DEVIL

Beeya

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 月日が立ち、勝吾は16歳になっていた。12歳に工藤の世界戦を見て以来、父親の毅に頼んで、練習メニューを作ってもらい、毎日練習をこなした。

 父の毅は以前自分もボクシングのインターハイ準優勝までいった為、勝吾がボクシングをやりたい。と言った時は嬉しかった。
 だが、同時に心配もしていた。正直勝吾の力は、親から見ても明らかに他の子供よりも強い。 
 勝吾が怪我するのも心配だが、それよりも怪我をさせてしまう事の方がずっと心配だった。
 しかし、勝吾のボクシングと工藤に対する真っ直ぐな視線を、遮る事などできない。彼のやりたいようにやらせてあげたかった。

 毅もそうだった。毅も生まれつき力が強く、ボクシングを始めてから圧倒的な力でインターハイ決勝までトントン拍子でこぎ着けた。
 だが、毅の父であり、勝吾の祖父の清三郎が、インターハイ決勝まであと数日というところで、突如農作業中に倒れてしまい、
 「毅。こんな時にすまねえな。」という言葉を残して、そのまま亡くなってしまった。
 豪快な父で酒が大好きで、人が大好きで、そしてボクシングも大好きだった。
 息子の毅がボクシングをやってインターハイまでこぎ着けたことを、いつも近所に自慢していた。
 口は悪く気性も荒いが、優しい男だった。毅はそんな父が誇りだった。
 
 インターハイ決勝。毅は無気力なまま、力も入らず、判定で負けた。父親が見てるかもしれない。との思いで、せめてKO負けだけはしのいだ。
 あの試合で、毅は己に負けた。その失意と、農家を継ぎ、母や兄弟を支えなくてはならなくなったことで、毅はボクシングをやめた。
 惜しい才能がそこで途絶えてしまった。皆も自分もそう思っていた。
 やがて時は経ち息子の勝吾が生まれた。彼も自分と同じ、いや、それ以上の力の持ち主だった。

 この子がボクシングをやったら、とんでもない事になるのではないか?いつも密かにそう思っていたが、夢の途中で諦めざるえなかったあの辛さを、以前味わってしまっている毅は、
 万が一勝吾が同じようなことになってしまったら、辛くて見てられない。
 ましてや、勝吾は人一倍優しい少年だ。才能があるからと言って、強制など毅にはできなかった。
 
 だから、嬉しかった。「この人みたいになりたい。」そう呟いて目を輝かせた、あの日の勝吾が。
 しかし、心配だった。自分と同じ道を歩むのではないか? 
 そして、異常な力の強さが、将来相手を潰してしまうのではないか?
 勝吾の事だ、もしそんな時がきてしまったら、責任を感じて辛い思いをするのではないか?

 そんな不安を常に感じながらも、勝吾を鍛えた。地方は練習相手や練習場所もなかなかない。
 中学時代までは、勝吾は地方都市にあるボクシングジムへ、週に数回毅と一緒に通い、自分よりも数年上の年齢の少年を相手にスパークリングもした。
 それでも、勝吾は引けを取るどころか、圧倒してしまうまでさほど時間はようさなかった。
 毅は嬉しい半分、心配半分。といった様子で勝吾の成長を見守った。
 
 ボクシングの夢を目指し始めてから4年。今は以前毅が通っている高校に勝吾は通っている。
 毅が昔教わったボクシングの顧問の佐藤剛太郎(ごうたろう)がいるため、勝吾はそこを選んで入学した。
 聡史も、勝吾がボクシングをやり始めてから一緒にやり始め、ジムも一緒に通い、後を追うように同じ高校に入学し、ボクシング部員として練習している。

 勝吾の身長は178センチまで伸びてきた。しかし、筋肉のつきかたが十代には思えない。彫刻でほられたかのように硬質感のある体になっていた。
 顔も父親ゆずりの精悍さに、母親ゆずりの切れ長な目で、初対面であれば、強者が持つ独自のオーラをまとっており、近寄りがたい雰囲気だ。
 しかし、話すと笑顔が多い好青年である。それが独特な磁力を持って人を引き付けた。しかもなかなか訛りが抜けなかったが、将来東京に行く目標がある為標準語の特訓をしていたが、どうしても独特のイントネーションが抜けない。それが逆に勝吾の愛嬌として皆に好かれた。
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