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第二部 セルフィニエ辺境伯領編
第百三十二話 小悪魔カレン
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「さて、どんな手を使ってケイスを籠絡したのか話してもらおうか」
「籠絡!?」
お兄ちゃんの部屋に入るなりお兄ちゃんが問い詰めてきた。
お兄ちゃんは何か勘違いしている。
僕は"ろーらく"なんかしてない。
「要はケイスくんと仲良くなればいいんだと思って、ちょこっと身の上話をしただけだよ?」
ちょっと話を盛りつつも人前では敬語を使って欲しい、二人きりの時は砕けた口調でもいいからとお願いしただけだということを話した。
そうしたら僕の話を聞いたお兄ちゃんは大仰に溜息を吐いたのだった。
「はあ……カレンは天然の小悪魔だな」
「小悪魔!?」
あくまでも平和的に解決したのに何故小悪魔!?
「いいかカレン。別に泣き落すのは構わないが、『二人きりの時は』などという言葉を赤の他人に使ってはならない。同性にも異性にもだ。お前の可愛らしさでは必ず相手を勘違いさせてしまう」
「勘違い……???」
一体全体ケイスくんに何の勘違いをさせたのだろうかと僕は首を傾げる。
それに可愛らしさが何の関係があるのだろうか。
そりゃ小学校一年生程度の年齢の幼児はある程度可愛らしいだろうけれど。
「とにかく、これからは似たようなことをする時には必ずオレ相手に予行演習をするように」
これからはお兄ちゃん監修の元計略を立てるようにと釘を刺されてしまった。
「まったく、この調子では他にも無意識に落としてそうだな……」
お兄ちゃんが何事かぶつぶつ呟いている。
その様子を見てははあと合点がいって僕はにやりと笑ったのだった。
「お兄ちゃん、さては嫉妬してるんでしょ?」
「な……っ!?」
僕の指摘にお兄ちゃんは顔を青褪めさせる。
そこまで驚かなくてもいいのに。
「お兄ちゃん、僕しか友達いなさそうだもんね。友達が取られそうで慌ててるんでしょ」
お兄ちゃんがケイスくんを敵視する理由なんてそれしか思いつかない。
僕がケイスくんと仲良くなってお兄ちゃんと遊ばなくなると思ったのだろうか。
お兄ちゃんにも小さい子供のような情緒が残されてるんだなと思って可愛らしく感じた。
「なんだ、そういう意味か……」
何故だかほっと安堵の溜息を吐くお兄ちゃ ん。
そして腕組みして何かを逡巡するように視線を彷徨わせたかと思うと、躊躇いがちに言葉を口にした。
「そりゃあ…………嫉妬して何が悪い。オレにとって大事なものはお前しかいない。お前が全てなんだ――――だから、お前を取られたらオレは全てを失ってしまう」
存外に正直な告白に僕は目を丸くした。
まさかそこまで想ってくれていたとは。
お兄ちゃんも気恥ずかしいのか視線を逸らしている。
それにしてもお兄ちゃんがこんなに赤裸々に自分の気持ちを口にするなんて、『殿下に相応しい男になってみせます』とまで言ってのけたケイスくんに当てられたのだろうか。
「そっか。お兄ちゃんが僕のことを一番大事なのは分かったけど、二番目に大事なものや三番目に大事なものも作った方がいいんじゃない?」
お兄ちゃんは僕の為に中央での生活を放り出して南部まで来てくれた。
だけど、だからこそ、この南部で僕以外にも何かお兄ちゃんにとって大切なものを見つけてほしいなと思った。
僕だってお兄ちゃんのことは一番大事だけど、二番目に大事な友達や三番目に大事な趣味が出来るかもしれないんだし。その時にお兄ちゃんが僕を取られたと思って不幸に感じたら僕だって悲しい。
「二番目に大事なものは……発明品作り、だろうか」
「南部に来てからやってないもんね」
お兄ちゃんは二番目、三番目に大事なものを作るという僕の提案に戸惑いがちに答えた。
メトロノームなどの作成を木工工房や鍛冶工房に任せるとお兄ちゃんは言ったが、もしかすればやっぱりお兄ちゃんが作る方がいいんじゃないだろうか。そうお兄ちゃんに言った。
「いや、それは時間がない。オレが空き時間だけで作るとしたら時間がかかってしまう。もう先方には作ると言ってしまってあるんだろう?」
「うん。ワクワクして待ってるよ」
テルディナント先生の興奮具合を思い出しながら頷いた。
「ワクワク? とにかく先方は待っているのだから工房に頼んだ方がいい。だがそれ以外の物なら……まあ、趣味で何か考えてみるのもいいかもしれない」
「やったー! 僕、お兄ちゃんの作るもの大好き!」
お兄ちゃんが僕に発明品の説明をしてくれる時はとっても楽しそうな顔をしているので、僕も楽しい気分になってしまうのだ。だから僕はお兄ちゃんの発明したものを一緒に見るのがとっても好きだった。
ちなみに三番目に大事なものも聞いてみたが、何も思いつかないそうだ。
これは課題だ。お兄ちゃんの好きなもの作りに一緒に付き合ってあげなければ。
「籠絡!?」
お兄ちゃんの部屋に入るなりお兄ちゃんが問い詰めてきた。
お兄ちゃんは何か勘違いしている。
僕は"ろーらく"なんかしてない。
「要はケイスくんと仲良くなればいいんだと思って、ちょこっと身の上話をしただけだよ?」
ちょっと話を盛りつつも人前では敬語を使って欲しい、二人きりの時は砕けた口調でもいいからとお願いしただけだということを話した。
そうしたら僕の話を聞いたお兄ちゃんは大仰に溜息を吐いたのだった。
「はあ……カレンは天然の小悪魔だな」
「小悪魔!?」
あくまでも平和的に解決したのに何故小悪魔!?
