おっさん異世界物語 ~物理魔法と「鉄の理」。愛欲と硝煙に塗(まみ)れた男が、やがて神を殺すに至る覇道戦記~

眠れる森のおっさん

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第1章 グリム編

第33話 落ちぶれた受付嬢の末路、そして新たな冒険者たちとの出会い

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「リューイチさん。大丈夫ですか?」
「……ああ、助かった」
「何があったんです?」
「よく分からんが、いきなり絡まれてな」
「そうですか」

 バランとシスモンドに礼を言ってギルドを後にする。
 宿屋の部屋に戻ると、ニーアが飛びついてきた。

「ご主人様! 一体どうしたんですか!?」
「ごろつきに絡まれてな。殴られた」
「……とにかく、この椅子に座ってください」

 蹴られた腹は腹筋を鍛えているから大したことはない。
 それより殴られた顔が痛い。
 椅子に座ってニーアに見て貰うと、鼻が曲がっていた。鼻の骨が折れている。

 折れた鼻を手で無理矢理真っすぐに戻してから、全身に回復魔法を施す。

「ぐあっ! 『エクストラヒール』」

 ニーアに見て貰う。鼻は元通りに戻ったようだ。

「ふう。治ったか」
「ご主人様、どうして魔法を使わなかったんですか?」
「俺の魔法は強力過ぎる。
 下手に見せて貴族なんかに付きまとわれてみろ。面倒だからな」
「それは……そうですけど」

 冒険者ギルドで絡まれた時に魔法を使えれば良かったんだが、俺の魔法は強すぎる。
 人前でどこまで見せて良いか判断がつかなかった。

「お前は魔術師がどんな魔法を使えるか知ってるか?」
「魔法、ですか。
 水を出す魔法と、火を灯す魔法は良く知られています。
 あとは教会の治癒魔法ですか」
「攻撃魔法はどうだ?」
「攻撃魔法……炎を飛ばす魔法があるというのは聞いたことがあります」
「この位のやつか?」

 サッカーボール大の火球を作り出してニーアに見せる。

「はい。多分そうです。
 ファイアボールという魔法だったかと」
「この世界でもファイアボールと呼ぶんだな。
 魔法の発動速度は知ってるか?」
「発動速度、ですか?
 いえ……分かりません」

 ファイアボール程度の魔法は一般にも知られているらしい。
 それなら同程度の魔法なら使ってもそんなに目立つことはないか。

 発動速度は、教会で見た司祭のキュアが30秒位だった。
 エア系の魔法なら目視出来ないから、一瞬で発動しても誤魔化せる、か。
 そうだな。
 街中で殺さずに魔法を使うならエアハンマーが使い勝手が良さそうだ。

「なるほどな、参考になった。
 次からは魔法を使うことにするから心配するな」
「良かった……」

 ――翌日。

 魔物狩りに行こうと北門を目指して歩いていくと、道路を挟んだ反対側の歩道にいる奴が目についた。

 小汚いボロを纏って歩道にしゃがみこんで、素手でゴミを拾い集めている。
 見たことのある顔だなと思っていると、そいつに声をかけられた。

「あ! リューイチさんだ!
 リューイチさんですよね!?」
「その声は……ヘルガか?」
「ああっ! やっぱりリューイチさんだ!!」

 冒険者ギルドの元受付の小娘、ヘルガだった。
 彼女が道路を横切って走り寄ってくる。
 ゴミの入った桶を片手に持って、もう片方の手は泥汚れで真っ黒だ。
 俺は思わず後ずさる。

「リューイチさん!
 あなたのせいでクビになったんですよ!!」
「おいおい。人聞きの悪いことを言うなよ」
「やっと仕事にありつけたと思ったのに……あなたのせいで!」
「いや、それは自分の行いが招いたことだろうが」
「ううう……このままじゃ奴隷商に身売りしなくちゃいけなくなっちゃう!
 責任とってください! 責任とれ!!」
「ダメだ。全然話が通じんな」

 ヘルガが俺を睨みつけながら大声で喚き散らす。
 冒険者ギルドをクビになって、次の仕事も見つからずに道路掃除をやっているようだ。
 汚れた手に力が入り、ワナワナと震えている。
 今にも飛び掛かってきそうな剣幕だ。

 俺はダッシュで北門を目指す。
 北門へ向かう俺を追いかけて、ヘルガが桶を片手に走ってついてくる。
 北門をくぐるとようやく諦めたか、どこかへ去っていったようだ。

「ふう、あぶねえ。
 あいつ、マジで超危険人物だぞ」

 間一髪のところを切り抜けた俺は、街道を歩いて魔の森を目指す。

 ゆっくり歩いていると、後ろから3人組が歩いてくる。
 3人組に追い越されるところで声をかけられた。

「なんだぁ? おっさんかよ。
 一人で魔の森へ行って大丈夫なんかよ?」
「ちょ、ちょっと、ジョン!
 やめなよ、そういうこと言うの」
「すみません、こいつが馬鹿なこと言って」

 見ると20歳かそこらの若者だった。
 男2人に女1人。
 俺に声かけて来たのはジョンと呼ばれた金髪頭だ。

「ああ、大丈夫だ。気にしていない」
「ほら、おっさんもああ言ってるだろ?
 俺は心配してやってるだけだっての」
「ば、ばか! 失礼なこと言うの本当にやめてってば!」
「……3人は冒険者なのか?」
「そうだぜ。俺たちは銅プレートだ!」
「そうか。グリムでは長いのか?」
「ああ? あーまぁ俺達はグリムに来て2年位だな」
「ほう」
「あ、あの、私たちは同じ村の出身なんです」
「おっさんは? 冒険者なのか?」
「ああ、俺も銅プレートだな」
「ええっ!? あ、ごめんなさい」
「ほんとかよ? 冴えねえおっさんに見えて、なかなかやるんだな」
「まぁ、ほどほどにな」

 彼らは近隣の村から一緒にグリムに出てきて冒険者をやっているそうだ。
 口の悪い金髪男がジョン、常識人ぽい長髪男がアレン、紅一点がレイナ。
 ジョンは両手剣、アレンが片手剣にバックラー、レイナは短剣と弓を装備している。

 3人と雑談をしながら森を目指して歩いて行く。

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【探し方】
Web検索、またはノクターンノベルズのサイト内で
『 おっさん異世界物語 』
と検索してください。
(※作者名『眠れる森のおっさん』で検索しても見つかります)
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