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第一章 空の島
マックスとロイク(3)
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魔獣が凄まじい速度で迫ってきて、このままでは家の中に居る人々が危ない。盗賊が子供を連れてる事から、ロイクは負けたのかもしれない。目の前の盗賊のボスを倒せるかもしれないが、時間がかかる。
状況を把握したマックスは絶望する。その時、彼は驚愕した。
背後から三羽のグリフォンが飛んで来ていたからだ。その一人がグリフォンで、盗賊のボスが乗る馬を横切りると同時に、その男を槍の柄で薙ぎ払い、地面へと叩き落とした。
「ぐあぁぁああ!?」
「お主はっ」
アルフィーは状況を把握している彼に一言問う。
「俺たちは何処をやれば良いですか!?」
「家の中じゃ!? 子供たちが!?」
アルフィーはロイクの方へと向かっていく。唖然とそれを眺める事しか出来ないマックスは、彼等の本質を見た。大きなグリフォンが魔獣に向かっていく。彼は地上に降りると戦斧を持って、自分よりも何倍も大きな化け物に突っ込んでいく。
「ぉお! 彼等が……」
ロイクは血みどろになっていた。
盗賊が数人か倒れて居る。動けないが意識はある状態。まだ動ける盗賊を倒さねばと、ロイクはボロボロの体に鞭を打つ。皆を守るためには、立ち上がらなくては。しかし、力を幾ら込めようとも動けない。体が限界であった。
その間も子供が何人か攫われた。追う事が出来ない事に歯を噛みしめる。助けるどころか、自身が先に死んでいしまう。
「ここまで……ですか……」
だが、その呟きを否定するかの如く、窓から勢いよく入って来る男が居た。そのまま跳び膝蹴り、掌底で顔面を捉えると、数人の盗賊の意識を一瞬でかりとった。さらに既に抜いていた剣で次々と残りの盗賊をなぎ倒す。
「ッ!? アル……フィーさん……」
「な、なんだお前はぁぁああ!」
そう叫びながら切りかかる盗賊。ロイクが短剣を足に投げると刺さり、転んだ。アルフィーは後頭部を踏みつけて意識を奪う。その他、室内の盗賊を全て倒したのを見て、力なく叫んだ。
「子供たちがっ……お願いしますッ……」
彼はそれを聞いて頷く。
「レティシア、ロイクさんを頼む!」
「任せて!」
そう言い残すと、彼は迷わずに盗賊を追いかけて行った。近寄って来た女性がロイクに手を翳す。
「名もない、癒しの魔法……何と心地よい魔法でしょうか。ありがとう……ございます……」
ロイクはそこで意識を失った。不思議と安心した表情であったという。外ではアルフィーが盗賊を追う。そして、グリフォンを使いこなすエルナが回り込み、騎乗した状態で一気に倒していく。彼等は最後に遠くに目を移す。
「クライヴがボロボロだッ。急ごう!?」
「情けないわね~」
動物の八本脚を持ち、上半身は寄生した植物が絡む巨大な魔獣。エルナは飛びながらヒット&アウェーで、目や急所を狙う。
アルフィーは最初に癒しの魔法を試した後、足を重点的に狙い、動きを鈍らせる。クライヴは皆が来た事で戦法を変えて一度距離を取る。グリフォンに乗り、チャンスを待ち続ける。しかし、彼は蝕まれており、体力も残っていない。素早く、確実に実行したい。
魔獣が奇声をあげながら蔦を伸ばして来た。その蔦の先っぽには複数の腕が付いていた。掴む気だろう。
「くっ。避けきれない!?」
クライヴのグリフォンでは、それから逃げきれる速度が無かった。エルナがそれを切りに行くがウネウネと動いてかわし、止められない。
「駄目、防げない!? クライヴ、気合で避けなさい!?」
「無茶をッ、言うなッ、ってッ!?」
その時、巨大な火柱が突然魔獣を襲った。余りの火力に魔獣は苦しみながら火だるまになる。蔦は焼け切れた。
かなり遠く。息切れしているマックスがサムズアップをしていた。
「マックスさん!?」
動きが止まった隙にアルフィーが足を三本、その巨体がバランスを崩す様にそぎ落とす。エルナも槍を投げて目を潰した。大きな音を立てて崩れ行く魔獣。最期の抵抗なのか再び蔦を伸し出した。
しかし、それは失敗した。何故なら上空にいたクライヴが飛び降りて、勢いよく戦斧で首を切り落としたからだ。魔獣はそのまま目を閉じて絶命した。
