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4話 licenceな七日間2
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鬼からの課題をなんとかやり遂げたシレーヌは、講義室でグタリと机に突っ伏していた。
目が何度も閉じたり開いたりを繰り返している。
もういっその事寝てしまいたいと思うが次は、あの陰険ゴリラの講義だ。
「先生来たら起こすから少し寝たら?」
「……フェール、ありがとう。よろし……」
だんだん声は小さくなっていき、とうとう最後には声にならず静かな寝息が聞こえ始めた。
「おい、昨日言った……」
寝始めて数分、アルバーニが声をかけてきたのをフェールは、口元に指を持っていって静かにするよう合図をした。
アルバーニは、反射的に口を閉じる。
「最近あまり眠れていないらしいのよ、貴方からの課題をやっているらしくて……」
フェールは、シレーヌの桜色の髪を優しく撫でる。するとシレーヌの寝顔が和らいだように見えた。
「…………少し課題を減らしてもらえないかしら。私達は人間とは違う種族だけど女の子よ?女の子には貴方の練習メニューは酷だわ」
アルバーニは寝ている彼女を見る。目の下にはうっすらとクマが出来ている。
しばし、それを見つめたていたアルバーニは、フェールへと視線を向ける。彼は何を思ったのか真剣な顔で頷いた。
「わかった。考えておく」
「ありがとう」
もう少し渋るかと思っていたフェールは彼の前向きな解答に内心驚きつつも笑顔でお礼を言った。
2人してシレーヌの寝顔を眺めるという傍から見れば奇妙な光景が数分続き、講義が始まる鐘が鳴ったことでようやく終わりを向かえた。
フェールがどうやって起こそうかと考えているとアルバーニが机の上にあるシレーヌのノートを手に取るとそのノートでシレーヌの頭を思いっきり叩いた。
「いいいいったぁ……え、え、なに?」
いきなりの衝撃にビックリしたシレーヌは起き上がり辺りをキョロキョロと見回す。
ノートを持ったアルバーニが目に入れば彼をギロリと睨んだ。
「痛いじゃない!!」
「起こしてやったんだ。礼を言うところだろう」
「ありがとうございますぅー!……って、もう少し優しい起こし方があるでしょ」
「……それで起きなかったお前が悪い」
ぎゃあぎゃあと言い合いをする2人にフェールは苦笑いを浮かべていると視界の隅で教室から入ってきた教師をみつけた。
「2人とも、先生来たわよ」
その瞬間2人の言い合いは、ピタリと止まり、アルバーニは急いで席に着いた。
そんな彼に、どこか親しみを感じてフェールはクスリと笑った。
教師に多少睨まれながらもシレーヌの受けるべき講義が終わった。
アルバーニが終わるまで学園の周りを走ることに決め、フェールと別れたシレーヌは、息を荒くしながら走っていた。
課されたノルマまであと数周というとこで少し休憩することにする。
携帯用のボトルで飲み物を飲んでいるとこちらにやってくるアルバーニの姿が見えた。
「講義お疲れ様」
「あぁ……」
「言われた通り学園の外を出るんだよね。ちょっと待っててあと少しでノルマ終わるから」
急いで終わらせよう。
そう思って走り出そうとしたが突然うでを掴まれた。
「どうしたの?」
「あ、いや……今日はもういい。行くぞ」
「うん?わかった。ちょっと待ってて、着替えてくる」
それならば、とアルバーニの提案でお互い準備を済ませて1時間後に学園の門に集合することになった。
いそいで部屋に戻り、埃臭い体をシトラスの香りがするボディソープで洗い流す。
水は、浴びていて気持ちがいいから好きだ。
いつもだったらゆっくりと浸かっているのだが今は時間がない。
名残惜しげにシャワーを止め、その勢いで脱衣所へと出る。
体を拭きながら着ていく服を考える。
(動きやすい服装で、あまり人前に出ても恥ずかしくない格好がいいよね)
隣で歩くアルバーニのことを考えるとシレーヌの部屋で着るような服では彼が文句を言ってくるのが想像できる。
結局、シレーヌが着たのはこの学園の制服だった。
集合場所まで行くとアルバーニは、すでに着いていて彼も制服だったことに安堵する。
この学園には二種類の制服がある。
1つは、シレーヌが今着ている黒のゴシック風のものと白いロリータ風のものだ。
普段着ているのは白い制服の方なのだが、それはスカートなので今日は、キュロットになっている黒の制服にした。
ちなみに、男子の制服も同じように白と黒の二種類あるが女子のものよりはデザインが控えめだ。
デザインもあまり変わらないので使い分ける必要性はないのだが、アルバーニは今、白い制服を着ている。
彼は普段黒い制服を着ていたような気がするが、気のせいだっただろうか。
「どうした、いくぞ」
「あ、うん」
大きな門をくぐった時には、そんな疑問は消え、学園の外の景色に釘付けになっていた。
この学園は丘のように高いところに立っている為か街全体が見渡せたる。
ワクワクと胸を躍らせながら道なりに進んでいくとすぐに市場へとつながった。
道にあふれる人の数に圧倒される。
「街に出るって言ったらフェール達に頼まれたものがあるからそれを買うのと他にも色々みようね……ってアルバーニどうしたの?」
キラキラと瞳を輝かせながらアルバーニに振り向けば何故か彼は顔を青くさせていた。
「…………いや、なんでもない。さっさと行くぞ」
前を歩くアルバーニについて歩きながら首をかしげた。
フェールが欲しかったもの、主にシャンプーやリンス等を買い終えた2人はとある一軒のお店に入り浸っていた。
そこには色とりどりの石でできたアクセサリーや小物が並べられている。
シレーヌが熱心に見ているのは、ストラップだった。
満月の両側で猫がまるで、追いかけっこをしているような造りになっている。
満月の部分の石が下に行くにつれて水色からピンク色へと変わっている。
その不思議な色合いに惹き付けられた。
「このストラップ、真ん中で2つに分かれるようになっているんです」
店主が目の前で割って見せてくれる。半月の形になったそれを見てシレーヌの目は更にキラキラと輝かせた。
「この石は同じ種類の石でも模様や色合いが微妙に違ったりして合うことがないため、友達同士や恋人同士で買われるお客様が多いですよ」
どうですか?と店主に聞かれ、シレーヌは財布を覗くが手持ちのお金では足りなかった。
フェールとお揃いで持とうと思っていた為ガックリとする。
店主に断ろうとしたとき横からスッと腕が伸びてきた。
「まいどありー」
店主の機嫌よい声に顔をあげれば何食わぬ顔で商品を受け取るアルバーニの姿があった。
彼みたいにお金をもう少し持って来ればよかったと落胆する。気を取り直すように勢いよく首を振ると笑顔で先を歩く彼に聞いた。
「何を買ったの?」
「……ん」
ずいっと袋を差し出され、中を見るとそこには先ほどシレーヌが見ていたストラップが入っていた。
「え、アルバーニにお揃いでつけるような友人いたんだ」
「失礼だな。お前が欲しそうにしていたから買ってやったのに……返してくる」
奪い返そうとするアルバーニの手を避けると袋と彼の顔を交互に見た。
「え、これ私に?」
「あぁ、あの友人とつけるんだろう?……いらないならいい」
「いやいや、欲しいです。ください!」
ギュッと袋を抱きしめながら言えば、彼は満足げに頷きさっさと歩いて行ってしまう。
「あ、アルバーニ、待って。これ……」
シレーヌはさっきもらった袋から片方のストラップを取り出すと彼の手の平に乗せた。
「あ?片方いらないのかよ」
「そうじゃなくて、アルバーニのお金で買ったんだから片方はアルバーニがもっててよ」
シレーヌは貰ったストラップを財布につけて、ほらと嬉しそうに笑ってアルバーニに見せる。
手の上にある半月になったストラップをしばらく見たアルバーニは制服のポケットに入れた。
「友人とはいいのか?」
「今度一緒に来た時に買いますー。あ、ちゃんとつけてよね。一応パートナーの証なんだから」
はいはい、とあしらうように返事をしながらも、彼の口角は少し上がっていた。
再び学園の門に帰ってくると2人は明日どうするか相談をしていた。
「あ、そういえば今日の課題って……」
いつものように大量の課題を出してくるのだろうと恐る恐る聞くと彼は首を振った。
