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第五章 拠点
5-1 旧使用人館
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ロルシー侯爵家には広大な庭園があり、屋敷の裏手側には表にも負けないほどの敷地が広がっている。その半分を果樹園と侯爵家が使う野菜やハーブなどを育てる畑。そして、訓練場などがあり、その隅には使用人の館が立てられている。
この使用人館は最近建てられたもので、旧使用人館は取り壊し予定だったが、急遽そのまま残されることとなり、今は絶賛改築中である。
とはいえ、それを実行しているのはロルシー家当主ではない。
ここ二年ほどそこで寝食をしていた、侯爵家九男のセインである。
「おお、外壁を整えるだけでも結構綺麗になるもんだな」
もともと木造なので、思いきって外壁を剥がしてほぼ骨組みに近い状態にしてから、改装を進めている。今はまだ屋根を葺き、ようやく外装が整ってきたところだ。
「これはセイン様、もう少ししたら内装を始めますんで、もうしばらくご辛抱ください」
中年の男は、セインを見つけると慌てて駆け寄り、帽子を取って挨拶した。
「いやいや、慌てなくていいよ。悪いね、これが専門ってわけじゃないのに」
「とんでもない! セイン様は私の命の恩人、いえ、家族全員の命の恩人です。しかも、こんな仕事まで頂いて、感謝してもしきれません」
今にも土下座しそうになるのを、セインは慌てて止めつつ、笑って首を振る。
何度もお辞儀をしながら、また現場に戻っていく、彼の名はゲイルといった。そう、あの遭難者のゲイルである。
詳しく説明すると長くなるが、すごく簡単に事の成り行きを述べるなら、奴隷である彼の家族を買い取り、ゲイルもまとめてセインが雇ったのだ。
ついでに町の大工を臨時で数人雇い入れ、あの今にも崩れ落ちそうだった旧使用人館を、住みやすいように改築している。
「天空、働いてるか?」
『……やってるよう! なあ、そろそろ許してくれよ、オイラこのまま霊力使い続けたら、ほんとに消えちゃうってばー!』
『自業自得じゃ、あんなやんちゃをしたのだからな。反省して、大人しゅう仕事をするのじゃ』
目の前には、きれいに耕され、みるからに柔らかそうな地面が広がっていた。その左右には荒れ地がひろがっているので、数日前まではそこも同じような状態だったのだろう。
媒体になる肉体を持たない彼らにとって、セインを経由せず、能力を使うのはひどく消耗するのだ。もちろん、セインも消滅するまで虐めるつもりはないが、ちょっとは反省してもらわないと困る。
『土神なんじゃろ、それくらいお茶の子さいさいじゃ。ほれ、あと少しじゃよ、がんばれ』
おかっぱ頭の童姿のツクに急かされながら、泣く泣く土を耕している。ちなみに天空の姿は、言葉遣いからも想像できたが、セインと同じくらいの背丈の子供の姿だった。明るい栗毛に、金色の目、袖のない作務衣のような格好に、足元は裸足に草履だった。
――まあ、天空のことはツクに任せておけばいいか。
あの怒涛のヌシ戦から、すでに一か月半が経った。あの出来事のあと、セインの身には、それこそ一年分くらいのいろいろな出来事が起こった。
セインは、思い出しつつ歩きながら、腕に抱えていたハクの頭を撫でた。
この使用人館は最近建てられたもので、旧使用人館は取り壊し予定だったが、急遽そのまま残されることとなり、今は絶賛改築中である。
とはいえ、それを実行しているのはロルシー家当主ではない。
ここ二年ほどそこで寝食をしていた、侯爵家九男のセインである。
「おお、外壁を整えるだけでも結構綺麗になるもんだな」
もともと木造なので、思いきって外壁を剥がしてほぼ骨組みに近い状態にしてから、改装を進めている。今はまだ屋根を葺き、ようやく外装が整ってきたところだ。
「これはセイン様、もう少ししたら内装を始めますんで、もうしばらくご辛抱ください」
中年の男は、セインを見つけると慌てて駆け寄り、帽子を取って挨拶した。
「いやいや、慌てなくていいよ。悪いね、これが専門ってわけじゃないのに」
「とんでもない! セイン様は私の命の恩人、いえ、家族全員の命の恩人です。しかも、こんな仕事まで頂いて、感謝してもしきれません」
今にも土下座しそうになるのを、セインは慌てて止めつつ、笑って首を振る。
何度もお辞儀をしながら、また現場に戻っていく、彼の名はゲイルといった。そう、あの遭難者のゲイルである。
詳しく説明すると長くなるが、すごく簡単に事の成り行きを述べるなら、奴隷である彼の家族を買い取り、ゲイルもまとめてセインが雇ったのだ。
ついでに町の大工を臨時で数人雇い入れ、あの今にも崩れ落ちそうだった旧使用人館を、住みやすいように改築している。
「天空、働いてるか?」
『……やってるよう! なあ、そろそろ許してくれよ、オイラこのまま霊力使い続けたら、ほんとに消えちゃうってばー!』
『自業自得じゃ、あんなやんちゃをしたのだからな。反省して、大人しゅう仕事をするのじゃ』
目の前には、きれいに耕され、みるからに柔らかそうな地面が広がっていた。その左右には荒れ地がひろがっているので、数日前まではそこも同じような状態だったのだろう。
媒体になる肉体を持たない彼らにとって、セインを経由せず、能力を使うのはひどく消耗するのだ。もちろん、セインも消滅するまで虐めるつもりはないが、ちょっとは反省してもらわないと困る。
『土神なんじゃろ、それくらいお茶の子さいさいじゃ。ほれ、あと少しじゃよ、がんばれ』
おかっぱ頭の童姿のツクに急かされながら、泣く泣く土を耕している。ちなみに天空の姿は、言葉遣いからも想像できたが、セインと同じくらいの背丈の子供の姿だった。明るい栗毛に、金色の目、袖のない作務衣のような格好に、足元は裸足に草履だった。
――まあ、天空のことはツクに任せておけばいいか。
あの怒涛のヌシ戦から、すでに一か月半が経った。あの出来事のあと、セインの身には、それこそ一年分くらいのいろいろな出来事が起こった。
セインは、思い出しつつ歩きながら、腕に抱えていたハクの頭を撫でた。
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