悪逆第四皇子は僕のお兄ちゃんだぞっ! ~商人になりたいので悪逆皇子の兄と組むことにします~

野良猫のらん

文字の大きさ
132 / 171
第二部 セルフィニエ辺境伯領編

第百三十二話 小悪魔カレン

しおりを挟む
「さて、どんな手を使ってケイスを籠絡したのか話してもらおうか」
「籠絡!?」

 お兄ちゃんの部屋に入るなりお兄ちゃんが問い詰めてきた。
 お兄ちゃんは何か勘違いしている。
 僕は"ろーらく"なんかしてない。

「要はケイスくんと仲良くなればいいんだと思って、ちょこっと身の上話をしただけだよ?」

 ちょっと話を盛りつつも人前では敬語を使って欲しい、二人きりの時は砕けた口調でもいいからとお願いしただけだということを話した。
 そうしたら僕の話を聞いたお兄ちゃんは大仰に溜息を吐いたのだった。

「はあ……カレンは天然の小悪魔だな」
「小悪魔!?」

 あくまでも平和的に解決したのに何故小悪魔!?

「いいかカレン。別に泣き落すのは構わないが、『二人きりの時は』などという言葉を赤の他人に使ってはならない。同性にも異性にもだ。お前の可愛らしさでは必ず相手を勘違いさせてしまう」

「勘違い……???」

 一体全体ケイスくんに何の勘違いをさせたのだろうかと僕は首を傾げる。
 それに可愛らしさが何の関係があるのだろうか。
 そりゃ小学校一年生程度の年齢の幼児はある程度可愛らしいだろうけれど。

「とにかく、これからは似たようなことをする時には必ずオレ相手に予行演習をするように」

 これからはお兄ちゃん監修の元計略を立てるようにと釘を刺されてしまった。

「まったく、この調子では他にも無意識に落としてそうだな……」

 お兄ちゃんが何事かぶつぶつ呟いている。
 その様子を見てははあと合点がいって僕はにやりと笑ったのだった。

「お兄ちゃん、さては嫉妬してるんでしょ?」
「な……っ!?」

 僕の指摘にお兄ちゃんは顔を青褪めさせる。
 そこまで驚かなくてもいいのに。

「お兄ちゃん、僕しか友達いなさそうだもんね。友達が取られそうで慌ててるんでしょ」

 お兄ちゃんがケイスくんを敵視する理由なんてそれしか思いつかない。
 僕がケイスくんと仲良くなってお兄ちゃんと遊ばなくなると思ったのだろうか。
 お兄ちゃんにも小さい子供のような情緒が残されてるんだなと思って可愛らしく感じた。

「なんだ、そういう意味か……」

 何故だかほっと安堵の溜息を吐くお兄ちゃ ん。
 そして腕組みして何かを逡巡するように視線を彷徨わせたかと思うと、躊躇いがちに言葉を口にした。

「そりゃあ…………嫉妬して何が悪い。オレにとって大事なものはお前しかいない。お前が全てなんだ――――だから、お前を取られたらオレは全てを失ってしまう」

 存外に正直な告白に僕は目を丸くした。
 まさかそこまで想ってくれていたとは。
 お兄ちゃんも気恥ずかしいのか視線を逸らしている。

 それにしてもお兄ちゃんがこんなに赤裸々に自分の気持ちを口にするなんて、『殿下に相応しい男になってみせます』とまで言ってのけたケイスくんに当てられたのだろうか。

「そっか。お兄ちゃんが僕のことを一番大事なのは分かったけど、二番目に大事なものや三番目に大事なものも作った方がいいんじゃない?」

 お兄ちゃんは僕の為に中央での生活を放り出して南部まで来てくれた。
 だけど、だからこそ、この南部で僕以外にも何かお兄ちゃんにとって大切なものを見つけてほしいなと思った。

 僕だってお兄ちゃんのことは一番大事だけど、二番目に大事な友達や三番目に大事な趣味が出来るかもしれないんだし。その時にお兄ちゃんが僕を取られたと思って不幸に感じたら僕だって悲しい。

「二番目に大事なものは……発明品作り、だろうか」
「南部に来てからやってないもんね」

 お兄ちゃんは二番目、三番目に大事なものを作るという僕の提案に戸惑いがちに答えた。
 メトロノームなどの作成を木工工房や鍛冶工房に任せるとお兄ちゃんは言ったが、もしかすればやっぱりお兄ちゃんが作る方がいいんじゃないだろうか。そうお兄ちゃんに言った。

「いや、それは時間がない。オレが空き時間だけで作るとしたら時間がかかってしまう。もう先方には作ると言ってしまってあるんだろう?」

「うん。ワクワクして待ってるよ」

 テルディナント先生の興奮具合を思い出しながら頷いた。

「ワクワク? とにかく先方は待っているのだから工房に頼んだ方がいい。だがそれ以外の物なら……まあ、趣味で何か考えてみるのもいいかもしれない」

「やったー! 僕、お兄ちゃんの作るもの大好き!」

 お兄ちゃんが僕に発明品の説明をしてくれる時はとっても楽しそうな顔をしているので、僕も楽しい気分になってしまうのだ。だから僕はお兄ちゃんの発明したものを一緒に見るのがとっても好きだった。

 ちなみに三番目に大事なものも聞いてみたが、何も思いつかないそうだ。
 これは課題だ。お兄ちゃんの好きなもの作りに一緒に付き合ってあげなければ。
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…

こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』  ある日、教室中に響いた声だ。  ……この言い方には語弊があった。  正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。  テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。  問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。 *当作品はカクヨム様でも掲載しております。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

御堂あゆこ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

処理中です...