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8章 このゲームはこの世界のどこまで影響を及ぼしているのか
サンダー・ドラゴンの対電対策
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「アルバート様は王宮のパレードに参加されていたのでしょう?」
「ええ、そうですが、私はその世界の破損を見ておりません」
「見たけど忘れたんじゃねぇの? 俺が一緒にいた建設組合の奴らもさ、朝に見て驚いてたけど次の日行ったら忘れてたぞ」
「そんな印象深いものを忘れることがあるのだろうか。他に誰か覚えている者は?」
「他……『幸運の宿り木亭』のヘイグリットさんも見たと言ってたけど」
「へぇ……? どういう関連なんだそれ。それより街道に道をつなげたいんだけどな。駄目なんだよ」
ウォルターは地図をにらみながら頭を掻いている。
ウォルターの舗装で国外からの人の入りが良くなっていると聞く。
街道まで繋げたほうがよいだろうけど。
「戻ってくるってどういうこと?」
「この国の国民は国外にまっすぐ進んでても、気付いたら国に向かって歩いてるんだってさ」
「お嬢様。外国からの商人は出入りできるそうなのです。現在パナケイア商会では王都店で手一杯でして国外を注視しておりませんでした。しかし息子夫婦に任せたカウフフェル商会に聞いた所、ここ1年半ほどは外国に仕入れに行っていないそうです」
セバスチアンはほとほと困り果てた、というような顔で呟いた。
「あれ? 紅茶作らしてるんじゃねえの?」
「そうなのですが、買い付けに行くのではなく輸入しているようなのです。私が若い頃は現地まで品質の確認に行ったものなのですが。いえ、そうでなくともとカウフフェル商会は外国製品は3割を輸入品で購入し、3割を買い付けに行き残り4割を現地で発注して輸送していました。けれども今は訪れる商人に多少は注文もしているようですが、全て輸入品で運んでくるものの中から選んで購入しているそうです」
「そんなんで商売成り立つのか? それだとどこも同じ品になるだろ。差別化できん」
「そうなのですよね。僅かに右肩下がりのようです。それでも以前にウォルター様がおっしゃっていた『ブランド力』というものなのか地力はまだまだあるようなのですが」
エスターライヒは大抵のものは自給自足しているし、カウフフェル商会も所有する国内工場で製品製造をしていると以前セバスチアンから聞いた。だから自社製品の割合も多いのだろうけれど、そんなに急に業態を替えて大丈夫なんだろうか。
そしてアルバートはこの状況がカウフフェル商会だけではなく、少なくとも王都の全ての商会が同様だと言う。
「マリオン嬢はお気づきになられませんでしたか」
「ええ、私は王都とダンジョンを往復するだけですから……」
「ともあれこの問題については現在国を上げて調査中です」
「そうすっと道はどうすっかなぁ。ビジュアル的にきれいな道が続いてるとそっちにも行ってみようかっつうか、アスファルト舗装してると目を引くじゃん? 新しいもんがあるかと思って呼び込めないかと思ってさ」
人の流入。街の発展には必要不可欠。でもゲームでは国が発展すれば、勝手に人は増えていた。道路も勝手に伸びていた。現実ベースで考えると、勝手に伸びるわけではないけれど。
「人の流入か……やっぱりエスターライヒ独自の商品開発か観光資源が必要かしら」
「やっぱり観光か……この国売りがねぇんだよな」
「テンプレだと武道大会とかカジノとかは?」
「俺思うんだけどさ、いきなりカジノ作ったら治安悪くなんね? エスターライヒは牧歌的だろ。ギャンブル狂いを量産しそうな気がする」
「うーん。外国のコンテンツを輸入しても集客力があがるとは思えないもんねぇ。でも国内は発展するかも? 外から人を入れるにはやっぱり国内産業と文化とか芸術を作り上げないと駄目じゃないかな」
ウォルターは腕組みをして天井を見上げる。アルバートとセバスチアンはポカンとした表情を浮かべている。
やはりウォルターは転生者だ、と思う。カジノとかコンテンツとか、私が転生者と察せられるような言葉を取り混ぜてみたけれど、全然気にしていないみたいだ。気づいていてわざとスルーしているのか、そもそも気づきもしていないのか。私も転生者だと告げたほうがいいのか、よくわからない。
ウォルターと二人きりになる機会があれば直接聞いてみようかとも思うのだけれど、生憎そんな機会は生まれない。いつも間に誰かがいる。それに私とウォルターが近づきすぎるのはその立場上は少々面倒なのだ。なにせ婚約と結婚が無効になったんだから。
「おいマリー。お前ファッションショーやれよ」
「ファッションショー?」
「おう。そうだなぁ。ターゲット層は商人向けと貴族向けかなぁ。購買層全然違うもんな。セバスチアン、マリーのデザインは人気があるんだろう?」
「そりゃぁもう。新しい風が吹いておりますな」
「じゃあ1ヶ月後か2ヶ月後にファッションショーやろう。アルバート、王宮の舞踏会の部屋を使いたい。大丈夫だよな。あと商人用には郊外にステージを作るわ。国外に舗装する分の人工と資材が浮いてるし、いくつか用地も押さえてっからな。商人なら入場料がとれるか……そうするとやっと黒字転するかなぁ」
