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第一章 灰かぶり公子
1-19 セインの裁量2
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強い言葉で「解雇」と冷然と言い放ったセインに、ベンは飛び上がらんばかりに身体を震わせ、頭を上げた。
「セイン様! 申し訳ありません、俺は、ただイゼル様の……っ」
「兄上に命令されたとして、それを聞き入れ、実行したのは自らの意思だよね。本来なら僕に報告し、是非を問うべきだった」
そもそも初めからベンが味方をしていれば、セインが別邸に追いやられることも、父親に捨てられたと刷り込まれることもなく、ここまで負け犬根性を植え付けられることもなかったかもしれない。
「解雇だけでよいのか?」
「ベンを掌握できていなかった落ち度は、僕にもあります。ただ、もう顔を見たくありません」
「よかろう……セイン付き召使いベンを、今日限りその職から外し、加えて侯爵家より解雇。その者を、即刻叩き出せ」
どこからか現れた御仕着姿の使用人軍団が、泣きを入れるベンの両脇を抱えて、ずるずると引き摺っていった。その様子を見ていたイゼルとビサンドの使用人は、次は自分の番だとばかりに震え上がった。
しかしセインは、彼らの処遇を問う侯爵に首を振った。
「ベンは主を裏切ったので罰を受けました。彼らは主に従っただけ、それ以上でもそれ以下でもありません」
「なるほどな、こちらの処罰はこちらで勝手にやるとしよう」
侯爵が言うのは、某秘書と彼らの母、そしてイゼル、ビサンド本人達も含め、だ。セインが個人的に彼らの罰を望んだとなれば、よりわだかまりを深くするだけなので、その判断は賢明といえた。
結局のところ、兄弟と争い、蹴落とすという行為自体に、罰が与えられることはなかった。もしかしたら、勝手に本邸から追い出したり、食事に手を加え、セインの生命を脅かすほどの大事になっていなければ、侯爵本人は出張ってこなかったかもしれない。
「それで、セインはお部屋に戻るのね?」
手のひらのひよこを撫でつつ、フロンは笑顔で聞いた。
「そうだな、アメリダが使っていた部屋はそのままのはずだ。本邸へ戻るがいい」
アメリダとは、セインの母親の名である。
セインは少し思案する様子を見せて、やがて小さく首を振った。
「……いえ、よろしければあの別邸をそのまま使わせてください」
「なに? だが、あそこは取り壊し予定だろう」
「差し支えなければ、あのままにしてもらえませんか。見たところ、古くはありますが、木材はしっかりしてますし、少し整えればかなり快適になると思います」
これからのことを考えると、周りの目がない方が都合がよかった。今回のことで基本的な材料の心配もなくなったし、「ひよこ」のこともあって、ちょっといろいろ試したいことが増えたのだ。
すぐにでも帰って、検証したいことが山ほどある。
「なにか考えがあるようだな……それを望んでいるなら、そうするがよい。まあ、アメリダの部屋はそのままにしておく、自由にするがよい」
「セインは変わってるわね。でも、わたくしが戻っているときは、ちゃんと顔を見せにくるのよ。もちろん、この子も連れてね」
今回のことは確かに二人に助けられたけれど、おそらく侯爵は、セインを助けたというよりイゼル達の愚かさに腹を立てたに過ぎない。
いつも彼らの目が届くわけではないし、やはり自らの力だけで立ち向かえるようにならなければならないだろう。
「ありがとうございます。今回の事では、お手数をおかけしました」
「セイン様! 申し訳ありません、俺は、ただイゼル様の……っ」
「兄上に命令されたとして、それを聞き入れ、実行したのは自らの意思だよね。本来なら僕に報告し、是非を問うべきだった」
そもそも初めからベンが味方をしていれば、セインが別邸に追いやられることも、父親に捨てられたと刷り込まれることもなく、ここまで負け犬根性を植え付けられることもなかったかもしれない。
「解雇だけでよいのか?」
「ベンを掌握できていなかった落ち度は、僕にもあります。ただ、もう顔を見たくありません」
「よかろう……セイン付き召使いベンを、今日限りその職から外し、加えて侯爵家より解雇。その者を、即刻叩き出せ」
どこからか現れた御仕着姿の使用人軍団が、泣きを入れるベンの両脇を抱えて、ずるずると引き摺っていった。その様子を見ていたイゼルとビサンドの使用人は、次は自分の番だとばかりに震え上がった。
しかしセインは、彼らの処遇を問う侯爵に首を振った。
「ベンは主を裏切ったので罰を受けました。彼らは主に従っただけ、それ以上でもそれ以下でもありません」
「なるほどな、こちらの処罰はこちらで勝手にやるとしよう」
侯爵が言うのは、某秘書と彼らの母、そしてイゼル、ビサンド本人達も含め、だ。セインが個人的に彼らの罰を望んだとなれば、よりわだかまりを深くするだけなので、その判断は賢明といえた。
結局のところ、兄弟と争い、蹴落とすという行為自体に、罰が与えられることはなかった。もしかしたら、勝手に本邸から追い出したり、食事に手を加え、セインの生命を脅かすほどの大事になっていなければ、侯爵本人は出張ってこなかったかもしれない。
「それで、セインはお部屋に戻るのね?」
手のひらのひよこを撫でつつ、フロンは笑顔で聞いた。
「そうだな、アメリダが使っていた部屋はそのままのはずだ。本邸へ戻るがいい」
アメリダとは、セインの母親の名である。
セインは少し思案する様子を見せて、やがて小さく首を振った。
「……いえ、よろしければあの別邸をそのまま使わせてください」
「なに? だが、あそこは取り壊し予定だろう」
「差し支えなければ、あのままにしてもらえませんか。見たところ、古くはありますが、木材はしっかりしてますし、少し整えればかなり快適になると思います」
これからのことを考えると、周りの目がない方が都合がよかった。今回のことで基本的な材料の心配もなくなったし、「ひよこ」のこともあって、ちょっといろいろ試したいことが増えたのだ。
すぐにでも帰って、検証したいことが山ほどある。
「なにか考えがあるようだな……それを望んでいるなら、そうするがよい。まあ、アメリダの部屋はそのままにしておく、自由にするがよい」
「セインは変わってるわね。でも、わたくしが戻っているときは、ちゃんと顔を見せにくるのよ。もちろん、この子も連れてね」
今回のことは確かに二人に助けられたけれど、おそらく侯爵は、セインを助けたというよりイゼル達の愚かさに腹を立てたに過ぎない。
いつも彼らの目が届くわけではないし、やはり自らの力だけで立ち向かえるようにならなければならないだろう。
「ありがとうございます。今回の事では、お手数をおかけしました」
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