バグった冒険の書

kei

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ホイミ

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 例えばゲームで、モンスターに攻撃をされたら体力が減っていって、最後には死んでしまうじゃないですか。
 でも、死んでゲームオーバーになる前に、回復呪文で体力を回復させて、モンスターを倒してまた次の冒険に出る。
 これって、何もゲームの話だけじゃないと思うんだ。
 学校でも仕事場でも、一人で居ようが恋人と居ようが関係なく、突然モンスターが現れて俺の体力を削っていく。
 しかも俺は、このゲームがめちゃくちゃ下手っぴで、力も弱く、少しのダメージで瀕死になる最弱のキャラクターだし、最初からなのか、途中からなったのか、気付いたらハードモードをプレイしている。
 そして、体力が残りわずかとなった時、俺は決まってこう呟いてしまう。
 「ああ。死にてえ。」
 攻撃を受けて「死にてえ」なんて、矛盾しているようだが、そう思うのだから仕方がない。
 そして、これまた矛盾しているのだが、俺は断じて死にたい訳ではないのだ。
 人に殺されるのもごめんだし、ましてや自分で死ぬなんて怖くてできる訳がない。
 だいたい、注射も目をつぶって、太もも辺りをつねって、痛さを分散しないとできないくらいに痛いのが嫌いだ。
 練炭自殺みたいな苦しいのも嫌だし、毒薬を飲んで、ゲロを吐きながら死ぬのも、その姿を誰かに発見されるのも恥ずかしいて嫌。
 つまりは生きたいのだ。
 生きて、俺を苦しめたモンスターどもをぶっ倒して、次の冒険に出発したいのだ。
 そして、そうなる為にはやっぱり、あと一発殴られたらやむをえなく、これ程までに嫌な死を受け入れてしまう、ギリギリは体力を回復しなければならない。
 そう。回復呪文が必要なのだ。
 「はいはい。魔法なんて使える訳ないだろ。」
 「何言ってんだこいつ。良い大人だろ。」
 「ゲームのやりすぎて頭がおかしくなったな。」
 そんな言葉はもう聞き飽きた。
 断言しよう。
 回復呪文はある。
 誰しもが日々戦って、大小様々な傷を負っているだろう。
 そんな時例えば、自分の好きな歌、漫画や小説。
 大好きな人との時間や美味しい食べ物。
 もしかしたら、身近にあったのに何年も気付かない物とか、ずっと敵だと思ってたあいつだとか、こんなのがまささと思うの物もあるかもしれない。
 誰しもがそれらを見たり聞いたり、食したり愛したり育んだりして、瀕死だった体力を全回復させて、また次の冒険に旅立つ。
 うん。やっぱりこれは魔法だ。
 先程話した通り、俺はこのゲームな苦手で、少しのダメージで瀕死になるくらいに弱い。
 だから、いっぱい回復しないとすぐにゲームオーバーになってしまう。
 厄介なことに、このゲームはセーブもロードもコンテニューもない。一回きりの超激ムズマゾゲーだ。
 これから話すのは、もしかしたら俺にしか効かない魔法かもしれない。
 でもこの魔法が、このゲームを必死にやっている冒険者達の助けになれば、この俺の冒険の書が、この激ムズマゾゲーの攻略になれば、この上なく幸せである。
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