悪逆第四皇子は僕のお兄ちゃんだぞっ! ~商人になりたいので悪逆皇子の兄と組むことにします~

野良猫のらん

文字の大きさ
111 / 171
第二部 セルフィニエ辺境伯領編

第百十一話 祖父母の家に遊びに行く

しおりを挟む
 今日はお休みの日だ。
 時間があったら遊びに来てとお祖父ちゃんに誘われてたことを思い出し、僕はお祖父ちゃんとお祖母ちゃんの家に遊びに行くことにしたのだった。

 そして祖父母宅に向かう馬車の中、僕の隣には当然のようにお兄ちゃんが座っていたのだった。

「ご挨拶しなければならないからな」

 などと訳の分からないことを言っているが、僕の体調を心配して付いてきてくれたのだろう。
 口には出さないがお兄ちゃんは優しいのだ。

 下級貴族の生活水準は日本で言う公務員と同じくらいだろうかという予想は大体正しかったようだ。
 ひと昔前の普通の日本人がローンでやっと建てる「夢のマイホーム」くらいの規模の慎ましやかな一戸建てが祖父母宅だった。

 馬車が祖父母宅に着くと、お祖父ちゃんとそして白髪に近いブロンドの髪を持った老年の女性が暖かく出迎えてくれた。
 年を経てやや色味は薄くなっているものの、僕と同じ色の髪の毛だと思った。
 この女性こそが僕のお祖母ちゃんなのだ。

「まあ、本当にあの子にそっくりなのね……!」

 祖母は感極まったかのように目尻に涙を滲ませる。

「お祖母ちゃん……!」

 僕が祖母に駆け寄ると、祖母はそっと僕をハグしてくれた。
 それからお兄ちゃんの姿を認めると、祖母は不思議そうに目を瞬かせた。

「あら、どなたかしら……?」
「ご挨拶が遅れました、カレン殿下と親しくさせていただいておりますウィルフリート・クラム・アッシュフィールドと申します」

 兄は如才なく微笑んだ。
 お兄ちゃんがそんなに爽やかな笑い方ができるだなんて知らなかったな。
 何故だか物凄く頑張って祖父母に好かれようとしているようだった。

「ほら、前に話してた公爵家の……」

 と祖父が祖母に囁く。

「まあ! こんなに立派なご友人がいるのねカレンは!」

 えっへん、僕のお兄ちゃんなんだぞ!
 ……とは言えないけれど、お兄ちゃんが立派だと言ってもらえて僕はとっても嬉しかった。
 まるで自分が褒められたかのように僕ははにかむ。

「良ければウィルフリート様も一緒にお食事をしていかれませんか? カレンが来ると思ってご馳走を作ってありますの」
「急に人数が増えてしまってよろしいのですか?」
「多めに作ってありますから、全然問題ございません」

 こうして祖父母宅でみんなで一緒に食事をいただくことになったのだった。

 祖母が腕を振るってご馳走してくれたのは、南部の家庭料理だった。
 アイユフラワーというニンニクのような辛味がする花の蕾を刻んで炒めたもの、オリーブ油、そしてハーブで味付けした料理が特徴のようだった。
 セルフィニエ辺境伯領にはなんと海のように大きな湖があるらしく、新鮮な魚介類が豊富だった。
 今の僕には飲めないが白ワインととても合うだろうなという気がした。

「カレリーナは身体が弱いのに昔っからわんぱくでねぇ……」
「ふふ、その点は殿下とそっくりですね」

 食事をしながら懐かしそうに僕のお母さんの思い出話を語る祖母に、お兄ちゃんが目を細めて相槌を打つ。僕のお母さんの話が聞けて、何故だかお兄ちゃんも嬉しそうにしていた。

「ええー、僕そんなにわんぱくじゃないよう」

 ぷくっと頬を膨らませてみせるが、「その表情もそっくりだ」と一同の微笑みを誘ったのだった。
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。

おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを流れで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

御堂あゆこ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

処理中です...