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第一部 リューナジア城編
第十話 お熱が出ちゃった
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「えへへ……」
良かった、お兄ちゃんに受け入れてもらえた。
安堵した途端にふっと身体から力が抜ける。
「カレン!」
床に倒れそうになった僕の身体をウィルフリートお兄ちゃんが受け止めてくれた。
「どうしたお前、身体が熱いぞ!」
「うん。おにーちゃんの手はひんやりしてきもちいね」
どうやらウィルフリートを探して城中をうろつき、彼と話をして頭をずっと撫でていただけで、僕の体力は電池切れとなってしまったらしい。夢を語るのに夢中で、体力が切れたことに気が付かなかった。頭がぼうっとして熱くて、お兄ちゃんの声が何だか遠くに聞こえる。
「そんなこと言ってる場合じゃないだろう! だ、誰か呼ばないと……!」
僕の身体が慌ただしくソファの上に下ろされると、バタバタと足音が遠ざかってドアが開け放たれる物音が響く。
「おい、誰か、今すぐ来い! いや……誰か来てくれ! 弟が、カレンが熱を出してるんだ!」
遠くから聞こえてくる声から察するにウィルフリートは相当慌てているようだった。
そんなに大袈裟にすることじゃないのに、熱が出るなんて僕には日常茶飯事なのになぁ……と微笑ましい気持ちになりながら意識が沈んでいった。
「どうしてウィルフリート殿下の部屋におられたのですか?」
次に目が覚めた時に第一声で乳母に聞かれた質問だった。
乳母の顔には少し疲れが見られる。もしかしたら僕がいなくなったと思ってとても心配したのかもしれない。
「お兄ちゃんに遊んでもらってたの」
「遊んでもらっていたって……いえ、それが事実だとしてもこの乳母に黙っていなくなるなんてあんまりですよカレン殿下!」
お手製エッグノッグを手に戻ってきたらベッドがもぬけの殻になっていたのだから、血の気が引いたに違いない。悪いことをしてしまった。
「ごめんなさい……」
しょんぼりとして頭を下げた。
「ええ、ええ、存分に反省なさって下さい。罰として殿下はこの先二週間部屋から出てはなりません!」
「そんな!」
乳母の言葉に衝撃を受けた。
二週間も謹慎なんて長すぎる! その間にウィルフリートに忘れられてしまったらどうするんだ。
「お医者さまが仰ったのです。乳母の目を盗んで部屋からちょくちょく抜け出すようでは殿下の容態が安定することはありませんと。少なくとも二週間は安静にしていなさいと言われました」
「あうぅ……」
それは確かにベッドで大人しくしていなければならないようだ。
自分で思っていたよりずっとこの身体は病弱なようだった。
「……元気になれば、またウィルフリート殿下のところへ遊びに行ってもよろしいですから」
「え?」
聞こえた言葉が聞き間違いかと思ってしまった。
だって乳母はお兄ちゃんのことを良く思っていないはずなのに。
「カレン殿下が熱で倒れられて、ウィルフリート殿下は血相を変えて慌てていらしたんですよ。あのお姿を見て私は、ああウィルフリート殿下は噂されているほど悪いお方ではないのかもと思いまして」
乳母がしみじみと語る様子に目を見張った。
ゲームの中のウィルフリートは生涯孤独で理解者など誰もいなかったのに。
やりようによっては、彼が周りに受け入れられてもらえる可能性もあるのかもしれない。
そのことに気づいた瞬間、僕の第二の目標が胸に灯るのを感じた。
良かった、お兄ちゃんに受け入れてもらえた。
安堵した途端にふっと身体から力が抜ける。
「カレン!」
床に倒れそうになった僕の身体をウィルフリートお兄ちゃんが受け止めてくれた。
「どうしたお前、身体が熱いぞ!」
「うん。おにーちゃんの手はひんやりしてきもちいね」
どうやらウィルフリートを探して城中をうろつき、彼と話をして頭をずっと撫でていただけで、僕の体力は電池切れとなってしまったらしい。夢を語るのに夢中で、体力が切れたことに気が付かなかった。頭がぼうっとして熱くて、お兄ちゃんの声が何だか遠くに聞こえる。
「そんなこと言ってる場合じゃないだろう! だ、誰か呼ばないと……!」
僕の身体が慌ただしくソファの上に下ろされると、バタバタと足音が遠ざかってドアが開け放たれる物音が響く。
「おい、誰か、今すぐ来い! いや……誰か来てくれ! 弟が、カレンが熱を出してるんだ!」
遠くから聞こえてくる声から察するにウィルフリートは相当慌てているようだった。
そんなに大袈裟にすることじゃないのに、熱が出るなんて僕には日常茶飯事なのになぁ……と微笑ましい気持ちになりながら意識が沈んでいった。
「どうしてウィルフリート殿下の部屋におられたのですか?」
次に目が覚めた時に第一声で乳母に聞かれた質問だった。
乳母の顔には少し疲れが見られる。もしかしたら僕がいなくなったと思ってとても心配したのかもしれない。
「お兄ちゃんに遊んでもらってたの」
「遊んでもらっていたって……いえ、それが事実だとしてもこの乳母に黙っていなくなるなんてあんまりですよカレン殿下!」
お手製エッグノッグを手に戻ってきたらベッドがもぬけの殻になっていたのだから、血の気が引いたに違いない。悪いことをしてしまった。
「ごめんなさい……」
しょんぼりとして頭を下げた。
「ええ、ええ、存分に反省なさって下さい。罰として殿下はこの先二週間部屋から出てはなりません!」
「そんな!」
乳母の言葉に衝撃を受けた。
二週間も謹慎なんて長すぎる! その間にウィルフリートに忘れられてしまったらどうするんだ。
「お医者さまが仰ったのです。乳母の目を盗んで部屋からちょくちょく抜け出すようでは殿下の容態が安定することはありませんと。少なくとも二週間は安静にしていなさいと言われました」
「あうぅ……」
それは確かにベッドで大人しくしていなければならないようだ。
自分で思っていたよりずっとこの身体は病弱なようだった。
「……元気になれば、またウィルフリート殿下のところへ遊びに行ってもよろしいですから」
「え?」
聞こえた言葉が聞き間違いかと思ってしまった。
だって乳母はお兄ちゃんのことを良く思っていないはずなのに。
「カレン殿下が熱で倒れられて、ウィルフリート殿下は血相を変えて慌てていらしたんですよ。あのお姿を見て私は、ああウィルフリート殿下は噂されているほど悪いお方ではないのかもと思いまして」
乳母がしみじみと語る様子に目を見張った。
ゲームの中のウィルフリートは生涯孤独で理解者など誰もいなかったのに。
やりようによっては、彼が周りに受け入れられてもらえる可能性もあるのかもしれない。
そのことに気づいた瞬間、僕の第二の目標が胸に灯るのを感じた。
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