「今日はなしだ。代わりに明日どこに行くか考えておいてくれ」
「やったー!まかせてって、え!?」
「できれば、今日みたいに人が多い場所は避けてほしい」
面倒を押し付けられた気がしてならない、さらに注文をつけられればシレーヌのあまり良くない頭が混乱する。
それでも、大量の課題を出されるよりマシだと意気込んで見せるのだ。
「ひ、人が多くない場所ね……わかった。さがしてやろうじゃない!」
「あぁ、任せたぞ」
彼と別れて部屋に帰るとシレーヌはベッドの中でどこに行けばいいか考えていた。
学園の外はどこも活気があり人が少ないところなど殆どない。
あるとすれば学園から離れたところだろうがそこで何をすればいいのか。
「あ、そうだ!」
人が少なく、しかも私自身を知ってもらうのに丁度いい場所が1つあるではないか。
そうと決まるとシレーヌは電話を借りに事務所へと向かった。
一方、黒い椅子に座り手を組みながら理事長ことアド・リビトゥムは、メイド服の女性から今日のアルバーニとシレーヌの動向について報告を受けていた。
「そうか。お揃いのストラップを……」
「はい、アルバーニは部屋に帰宅後、ストラップを見つめながら何やら考えるような仕草をしてはそのストラップを、小物を入れるような袋につけていらっしゃいました」
「……ふむ、友人の少ない彼にとってお揃いのストラップは余程嬉しかったとみる。しかし、その袋の中には何が入っているのか・……気になるなぁ」
「そう言うと思いまして、調べてまいりました。中には飴などの菓子類が入っているようで……そういえば今日の市場でも彼女に気づかれないよう、こっそりと砂糖菓子を購入されていたようです」
「そうか、そうか、アルバーニは甘いものが
好きなのだね。今度彼らが来たときそういった菓子類も置いておこうか」
「かしこまりました。準備しておきます」
報告は終わりだと女性は、お辞儀して理事長室を退出していく。
「んー、報告聞くのもいいけどやっぱり自分でみたいものだよねぇ……ついていっちゃおうかな」
何を想像したのかニヤニヤと顔を緩ませた理事長は、テーブルの角砂糖を一つ摘み口に含むとふふっと笑った。
目が何度も閉じたり開いたりを繰り返している。
もういっその事寝てしまいたいと思うが次は、あの陰険ゴリラの講義だ。
「先生来たら起こすから少し寝たら?」
「……フェール、ありがとう。よろし……」
だんだん声は小さくなっていき、とうとう最後には声にならず静かな寝息が聞こえ始めた。
「おい、昨日言った……」
寝始めて数分、アルバーニが声をかけてきたのをフェールは、口元に指を持っていって静かにするよう合図をした。
アルバーニは、反射的に口を閉じる。
「最近あまり眠れていないらしいのよ、貴方からの課題をやっているらしくて……」
フェールは、シレーヌの桜色の髪を優しく撫でる。するとシレーヌの寝顔が和らいだように見えた。
「…………少し課題を減らしてもらえないかしら。私達は人間とは違う種族だけど女の子よ?女の子には貴方の練習メニューは酷だわ」
アルバーニは寝ている彼女を見る。目の下にはうっすらとクマが出来ている。
しばし、それを見つめたていたアルバーニは、フェールへと視線を向ける。彼は何を思ったのか真剣な顔で頷いた。
「わかった。考えておく」
「ありがとう」
もう少し渋るかと思っていたフェールは彼の前向きな解答に内心驚きつつも笑顔でお礼を言った。
2人してシレーヌの寝顔を眺めるという傍から見れば奇妙な光景が数分続き、講義が始まる鐘が鳴ったことでようやく終わりを向かえた。
フェールがどうやって起こそうかと考えているとアルバーニが机の上にあるシレーヌのノートを手に取るとそのノートでシレーヌの頭を思いっきり叩いた。
「いいいいったぁ……え、え、なに?」
いきなりの衝撃にビックリしたシレーヌは起き上がり辺りをキョロキョロと見回す。
ノートを持ったアルバーニが目に入れば彼をギロリと睨んだ。
「痛いじゃない!!」
「起こしてやったんだ。礼を言うところだろう」
「ありがとうございますぅー!……って、もう少し優しい起こし方があるでしょ」
「……それで起きなかったお前が悪い」
ぎゃあぎゃあと言い合いをする2人にフェールは苦笑いを浮かべていると視界の隅で教室から入ってきた教師をみつけた。
「2人とも、先生来たわよ」
その瞬間2人の言い合いは、ピタリと止まり、アルバーニは急いで席に着いた。
そんな彼に、どこか親しみを感じてフェールはクスリと笑った。
教師に多少睨まれながらもシレーヌの受けるべき講義が終わった。
アルバーニが終わるまで学園の周りを走ることに決め、フェールと別れたシレーヌは、息を荒くしながら走っていた。
課されたノルマまであと数周というとこで少し休憩することにする。
携帯用のボトルで飲み物を飲んでいるとこちらにやってくるアルバーニの姿が見えた。
「講義お疲れ様」
「あぁ……」
「言われた通り学園の外を出るんだよね。ちょっと待っててあと少しでノルマ終わるから」
急いで終わらせよう。
そう思って走り出そうとしたが突然うでを掴まれた。
「どうしたの?」
「あ、いや……今日はもういい。行くぞ」
「うん?わかった。ちょっと待ってて、着替えてくる」
それならば、とアルバーニの提案でお互い準備を済ませて1時間後に学園の門に集合することになった。
いそいで部屋に戻り、埃臭い体をシトラスの香りがするボディソープで洗い流す。
水は、浴びていて気持ちがいいから好きだ。
いつもだったらゆっくりと浸かっているのだが今は時間がない。
名残惜しげにシャワーを止め、その勢いで脱衣所へと出る。
体を拭きながら着ていく服を考える。
(動きやすい服装で、あまり人前に出ても恥ずかしくない格好がいいよね)
隣で歩くアルバーニのことを考えるとシレーヌの部屋で着るような服では彼が文句を言ってくるのが想像できる。
結局、シレーヌが着たのはこの学園の制服だった。
集合場所まで行くとアルバーニは、すでに着いていて彼も制服だったことに安堵する。
この学園には二種類の制服がある。
1つは、シレーヌが今着ている黒のゴシック風のものと白いロリータ風のものだ。
普段着ているのは白い制服の方なのだが、それはスカートなので今日は、キュロットになっている黒の制服にした。
ちなみに、男子の制服も同じように白と黒の二種類あるが女子のものよりはデザインが控えめだ。
デザインもあまり変わらないので使い分ける必要性はないのだが、アルバーニは今、白い制服を着ている。
彼は普段黒い制服を着ていたような気がするが、気のせいだっただろうか。
「どうした、いくぞ」
「あ、うん」
大きな門をくぐった時には、そんな疑問は消え、学園の外の景色に釘付けになっていた。
この学園は丘のように高いところに立っている為か街全体が見渡せたる。
ワクワクと胸を躍らせながら道なりに進んでいくとすぐに市場へとつながった。
道にあふれる人の数に圧倒される。
「街に出るって言ったらフェール達に頼まれたものがあるからそれを買うのと他にも色々みようね……ってアルバーニどうしたの?」
キラキラと瞳を輝かせながらアルバーニに振り向けば何故か彼は顔を青くさせていた。
「…………いや、なんでもない。さっさと行くぞ」
前を歩くアルバーニについて歩きながら首をかしげた。
フェールが欲しかったもの、主にシャンプーやリンス等を買い終えた2人はとある一軒のお店に入り浸っていた。
そこには色とりどりの石でできたアクセサリーや小物が並べられている。
シレーヌが熱心に見ているのは、ストラップだった。
満月の両側で猫がまるで、追いかけっこをしているような造りになっている。
満月の部分の石が下に行くにつれて水色からピンク色へと変わっている。
その不思議な色合いに惹き付けられた。
「このストラップ、真ん中で2つに分かれるようになっているんです」
店主が目の前で割って見せてくれる。半月の形になったそれを見てシレーヌの目は更にキラキラと輝かせた。
「この石は同じ種類の石でも模様や色合いが微妙に違ったりして合うことがないため、友達同士や恋人同士で買われるお客様が多いですよ」
どうですか?と店主に聞かれ、シレーヌは財布を覗くが手持ちのお金では足りなかった。
フェールとお揃いで持とうと思っていた為ガックリとする。
