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第四十一話 ミレイユとの話し合い
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ヴァンは翌日、庭の東屋に足を伸ばしていた。
ミレイユは自分を捨てた元婚約者だ。
だが呼び出された理由が気にかかって、無視することができなかった。
いまさら彼女が、自分に一体何の用があるというのか。
ヴァンはフィリップを撒いて、ミレイユの元へと向かった。フィリップには悪いが、ミレイユが何を言い出すかわからない。
一般に解放されている庭には、あちらこちらにと東屋が設置されている。
別に決まりはないのだが、東屋は貴族が使うものという空気になっていて、平民が使っていることはない。
心当たりのある場所を探していると、東屋にミレイユの姿があるのを発見した。彼女もまた、供を連れていなかった。
ミレイユはヴァンの姿を発見すると、笑顔になって手を振ってきた。
婚約時代にも見せたことのない、愛想のよさだ。彼女の笑顔に、警戒心が湧く。
「ヴァン、ここよここ!」
ヴァンは速足になって、彼女のいる東屋へと急いだ。
東屋には、テーブルと長椅子が設置されている。ヴァンは、ミレイユの向かいの席に腰かけた。
「ヴァン、久しぶりね。元気にしてた?」
「それより、どうして急に呼び出したの? それも、あんな風に一目を忍ぶように」
「あら、挨拶もそこそこに本題に入ろうだなんて余裕がないのね、ヴァンは。もしかして、城中であれこれ言われているからかしら」
「城中で……っ!?」
ミレイユの言葉に、心臓が止まるかと思った。
ヴァンを悪く言っていたのは、あの二人の貴族だけではなかったのだ。
「く……笑いに来たのか?」
ヴァンは、ミレイユを睨みつけた。
するとミレイユは、傷ついた顔をした。
「あら、心外ですわ! 私は純粋にヴァンの心配をしているというのに!」
「ミレイユが僕のことを心配?」
捨てたくせに、と言いそうになる。
ヴァンの険の鋭さは彼女にも伝わったのだろう、彼女は大仰に溜息を吐く。
「たしかに私、ヴァンとの婚約を疎ましく思っていたのは事実ですわ。ヴァンとの間に恋情はなかったわ。それでも、友情は感じていましてよ? 私たち、穏やかな日差しのような関係を築けていたと思うのですけれど」
ミレイユの悲しげな顔に、糾弾するのを躊躇われる。
たしかに一緒にお茶などした時は、比較的平和な時間を過ごせていたと思う。
面と向かって怒鳴られたのは、婚約破棄の時だけだ。
「公爵閣下との婚約発表の時の私のヴァンへの態度は、謝罪いたしますわ。私、てっきりヴァンに裏切られたものと勘違いしてしまいましたの。たとえ義務的な婚約であっても、裏切られたと思ったら反射的に憤慨してしまうものでしょう?」
まさか謝罪の言葉が聞けるとは思わず、ヴァンは面食らった。
謝られたからには、許すべきなのだろうか。そもそも婚約なんて親に勝手に決められたもので、それはミレイユも同じはずだ。捨てられたからといって恨むのは、筋違いかもしれない。
ミレイユに関してどう考えるべきか、揺らぎ始める。
「それでヴァン、城中の貴族があなたと殿下の陰口を口の端に上らせていましてよ。私、心配になって会おうと思いましたの。でも、元婚約者と会うなんて殿下も心中穏やかではいられないでしょう? だから、こうやって内緒で連絡を取りましたの」
「待って、僕だけじゃなく殿下まで悪口を言われているの!?」
ミレイユの言葉に驚き、声を上げた。
「ええ、悲しいことに。『感情だけで伴侶を選ぶ考えなし』『あれが国王になったら、国が荒廃する』なんて囁かれているのを聞きましたわ」
ミレイユは頬に手を当てて語った内容に、ヴァンは胃の腑が凍ったように感じられた。
そこまで悪し様に言われているなんて。自分のせいで、ギュスターヴが国王の座を継げないかもしれない。継げたとしても、貴族たちに国王と認められないのでは?
