36 / 171
第一部 リューナジア城編
第三十六話 読めなくてしょんぼり
しおりを挟む
「マクシミリアンから契約の詳細について色々と書面で届いている」
翌日、お兄ちゃんの部屋に行くと開口一番に言われた。
「お前も読んで確認しておけ」
と書類の束を渡された。
紙を広げてみて、僕は困ってしまった。
難しい単語がたくさんだったからだ。
いくら文字を覚えて発音規則が大体頭に入ったからって、流石に契約書の類はまだ僕には読めない。
「おにーちゃん、読めないよ……」
困り顔をして兄を見上げた。
お兄ちゃんは驚きに目を見開いた。
「すまん……お前がまだ五歳だということをすっかり失念していた」
忘れないで欲しい。
いくら前世の記憶があろうと僕はまだ生まれてこの方五年しか経ってない幼児なのだ。
ムッとして唇を尖らせると、その顔を見て兄は思わずと言った風に破顔した。
「ふっ、はは……いや本当にすまない。だからそうむくれるな」
小さく声を漏らして笑う兄の顔があまりにも年相応の少年らしくて、可愛らしかった。
最終的には僕にも笑いが伝播して、二人でくすくす笑い合った。
「いやしかし、このままでは困るな」
ひとしきり笑い合った後、兄は言った。
困るとは僕が契約書などの書類を読めないことについてだろう。
「オレが読み上げてやってもいいが、今後オレの手が空いてなくてそれどころではない場面も出て来るだろう」
「急いで勉強しなくちゃいけない……?」
不安げに兄の顔を見つめた。
足手まといになるのではないかという不安がぎゅっと胸を締め付ける。
「いや、無理はいけない。そもそも仕事量を考えると補佐か誰かいた方がいいな」
「そうなんだ」
「工房が出来ればオレは眼鏡や望遠鏡の試作品作りに忙しくなるだろう。書類仕事や交渉等はお前に任せることになるが、それは例えお前が健康であったとしても一人でこなせる量ではないだろう。普通は部下や執事が要る」
うんうんと頷くが、兄は憂いた顔を浮かべる。
「だがオレたちのやろうとしていることに理解を示して積極的に協力してくれる人材などいる訳が……」
そこで僕はピンと閃いた。
「いるよ!」
いるじゃないか、信頼が置けて僕たちに協力する動機があって書類仕事もできる有能な人物が!
「何? それは誰だ?」
「それはね────」
僕は元気溌溂とその名前を口にしたのだった。
翌日、お兄ちゃんの部屋に行くと開口一番に言われた。
「お前も読んで確認しておけ」
と書類の束を渡された。
紙を広げてみて、僕は困ってしまった。
難しい単語がたくさんだったからだ。
いくら文字を覚えて発音規則が大体頭に入ったからって、流石に契約書の類はまだ僕には読めない。
「おにーちゃん、読めないよ……」
困り顔をして兄を見上げた。
お兄ちゃんは驚きに目を見開いた。
「すまん……お前がまだ五歳だということをすっかり失念していた」
忘れないで欲しい。
いくら前世の記憶があろうと僕はまだ生まれてこの方五年しか経ってない幼児なのだ。
ムッとして唇を尖らせると、その顔を見て兄は思わずと言った風に破顔した。
「ふっ、はは……いや本当にすまない。だからそうむくれるな」
小さく声を漏らして笑う兄の顔があまりにも年相応の少年らしくて、可愛らしかった。
最終的には僕にも笑いが伝播して、二人でくすくす笑い合った。
「いやしかし、このままでは困るな」
ひとしきり笑い合った後、兄は言った。
困るとは僕が契約書などの書類を読めないことについてだろう。
「オレが読み上げてやってもいいが、今後オレの手が空いてなくてそれどころではない場面も出て来るだろう」
「急いで勉強しなくちゃいけない……?」
不安げに兄の顔を見つめた。
足手まといになるのではないかという不安がぎゅっと胸を締め付ける。
「いや、無理はいけない。そもそも仕事量を考えると補佐か誰かいた方がいいな」
「そうなんだ」
「工房が出来ればオレは眼鏡や望遠鏡の試作品作りに忙しくなるだろう。書類仕事や交渉等はお前に任せることになるが、それは例えお前が健康であったとしても一人でこなせる量ではないだろう。普通は部下や執事が要る」
うんうんと頷くが、兄は憂いた顔を浮かべる。
「だがオレたちのやろうとしていることに理解を示して積極的に協力してくれる人材などいる訳が……」
そこで僕はピンと閃いた。
「いるよ!」
いるじゃないか、信頼が置けて僕たちに協力する動機があって書類仕事もできる有能な人物が!
「何? それは誰だ?」
「それはね────」
僕は元気溌溂とその名前を口にしたのだった。
78
あなたにおすすめの小説
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
御堂あゆこ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる