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その後 ー薫る風ー
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まだ夜が明け切らない中、目を覚ましたタイドは傍らで眠るスウェルに目を向ける。
全てが治まって、ようやく元に戻れた。
スウェルの傍に。
横になったまま、指を伸ばし銀糸をもて遊ぶと、そこへ口付けた。ひんやりとした心地良さが伝わる。
大好きなスウェル。誰にも邪魔されず、こうしてゆっくりと過ごす事が出来る。幸せな時間だ。
そっと、スウェルを起こさない様、身体を擦り寄せれば、スウェルは無意識にタイドを抱き寄せた。しっかりとした腕に安堵を覚える。
ずっとこうしていても、邪魔するものはないのだ。時でさえも、二人を分かつ事は出来ない。
俺の──スウェル。
そうして、眠るスウェルを見つめながらうとうと仕掛ければ、不意に腰に回された腕に力がこもった。
「スウェル?」
ぎゅっと抱き寄せられ、額にキスが落とされた。
「…ん、タイド…」
額に落ちたキスが、頬に落ち、次に唇へと落ちてくる。長いキスに吐息が漏れた。
昨晩の名残のまま、裸で抱き合っているのだ。些細な事でも反応してしまう。
寝ぼけている──訳じゃないのだろうけど。
「スウェル…、これ以上は──」
昨晩、遅くまでずっとその熱に浮かされていたのだ。流石にこれ以上は厳しい。それでも、その燻りが残っていて。
このままくっついていれば、また──。
タイドは頬を赤くしつつ、軽くスウェルの胸元を押し返した。
「スウェル、寝よう…?」
「ん…だから、寝ようとしてる──」
スウェルの『寝る』と、タイドのそれは違っている。スウェルの動きは段々本気度を増して来た。
顎を捉えられ、キスを繰り返される。スウェルの高まりを肌に感じた。
熱い──。
スウェルの動きは、更にエスカレートする。脚を抱え上げられ、その熱が下肢に押し付けられた。
「──っ!」
あっと思った時には、スウェルの熱が身体の最奥に入り込み、タイドをその熱で覆う。
「あっ─…、っ……!」
スウェルで満たされて行く。
彼に抱かれると、いつもそうだ。全てが彼だけになる、そんな気がした。
けれど、いつも以上に動きが激しい。普段、ここまで激しくタイドを抱かない。
まさか──?
朦朧としながらも、スウェルの頬に手を当てて。
「んっ、スウェル──、起きてる…っ……?」
すると、ようやくスウェルが目を開けた。翡翠の瞳がタイドを捉え、一瞬、見開かれた後。
「…夢、かと──」
フッと笑んで見せた。
「……!」
やっぱり。
それでも、動きは止めずに。
「もう少し、夢の続きを見させてくれ…」
そう、耳元で囁かれれば、何も言えない。
答えの代わりに、ぎゅっとその広い背中に腕を回し抱きついた。
繋がりが深くなって、息が詰まったが。
「…スウェル。好きだ」
そう囁いた。
✢✢✢
「…また、無理をさせてしまった」
スウェルは、タイドの眠るベッド脇に置かれたイスに座って頭を抱える。
「大丈夫。こうして、横になっていれば回復するから」
タイドは笑みを浮かべるが。
ニテンスには盛りのついたオーク以下だと罵られた。タイドが戻って来てから、殊にニテンスは手厳しい。タイドが大事なのだ。
そんなニテンスにぐうの音も出ない。
寝ぼけていても、タイドを襲ってしまうのだ。どうにかなってしまったのかと思うが。
「箍が外れたからでしょう。それが本性なのです」
ニテンスはベッドから起き上がる事が出来なくなったタイドを診ながら、そう言い捨てた。
う、ぐぐ…。
何も言えない。タイドはそんなスウェルを気づかう様に。
「俺がいけないんだ。もっと、ちゃんと拒否すれば良かった…」
「好いた相手に求められれば、誰も断れません。大人のあなたが慎むべきなのです。一体、何年、生きているのですか?」
ニテンスはきりとした視線をスウェルに向ける。
「…すまない。タイド」
ニテンスの言葉にすっかり、しょげ返るスウェルに、タイドは何と声を掛けていいのか困り果てた様子。
「今日はもう、触れてはいけませんよ? キスも手の甲だけです」
そう言って、替え終わったシーツや衣類を手に部屋を後にする。
タイドは、ベッドサイドに座るスウェルの服の袖をツンと引くと。
「俺からは、してもいいよね?」
小声で尋ねて来た。スウェルは思わずブワリと涙を零しそうになる。
「…ん」
涙ぐむスウェルに、タイドは楽しそうに笑った。
部屋を出かけたニテンスには聞こえていたのだが──あえてクギは刺さなかった。
結局、ニテンスも二人には甘いのだ。