「いいかカレン。別に泣き落すのは構わないが、『二人きりの時は』などという言葉を赤の他人に使ってはならない。同性にも異性にもだ。お前の可愛らしさでは必ず相手を勘違いさせてしまう」
「勘違い……???」
一体全体ケイスくんに何の勘違いをさせたのだろうかと僕は首を傾げる。
それに可愛らしさが何の関係があるのだろうか。
そりゃ小学校一年生程度の年齢の幼児はある程度可愛らしいだろうけれど。
「とにかく、これからは似たようなことをする時には必ずオレ相手に予行演習をするように」
これからはお兄ちゃん監修の元計略を立てるようにと釘を刺されてしまった。
「まったく、この調子では他にも無意識に落としてそうだな……」
お兄ちゃんが何事かぶつぶつ呟いている。
その様子を見てははあと合点がいって僕はにやりと笑ったのだった。
「お兄ちゃん、さては嫉妬してるんでしょ?」
「な……っ!?」
僕の指摘にお兄ちゃんは顔を青褪めさせる。
そこまで驚かなくてもいいのに。
「お兄ちゃん、僕しか友達いなさそうだもんね。友達が取られそうで慌ててるんでしょ」
お兄ちゃんがケイスくんを敵視する理由なんてそれしか思いつかない。
僕がケイスくんと仲良くなってお兄ちゃんと遊ばなくなると思ったのだろうか。
お兄ちゃんにも小さい子供のような情緒が残されてるんだなと思って可愛らしく感じた。
「なんだ、そういう意味か……」
何故だかほっと安堵の溜息を吐くお兄ちゃ ん。
そして腕組みして何かを逡巡するように視線を彷徨わせたかと思うと、躊躇いがちに言葉を口にした。
「そりゃあ…………嫉妬して何が悪い。オレにとって大事なものはお前しかいない。お前が全てなんだ――――だから、お前を取られたらオレは全てを失ってしまう」
存外に正直な告白に僕は目を丸くした。
まさかそこまで想ってくれていたとは。
お兄ちゃんも気恥ずかしいのか視線を逸らしている。
それにしてもお兄ちゃんがこんなに赤裸々に自分の気持ちを口にするなんて、『殿下に相応しい男になってみせます』とまで言ってのけたケイスくんに当てられたのだろうか。
「そっか。お兄ちゃんが僕のことを一番大事なのは分かったけど、二番目に大事なものや三番目に大事なものも作った方がいいんじゃない?」
お兄ちゃんは僕の為に中央での生活を放り出して南部まで来てくれた。
だけど、だからこそ、この南部で僕以外にも何かお兄ちゃんにとって大切なものを見つけてほしいなと思った。
僕だってお兄ちゃんのことは一番大事だけど、二番目に大事な友達や三番目に大事な趣味が出来るかもしれないんだし。その時にお兄ちゃんが僕を取られたと思って不幸に感じたら僕だって悲しい。
「二番目に大事なものは……発明品作り、だろうか」
「南部に来てからやってないもんね」
お兄ちゃんは二番目、三番目に大事なものを作るという僕の提案に戸惑いがちに答えた。
メトロノームなどの作成を木工工房や鍛冶工房に任せるとお兄ちゃんは言ったが、もしかすればやっぱりお兄ちゃんが作る方がいいんじゃないだろうか。そうお兄ちゃんに言った。
「いや、それは時間がない。オレが空き時間だけで作るとしたら時間がかかってしまう。もう先方には作ると言ってしまってあるんだろう?」
「うん。ワクワクして待ってるよ」
テルディナント先生の興奮具合を思い出しながら頷いた。
「ワクワク? とにかく先方は待っているのだから工房に頼んだ方がいい。だがそれ以外の物なら……まあ、趣味で何か考えてみるのもいいかもしれない」
「やったー! 僕、お兄ちゃんの作るもの大好き!」
お兄ちゃんが僕に発明品の説明をしてくれる時はとっても楽しそうな顔をしているので、僕も楽しい気分になってしまうのだ。だから僕はお兄ちゃんの発明したものを一緒に見るのがとっても好きだった。
ちなみに三番目に大事なものも聞いてみたが、何も思いつかないそうだ。
これは課題だ。お兄ちゃんの好きなもの作りに一緒に付き合ってあげなければ。
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