「どうしよう……」
俯き、自分の膝を見下ろす。
やはり、自分が身を引くしかないのだろうか。
ギュスターヴと別れ、あの家に戻る。それが一番いいのだろう。
頭ではわかっているが、したくない。ずっと彼と一緒にいたい。
ヴァンは、ぎゅっと顔を歪めた。
「別れたくない、そう思っているんでしょう? 策があると言ったら、どう思いまして?」
「え、策?」
ミレイユの言葉に、ばっと顔を上げた。
「もしかしたら、加護を増やせるかもしれなくってよ」
ミレイユは自分を捨てた元婚約者だ。
だが呼び出された理由が気にかかって、無視することができなかった。
いまさら彼女が、自分に一体何の用があるというのか。
ヴァンはフィリップを撒いて、ミレイユの元へと向かった。フィリップには悪いが、ミレイユが何を言い出すかわからない。
一般に解放されている庭には、あちらこちらにと東屋が設置されている。
別に決まりはないのだが、東屋は貴族が使うものという空気になっていて、平民が使っていることはない。
心当たりのある場所を探していると、東屋にミレイユの姿があるのを発見した。彼女もまた、供を連れていなかった。
ミレイユはヴァンの姿を発見すると、笑顔になって手を振ってきた。
婚約時代にも見せたことのない、愛想のよさだ。彼女の笑顔に、警戒心が湧く。
「ヴァン、ここよここ!」
ヴァンは速足になって、彼女のいる東屋へと急いだ。
東屋には、テーブルと長椅子が設置されている。ヴァンは、ミレイユの向かいの席に腰かけた。
「ヴァン、久しぶりね。元気にしてた?」
「それより、どうして急に呼び出したの? それも、あんな風に一目を忍ぶように」
「あら、挨拶もそこそこに本題に入ろうだなんて余裕がないのね、ヴァンは。もしかして、城中であれこれ言われているからかしら」
「城中で……っ!?」
ミレイユの言葉に、心臓が止まるかと思った。
ヴァンを悪く言っていたのは、あの二人の貴族だけではなかったのだ。
「く……笑いに来たのか?」
ヴァンは、ミレイユを睨みつけた。
するとミレイユは、傷ついた顔をした。
「あら、心外ですわ! 私は純粋にヴァンの心配をしているというのに!」
「ミレイユが僕のことを心配?」
捨てたくせに、と言いそうになる。
ヴァンの険の鋭さは彼女にも伝わったのだろう、彼女は大仰に溜息を吐く。
「たしかに私、ヴァンとの婚約を疎ましく思っていたのは事実ですわ。ヴァンとの間に恋情はなかったわ。それでも、友情は感じていましてよ? 私たち、穏やかな日差しのような関係を築けていたと思うのですけれど」
ミレイユの悲しげな顔に、糾弾するのを躊躇われる。
たしかに一緒にお茶などした時は、比較的平和な時間を過ごせていたと思う。
面と向かって怒鳴られたのは、婚約破棄の時だけだ。
「公爵閣下との婚約発表の時の私のヴァンへの態度は、謝罪いたしますわ。私、てっきりヴァンに裏切られたものと勘違いしてしまいましたの。たとえ義務的な婚約であっても、裏切られたと思ったら反射的に憤慨してしまうものでしょう?」
まさか謝罪の言葉が聞けるとは思わず、ヴァンは面食らった。
謝られたからには、許すべきなのだろうか。そもそも婚約なんて親に勝手に決められたもので、それはミレイユも同じはずだ。捨てられたからといって恨むのは、筋違いかもしれない。
ミレイユに関してどう考えるべきか、揺らぎ始める。
「それでヴァン、城中の貴族があなたと殿下の陰口を口の端に上らせていましてよ。私、心配になって会おうと思いましたの。でも、元婚約者と会うなんて殿下も心中穏やかではいられないでしょう? だから、こうやって内緒で連絡を取りましたの」
「待って、僕だけじゃなく殿下まで悪口を言われているの!?」
ミレイユの言葉に驚き、声を上げた。
「ええ、悲しいことに。『感情だけで伴侶を選ぶ考えなし』『あれが国王になったら、国が荒廃する』なんて囁かれているのを聞きましたわ」
ミレイユは頬に手を当てて語った内容に、ヴァンは胃の腑が凍ったように感じられた。
そこまで悪し様に言われているなんて。自分のせいで、ギュスターヴが国王の座を継げないかもしれない。継げたとしても、貴族たちに国王と認められないのでは?
「どうしよう……」
俯き、自分の膝を見下ろす。
やはり、自分が身を引くしかないのだろうか。
ギュスターヴと別れ、あの家に戻る。それが一番いいのだろう。
頭ではわかっているが、したくない。ずっと彼と一緒にいたい。
ヴァンは、ぎゅっと顔を歪めた。
「別れたくない、そう思っているんでしょう? 策があると言ったら、どう思いまして?」
「え、策?」
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