おっさん異世界物語 ~物理魔法と「鉄の理」。愛欲と硝煙に塗(まみ)れた男が、やがて神を殺すに至る覇道戦記~

眠れる森のおっさん

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第1章 グリム編

第28話 空を飛ぶ新魔法『フライ』! そして本格的な魔物狩りへ

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 ――翌朝。

 まどろみの中から徐々に意識が浮上してくる。
 頭が眠りから覚めようとしている。
 おいしそうな匂いが鼻腔をくすぐる。
 パンの焼ける香ばしい匂いだ。

 目を開けると、ニーアが俺の顔を覗き込んでいた。

「おはようございます、ご主人様」
「ああ、おはよう。ニーア。
 良い匂いがするな」
「はい。朝食の用意ができていますよ」

 ニーアがにっこりと微笑む。
 俺は体を起こして大きく伸びをした。
 ニーアが洗面器にお湯を用意してくれていたので、顔を洗ってさっぱりする。
 甲斐甲斐しいな。

 テーブルには温かいスープとパン、それに少しのハムが並べられていた。
 質素だが、ニーアの手作りだと思うと美味そうに見える。

「いただきます」
「はい、召し上がってください」

 俺はニーアと一緒に朝食をとる。
 ニーアは俺の世話を焼くのが楽しいようで、しきりにパンのおかわりやスープの継ぎ足しを勧めてくる。

 飯を食ったら行動開始だ。
 革の防具を身に着けて、魔物狩りへと出発する準備をする。
 ニーアが俺の装備を整えてくれる。

「ご主人様、お気をつけて」
「ああ、行ってくる。
 留守中のことは頼んだぞ」
「はい、お任せください。
 お買い物を済ませて、屋敷の掃除をしておきますね」
「ああ、無理はするなよ」

 ニーアに見送られて宿を出る。
 屋敷も借りたし、これから色々と出費がかさむだろう。
 安定した収入を確立しなければ。
 しばらく魔物狩りに専念してみるか。
 買い物はニーアに任せておけば良いだろう。

 北門をくぐり、魔の森を目指して街道を歩く。
 魔の森までは徒歩1時間くらいの距離だ。
 今日は後ろから俺をつけ狙う輩はいない。

 魔の森が見えてきた。
 右手の遠くの方に木の伐採作業をしている様子が見える。
 この森から木材を調達しているようだ。

 森の入り口に到着する。
 ようやく魔物狩りの始まりだ。
 森の中をメリン川の上流に向かって歩いて行く。
 しばらく進んでから、左に曲がって川に向かう。

 河原に出る手前まで進んで立ち止まる。
 河原には大小様々な大きさの石や岩が転がっている。

 ここで魔法の修行の成果を確かめる。
 命中精度を保ったまま狙える限界の距離感を掴んでおきたい。
 石や岩、対岸の木に向かって、次々と魔法を打ち込んでいく。

 コインが狙える位の命中精度で放てる限界距離だ。
 アイスバレットとファイアボールは20メートル位。
 アイスバレットは目で追えないほどに速い。
 拳銃の弾丸並みの速度がありそうだ。

 ファイアアローは50メートル位だ、遠くまで狙える。
 着弾した箇所が爆発するから、かなり威力もありそうだ。

 ウィンドカッターやエアハンマーは10メートル程度だ。
 射程は短いが、見えない攻撃を放てることは利点だ。

「目標が遠いと、どうしても重力や風力の影響を受けるな」

 自分を中心とした半径3メートル以内の領域は完全にコントロールできる。
 3メートル内ならアイスバレットを空中に固定させておくことだって可能だ。
 3メートルを超えると物理法則の影響を受けてしまうようだ。

 空中に固定したアイスバレットに触れてみる。
 全く動かせる気がしない。
 ガッチリと固定されている。

「これ、乗れるんじゃないのか?」

 試しに足元に分厚い氷の板を浮かせて足を乗せてみる。
 右足を乗せても問題なさそうだ。
 両足を乗せて氷の上に立ってみる。

「おおっ……乗れるぞ!」

 そのままゆっくりと前に氷の板を動かしてみる。
 俺を乗せた氷の板がスーッと空中を進んでいく。
 歩くエスカレーターのように安定した動きだ。

「ちょっと危ないな。捕まるところが欲しい」

 動く板の上に立ってるので転びそうだ。
 両手の手のひらのところに氷塊を作って握る。
 足元の氷の板と手元の氷塊を一緒に動かす。
 同一方向へ同じ速度で動かす分には問題なくできるな。
 安定感が増した。
 これなら落っこちることはなさそうだ。
 だが、氷だと手も足も冷たくて仕方ない。

「氷はダメだな。
 岩は作れるか?……いけるな」

 岩を作り出して、足元を岩板、手元を岩塊に置き換える。
 これなら大丈夫だ。
 冷たくない。

 どこまで高く飛べるか試してみる。
 徐々に高度を上げていく。
 周りの木々の高さを超えても、更に上がっていく。

「うぉ……こえぇ」

 ここまで空高く上がってしまったことを心底後悔する。
 ビュウビュウと強い風に体が煽られる。
 俺は高所恐怖症だ。
 手足が震える。
 完全に縮み上がっている。
 遊園地も高い所から落ちるアトラクションが苦手なんだ。
 これはシートベルトの無い、命がけのアトラクションだ。
 下を見ないようにして、ゆっくりと地上に降りていく。

「ふう、死ぬかと思った………。
 もう高く飛ぶのはやめよう………」

 しかし、そうか。
 魔法で物体を飛ばせるんだから、それに乗れないはずはないよな。
 よく考えてみれば当たり前のことではあった。
 これで魔物の探索が大分楽になりそうだな。

 俺は、この新魔法を『フライ』と名付けた。
 フライと言っても岩板に立っているだけなんだが。

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