おっさん異世界物語 ~物理魔法と「鉄の理」。愛欲と硝煙に塗(まみ)れた男が、やがて神を殺すに至る覇道戦記~

眠れる森のおっさん

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第1章 グリム編

第27話 憧れの豪邸を契約! そして異世界の驚くべき『トイレ事情』

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 ギルド職員に引率されて、ニーアと2人で歩いていく。
 大通りを少し行ってから1本内側へ入ると、大きな屋敷が立ち並ぶ閑静な住宅街があった。
 そのまま歩くと、ほどなくして目的の物件に到着した。

「こちらの物件です」
「ほう。なかなか良さそうじゃないか」
「ご主人様……凄い…お屋敷です……」

 敷地の外周を煉瓦の塀が取り囲んでいる。
 俺の身長より少し高いから、外から敷地内の様子は見えない。

 鉄格子のような門扉の鍵を開けて敷地内に入る。
 敷地内に入ると、屋敷の全貌が見えた。

 木造の骨組みに石造りで出来た3階建ての建物だ。
 門扉から玄関まで石畳のアプローチが続いている。

 建物の周りは庭になっているから、隣家の屋敷と距離が離れている。
 建物に向かって左手の庭には小屋が1つある。
 馬を休ませる厩のようだ。

「この屋敷の所有者はどんな人物なんだ?」
「隣のエルマーナ市に拠点を置くマリオ・タバレス卿になります」
「ほう。何故この屋敷を賃貸に出しているんだ?」
「しばらくグリム市には来られる予定がないため、それならば、ということで伺っています」
「なるほどな」

 職員の説明によると、これほどの屋敷はグリム市内でも数少ないそうだ。
 家賃が安過ぎるのではないかと思ったが、グリム市民の平均的な月収の金貨1枚を上回る金額は支払える客が少ないらしい。
 そもそも普通の市民は、1世帯で1室を借りるのではなく、2~3世帯で共同生活するようだ。
 狭いアパートの1室で共同生活とは、プライバシーも何もない。
 一方で富裕層は、既に自分の屋敷を持っているので賃貸など必要ない。
 そういった事情で、家賃が高額な屋敷は借り手が少ないのだ。

 玄関を開けるとホールになっており、正面に2階へ上がる階段がある。
 1階には食堂とキッチン、それに客間と納戸。
 客間と食堂は、それぞれ15~20畳はありそうだ。

「ご主人様っ!
 キッチンと食堂がとっても広いですぅ!」

 ニーアが早速はしゃいでいる。まぁ料理するのは彼女だからな。

「このテーブルとか椅子なんかは使っていいのか?」
「はい、構いません。
 壊さないようにしていただければ」

 なんと家具付きだった。これは有難い。
 綺麗に返せば使って良いらしい。

 2階は屋敷の主の専用スペースになっている。
 階段を上がって左手に進むと、主の居室がある。
 階段を挟んで反対側には大きい部屋がもう一つ。
 居室の扉を開けた正面の角には、暖炉が設置されていた。

「暖炉があるのか。
 寝室が冬も温かいというのは良いな」
「庶民の住宅には暖炉なんてありませんから。
 ……贅沢です……ご主人様」
「そうなのか。
 お、ベッドもあるのは助かるな」

 中央にはクイーンサイズ位のベッド、壁際には整理ダンスもいくつか設置されている。

「職員さん。あれは何だ?」
「それは屋敷の主専用の厠ですよ」
「寝室で用を足すのか? 他に厠は無いのか?」
「他にはありません。
 1つでも厠がある屋敷の方が珍しい位です」

 居室の奥に行った角のところに、所謂ぼっとん式便所があった
 真ん中に穴が開いた木箱の上にしゃがんで用を足すらしい。
 穴の下には汚物を受け止める木桶を置けるようになっている。
 作りは簡素だ。