【勝利】
十数人の盗賊を集め、縛りあげて座らせていた。その間にマックスと手の空いてる数人には、ここに来た経緯と自分たちの事情を手早く説明した。
マックスたちが怒りの形相で彼等を睨み付ける。
「さて、どう苦しませて殺そうかのう……」
「くっ……俺がこんなガキどもに!?」
「お頭ぁ! おれぁまだ死にたくねぇよ!」
「黙れ黙れ! お前たちはそうやって何人の人を殺めて来たんだ!」
「そうだ! そうだ! 決して許される事じゃない!?」
アルフィーは目を閉じていた。そして、何かを決心したのか口を開いた。
「マックスさん……彼等の命……俺に預けてくれませんか?」
「はぁ?」
余りの予想外に、盗賊たちの方が間抜けな声を出す。
「なッ!? お主、自分が何を言っているのか分かっておるのかぁ!?」
クライヴとエルナもそれに猛反対する。
「アルフィー……こういう奴等を生かしておいても得は無い。速やかに殺すべきだ」
「そうよッ。連れて行くと空の島が汚れる!」
盗賊の部下はそれに便乗して命乞いを始めた。
「た、助けてくれ! 俺たちは生きるために仕方なくやったんだ! ひぃ!」
エルナがその盗賊に槍を押し付けて黙らせた。
「アルフィー。馬鹿な事を言ってないで早く処罰しよ。こんな奴等が改心するはずないでしょ!」
「お主……この盗賊共は、ワシ等の憎悪の対象と言う事を忘れたのかのう?」
「決してそんなことは……しかし、それを承知のうえでお願いしたくあります……」
「それでは……もしこの者たちを生かし、お主たちの大切な者たちの命が奪われたらどうするつもりかな?」
「……」
アルフィーは剣をマックスの足元に投げた。
「その盗賊たちと同じく……如何様にも。罰を受けましょう……」
「……その程度で償えるとでも?」
「……」
そこでボスが話し始めた。
「じいさん……俺たちのやった事は一生許される事は無いんだろうな」
「当然じゃ!」
「なぁ……俺たちが苦しむ姿を見たいんだろ?」
「……」
中年の男は大きな声で野次を飛ばした。
「どうせ生き延びようと必死なだけだ! マックスさん、そいつらの話を聞く事はない!」
盗賊の感情に動きは無く、マックスの眼を見て言う。
「粗末な食量で生かし、やりたくない事を毎日やらせ。それを見てあんたらは満足する……少しでも抵抗すれば、好きに痛めつけ、殺せば良い……」
「ボ、ボス! そんなのは嫌ですぜ!」
その気持ち悪さにマックスはうろたえた。
「な、何のために……じゃ」
「俺の半分にも満たない歳の小僧に。そんな覚悟を見せられちゃ仕方なねぇ。俺も腹を括っただけのことだ……」
ボスは顔を地面に埋もれさせるほど押し付けながら命乞いを見せた。
「命だけは見逃してくれねぇか!」
「ぐ……」
マックスは皆を見た。その表情を見て彼もまた選択をする。
「……条件がある」
「条件、ですか?」
「その者たちは仕事以外の時は隔離する。そして、ワシ等がそれを見張る」
「しかし、マックスさんたちにそんな事をさせる訳には行きません。俺が」
「お主は、この様なモノに縛られるには、勿体ない器じゃ。それに最初に犠牲になるのはワシ等で良いじゃろうて……」
「……」
「空の島をその様な地形にする事は可能ですかな? レティシア女王陛下……」
「えっ……で、出来ると思います。でも良いんですか?」
話した事も無い中年の男たちが言う。
「俺たちの弱さが盗賊を招いた。アルフィー君はそれを助けようとしただけ」
「勿論盗賊を許す訳じゃない! 少しでも悪さをしたらすぐにでも殺してやる!」
「あんた等は、皆の命の恩人だからな……」
結局は大人たちに守られる。自分の未熟さを痛感するアルフィー。そして、盗賊たちは無言であった。何を考えていたのかは分からなかった。
【迷いと前進】
空の島に付いたアルフィーは一人で地上を見ていた。そこにレティシアが近づく。
「俺は……やっぱり間違ってたかな」
「う~ん。分からない」
「そっか」
「どうしてあの人たちを助けようと思ったの?」
「……自分でも分からない。彼等には死んで欲しく無かったのかも……」
それを聞いたレティシアはクスクスと笑っていた。
「アルフィーは、やっぱりアルフィーだなーって。うん、これで良かったと思う」
「それは褒めている……のか?」
「さあ、どうでしょう~」
