170 / 171
第二部 セルフィニエ辺境伯領編
第百七十話 湖でのピクニック ③
しおりを挟む
ぽちゃんっ、と音を立てて糸の先が湖面に吸い込まれていった。
すぐには変化は起きない。
お兄ちゃんと並んでバッカーレ湖の美しい景色を眺めているだけになった。
緑がかった湖面のずっと向こうにはポツンと陸地が浮いている。
孤島――海でなかったとしても島と呼ぶのだろうか――が見えた。
「近くに村とかはないんだね」
少なくとも見えるところには家は建っていなかった。
ボート小屋らしきものがポツンと見えるだけだ。
水辺の周りには人が住むものだと思っていたのに。
代わりに釣りに精を出しているらしきボートの影は湖にいくつか浮いている。
「ああ。何だったかな。何か人が住めない理由があるらしい」
「ふうん」
そんな話をしているとくいくいっとお兄ちゃんの釣り竿の先が引いた。
「お兄ちゃんっ!」
「ああ!」
お兄ちゃんは立ち上がり、竿を引っ張りリールを巻いていく。
真剣な表情だ。
勝負だということも忘れて僕はお兄ちゃんを「がんばれー」と応援した。
やがてバシャバシャと音を立てて魚が湖面に姿を現した。
水が跳ねて姿がよく見えないが、鱗がキラキラと輝いているように見える。
「はぁっ!」
バシャンッ!
気が付けば魚はお兄ちゃんの手に捕まれていた。
まずは一尾目、ゲットである。
たっぷり太ったアユのように美味しそうな見た目をしていた。
光の加減によっては鱗が七色に光っているようにも見える。
「お兄ちゃん、おめでとう!」
「ふふ、まずはオレの先制点だな」
「あ、そういえばそうだった……!」
そう言えばこれは勝負なのだった。
このままでは負けてしまう! 僕も魚を釣らなければ!
それからほどなくして僕の釣り竿にも手ごたえがあった。
「きたっ!」
「カレン、手を離すなよ!」
僕は小さな手をくるくると回して必死にリールを巻く。
大物なのか、それとも僕の力がないからなのかは分からないが、かなり手応えが重たく感じられる。
僕の力では引き上げられないかもしれない!
「カレン! 頑張れ!」
お兄ちゃんがなんと自分の釣り竿から手を放して助太刀に来てくれた。
僕の手の上からお兄ちゃんが釣り竿を握って引く。
お兄ちゃん、これが勝負だってこと忘れてない?
バシャーンッ!
大きな水飛沫を立てて、獲物が釣り上がった。
お兄ちゃんの手も借りて釣り上げた僕の釣果だ。
「これは……カレイ?」
それは平べったくて大きな魚だった。
記憶にあるカレイの姿と違って鱗がまだらに光っている。
カレイって海の魚じゃなったっけ?
「カレン、知ってるのか?」
「あ、いや、ううん。前世で見たことある魚と似てただけ」
ここは異世界なんだから、カレイやヒラメによく似た淡水魚もいるよね。
お兄ちゃんはその魚をひっくり返してお腹が真っ白なのを見て取ると「美味しそうだな」と呟いたのだった。
南部に来て食卓に魚介類が乗るようになってから知ったんだけど、お兄ちゃんは白身魚が好きらしい。カレイモドキ(仮)が美味しいといいね。
すぐには変化は起きない。
お兄ちゃんと並んでバッカーレ湖の美しい景色を眺めているだけになった。
緑がかった湖面のずっと向こうにはポツンと陸地が浮いている。
孤島――海でなかったとしても島と呼ぶのだろうか――が見えた。
「近くに村とかはないんだね」
少なくとも見えるところには家は建っていなかった。
ボート小屋らしきものがポツンと見えるだけだ。
水辺の周りには人が住むものだと思っていたのに。
代わりに釣りに精を出しているらしきボートの影は湖にいくつか浮いている。
「ああ。何だったかな。何か人が住めない理由があるらしい」
「ふうん」
そんな話をしているとくいくいっとお兄ちゃんの釣り竿の先が引いた。
「お兄ちゃんっ!」
「ああ!」
お兄ちゃんは立ち上がり、竿を引っ張りリールを巻いていく。
真剣な表情だ。
勝負だということも忘れて僕はお兄ちゃんを「がんばれー」と応援した。
やがてバシャバシャと音を立てて魚が湖面に姿を現した。
水が跳ねて姿がよく見えないが、鱗がキラキラと輝いているように見える。
「はぁっ!」
バシャンッ!
気が付けば魚はお兄ちゃんの手に捕まれていた。
まずは一尾目、ゲットである。
たっぷり太ったアユのように美味しそうな見た目をしていた。
光の加減によっては鱗が七色に光っているようにも見える。
「お兄ちゃん、おめでとう!」
「ふふ、まずはオレの先制点だな」
「あ、そういえばそうだった……!」
そう言えばこれは勝負なのだった。
このままでは負けてしまう! 僕も魚を釣らなければ!
それからほどなくして僕の釣り竿にも手ごたえがあった。
「きたっ!」
「カレン、手を離すなよ!」
僕は小さな手をくるくると回して必死にリールを巻く。
大物なのか、それとも僕の力がないからなのかは分からないが、かなり手応えが重たく感じられる。
僕の力では引き上げられないかもしれない!
「カレン! 頑張れ!」
お兄ちゃんがなんと自分の釣り竿から手を放して助太刀に来てくれた。
僕の手の上からお兄ちゃんが釣り竿を握って引く。
お兄ちゃん、これが勝負だってこと忘れてない?
バシャーンッ!
大きな水飛沫を立てて、獲物が釣り上がった。
お兄ちゃんの手も借りて釣り上げた僕の釣果だ。
「これは……カレイ?」
それは平べったくて大きな魚だった。
記憶にあるカレイの姿と違って鱗がまだらに光っている。
カレイって海の魚じゃなったっけ?
「カレン、知ってるのか?」
「あ、いや、ううん。前世で見たことある魚と似てただけ」
ここは異世界なんだから、カレイやヒラメによく似た淡水魚もいるよね。
お兄ちゃんはその魚をひっくり返してお腹が真っ白なのを見て取ると「美味しそうだな」と呟いたのだった。
南部に来て食卓に魚介類が乗るようになってから知ったんだけど、お兄ちゃんは白身魚が好きらしい。カレイモドキ(仮)が美味しいといいね。
54
あなたにおすすめの小説
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
御堂あゆこ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる