92 / 100
第八章 謎の男たち
第3話 外堀から
しおりを挟む
【宿屋】
厄介ごとを片付けて二人が部屋に戻る。姉妹が唖然としていた。
「な、何がどうなって、そうなったんだ?」
「軽く話し合っただけだ。中々良い奴等だった」
「お前等から絡みに行かない限りは大丈夫だ。もう忘れろ」
「……き、君達、一体何者なの……?」
「一般市民だ」
「……ちっ、聞くなって事か……」
姉妹は助かったなら何でもいいやと考え始める。そこで、プリシラが思いついた様に言った。
「あ、そうだ。魔導都市グリモマギアスの使い魔って、知ってる?」
「知らん」「知らねー」
「うわっ。なんか嘘くさっ」
「なぁ、本当に知らないのか?」
「本当に知らん。都市には行ったのか?」
「行ったに決まってんだろ。それでも分からなかったんだよ」
「それなら聞くまでも無いだろ」
「……まぁな。思ったほど大都市って訳じゃなかったしな。噂だったか」
「はぁ~。諦めるしかないか~」
プリシラがそう言いながらベッドに潜り込んだ。テーブルを見ると桶があった。既に体を拭いた後のようだ。
「どしたのぉ? 私の事気になるー?」
「人の部屋でよくもまあ、遠慮が無いな、と」
「アハハ♪ 可愛い女の子と一緒なんて嬉しいでしょー。あ、君たちは雰囲気が好みだよ~」
「そうか……じゃあもう寝ろ……ん?」
「もーそんな事言って~。嬉しい癖に~」
「……」
ルーベンが一瞬止まった。何かに気が付いたようだ。そして、言う。
「嬉しい。実は最高に好きだ。その性格とかが最高だな。というかもう愛してると言っても良いな。次会った時に結婚しよう」
ルーベンが急に方向転換をした。
「え~ほんとに~?」
「ほんとほんと」
「うれしぃ~。でも、残念だけど。先約が居るからごめんね~。もう少し会うのが早かったら分からないかったかもー」
ルーベンが心の中で舌打ちをした。そこで遅れて気が付いたルディも乗って来た。
「姉上の方……お名前は?」
「な、何だよ急に……」
「ヘシカお姉ちゃんだよ」
「ヘシカか。好きだ。次会った時結婚しよう……」
「わわ、わ、私も先約がいるんだよ……わ、悪いな……その、嬉しいけどよ……すまん……ッ」
ヘシカはそういう経験が少ない様で照れていたが、しっかりと断った。プリシラは何時もと対応が違って、珍しいなと思いながらそれを見ていた。そこでルーベンがふと疑問に思った。
「……ところで、その先約? 誰なの?」
「え~、嫉妬ぉ? 可愛いぃっ♪」
「……うん、恋敵だからな」
「んー。殺すのは無しだよ?」
「しないしない。俺は正々堂々と心を奪う主義だ」
「仕方ないな~。クロウって人だよぉ」
「わ、私はコールって男だっ……言わせんなよっ……」
「?」「?」
二人は聞き間違いを疑った。しかし同時に、あやふやにするのは危険だと感じた。ルディが風魔法を使ってルーベンの背中に文字を書いた。ルーベンは背中に手を回してジェスチャーで会話する。
(なんの話か知っているか?)
(まったく知らない)
「その、クロウ君? って言ったっけ? つ、付き合ってるの?」
「そのコールさんとやらも……」
プリシラが照れ、モジモジとしながらも言った。
「う、うん……毎日お互いが寄り添って離れないくらいだよ。結婚ももうそろそろだね」
「ま、まあ。そうとも言えるなっ。うん」
ヘシカもそれに同意する。
(お前は分かるが、俺は知らないぞ)
(いや、そんな話は無い。こいつら勝手に捏造してんぞ)
(まさか、記憶の破損では? その部分が勝手に補完されているとか)
(分からん。分からんが、こいつ等がやばいという事は分かった)
(そうだな……はっ。同名なのでは)
(それだ!)
「その男は今何処に?」
「ん~細かく聴き過ぎじゃない~。君達強そうだし、何か怖いよ~」
「いや、絶対そういうのじゃない。暇が合ったら顔が見たいというか」
「でもまあ、助けてもらったし、大丈夫そう……かも?」
「はっ。コールなら大丈夫だ。黒等級と見せかけた金等級だからな」
「う~ん。そうなんだよね……クロウは白等級だから……」
「あ、その等級でクロウって言ったらもしかして、ファクティスの酒場で聞いたかも」
「ぅ……あ、あのさ……絶対に殺さないでね……」
さっきまでの強気でからかう感じは無く、若干涙目だった。一度、似た様な経験があるのだろう。
「ああ……約束する」
「良かった……」
(どういうこと?)