店主に断ろうとしたとき横からスッと腕が伸びてきた。
「まいどありー」
店主の機嫌よい声に顔をあげれば何食わぬ顔で商品を受け取るアルバーニの姿があった。
彼みたいにお金をもう少し持って来ればよかったと落胆する。気を取り直すように勢いよく首を振ると笑顔で先を歩く彼に聞いた。
「何を買ったの?」
「……ん」
ずいっと袋を差し出され、中を見るとそこには先ほどシレーヌが見ていたストラップが入っていた。
「え、アルバーニにお揃いでつけるような友人いたんだ」
「失礼だな。お前が欲しそうにしていたから買ってやったのに……返してくる」
奪い返そうとするアルバーニの手を避けると袋と彼の顔を交互に見た。
「え、これ私に?」
「あぁ、あの友人とつけるんだろう?……いらないならいい」
「いやいや、欲しいです。ください!」
ギュッと袋を抱きしめながら言えば、彼は満足げに頷きさっさと歩いて行ってしまう。
「あ、アルバーニ、待って。これ……」
シレーヌはさっきもらった袋から片方のストラップを取り出すと彼の手の平に乗せた。
「あ?片方いらないのかよ」
「そうじゃなくて、アルバーニのお金で買ったんだから片方はアルバーニがもっててよ」
シレーヌは貰ったストラップを財布につけて、ほらと嬉しそうに笑ってアルバーニに見せる。
手の上にある半月になったストラップをしばらく見たアルバーニは制服のポケットに入れた。
「友人とはいいのか?」
「今度一緒に来た時に買いますー。あ、ちゃんとつけてよね。一応パートナーの証なんだから」
はいはい、とあしらうように返事をしながらも、彼の口角は少し上がっていた。
再び学園の門に帰ってくると2人は明日どうするか相談をしていた。
「あ、そういえば今日の課題って……」
いつものように大量の課題を出してくるのだろうと恐る恐る聞くと彼は首を振った。
「今日はなしだ。代わりに明日どこに行くか考えておいてくれ」
「やったー!まかせてって、え!?」
「できれば、今日みたいに人が多い場所は避けてほしい」
面倒を押し付けられた気がしてならない、さらに注文をつけられればシレーヌのあまり良くない頭が混乱する。
それでも、大量の課題を出されるよりマシだと意気込んで見せるのだ。
「ひ、人が多くない場所ね……わかった。さがしてやろうじゃない!」
「あぁ、任せたぞ」
彼と別れて部屋に帰るとシレーヌはベッドの中でどこに行けばいいか考えていた。
学園の外はどこも活気があり人が少ないところなど殆どない。
あるとすれば学園から離れたところだろうがそこで何をすればいいのか。
「あ、そうだ!」
人が少なく、しかも私自身を知ってもらうのに丁度いい場所が1つあるではないか。
そうと決まるとシレーヌは電話を借りに事務所へと向かった。
一方、黒い椅子に座り手を組みながら理事長ことアド・リビトゥムは、メイド服の女性から今日のアルバーニとシレーヌの動向について報告を受けていた。
「そうか。お揃いのストラップを……」
「はい、アルバーニは部屋に帰宅後、ストラップを見つめながら何やら考えるような仕草をしてはそのストラップを、小物を入れるような袋につけていらっしゃいました」
「……ふむ、友人の少ない彼にとってお揃いのストラップは余程嬉しかったとみる。しかし、その袋の中には何が入っているのか・……気になるなぁ」
「そう言うと思いまして、調べてまいりました。中には飴などの菓子類が入っているようで……そういえば今日の市場でも彼女に気づかれないよう、こっそりと砂糖菓子を購入されていたようです」
「そうか、そうか、アルバーニは甘いものが
好きなのだね。今度彼らが来たときそういった菓子類も置いておこうか」
「かしこまりました。準備しておきます」
報告は終わりだと女性は、お辞儀して理事長室を退出していく。
「んー、報告聞くのもいいけどやっぱり自分でみたいものだよねぇ……ついていっちゃおうかな」
何を想像したのかニヤニヤと顔を緩ませた理事長は、テーブルの角砂糖を一つ摘み口に含むとふふっと笑った。
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