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第1章 グリム編
第34話 豪邸での新生活スタート! そして魔法で再現する『お風呂』
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――翌朝。
ニーアに起こされて目を覚ます。
今日は屋敷へ引っ越す日だ。
引っ越しと言っても、異次元空間に収納しているから荷物は最小限だ。
ニーアに朝食を作ってくるように頼む。
戻ってきた彼女とテーブルを挟んで朝食を食う。
「この宿には、何だかんだ言って20日近く泊まったことになるのかぁ」
「そんなに宿泊されていたんですね」
「ああ。お前が来てからは……そうだな、何日たったかな?」
「ええと……7日か8日だと思います」
「そうか、まだ7~8日なのか。
短いようで長いな。お前とは長く一緒にいる気がする」
「私もです……ずっと一緒にいた気がします。
この部屋で、ご主人様と」
「屋敷に行っても、一緒に寝起きしような」
「はい……ご主人様」
飯を食い終わったら、支度をして部屋を出ていく。
宿屋の女将にチェックアウトすることを告げる。
「長いこと世話になったな」
「こちらこそ。またいつでも泊まりにいらして下さいね」
宿屋を出ると、今日は広場で市場が催されていた。
ふと思い出して歩きながらニーアに話しかける。
「ニーア。そういえば食材が残り少なくなってきてるな」
「あ、そうでしたか」
「今日はオークを食いたいと思ってるんだが」
「えっ!?……オーク、ですか?」
「ああ、実は先日仕留めたんでな」
「ご主人様ぁ! 凄いですっ!」
「昼頃に冒険者ギルドの連中が取りに来る手はずになってる。
俺も一緒にギルドに行って、捌いた肉を持って帰るからな」
「うわぁぁ……オークのお肉を食べれる日が来るなんて……」
「ははっ。楽しみにしておけよ」
「うふふっ!
それなら折角だから……お野菜と一緒に香草とか調味料も買っておきますねっ」
歩きながら話をしているうちに屋敷に到着した。
門扉の鍵を開けて、敷地内に入って鍵を閉める。
この世界は物騒だからな。
戸締りは厳重にする。
久しぶりに敷地を見るが、改めて見るとかなり広いな。
左の塀から右の塀まで、横幅50メートル以上ありそうだ。
奥行きはもっとある。
玄関ドアは観音開きだ。
鍵を開けて中に入る。
屋敷の中は窓を開けないと暗い。
ニーアがカンテラに火を灯して手に持つ。
階段を上がって居室の扉を開けると、やはり居室の中も暗い。
「ニーア。ここが俺たちの部屋だ」
「はい、ご主人様」
寛げる格好に着替える。
「ご主人様、暖炉の薪に火をつけますねっ」
「お、暖炉か。じゃあ俺が火をつけようか」
「ありがとうございますっ」
もう段々肌寒くなってきた頃だから、暖炉がちょうど良い時期だ。
ニーアが予め暖炉に薪を入れておいてくれた。
魔法の炎で薪に火をくべる。
すぐに炎が広がって、部屋が暖かくなってきた。
暗い部屋を暖炉の灯りが優しく照らし出す。
ニーアと2人で暖炉の前の椅子に座る。
魔法の水をコップに注いでニーアにも渡す。
それを飲みながら、炎に手をかざす。
2人の間に、ゆっくりとした時間が流れていく。
「ご主人様ぁ……あったかいです」
「ああ、暖かいなぁ。暖かいってのは幸せだな」
「ニーアは幸せ者です……」
「普通の家は暖炉が無くて、冬はどうしてるんだ?」
「蝋燭の火で寒さを耐え凌ぐか、どうしても寒ければ家の中に石を敷いて焚火をするんです」
「焚火? 木造だろうに、火事にはならないのか?」
「なります……だから冬は火事が絶えなくて」
「……なるほどな。
凍え死ぬか、燃え死ぬかの選択ってことか」
「はい、冬は凍死する人も多いですし……」
木造家屋の中で焚火なんて、現代日本の感覚からしたら完全に自殺行為だ。
断熱材なんて無い、薄っぺらい木の板で作られた家。
冬の衣類も満足に無い。
布団も無い。
ましてや暖房器具なんて無い。
この世界で冬を越すということは命掛けってことか。
「そうだ。風呂を作りたいな」
「フロ、とは何ですか?」
「ああ、風呂を知らないのか。
大きな桶のようなものに湯を張って、全身で浸かって温まるものだな」
「ええっ!?
そんな、まさか……そんなこと王族でも……」
「そうなのか?
とにかく風呂に浸かって、ゆっくりしたいなぁ。
ちょっと考えてみるか」
ニーアが口に手を当てて驚きに身を震わせている。
まぁ凍死か焼死かって究極の選択を迫られる世界で、風呂なんて有り得ないだろうしな。
「……よし、ニーア。ちょっと待ってろ」
俺は立ち上がると、宿屋から拝借……いや、買い取ってきた大きな桶を取り出す。
部屋の中央に置き、魔法でなみなみと水を張る。
そしてファイアボールを浮かべ、適温になるまで温める。
「ご主人様、これは……?」
「これが『風呂』だ。
さあ、入ってみろ」
「えっ……私が、一番風呂をいただくなんて……」
「いいから入れ。これは命令だ」
「……はい」
ニーアが恐る恐る服を脱ぎ、湯気の立つ桶に足を入れる。
その顔が、驚きと快感で綻んだ。
「あぁ……温かい……」
「どうだ? 全身浸かってみろ」
ニーアが肩までお湯に浸かる。
ほうっと長い息を吐き出し、幸せそうな表情を浮かべた。
「ご主人様……こんなに温かくて、気持ちいいものがあるなんて……」
「だろう? 疲れも取れるぞ」
「はい……まるで夢のようです」
湯気越しに見るニーアの顔は、今までで一番穏やかで美しかった。
この世界で生きていくための活力が、また一つ増えた気がした。
ニーアが上がった後、俺も風呂に入る。
久しぶりに手足を伸ばして湯に浸かると、生き返る心地がした。
これからは毎日風呂に入れる。
それだけでも、この屋敷を借りた甲斐があったというものだ。
風呂から上がると、ニーアがタオルを持って待機していた。
湯冷めしないようにと、すぐに体を拭いてくれる。
その手つきは優しく、慈愛に満ちていた。
「ありがとう、ニーア」
「いいえ、ご主人様。
……あんなに素敵な体験をさせてくださって、ありがとうございました」
ニーアが頬を染めて微笑む。
俺たちは互いに温まった体を寄せ合い、新しいベッドへと潜り込んだ。
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Web検索、またはノクターンノベルズのサイト内で
『 おっさん異世界物語 』
と検索してください。
(※作者名『眠れる森のおっさん』で検索しても見つかります)
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宿屋を出ると、今日は広場で市場が催されていた。
ふと思い出して歩きながらニーアに話しかける。
「ニーア。そういえば食材が残り少なくなってきてるな」
「あ、そうでしたか」
「今日はオークを食いたいと思ってるんだが」
「えっ!?……オーク、ですか?」
「ああ、実は先日仕留めたんでな」
「ご主人様ぁ! 凄いですっ!」
「昼頃に冒険者ギルドの連中が取りに来る手はずになってる。
俺も一緒にギルドに行って、捌いた肉を持って帰るからな」
「うわぁぁ……オークのお肉を食べれる日が来るなんて……」
「ははっ。楽しみにしておけよ」
「うふふっ!
それなら折角だから……お野菜と一緒に香草とか調味料も買っておきますねっ」
歩きながら話をしているうちに屋敷に到着した。
門扉の鍵を開けて、敷地内に入って鍵を閉める。
この世界は物騒だからな。
戸締りは厳重にする。
久しぶりに敷地を見るが、改めて見るとかなり広いな。
左の塀から右の塀まで、横幅50メートル以上ありそうだ。
奥行きはもっとある。
玄関ドアは観音開きだ。
鍵を開けて中に入る。
屋敷の中は窓を開けないと暗い。
ニーアがカンテラに火を灯して手に持つ。
階段を上がって居室の扉を開けると、やはり居室の中も暗い。
「ニーア。ここが俺たちの部屋だ」
「はい、ご主人様」
寛げる格好に着替える。
「ご主人様、暖炉の薪に火をつけますねっ」
「お、暖炉か。じゃあ俺が火をつけようか」
「ありがとうございますっ」
もう段々肌寒くなってきた頃だから、暖炉がちょうど良い時期だ。
ニーアが予め暖炉に薪を入れておいてくれた。
魔法の炎で薪に火をくべる。
すぐに炎が広がって、部屋が暖かくなってきた。
暗い部屋を暖炉の灯りが優しく照らし出す。
ニーアと2人で暖炉の前の椅子に座る。
魔法の水をコップに注いでニーアにも渡す。
それを飲みながら、炎に手をかざす。
2人の間に、ゆっくりとした時間が流れていく。
「ご主人様ぁ……あったかいです」
「ああ、暖かいなぁ。暖かいってのは幸せだな」
「ニーアは幸せ者です……」
「普通の家は暖炉が無くて、冬はどうしてるんだ?」
「蝋燭の火で寒さを耐え凌ぐか、どうしても寒ければ家の中に石を敷いて焚火をするんです」
「焚火? 木造だろうに、火事にはならないのか?」
「なります……だから冬は火事が絶えなくて」
「……なるほどな。
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「はい、冬は凍死する人も多いですし……」
木造家屋の中で焚火なんて、現代日本の感覚からしたら完全に自殺行為だ。
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冬の衣類も満足に無い。
布団も無い。
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「だろう? 疲れも取れるぞ」
「はい……まるで夢のようです」
湯気越しに見るニーアの顔は、今までで一番穏やかで美しかった。
この世界で生きていくための活力が、また一つ増えた気がした。
ニーアが上がった後、俺も風呂に入る。
久しぶりに手足を伸ばして湯に浸かると、生き返る心地がした。
これからは毎日風呂に入れる。
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風呂から上がると、ニーアがタオルを持って待機していた。
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