(分からん……)
(とにかく帰ったら状況確認、最悪の場合は誤解を解かねばな)
(だな……)
ヘシカもベッドに入って言う。
「それにしても、部屋が一緒か。久しぶりだな」
「だね~」
「姉妹なのに違う部屋なのか? 一緒の方が安くすむだろう?」
「えー、なにー……興味あるの?」
それに返答する前にヘシカがウンザリとした様子になる。
「最近、夜になると五月蠅いんだよ。布団の中でもぞもぞと動くし。思い人の名前を繰り返すし……」
「あー……」
ルーベンは察したので、それ以上何も聞かなかった。
「違うよ! ていうかお姉ちゃんも似たようなもんじゃないっ」
「プリシラ……残念だが、それは無い」
「俺たちは外に出てようか?」
「いや、居てくれた方が助かる……ほんとにマジで……ッ」
「だから違うってっー!」
珍しく姉にからかわれる妹がいた。その後姉妹はベッド、男二人は床で寝るのであった。一日ぶりに熟睡出来るので自然に笑顔になる姉妹。気持ちよさそうに寝ていた。朝になると、姉妹は旅の支度をする。
「色々とありがとね♪」
「本当に助かった」
「……この辺には少し寒い地域もある。ローブを羽織った方が良い。お腹が冷える」
「でも、この辺にずっといるわけじゃないし~」
「体調管理は大切だ。そんな事じゃ強くなれないぞ。後ケチ臭いと、その故郷の男に嫌われるんじゃないか?」
「そうかな~? ん~。じゃあ買おっかな」
「私もマントじゃなくローブにするか……」
「二人はこの辺の人?」
「いや、旅人だ」
「そっかー。じゃあまた何処かで会うかもしれないね」
「かもな」
「またね~♪」「またな」
「ああ……」「じゃあな」
姉妹は笑顔で去って行った。二人は彼女等の姿が見えなくなると言う。
「今までよく生きてたな……」
「厄介ごとを惹きつけるが、運も惹きつけるようだな」
「本当に計画性の無いギリギリの遠征だな。今回の使い魔、丁度良いかもな」
「そうだな」
二人は呆れながらポツリとそんな会話をしていた。
厄介ごとを片付けて二人が部屋に戻る。姉妹が唖然としていた。
「な、何がどうなって、そうなったんだ?」
「軽く話し合っただけだ。中々良い奴等だった」
「お前等から絡みに行かない限りは大丈夫だ。もう忘れろ」
「……き、君達、一体何者なの……?」
「一般市民だ」
「……ちっ、聞くなって事か……」
姉妹は助かったなら何でもいいやと考え始める。そこで、プリシラが思いついた様に言った。
「あ、そうだ。魔導都市グリモマギアスの使い魔って、知ってる?」
「知らん」「知らねー」
「うわっ。なんか嘘くさっ」
「なぁ、本当に知らないのか?」
「本当に知らん。都市には行ったのか?」
「行ったに決まってんだろ。それでも分からなかったんだよ」
「それなら聞くまでも無いだろ」
「……まぁな。思ったほど大都市って訳じゃなかったしな。噂だったか」
「はぁ~。諦めるしかないか~」
プリシラがそう言いながらベッドに潜り込んだ。テーブルを見ると桶があった。既に体を拭いた後のようだ。
「どしたのぉ? 私の事気になるー?」
「人の部屋でよくもまあ、遠慮が無いな、と」
「アハハ♪ 可愛い女の子と一緒なんて嬉しいでしょー。あ、君たちは雰囲気が好みだよ~」
「そうか……じゃあもう寝ろ……ん?」
「もーそんな事言って~。嬉しい癖に~」
「……」
ルーベンが一瞬止まった。何かに気が付いたようだ。そして、言う。
「嬉しい。実は最高に好きだ。その性格とかが最高だな。というかもう愛してると言っても良いな。次会った時に結婚しよう」
ルーベンが急に方向転換をした。
「え~ほんとに~?」
「ほんとほんと」
「うれしぃ~。でも、残念だけど。先約が居るからごめんね~。もう少し会うのが早かったら分からないかったかもー」
ルーベンが心の中で舌打ちをした。そこで遅れて気が付いたルディも乗って来た。
「姉上の方……お名前は?」
「な、何だよ急に……」
「ヘシカお姉ちゃんだよ」
「ヘシカか。好きだ。次会った時結婚しよう……」
「わわ、わ、私も先約がいるんだよ……わ、悪いな……その、嬉しいけどよ……すまん……ッ」
ヘシカはそういう経験が少ない様で照れていたが、しっかりと断った。プリシラは何時もと対応が違って、珍しいなと思いながらそれを見ていた。そこでルーベンがふと疑問に思った。
「……ところで、その先約? 誰なの?」
「え~、嫉妬ぉ? 可愛いぃっ♪」
「……うん、恋敵だからな」
「んー。殺すのは無しだよ?」
「しないしない。俺は正々堂々と心を奪う主義だ」
「仕方ないな~。クロウって人だよぉ」
「わ、私はコールって男だっ……言わせんなよっ……」
「?」「?」
二人は聞き間違いを疑った。しかし同時に、あやふやにするのは危険だと感じた。ルディが風魔法を使ってルーベンの背中に文字を書いた。ルーベンは背中に手を回してジェスチャーで会話する。
(なんの話か知っているか?)
