婚約破棄されるなり5秒で王子にプロポーズされて溺愛されてます!?

野良猫のらん

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第十二話 国王夫妻と会う

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 部屋に着くと、頭に冠を戴いた二人の人間が待っていた。
 
 一人は金髪碧眼の中年の女性。
 目元や口元に皺が目立つが、若かりし頃はこの国一の美女であっただろうと、思わず思い浮かべてしまうような目鼻立ちをしている。否、人によっては今でも国一の美女だと評するだろう。口元に柔らかい笑みを湛えているのに、自信に満ちた威厳を感じる。ギュスターヴの金髪碧眼は母親譲りなのだと知った。
 
 もう一人の男性は、赤茶色の髪と髭に白髪がわずかに混ざっているのが見て取れる。ギュスターヴが年老いたら、このようになるのではないかと思わせられるハンサムな男性だ。いかにもな厳めしい表情を浮かべている。
 
 彼らがこの国の国王と王妃だ。
 どの精霊がどちらを加護しているのか分からぬほど多数の精霊が、彼らを見守っているのが分かる。合わせれば十を優に超えるだろう。
 
 場所は謁見室ではない。これは家族同士の内々の面会だからだ。
 ギュスターヴと食事した部屋のような茶会用の小部屋だ。リラックスした雰囲気で会話ができるようにか、テーブル上に茶会の準備がされている。
 ギュスターヴの側仕えと、フィリップは部屋の隅に控える。
 
「どうしたんだい、ヴァン?」
 
 国王夫妻の姿を目にして咄嗟にその場に跪こうとしたら、ギュスターヴが不思議そうに首を傾げた。ヴァンは羞恥に顔を赤らめながら、席についた。
 それを見た国王が相好を崩し、口を開く。
 
「ここは謁見の間ではないから畏まる必要はない。口も自由に開いてよいぞ」
「はっ、ははっ!」
 
 国王のお言葉に思わず椅子に座ったままの状態で礼をしようとし、不格好に背を折る。
 
「まあいきなりは難しいか。では我が息子、ギュスターヴよ」
 
 陛下がギュスターヴに視線を移すと、彼はこくりと頷く。
 
「ヴァン、紹介しよう。私の父上ロベール・エスプリヒと母上ジュリー・エスプリヒだ」
 
 紹介された彼らは、順に目を細めて笑みを見せる。
 
「父上、母上。こちらが婚姻を結びたいと考えている、ヴァン・ミストラル殿です」
 
 ヴァンも緊張しながら会釈を返した。
 それを見た国王夫妻が顔を見合わせて頷き合う。
 
「どうしてなかなか好青年ではないか。余は気に入ったぞ」
「ええ。愚息の足りないところを補ってくれそうですわ」
 
 驚いたことに二人の顔には柔らかい微笑が浮かんでいた。
 ギュスターヴが説得するまでもなく、受け入れられたのだということが理解できた。彼らの周囲の精霊たちが、きらきらと暖かな光を投げかけていることからもそれは明らかだ。
 
「え、でもっ、ご覧の通り僕には風の精霊の加護しかないですし、家柄も取り立てて良いわけではありません! それなのにどうして……」
 
 欠点だらけの自分を、なぜ国王夫妻が受け入れてくれるのかヴァンには不思議だった。
 国王陛下が口を開く。
 
「ヴァン殿。側室に求められるのは、家柄や加護の数などではない。将来王となる伴侶を、いかに支えられるかだ」
「国王陛下……!」
 
 ヴァンならばギュスターヴのことを支えられる。そう認めてもらえた。
 ギュスターヴのことを支えられる自信などないが、他人に認められるという初めての経験に涙ぐみそうになった。
 その時だった。
 
「側室?」
 
 不意に、ギュスターヴがポツリと呟きを零した。
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