レティシアはその後、怒るでも喋るでも無く、ただアルフィーの隣に座って、一緒にその絶景を眺めていた。彼女の表情は夕焼けがほどよく照らし、よく見えなかった。それを含めアルフィーは、この瞬間を大切に感じた。
状況を把握したマックスは絶望する。その時、彼は驚愕した。
背後から三羽のグリフォンが飛んで来ていたからだ。その一人がグリフォンで、盗賊のボスが乗る馬を横切りると同時に、その男を槍の柄で薙ぎ払い、地面へと叩き落とした。
「ぐあぁぁああ!?」
「お主はっ」
アルフィーは状況を把握している彼に一言問う。
「俺たちは何処をやれば良いですか!?」
「家の中じゃ!? 子供たちが!?」
アルフィーはロイクの方へと向かっていく。唖然とそれを眺める事しか出来ないマックスは、彼等の本質を見た。大きなグリフォンが魔獣に向かっていく。彼は地上に降りると戦斧を持って、自分よりも何倍も大きな化け物に突っ込んでいく。
「ぉお! 彼等が……」
ロイクは血みどろになっていた。
盗賊が数人か倒れて居る。動けないが意識はある状態。まだ動ける盗賊を倒さねばと、ロイクはボロボロの体に鞭を打つ。皆を守るためには、立ち上がらなくては。しかし、力を幾ら込めようとも動けない。体が限界であった。
その間も子供が何人か攫われた。追う事が出来ない事に歯を噛みしめる。助けるどころか、自身が先に死んでいしまう。
「ここまで……ですか……」
だが、その呟きを否定するかの如く、窓から勢いよく入って来る男が居た。そのまま跳び膝蹴り、掌底で顔面を捉えると、数人の盗賊の意識を一瞬でかりとった。さらに既に抜いていた剣で次々と残りの盗賊をなぎ倒す。
「ッ!? アル……フィーさん……」
「な、なんだお前はぁぁああ!」
そう叫びながら切りかかる盗賊。ロイクが短剣を足に投げると刺さり、転んだ。アルフィーは後頭部を踏みつけて意識を奪う。その他、室内の盗賊を全て倒したのを見て、力なく叫んだ。
「子供たちがっ……お願いしますッ……」
彼はそれを聞いて頷く。
「レティシア、ロイクさんを頼む!」
「任せて!」
そう言い残すと、彼は迷わずに盗賊を追いかけて行った。近寄って来た女性がロイクに手を翳す。
「名もない、癒しの魔法……何と心地よい魔法でしょうか。ありがとう……ございます……」
ロイクはそこで意識を失った。不思議と安心した表情であったという。外ではアルフィーが盗賊を追う。そして、グリフォンを使いこなすエルナが回り込み、騎乗した状態で一気に倒していく。彼等は最後に遠くに目を移す。
「クライヴがボロボロだッ。急ごう!?」
「情けないわね~」
動物の八本脚を持ち、上半身は寄生した植物が絡む巨大な魔獣。エルナは飛びながらヒット&アウェーで、目や急所を狙う。
アルフィーは最初に癒しの魔法を試した後、足を重点的に狙い、動きを鈍らせる。クライヴは皆が来た事で戦法を変えて一度距離を取る。グリフォンに乗り、チャンスを待ち続ける。しかし、彼は蝕まれており、体力も残っていない。素早く、確実に実行したい。
魔獣が奇声をあげながら蔦を伸ばして来た。その蔦の先っぽには複数の腕が付いていた。掴む気だろう。
「くっ。避けきれない!?」
クライヴのグリフォンでは、それから逃げきれる速度が無かった。エルナがそれを切りに行くがウネウネと動いてかわし、止められない。
「駄目、防げない!? クライヴ、気合で避けなさい!?」
「無茶をッ、言うなッ、ってッ!?」
その時、巨大な火柱が突然魔獣を襲った。余りの火力に魔獣は苦しみながら火だるまになる。蔦は焼け切れた。
かなり遠く。息切れしているマックスがサムズアップをしていた。
「マックスさん!?」
動きが止まった隙にアルフィーが足を三本、その巨体がバランスを崩す様にそぎ落とす。エルナも槍を投げて目を潰した。大きな音を立てて崩れ行く魔獣。最期の抵抗なのか再び蔦を伸し出した。
しかし、それは失敗した。何故なら上空にいたクライヴが飛び降りて、勢いよく戦斧で首を切り落としたからだ。魔獣はそのまま目を閉じて絶命した。
【勝利】
十数人の盗賊を集め、縛りあげて座らせていた。その間にマックスと手の空いてる数人には、ここに来た経緯と自分たちの事情を手早く説明した。
マックスたちが怒りの形相で彼等を睨み付ける。
「さて、どう苦しませて殺そうかのう……」
「くっ……俺がこんなガキどもに!?」
