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第一部 リューナジア城編
第九十八話 皇帝登場
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「第五皇子が生きていただと聞いていないぞ!!」
ロイがいちいち大声で騒ぐせいで、バルコニー中の注目が集まってしまっている。
その時、大きな音を立ててバルコニー階の扉が開いた。
「陛下、宰相殿、こちらでございます! こちらでカレン殿下が……!」
真っ先に入ってきたのはさっきの執事長だった。
(陛下……?)
執事長の後について、二人の人物が入ってきた。
片方は線の細い中年の男。顔つきだけ見れば美形と言えなくもなくが、陰鬱すぎる視線が美しさとはかけ離れた印象を見る者に与える。
こちらが宰相と呼ばれていた方だろう。
そしてもう片方は……厚い毛皮のマントを纏い、頭に冠を戴いた男だった。
それが何者であるか明白だった。
月の帝国を統べる者、皇帝だ。
その顔に見覚えがあった。
もちろんタソトキをプレイして時にも見たことがある。
だがそれだけではない。僕がカレンに転生した後にもこの顔を見たことがあった。
何故今まで気が付かなかったのだろう。
それもその筈、「まさか」という思い込みがあったからだ。
まさかそんな場所で皇帝を見かける筈がないと思っていた。
だからその正体に見覚えがあると思っても、その正体に思い至ることができなかったのだ。
皇帝は……街中で知り合ったあの親切なおじさんと同じ顔をしていた。
そっくり同じ、同一人物としか思えなかった。
「あ……」
皇帝の方もほぼ同時に僕に気が付いたようだった。
その瞳が大きく見開かれる。
「カ……レン、ちゃん……?」
本当に小さな呟きではあったが、あの街で出会ったおじさんと同じ呼び方で僕のことを呼んだ。
やっぱり、皇帝はあのおじさんなんだ!
でもなんで? なんで皇帝が変装して街中にいたの?
「やはり……!」
宰相が僕の姿を見るなり舌打ちした。
ドクターストップを無視してパーティ会場に来てしまったから叱られるかもしれない!
「どういうことですか父上! なぜ第五皇子が生きてるんです!」
この場で真っ先に口を開いたのがロイだった。
ざわざわと場が騒然としている。
「ああ、遅かったようですな陛下。もうこの際全てをつまびらかにしてしまってはいかがですか。カレン殿下の処遇も決定したことですし」
宰相が額の汗を拭いながら皇帝に囁く。
処遇を決定? どういうことだろう。
聞き捨てならぬ言葉が聞こえた気がした。
「いや、やはりそれは少し考え直すことにしないか……?」
「何を仰るんですか、陛下のご提案ではございませんか。私が皆様に話します」
「待て……!」
皇帝の制止を振り切って宰相が一歩前に進み出た。
「皆様、数々の疑問がおありのことでしょう。私がすべてお答えいたします」
宰相の声がバルコニー階に響き渡る……。
ロイがいちいち大声で騒ぐせいで、バルコニー中の注目が集まってしまっている。
その時、大きな音を立ててバルコニー階の扉が開いた。
「陛下、宰相殿、こちらでございます! こちらでカレン殿下が……!」
真っ先に入ってきたのはさっきの執事長だった。
(陛下……?)
執事長の後について、二人の人物が入ってきた。
片方は線の細い中年の男。顔つきだけ見れば美形と言えなくもなくが、陰鬱すぎる視線が美しさとはかけ離れた印象を見る者に与える。
こちらが宰相と呼ばれていた方だろう。
そしてもう片方は……厚い毛皮のマントを纏い、頭に冠を戴いた男だった。
それが何者であるか明白だった。
月の帝国を統べる者、皇帝だ。
その顔に見覚えがあった。
もちろんタソトキをプレイして時にも見たことがある。
だがそれだけではない。僕がカレンに転生した後にもこの顔を見たことがあった。
何故今まで気が付かなかったのだろう。
それもその筈、「まさか」という思い込みがあったからだ。
まさかそんな場所で皇帝を見かける筈がないと思っていた。
だからその正体に見覚えがあると思っても、その正体に思い至ることができなかったのだ。
皇帝は……街中で知り合ったあの親切なおじさんと同じ顔をしていた。
そっくり同じ、同一人物としか思えなかった。
「あ……」
皇帝の方もほぼ同時に僕に気が付いたようだった。
その瞳が大きく見開かれる。
「カ……レン、ちゃん……?」
本当に小さな呟きではあったが、あの街で出会ったおじさんと同じ呼び方で僕のことを呼んだ。
やっぱり、皇帝はあのおじさんなんだ!
でもなんで? なんで皇帝が変装して街中にいたの?
「やはり……!」
宰相が僕の姿を見るなり舌打ちした。
ドクターストップを無視してパーティ会場に来てしまったから叱られるかもしれない!
「どういうことですか父上! なぜ第五皇子が生きてるんです!」
この場で真っ先に口を開いたのがロイだった。
ざわざわと場が騒然としている。
「ああ、遅かったようですな陛下。もうこの際全てをつまびらかにしてしまってはいかがですか。カレン殿下の処遇も決定したことですし」
宰相が額の汗を拭いながら皇帝に囁く。
処遇を決定? どういうことだろう。
聞き捨てならぬ言葉が聞こえた気がした。
「いや、やはりそれは少し考え直すことにしないか……?」
「何を仰るんですか、陛下のご提案ではございませんか。私が皆様に話します」
「待て……!」
皇帝の制止を振り切って宰相が一歩前に進み出た。
「皆様、数々の疑問がおありのことでしょう。私がすべてお答えいたします」
宰相の声がバルコニー階に響き渡る……。
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