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第22話
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「だいぶ出来上がってきたわね」
屋敷の庭の様子を見て、私はつぶやいた。
コツコツ庭いじりに精を出し続けた甲斐あって、今では屋敷の庭の半分ほどが花壇になっていた。
屋敷の入り口から見て右側に私の好きなバラとガーベラにツバキの花、左側にフローラさんの備忘録に書かれていた野花の類が植わっている。
太陽はほぼ真上にあって日差しが容赦なく降り注いでいる。
すでに今日やりたかった作業は終わっているからあとは室内で過ごそう――そう思った時だった。
ガラガラガラッ
遠くから車輪が回転する音が聞こえてきた。
見覚えのない馬車がこちらに向かってくる。
御者台に座っているのも面識のない人だった。
こんなことは初めてだった。
アレン様のもとに嫁いで以来、この屋敷にお客様が来たことはない。
どうしたものかと考え込むけど、仮にも屋敷の留守を預かっている身だ。
出来るだけの対応をしよう。
そう思った矢先に馬車の窓が開き、アレン様が顔を出した。
こちらに向かって手を振っている。
「アレン様!?」
驚いてしまった。
何せアレン様はいつもルークさんと一緒だから、てっきり今回も一緒に帰ってくるものとばかり思いこんでいた。
屋敷の入り口手前で馬車は停まり、アレン様が御者に代金を払うと馬車は踵を返して去っていった。
「やあ、エミリー・・・帰ったよ・・・」
「おかえりなさいませ、アレン様」
アレン様は明らかに様子がおかしかった。
顔が赤い――今日は暑いことを考慮しても異常なほどに。
それに何だか足取りがフラフラしている。
「アレン様、お体の調子が良くないのでは?熱があるように見えますよ」
「いや大丈夫、北国にいたせいかむしろ寒いくらいだから・・・それよりエミリー、話があるんだけど・・・」
「寒気がするって重体じゃないですか!!」
思わず叫んでしまった。
これまでの生活からアレン様がお体に気を遣うタイプじゃないのは分かっていたけど、さすがに許容の範囲を超えている。
いつか体を壊すんじゃないかとハラハラするこちらの身にもなってほしい。
「あの、僕は本当に大丈夫だから・・・って、あれ・・・?」
私の気迫に押されたアレン様は後ずさると、その場に倒れこんでしまった!
「アレン様!?アレン様!?」
倒れたアレン様の額に手を当てる――熱い。
間違いなく39℃はある。
アレン様が乗ってきた馬車はもう遠くに行ってしまったし、ルークさんもいない。
助けを呼ぶことはできず、今この場には私しかアレン様を助けられる人はいない。
「アレン様、頑張ってください・・・ふんぐっ!!」
何とかアレン様を背負うと半ば引きずるようにしながら、アレン様を執務室のベッドまで連れていく。
「ええっと、こういう時は・・・」
頭の中でやるべきことと、屋敷にあるものを確認する。
不幸中の幸いとでも言おうか、病を抱えた妹とともに育ったから病人の看病の仕方はひととおり身についている。
必要なものを用意するべく私は食堂に向かった。
屋敷の庭の様子を見て、私はつぶやいた。
コツコツ庭いじりに精を出し続けた甲斐あって、今では屋敷の庭の半分ほどが花壇になっていた。
屋敷の入り口から見て右側に私の好きなバラとガーベラにツバキの花、左側にフローラさんの備忘録に書かれていた野花の類が植わっている。
太陽はほぼ真上にあって日差しが容赦なく降り注いでいる。
すでに今日やりたかった作業は終わっているからあとは室内で過ごそう――そう思った時だった。
ガラガラガラッ
遠くから車輪が回転する音が聞こえてきた。
見覚えのない馬車がこちらに向かってくる。
御者台に座っているのも面識のない人だった。
こんなことは初めてだった。
アレン様のもとに嫁いで以来、この屋敷にお客様が来たことはない。
どうしたものかと考え込むけど、仮にも屋敷の留守を預かっている身だ。
出来るだけの対応をしよう。
そう思った矢先に馬車の窓が開き、アレン様が顔を出した。
こちらに向かって手を振っている。
「アレン様!?」
驚いてしまった。
何せアレン様はいつもルークさんと一緒だから、てっきり今回も一緒に帰ってくるものとばかり思いこんでいた。
屋敷の入り口手前で馬車は停まり、アレン様が御者に代金を払うと馬車は踵を返して去っていった。
「やあ、エミリー・・・帰ったよ・・・」
「おかえりなさいませ、アレン様」
アレン様は明らかに様子がおかしかった。
顔が赤い――今日は暑いことを考慮しても異常なほどに。
それに何だか足取りがフラフラしている。
「アレン様、お体の調子が良くないのでは?熱があるように見えますよ」
「いや大丈夫、北国にいたせいかむしろ寒いくらいだから・・・それよりエミリー、話があるんだけど・・・」
「寒気がするって重体じゃないですか!!」
思わず叫んでしまった。
これまでの生活からアレン様がお体に気を遣うタイプじゃないのは分かっていたけど、さすがに許容の範囲を超えている。
いつか体を壊すんじゃないかとハラハラするこちらの身にもなってほしい。
「あの、僕は本当に大丈夫だから・・・って、あれ・・・?」
私の気迫に押されたアレン様は後ずさると、その場に倒れこんでしまった!
「アレン様!?アレン様!?」
倒れたアレン様の額に手を当てる――熱い。
間違いなく39℃はある。
アレン様が乗ってきた馬車はもう遠くに行ってしまったし、ルークさんもいない。
助けを呼ぶことはできず、今この場には私しかアレン様を助けられる人はいない。
「アレン様、頑張ってください・・・ふんぐっ!!」
何とかアレン様を背負うと半ば引きずるようにしながら、アレン様を執務室のベッドまで連れていく。
「ええっと、こういう時は・・・」
頭の中でやるべきことと、屋敷にあるものを確認する。
不幸中の幸いとでも言おうか、病を抱えた妹とともに育ったから病人の看病の仕方はひととおり身についている。
必要なものを用意するべく私は食堂に向かった。
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