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幼馴染み襲来編
有識者に相談
思えば、私は恋愛に無縁に生きてきた。不得意科目恋愛だ。赤点とる自信がある。まあ、赤点というのは兄様導入の試験の可となる点数を下回っただけで、ゼロ点ではないというささやかな反抗だ。
そういう意味ではうちの兄弟も苦手であろうというのは察して余りある。
地元にいたころは気がつかなかったが、自由恋愛そうで相手から捕獲されたとしか思えないことが多い。
つまり、私のことを好きではないという男が、なぜ私にキスをしたのかという疑問に適切な回答を得られるわけもないということだ。
前の意趣返しかな……。
いや、ご褒美的ニュアンスだった。報酬に、なるのか。
一日考えたがわからなかった。そこで、有識者にきいてみることにした。
「ユリア」
寝る前の準備に訪れたユリアを呼び寄せる。他の侍女たちはすでに下がっていた。ユリアがいるのは特別マッサージと薬効の高い化粧水等を塗りたくるためだ。微妙な匙加減で他の誰にも任せられないという建前で表だしできない用件を頼んだりしている時間だ。
なんでしょう? すぐに答えがあったが、警戒心があった。なんか変なこと言い出すんじゃないでしょうね? という言葉にない圧がある。
なかなか慣れてきたな。いいことだ。
「ジニーとキスしたらご褒美になる?」
ユリアはもっていたものをバサリと落とした。タオルで良かった。
「わたし、なにをさせられるんです?」
「いやいや、普通に、だよ。好きな? あ、好きでいいの?」
「憧れです。ええ、私一人に独占、ああ、独占したいですけどできないんで、憧れです」
「なにか言い聞かせているような……」
「分裂とかしたいんですか?」
「いや、悪かったって」
じろりと見る目線が怖い。性転換とか本気でさせられる日がくるかもしれない。薬神の神官の本気は人を蘇らせる。1/2の確率で。それなら、性別くらい簡単に変えられそうだ。
今しないのは保留されているだけというのが怖い。
「わかればいいんです。で、ジニーからキスですか? 嬉しいを通り越して恐怖ですね」
「そういうものか……」
嬉しいをとおり超えるというのが、いいことなのかわからないが。
「なんです? キスでもして迫ろうっていうんですか?」
「いや、されたから」
ユリアは拾ったばかりのタオルをもう一度落としていた。
「やっぱり、嫌じゃなかったな」
「では、さっさと夫にしたらどうです?」
「それは無理。継承権の都合が出てくる」
「子を生むつもりもおありで?」
「そうじゃなくて、周囲が、うるさいって話だよ。ほら、途中で立ち寄った時、三番目の兄様がうるせぇって言ってたし」
結婚したら、次は子を産ませろと。お互いにいらないと決めているにも関わらずだ。半端な継承権を持っている王女に子がいたら面倒なことになる。それも男児であったらなおさら。女児であっても政略結婚に当てにされている。
すくなくとも自分たちの発言権が増えて、やりたいことを通すことができるまで予定にはないだろう。
が、周囲はそれにはお構い無し。
結婚すれば私も同じことを望まれ、実質引退が見える。それは今回の幼馴染の件があろうがなかろうが、だ。
「あの人との結婚と言われないのは、王家の血があまり入っていないからだよ。
貴族たちとしては王権を渡してしまうのは嫌だということだね。女王は異国の娘でその夫が王族の血が入らない男なんて望まれやしない」
「ふむ。
じゃあ、ウィリアム殿では」
「恋人の噂でも早く結婚しろ言われたじゃないか……。お互いにないと公式に言っているけど、どこまで本気にされているか」
ウィルは悪いやつではない。ただ、付属品が私と徹底的に相性が悪い。好き嫌い以前の問題だ。これだけはどうにもならない。
もし、魔女が後継者を決めて、私が女王をやめてようやく考えられる選択だ。現実的じゃない。
「国を出たいというのはそのあたりに繋がってんですかね」
「火種になるとは理解しているだろうけど、よそに出すわけにも行かないんだよね」
「そうじゃなくて、好きな人が他の相手となんて見たくないってことですよ」
「……そういう話になる?」
ユリアははぁとため息をついて、私にベッドに座るように言われた。横になってるんじゃなくて、ちゃんと座れと。
「そもそもですね、陛下は、人の心をなんと思ってらっしゃるのですか」
人心掌握、恋愛編の講義をされた。
「今日はこのくらいで勘弁してあげます」
「はい」
それ、私に可能? というところはさておこう。有識者、ちゃんと有識者だった。
「なんでそんなに知っているの?」
「遊郭で。客取る方じゃなくて、薬師としてですよ。
残念ながら客がつかなかったからなんですけど」
そこは残念でいいのだろうか。というか、どれほどだめだったのか……?