「お頭ぁ! おれぁまだ死にたくねぇよ!」
「黙れ黙れ! お前たちはそうやって何人の人を殺めて来たんだ!」
「そうだ! そうだ! 決して許される事じゃない!?」
アルフィーは目を閉じていた。そして、何かを決心したのか口を開いた。
「マックスさん……彼等の命……俺に預けてくれませんか?」
「はぁ?」
余りの予想外に、盗賊たちの方が間抜けな声を出す。
「なッ!? お主、自分が何を言っているのか分かっておるのかぁ!?」
クライヴとエルナもそれに猛反対する。
「アルフィー……こういう奴等を生かしておいても得は無い。速やかに殺すべきだ」
「そうよッ。連れて行くと空の島が汚れる!」
盗賊の部下はそれに便乗して命乞いを始めた。
「た、助けてくれ! 俺たちは生きるために仕方なくやったんだ! ひぃ!」
エルナがその盗賊に槍を押し付けて黙らせた。
「アルフィー。馬鹿な事を言ってないで早く処罰しよ。こんな奴等が改心するはずないでしょ!」
「お主……この盗賊共は、ワシ等の憎悪の対象と言う事を忘れたのかのう?」
「決してそんなことは……しかし、それを承知のうえでお願いしたくあります……」
「それでは……もしこの者たちを生かし、お主たちの大切な者たちの命が奪われたらどうするつもりかな?」
「……」
アルフィーは剣をマックスの足元に投げた。
「その盗賊たちと同じく……如何様にも。罰を受けましょう……」
「……その程度で償えるとでも?」
「……」
そこでボスが話し始めた。
「じいさん……俺たちのやった事は一生許される事は無いんだろうな」
「当然じゃ!」
「なぁ……俺たちが苦しむ姿を見たいんだろ?」
「……」
中年の男は大きな声で野次を飛ばした。
「どうせ生き延びようと必死なだけだ! マックスさん、そいつらの話を聞く事はない!」
盗賊の感情に動きは無く、マックスの眼を見て言う。
「粗末な食量で生かし、やりたくない事を毎日やらせ。それを見てあんたらは満足する……少しでも抵抗すれば、好きに痛めつけ、殺せば良い……」
「ボ、ボス! そんなのは嫌ですぜ!」
その気持ち悪さにマックスはうろたえた。
「な、何のために……じゃ」
「俺の半分にも満たない歳の小僧に。そんな覚悟を見せられちゃ仕方なねぇ。俺も腹を括っただけのことだ……」
ボスは顔を地面に埋もれさせるほど押し付けながら命乞いを見せた。
「命だけは見逃してくれねぇか!」
「ぐ……」
マックスは皆を見た。その表情を見て彼もまた選択をする。
「……条件がある」
「条件、ですか?」
「その者たちは仕事以外の時は隔離する。そして、ワシ等がそれを見張る」
「しかし、マックスさんたちにそんな事をさせる訳には行きません。俺が」
「お主は、この様なモノに縛られるには、勿体ない器じゃ。それに最初に犠牲になるのはワシ等で良いじゃろうて……」
「……」
「空の島をその様な地形にする事は可能ですかな? レティシア女王陛下……」
「えっ……で、出来ると思います。でも良いんですか?」
話した事も無い中年の男たちが言う。
「俺たちの弱さが盗賊を招いた。アルフィー君はそれを助けようとしただけ」
「勿論盗賊を許す訳じゃない! 少しでも悪さをしたらすぐにでも殺してやる!」
「あんた等は、皆の命の恩人だからな……」
結局は大人たちに守られる。自分の未熟さを痛感するアルフィー。そして、盗賊たちは無言であった。何を考えていたのかは分からなかった。
【迷いと前進】
空の島に付いたアルフィーは一人で地上を見ていた。そこにレティシアが近づく。
「俺は……やっぱり間違ってたかな」
「う~ん。分からない」
「そっか」
「どうしてあの人たちを助けようと思ったの?」
「……自分でも分からない。彼等には死んで欲しく無かったのかも……」
それを聞いたレティシアはクスクスと笑っていた。
「アルフィーは、やっぱりアルフィーだなーって。うん、これで良かったと思う」
「それは褒めている……のか?」
「さあ、どうでしょう~」
レティシアはその後、怒るでも喋るでも無く、ただアルフィーの隣に座って、一緒にその絶景を眺めていた。彼女の表情は夕焼けがほどよく照らし、よく見えなかった。それを含めアルフィーは、この瞬間を大切に感じた。
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