ウォルターはブツブツといいながら地図に何やらメモを書き始めた。
普通に『ファッションショー』で通じると思っているのだろうか。そうするとやっぱりウォルターは私を転生者と認識している……? でももともとがポンコツだからよくわからない。
「ええ、そうですが、私はその世界の破損を見ておりません」
「見たけど忘れたんじゃねぇの? 俺が一緒にいた建設組合の奴らもさ、朝に見て驚いてたけど次の日行ったら忘れてたぞ」
「そんな印象深いものを忘れることがあるのだろうか。他に誰か覚えている者は?」
「他……『幸運の宿り木亭』のヘイグリットさんも見たと言ってたけど」
「へぇ……? どういう関連なんだそれ。それより街道に道をつなげたいんだけどな。駄目なんだよ」
ウォルターは地図をにらみながら頭を掻いている。
ウォルターの舗装で国外からの人の入りが良くなっていると聞く。
街道まで繋げたほうがよいだろうけど。
「戻ってくるってどういうこと?」
「この国の国民は国外にまっすぐ進んでても、気付いたら国に向かって歩いてるんだってさ」
「お嬢様。外国からの商人は出入りできるそうなのです。現在パナケイア商会では王都店で手一杯でして国外を注視しておりませんでした。しかし息子夫婦に任せたカウフフェル商会に聞いた所、ここ1年半ほどは外国に仕入れに行っていないそうです」
セバスチアンはほとほと困り果てた、というような顔で呟いた。
「あれ? 紅茶作らしてるんじゃねえの?」
「そうなのですが、買い付けに行くのではなく輸入しているようなのです。私が若い頃は現地まで品質の確認に行ったものなのですが。いえ、そうでなくともとカウフフェル商会は外国製品は3割を輸入品で購入し、3割を買い付けに行き残り4割を現地で発注して輸送していました。けれども今は訪れる商人に多少は注文もしているようですが、全て輸入品で運んでくるものの中から選んで購入しているそうです」
「そんなんで商売成り立つのか? それだとどこも同じ品になるだろ。差別化できん」
「そうなのですよね。僅かに右肩下がりのようです。それでも以前にウォルター様がおっしゃっていた『ブランド力』というものなのか地力はまだまだあるようなのですが」
エスターライヒは大抵のものは自給自足しているし、カウフフェル商会も所有する国内工場で製品製造をしていると以前セバスチアンから聞いた。だから自社製品の割合も多いのだろうけれど、そんなに急に業態を替えて大丈夫なんだろうか。
そしてアルバートはこの状況がカウフフェル商会だけではなく、少なくとも王都の全ての商会が同様だと言う。
「マリオン嬢はお気づきになられませんでしたか」
「ええ、私は王都とダンジョンを往復するだけですから……」
「ともあれこの問題については現在国を上げて調査中です」
「そうすっと道はどうすっかなぁ。ビジュアル的にきれいな道が続いてるとそっちにも行ってみようかっつうか、アスファルト舗装してると目を引くじゃん? 新しいもんがあるかと思って呼び込めないかと思ってさ」
人の流入。街の発展には必要不可欠。でもゲームでは国が発展すれば、勝手に人は増えていた。道路も勝手に伸びていた。現実ベースで考えると、勝手に伸びるわけではないけれど。
「人の流入か……やっぱりエスターライヒ独自の商品開発か観光資源が必要かしら」
「やっぱり観光か……この国売りがねぇんだよな」
「テンプレだと武道大会とかカジノとかは?」
「俺思うんだけどさ、いきなりカジノ作ったら治安悪くなんね? エスターライヒは牧歌的だろ。ギャンブル狂いを量産しそうな気がする」
「うーん。外国のコンテンツを輸入しても集客力があがるとは思えないもんねぇ。でも国内は発展するかも? 外から人を入れるにはやっぱり国内産業と文化とか芸術を作り上げないと駄目じゃないかな」
ウォルターは腕組みをして天井を見上げる。アルバートとセバスチアンはポカンとした表情を浮かべている。
やはりウォルターは転生者だ、と思う。カジノとかコンテンツとか、私が転生者と察せられるような言葉を取り混ぜてみたけれど、全然気にしていないみたいだ。気づいていてわざとスルーしているのか、そもそも気づきもしていないのか。私も転生者だと告げたほうがいいのか、よくわからない。
ウォルターと二人きりになる機会があれば直接聞いてみようかとも思うのだけれど、生憎そんな機会は生まれない。いつも間に誰かがいる。それに私とウォルターが近づきすぎるのはその立場上は少々面倒なのだ。なにせ婚約と結婚が無効になったんだから。
「おいマリー。お前ファッションショーやれよ」
「ファッションショー?」
「おう。そうだなぁ。ターゲット層は商人向けと貴族向けかなぁ。購買層全然違うもんな。セバスチアン、マリーのデザインは人気があるんだろう?」
「そりゃぁもう。新しい風が吹いておりますな」
「じゃあ1ヶ月後か2ヶ月後にファッションショーやろう。アルバート、王宮の舞踏会の部屋を使いたい。大丈夫だよな。あと商人用には郊外にステージを作るわ。国外に舗装する分の人工と資材が浮いてるし、いくつか用地も押さえてっからな。商人なら入場料がとれるか……そうするとやっと黒字転するかなぁ」
ウォルターはブツブツといいながら地図に何やらメモを書き始めた。
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