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第五章 拠点
5-10 ひとときの平和
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「今夜のサラダの付け合わせに良さそうだね」
生食可能な小さな赤いカブが、初めての収穫物となった。
数か月かかる作物はまだ育てておらず、今はハーブや葉野菜など、数週間で栽培可能なものが中心だ。
これから畑を管理する予定のゲイルが、まだ経験不足なので簡単なものから栽培を始めたのだ。そのうち専門家を雇って本格的にやる予定である。
「これは、どうもセイン様。ハーブも元気よく育ってくれてます。こんな立派な畑を作ってくださったおかげです」
ゲイルとその妻フーリエが、セインに気が付くと土を払って立ち上がり、深々とお辞儀をした。娘のレミも、両親に習ってぴょこんと立ち上がって頭を下げた。照れくさそうな笑顔を、ちょっとだけこちらに向けているのが愛嬌があって可愛らしい。
結構な広さがある別館を、この家族だけでやりくりするのは大変ではあるが、サキや、こっそり式たちにも手伝ってもらって、今のところは何とかやっている。
ちなみにフーリエとレミの身分を、あえて奴隷から解放しなかったのは、彼女たちが市民権を失ってしまったからである。そのためセインの奴隷という身分を失うと、そのまま流民になってしまうのだ。
ハンターや行商人、吟遊詩人など、旅をすることを前提とした職業に多い身分で、所によっては自由民とも呼ばれる。
市民権には、その土地に住むためのあらゆる税金の義務が伴うが、自由民には通行税や、滞在に伴う飲食や宿泊といった行動の課税のみなので、あえて好んで自由民を選ぶ者も多い。
半面、信用の面でどうしても不利になるが、だからこそハンターとして、商人として、国際的なギルドの身分を手に入れるのである。
ちなみに市民権は、その領地によって入手難易度が変わる。
それは金額だったり、それまで培ってきた信用だったりと様々だ。そして侯爵家のお膝元でもあるこの辺り一帯、鉱山都市も含めてだが、その領地の市民権は、正直な話、安価とは言えなかった。
市民権を持つ両親から産まれれば、自動的に与えられる市民権だが、よそ者や、何らかの事情で一度失った者が、新たに手に入れようと思えばそれなりに大変だということである。
今回の場合、侯爵家に使用人として入るならかえって奴隷の方が簡単だったという面もあった。なにしろ契約によって縛られた奴隷は、信用という点で、これより確かなものはないからだ。
「セイン様、お話し中申し訳ございません」
そんな時、本邸の召使が珍しく息を切らせてやって来た。
「そんなに慌てて、何かあったの?」
「い、いえ、すみません。あの、旦那様がお呼びです、至急書斎までお願いできますでしょうか」
そういえば別邸に移ってからあいさつに行ってなかったが、伝えに来た使用人の様子から見るに、そういった呑気な要件ではなさそうである。
考えてみれば、数日前にホールで会った兄デオルが、ようやく完成した別館の様子を一度も見に来なかったことが、そもそもおかしかったことに、遅ればせながら気が付いたセインだった。
生食可能な小さな赤いカブが、初めての収穫物となった。
数か月かかる作物はまだ育てておらず、今はハーブや葉野菜など、数週間で栽培可能なものが中心だ。
これから畑を管理する予定のゲイルが、まだ経験不足なので簡単なものから栽培を始めたのだ。そのうち専門家を雇って本格的にやる予定である。
「これは、どうもセイン様。ハーブも元気よく育ってくれてます。こんな立派な畑を作ってくださったおかげです」
ゲイルとその妻フーリエが、セインに気が付くと土を払って立ち上がり、深々とお辞儀をした。娘のレミも、両親に習ってぴょこんと立ち上がって頭を下げた。照れくさそうな笑顔を、ちょっとだけこちらに向けているのが愛嬌があって可愛らしい。
結構な広さがある別館を、この家族だけでやりくりするのは大変ではあるが、サキや、こっそり式たちにも手伝ってもらって、今のところは何とかやっている。
ちなみにフーリエとレミの身分を、あえて奴隷から解放しなかったのは、彼女たちが市民権を失ってしまったからである。そのためセインの奴隷という身分を失うと、そのまま流民になってしまうのだ。
ハンターや行商人、吟遊詩人など、旅をすることを前提とした職業に多い身分で、所によっては自由民とも呼ばれる。
市民権には、その土地に住むためのあらゆる税金の義務が伴うが、自由民には通行税や、滞在に伴う飲食や宿泊といった行動の課税のみなので、あえて好んで自由民を選ぶ者も多い。
半面、信用の面でどうしても不利になるが、だからこそハンターとして、商人として、国際的なギルドの身分を手に入れるのである。
ちなみに市民権は、その領地によって入手難易度が変わる。
それは金額だったり、それまで培ってきた信用だったりと様々だ。そして侯爵家のお膝元でもあるこの辺り一帯、鉱山都市も含めてだが、その領地の市民権は、正直な話、安価とは言えなかった。
市民権を持つ両親から産まれれば、自動的に与えられる市民権だが、よそ者や、何らかの事情で一度失った者が、新たに手に入れようと思えばそれなりに大変だということである。
今回の場合、侯爵家に使用人として入るならかえって奴隷の方が簡単だったという面もあった。なにしろ契約によって縛られた奴隷は、信用という点で、これより確かなものはないからだ。
「セイン様、お話し中申し訳ございません」
そんな時、本邸の召使が珍しく息を切らせてやって来た。
「そんなに慌てて、何かあったの?」
「い、いえ、すみません。あの、旦那様がお呼びです、至急書斎までお願いできますでしょうか」
そういえば別邸に移ってからあいさつに行ってなかったが、伝えに来た使用人の様子から見るに、そういった呑気な要件ではなさそうである。
考えてみれば、数日前にホールで会った兄デオルが、ようやく完成した別館の様子を一度も見に来なかったことが、そもそもおかしかったことに、遅ればせながら気が付いたセインだった。
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