ワイズマンと賢者のいし

刀根光太郎

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これから

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 一通り遊んで満足したら川から上がった。新調した服に着替えると早速王都へと向かった。王都の門には人がずらりと並んでいた。検問をしているようだ。

 それにしても良いなーこの城壁。そこそこ壁が高いのは、魔力節約のためだな。純粋な魔法防壁は維持が面倒だからな。対空や部分防壁など創意工夫もされている。


「うおおおおお!」

 そんな時、門前で気合の入った声が聞こえた。どうやら前の人が入る直前に走って門を突破するつもりだろう。

(それじゃあ無理だ。許可が無い者には魔法防壁が発動する)


 そこで強行突破をしようとしている男は懐からゴツイグローブを取り出して装着した。魔力を込めると巨大な鉄の杭が腕に纏わりつく。

「前回と同じ轍はふまんぞぉぉおお!」


(むむ、凄まじい執念だ。だが……まだだ……まだそれでは……)


 すると杭が高速で回転を始めた。フーはその結果を予測した。それでも貫けない、と。

(ッ……くっ、ここまでか。しかし、最後まで見届けなければ……ロマンってやつをよッ)

 緊張が走った。誰もが注目する。

 男は長い距離を走ったせいか、足がもつれて地面へと転がった。さらに地面に接触した杭の回転に弾き飛ばされて、男は不自然に大空を舞う。

 結果がどうあれ、魔法防壁と男の魔法の接触を期待していた賢者の石は、悲しそうにその光景をただ眺めていた。


「窃盗だぁぁああ!」

 別の場所からそんな声が響き渡る。さらに足を踏んだかどうかの喧嘩も始まった。

「フー。王都怖い……」

『安心しろ。そのための検問だから』


 順番が回って来ると、商人に貰った羊皮紙を見せる。門番が指でスッと紙をなぞると青白い光が微かに溢れる。

「おお、この番号。お嬢ちゃんがあの」

「もしかしてこれじゃあ駄目ですか?」

「違う違う。いやぁね。バラックさんが時折、聞いて来るんだよ。黒い髪で宝石を付けた子が来なかったか、って」

「バラックさん! 今いらっしゃいますか?」

「ん~、どうだろう。最近見て無い気が」

 少し離れた所にいた別の門番がそれに答える。

「バラックさん? 丁度先日、戻って来たよ」

 そう言って門を通してくれた。

「ありがとうございました!」


 適当に街を歩き出す。下水機能もしっかりとしていて、綺麗な街並みだった。

(しっかりと広まったみたいだな。それにしてもこれが王都。昔と比べて随分と大きくなったな……後から機能を追加しやすいのは魔法文明の利点だな)


「ねぇ、フー。バラックさんの家何処かな?」

『有名人みたいだし、話を聞けばすぐに見つかるだろう。ついでに街を見て回ろう』


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