悪逆第四皇子は僕のお兄ちゃんだぞっ! ~商人になりたいので悪逆皇子の兄と組むことにします~

野良猫のらん

文字の大きさ
98 / 171
第一部 リューナジア城編

第九十八話 皇帝登場

しおりを挟む
「第五皇子が生きていただと聞いていないぞ!!」

 ロイがいちいち大声で騒ぐせいで、バルコニー中の注目が集まってしまっている。
 その時、大きな音を立ててバルコニー階の扉が開いた。

「陛下、宰相殿、こちらでございます! こちらでカレン殿下が……!」

 真っ先に入ってきたのはさっきの執事長だった。

(陛下……?)

 執事長の後について、二人の人物が入ってきた。

 片方は線の細い中年の男。顔つきだけ見れば美形と言えなくもなくが、陰鬱すぎる視線が美しさとはかけ離れた印象を見る者に与える。
 こちらが宰相と呼ばれていた方だろう。

 そしてもう片方は……厚い毛皮のマントを纏い、頭に冠を戴いた男だった。
 それが何者であるか明白だった。

 月の帝国を統べる者、皇帝だ。

 その顔に見覚えがあった。
 もちろんタソトキをプレイして時に見たことがある。
 だがそれだけではない。僕がカレンに転生した後にもこの顔を見たことがあった。

 何故今まで気が付かなかったのだろう。
 それもその筈、「まさか」という思い込みがあったからだ。
 まさかそんな場所で皇帝を見かける筈がないと思っていた。
 だからその正体に見覚えがあると思っても、その正体に思い至ることができなかったのだ。

 皇帝は……街中で知り合ったあの親切なおじさんと同じ顔をしていた。
 そっくり同じ、同一人物としか思えなかった。

「あ……」

 皇帝の方もほぼ同時に僕に気が付いたようだった。
 その瞳が大きく見開かれる。

「カ……レン、ちゃん……?」

 本当に小さな呟きではあったが、あの街で出会ったおじさんと同じ呼び方で僕のことを呼んだ。
 やっぱり、皇帝はあのおじさんなんだ!
 でもなんで? なんで皇帝が変装して街中にいたの?

「やはり……!」

 宰相が僕の姿を見るなり舌打ちした。
 ドクターストップを無視してパーティ会場に来てしまったから叱られるかもしれない!

「どういうことですか父上! なぜ第五皇子が生きてるんです!」

 この場で真っ先に口を開いたのがロイだった。
 ざわざわと場が騒然としている。

「ああ、遅かったようですな陛下。もうこの際全てをつまびらかにしてしまってはいかがですか。カレン殿下の処遇も決定したことですし」

 宰相が額の汗を拭いながら皇帝に囁く。
 処遇を決定? どういうことだろう。
 聞き捨てならぬ言葉が聞こえた気がした。

「いや、やはりそれは少し考え直すことにしないか……?」
「何を仰るんですか、陛下のご提案ではございませんか。私が皆様に話します」
「待て……!」

 皇帝の制止を振り切って宰相が一歩前に進み出た。

「皆様、数々の疑問がおありのことでしょう。私がすべてお答えいたします」

 宰相の声がバルコニー階に響き渡る……。
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

処理中です...