(まったく知らない)
「その、クロウ君? って言ったっけ? つ、付き合ってるの?」
「そのコールさんとやらも……」
プリシラが照れ、モジモジとしながらも言った。
「う、うん……毎日お互いが寄り添って離れないくらいだよ。結婚ももうそろそろだね」
「ま、まあ。そうとも言えるなっ。うん」
ヘシカもそれに同意する。
(お前は分かるが、俺は知らないぞ)
(いや、そんな話は無い。こいつら勝手に捏造してんぞ)
(まさか、記憶の破損では? その部分が勝手に補完されているとか)
(分からん。分からんが、こいつ等がやばいという事は分かった)
(そうだな……はっ。同名なのでは)
(それだ!)
「その男は今何処に?」
「ん~細かく聴き過ぎじゃない~。君達強そうだし、何か怖いよ~」
「いや、絶対そういうのじゃない。暇が合ったら顔が見たいというか」
「でもまあ、助けてもらったし、大丈夫そう……かも?」
「はっ。コールなら大丈夫だ。黒等級と見せかけた金等級だからな」
「う~ん。そうなんだよね……クロウは白等級だから……」
「あ、その等級でクロウって言ったらもしかして、ファクティスの酒場で聞いたかも」
「ぅ……あ、あのさ……絶対に殺さないでね……」
さっきまでの強気でからかう感じは無く、若干涙目だった。一度、似た様な経験があるのだろう。
「ああ……約束する」
「良かった……」
(どういうこと?)
(分からん……)
(とにかく帰ったら状況確認、最悪の場合は誤解を解かねばな)
(だな……)
ヘシカもベッドに入って言う。
「それにしても、部屋が一緒か。久しぶりだな」
「だね~」
「姉妹なのに違う部屋なのか? 一緒の方が安くすむだろう?」
「えー、なにー……興味あるの?」
それに返答する前にヘシカがウンザリとした様子になる。
「最近、夜になると五月蠅いんだよ。布団の中でもぞもぞと動くし。思い人の名前を繰り返すし……」
「あー……」
ルーベンは察したので、それ以上何も聞かなかった。
「違うよ! ていうかお姉ちゃんも似たようなもんじゃないっ」
「プリシラ……残念だが、それは無い」
「俺たちは外に出てようか?」
「いや、居てくれた方が助かる……ほんとにマジで……ッ」
「だから違うってっー!」
珍しく姉にからかわれる妹がいた。その後姉妹はベッド、男二人は床で寝るのであった。一日ぶりに熟睡出来るので自然に笑顔になる姉妹。気持ちよさそうに寝ていた。朝になると、姉妹は旅の支度をする。
「色々とありがとね♪」
「本当に助かった」
「……この辺には少し寒い地域もある。ローブを羽織った方が良い。お腹が冷える」
「でも、この辺にずっといるわけじゃないし~」
「体調管理は大切だ。そんな事じゃ強くなれないぞ。後ケチ臭いと、その故郷の男に嫌われるんじゃないか?」
「そうかな~? ん~。じゃあ買おっかな」
「私もマントじゃなくローブにするか……」
「二人はこの辺の人?」
「いや、旅人だ」
「そっかー。じゃあまた何処かで会うかもしれないね」
「かもな」
「またね~♪」「またな」
「ああ……」「じゃあな」
姉妹は笑顔で去って行った。二人は彼女等の姿が見えなくなると言う。
「今までよく生きてたな……」
「厄介ごとを惹きつけるが、運も惹きつけるようだな」
「本当に計画性の無いギリギリの遠征だな。今回の使い魔、丁度良いかもな」
「そうだな」
二人は呆れながらポツリとそんな会話をしていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる