここで。3人でゆっくり飲みましょう。初めてあった日の話なんてどうです? 忘れてしまいましたか?」
「まさか。驚きすぎて一言一句覚えているとも」
あはは。一言一句は言い過ぎじゃないですか? ……いや、本気で覚えてるんですか。なんなら私が使った魔法の形式まで覚えていると。
やりますね2人とも。
まぁなんにせよ、夜は長いです。ゆっくり話しましょう。
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こたえさん、いつも読んでくださりありがとうございます!
しばらくの間更新出来ませんでしたが、また徐々に更新ペースを戻していきます!
よろしくお願いいたします!