「他に厠が無いとは。
 ……それが普通なのか?」
「ご主人様、普通は住宅に厠はありません。
 貴族様の屋敷でも無いと思います」
「じゃあ、どこで用を足すんだ?」
「室内で木桶にするんです。
 そのあとの汚物は家の前に捨てるか、道路に投げ捨てる人も多いです」
「あぁ、2階から道路に向かって投げ捨てているアレか。
 ……じゃあ貴族はどこに捨てるんだ?」
「貴族様や、その使用人も室内で用を足して、屋敷の庭の隅などに捨てていると思います」
「貴族の屋敷ですらそうなのか。
 なるほどな、街中どこへ行っても臭い訳だ」

 この世界のトイレ事情は、まだまだ未発達らしい。
 今泊まっている宿屋のように共用の厠が設置されている所など珍しいそうだ。

 3階は使用人のスペースになっている。
 いくつかの個室と、大部屋が1つ。
 3階の上には屋根裏部屋もある。
 下級使用人や奴隷なんかに屋根裏部屋を使わせるらしい。

「ニーア。この屋敷なら大声を出しても問題ないな」
「ご主人様……」
「貸家だから綺麗に掃除する必要もないしな。
 ここで決めるとするか」

 商人ギルドへ戻って、賃貸契約の手続きをする。
 継続時は10日前までに支払い、退去時は10日前までに退去連絡。
 小難しい契約条項のないシンプルな契約だ。

「市民の登録票はお持ちですか?」
「いや持っていない。
 持っているのは冒険者プレート位か」
「では結構です。
 お名前と年齢を教えてください」
「リューイチ、40歳だ」
「はい、それでは契約書にご署名を」
「これで良いか」
「結構です」

 家賃の支払いは1ヵ月分ずつで良いそうなので、金貨1枚と銀貨5枚を支払った。
 次は20日後までに来月分の支払いだな。

 最後に屋敷の門扉と玄関の鍵を受け取る。
 無事に契約を終えて、商人ギルドを後にする。
 外に出ると、すっかり辺りが暗くなっていた。

「良い屋敷だったな。
 ニーア、お手柄だぞ」
「えへへ……ありがとうございます」

 彼女が褒められて満足そうに顔をほころばせた。

「今日はもう遅い。宿に帰るとするか」
「はい、ご主人様」

 宿に帰ってニーアに夕食を用意して貰う。
 寛げる格好になって、テーブルに向かい合って座る。
 彼女の端正な顔立ちを眺めながら飯を食う。

「屋敷には備え付けの家具はあるんだが、日用品や雑貨なんかが必要になるな」
「はい。火を起こす道具や調理器具、それにベッドの藁とシーツや木桶……色々と必要になります」
「なら必要なものを買い揃えてから屋敷に移動するか。
 宿屋は5泊分を支払い済だしな」
「それが良いと思います」

 屋敷に移動するのは生活に必要なものが一通り揃ってからだな。

「ニーア。買い物はお前に頼めるか?」
「はい、お任せくださいっ!」
「まだ丸々4日あるから急がなくて良いぞ。
 重い物もあるだろう」
「はい。買ったものは屋敷に持ち込んでおくようにします」
「そうしてくれ。
 とりあえず金貨1枚渡しておく。
 足りなければ言ってくれ」
「ご主人様、あの……お財布を持っていなくて……」
「ああ、財布が無かったか。
 じゃあ、お前の財布も一緒に買っておいてくれ」
「はい、ありがとうございます」
「あと髭も剃りたいんだが、どこかにカミソリは売っているか?」
「はい、カミソリも買っておきますね」
「頼む」
「はい、ご主人様」

 これで買い物はニーアに任せておけば良いか。
 家賃も発生することだし、そろそろ金を稼がなければならない。

「俺は明日から魔の森へ魔物狩りに行ってくるからな」
「ええっ!?……魔の、森へ……」
「心配するな」
「ご主人様、どうかご無事で……」

 ニーアが俺の心配をしてくれる。
 まぁ新魔法も開発したことだしな。
 森の浅い所なら平気だろう。

 夕食を終えたら湯浴みと歯磨きだ。
 就寝前にはニーアへのご褒美に親愛の口づけをさせてやる。
 少しの間唇を重ねると、俺たちは眠りについた。

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【探し方】
Web検索、またはノクターンノベルズのサイト内で
『 おっさん異世界物語 』
と検索してください。
(※作者名『眠れる森のおっさん』で検索しても見つかります)
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