緑の葉が揺れ、フワリと甘い香りを含んだ、柔らかな風が傍らを通り過ぎていく。
これも、その後の日常のひとコマだった。
ー了ー
全てが治まって、ようやく元に戻れた。
スウェルの傍に。
横になったまま、指を伸ばし銀糸をもて遊ぶと、そこへ口付けた。ひんやりとした心地良さが伝わる。
大好きなスウェル。誰にも邪魔されず、こうしてゆっくりと過ごす事が出来る。幸せな時間だ。
そっと、スウェルを起こさない様、身体を擦り寄せれば、スウェルは無意識にタイドを抱き寄せた。しっかりとした腕に安堵を覚える。
ずっとこうしていても、邪魔するものはないのだ。時でさえも、二人を分かつ事は出来ない。
俺の──スウェル。
そうして、眠るスウェルを見つめながらうとうと仕掛ければ、不意に腰に回された腕に力がこもった。
「スウェル?」
ぎゅっと抱き寄せられ、額にキスが落とされた。
「…ん、タイド…」
額に落ちたキスが、頬に落ち、次に唇へと落ちてくる。長いキスに吐息が漏れた。
昨晩の名残のまま、裸で抱き合っているのだ。些細な事でも反応してしまう。
寝ぼけている──訳じゃないのだろうけど。
「スウェル…、これ以上は──」
昨晩、遅くまでずっとその熱に浮かされていたのだ。流石にこれ以上は厳しい。それでも、その燻りが残っていて。
このままくっついていれば、また──。
タイドは頬を赤くしつつ、軽くスウェルの胸元を押し返した。
「スウェル、寝よう…?」
「ん…だから、寝ようとしてる──」
スウェルの『寝る』と、タイドのそれは違っている。スウェルの動きは段々本気度を増して来た。
顎を捉えられ、キスを繰り返される。スウェルの高まりを肌に感じた。
熱い──。
スウェルの動きは、更にエスカレートする。脚を抱え上げられ、その熱が下肢に押し付けられた。
「──っ!」
あっと思った時には、スウェルの熱が身体の最奥に入り込み、タイドをその熱で覆う。
「あっ─…、っ……!」
スウェルで満たされて行く。
彼に抱かれると、いつもそうだ。全てが彼だけになる、そんな気がした。
けれど、いつも以上に動きが激しい。普段、ここまで激しくタイドを抱かない。
まさか──?
朦朧としながらも、スウェルの頬に手を当てて。
「んっ、スウェル──、起きてる…っ……?」
すると、ようやくスウェルが目を開けた。翡翠の瞳がタイドを捉え、一瞬、見開かれた後。
「…夢、かと──」
フッと笑んで見せた。
「……!」
やっぱり。
それでも、動きは止めずに。
「もう少し、夢の続きを見させてくれ…」
そう、耳元で囁かれれば、何も言えない。
答えの代わりに、ぎゅっとその広い背中に腕を回し抱きついた。
繋がりが深くなって、息が詰まったが。
「…スウェル。好きだ」
そう囁いた。
✢✢✢
「…また、無理をさせてしまった」
スウェルは、タイドの眠るベッド脇に置かれたイスに座って頭を抱える。
「大丈夫。こうして、横になっていれば回復するから」
タイドは笑みを浮かべるが。
ニテンスには盛りのついたオーク以下だと罵られた。タイドが戻って来てから、殊にニテンスは手厳しい。タイドが大事なのだ。
そんなニテンスにぐうの音も出ない。
寝ぼけていても、タイドを襲ってしまうのだ。どうにかなってしまったのかと思うが。
「箍が外れたからでしょう。それが本性なのです」
ニテンスはベッドから起き上がる事が出来なくなったタイドを診ながら、そう言い捨てた。
う、ぐぐ…。
何も言えない。タイドはそんなスウェルを気づかう様に。
「俺がいけないんだ。もっと、ちゃんと拒否すれば良かった…」
「好いた相手に求められれば、誰も断れません。大人のあなたが慎むべきなのです。一体、何年、生きているのですか?」
ニテンスはきりとした視線をスウェルに向ける。
「…すまない。タイド」
ニテンスの言葉にすっかり、しょげ返るスウェルに、タイドは何と声を掛けていいのか困り果てた様子。
「今日はもう、触れてはいけませんよ? キスも手の甲だけです」
そう言って、替え終わったシーツや衣類を手に部屋を後にする。
タイドは、ベッドサイドに座るスウェルの服の袖をツンと引くと。
「俺からは、してもいいよね?」
小声で尋ねて来た。スウェルは思わずブワリと涙を零しそうになる。
「…ん」
涙ぐむスウェルに、タイドは楽しそうに笑った。
部屋を出かけたニテンスには聞こえていたのだが──あえてクギは刺さなかった。
結局、ニテンスも二人には甘いのだ。
緑の葉が揺れ、フワリと甘い香りを含んだ、柔らかな風が傍らを通り過ぎていく。
これも、その後の日常のひとコマだった。
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