ユリアに聞くと機嫌を損ねそうだからやめる。今、いないと困る。最高に困る。
「さて、早く寝てください。私の温室が待っているんです。二つの月が出ている間に薬効が増える薬草が」
そのためにはお薬も辞さないということだろう。謎の青い水は。
「寝ます」
私もごく一部にはとても弱いのだ。
そして、私は今更に気がついた。
確かに、私が原因で、ウィリアムとレオンの友情に亀裂入る。間違いない。今回のことで決定的だ。
最悪な悪女である。
詫びておくべきか? 最初は友人と知らなかったし、むしろ主とか。ぐるぐる考えて放り投げた。あとは本人同士が考えて結論を出すべきである。
変に口出ししないほうがいい。
面倒になったわけではない。大人な対応だ。
「……恋愛、めんどい」
私の人生にいらなかったかもしれない。
そういう意味ではうちの兄弟も苦手であろうというのは察して余りある。
地元にいたころは気がつかなかったが、自由恋愛そうで相手から捕獲されたとしか思えないことが多い。
つまり、私のことを好きではないという男が、なぜ私にキスをしたのかという疑問に適切な回答を得られるわけもないということだ。
前の意趣返しかな……。
いや、ご褒美的ニュアンスだった。報酬に、なるのか。
一日考えたがわからなかった。そこで、有識者にきいてみることにした。
「ユリア」
寝る前の準備に訪れたユリアを呼び寄せる。他の侍女たちはすでに下がっていた。ユリアがいるのは特別マッサージと薬効の高い化粧水等を塗りたくるためだ。微妙な匙加減で他の誰にも任せられないという建前で表だしできない用件を頼んだりしている時間だ。
なんでしょう? すぐに答えがあったが、警戒心があった。なんか変なこと言い出すんじゃないでしょうね? という言葉にない圧がある。
なかなか慣れてきたな。いいことだ。
「ジニーとキスしたらご褒美になる?」
ユリアはもっていたものをバサリと落とした。タオルで良かった。
「わたし、なにをさせられるんです?」
「いやいや、普通に、だよ。好きな? あ、好きでいいの?」
「憧れです。ええ、私一人に独占、ああ、独占したいですけどできないんで、憧れです」
「なにか言い聞かせているような……」
「分裂とかしたいんですか?」
「いや、悪かったって」
じろりと見る目線が怖い。性転換とか本気でさせられる日がくるかもしれない。薬神の神官の本気は人を蘇らせる。1/2の確率で。それなら、性別くらい簡単に変えられそうだ。
今しないのは保留されているだけというのが怖い。
「わかればいいんです。で、ジニーからキスですか? 嬉しいを通り越して恐怖ですね」
「そういうものか……」
嬉しいをとおり超えるというのが、いいことなのかわからないが。
「なんです? キスでもして迫ろうっていうんですか?」
「いや、されたから」
ユリアは拾ったばかりのタオルをもう一度落としていた。
「やっぱり、嫌じゃなかったな」
「では、さっさと夫にしたらどうです?」
「それは無理。継承権の都合が出てくる」
「子を生むつもりもおありで?」
「そうじゃなくて、周囲が、うるさいって話だよ。ほら、途中で立ち寄った時、三番目の兄様がうるせぇって言ってたし」
結婚したら、次は子を産ませろと。お互いにいらないと決めているにも関わらずだ。半端な継承権を持っている王女に子がいたら面倒なことになる。それも男児であったらなおさら。女児であっても政略結婚に当てにされている。
すくなくとも自分たちの発言権が増えて、やりたいことを通すことができるまで予定にはないだろう。
が、周囲はそれにはお構い無し。
結婚すれば私も同じことを望まれ、実質引退が見える。それは今回の幼馴染の件があろうがなかろうが、だ。
「あの人との結婚と言われないのは、王家の血があまり入っていないからだよ。
貴族たちとしては王権を渡してしまうのは嫌だということだね。女王は異国の娘でその夫が王族の血が入らない男なんて望まれやしない」
「ふむ。
じゃあ、ウィリアム殿では」
「恋人の噂でも早く結婚しろ言われたじゃないか……。お互いにないと公式に言っているけど、どこまで本気にされているか」
ウィルは悪いやつではない。ただ、付属品が私と徹底的に相性が悪い。好き嫌い以前の問題だ。これだけはどうにもならない。
もし、魔女が後継者を決めて、私が女王をやめてようやく考えられる選択だ。現実的じゃない。
「国を出たいというのはそのあたりに繋がってんですかね」
「火種になるとは理解しているだろうけど、よそに出すわけにも行かないんだよね」
「そうじゃなくて、好きな人が他の相手となんて見たくないってことですよ」
「……そういう話になる?」
ユリアははぁとため息をついて、私にベッドに座るように言われた。横になってるんじゃなくて、ちゃんと座れと。
「そもそもですね、陛下は、人の心をなんと思ってらっしゃるのですか」
人心掌握、恋愛編の講義をされた。
「今日はこのくらいで勘弁してあげます」
「はい」
それ、私に可能? というところはさておこう。有識者、ちゃんと有識者だった。
「なんでそんなに知っているの?」
「遊郭で。客取る方じゃなくて、薬師としてですよ。
残念ながら客がつかなかったからなんですけど」
そこは残念でいいのだろうか。というか、どれほどだめだったのか……?
ユリアに聞くと機嫌を損ねそうだからやめる。今、いないと困る。最高に困る。
「さて、早く寝てください。私の温室が待っているんです。二つの月が出ている間に薬効が増える薬草が」
そのためにはお薬も辞さないということだろう。謎の青い水は。
「寝ます」
私もごく一部にはとても弱いのだ。
そして、私は今更に気がついた。
確かに、私が原因で、ウィリアムとレオンの友情に亀裂入る。間違いない。今回のことで決定的だ。
最悪な悪女である。
詫びておくべきか? 最初は友人と知らなかったし、むしろ主とか。ぐるぐる考えて放り投げた。あとは本人同士が考えて結論を出すべきである。
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面倒になったわけではない。大人な対応だ。
「……恋愛、めんどい」
私の人生にいらなかったかもしれない。
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