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第七章 海への道
7-12 女将さん2
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あの後、とりあえず女将さんはそのまま解放した。事情は分からなかったが、彼女の様子からして訳ありそうだったし、なにより実際に盗みを働いたわけではない。いたずらに事を大きくするつもりがなかったセインは、改めて彼女の話を聞く場を設けることにした。
もちろん、人魚の卵に海水晶がないことは明らかなので、彼女のお願いをかなえることは出来ない。それでも、居ても立ってもいられず確認せずにはいられなかった理由が少々気になった。
もともと海水晶は、それほど高価なものでもない。
交易品として重宝はされていたが、それ自体に価値があるのかというと、それほどではないのだ。なにせ卵から取り出すと、その輝きの寿命は十数年程度で失われ、やがて砂のように形さえなくなるため、宝石としても価値がない。
一時期は薬としても用いられていたが、劇的な効能はなく、昨今手に入らないこともあって、次第に使われることはなくなったという。
あれから数時間が経ち、外はすっかり暗くなった。いつものように夕食を宿屋の食堂で済ませたが、その時には女将さんは見かけなかった。
「一日で結構大きくなったな……」
部屋に戻ると、ランプを窓際に置いて、卵を覗き込む。小指の先ほどになった黒い塊が、まるで呼吸をしているかのようにわずかに動いている。
セインがそっと指で触れると、こぽこぽと泡が沸き上がり、中心の黒い塊が泡に触れてくるくると回った。
「目が回っちゃうかな」
つい可笑しくなってセインが笑ったとき、部屋の扉がノックされた。
おそらく女将さんだろうと、窓際のランプをテーブルに戻した。そろそろ宿の食堂も終わりの時間なので、昼間の約束通り訪ねてきたのだ。
セインが入るように促すと、一番に飛び込んできたのは男性だった。入るなり、がばっと頭を下げたので顔は見えないが、かなりの大男である。
「昼間は家内が申し訳ありませんでした!」
その後ろから入って来た女将さんも、同じように頭を下げる。
どうやら夫婦そろって謝罪に来たようだ。息子がいると言っていたので既婚者だとは思ったが、宿屋で夫らしき人物は見たことがなかったので驚いた。
「どうか頭を上げてください。こちらには損害はなかったし、聞けば、女将さんは見ていただけなのに、かえってこちらの従魔が驚かせてしまいました。お怪我などされなかったですか」
「そ、そんな。私は全然大丈夫です」
恐縮して手を振る女将さんの横で、大男は窮屈そうに顔を上げた。ここの扉はそれほど背が高くないので、まっすぐ背筋を伸ばすと頭をぶつけそうだった。
「……あれ? どこかで」
セインは思わず呟いた。小さなランプ一つの明りは薄暗く、それほど顔ははっきり見えなかったが、ムキムキの筋肉を持つ、その大男にはなんとなく見覚えがあった。
もちろん、人魚の卵に海水晶がないことは明らかなので、彼女のお願いをかなえることは出来ない。それでも、居ても立ってもいられず確認せずにはいられなかった理由が少々気になった。
もともと海水晶は、それほど高価なものでもない。
交易品として重宝はされていたが、それ自体に価値があるのかというと、それほどではないのだ。なにせ卵から取り出すと、その輝きの寿命は十数年程度で失われ、やがて砂のように形さえなくなるため、宝石としても価値がない。
一時期は薬としても用いられていたが、劇的な効能はなく、昨今手に入らないこともあって、次第に使われることはなくなったという。
あれから数時間が経ち、外はすっかり暗くなった。いつものように夕食を宿屋の食堂で済ませたが、その時には女将さんは見かけなかった。
「一日で結構大きくなったな……」
部屋に戻ると、ランプを窓際に置いて、卵を覗き込む。小指の先ほどになった黒い塊が、まるで呼吸をしているかのようにわずかに動いている。
セインがそっと指で触れると、こぽこぽと泡が沸き上がり、中心の黒い塊が泡に触れてくるくると回った。
「目が回っちゃうかな」
つい可笑しくなってセインが笑ったとき、部屋の扉がノックされた。
おそらく女将さんだろうと、窓際のランプをテーブルに戻した。そろそろ宿の食堂も終わりの時間なので、昼間の約束通り訪ねてきたのだ。
セインが入るように促すと、一番に飛び込んできたのは男性だった。入るなり、がばっと頭を下げたので顔は見えないが、かなりの大男である。
「昼間は家内が申し訳ありませんでした!」
その後ろから入って来た女将さんも、同じように頭を下げる。
どうやら夫婦そろって謝罪に来たようだ。息子がいると言っていたので既婚者だとは思ったが、宿屋で夫らしき人物は見たことがなかったので驚いた。
「どうか頭を上げてください。こちらには損害はなかったし、聞けば、女将さんは見ていただけなのに、かえってこちらの従魔が驚かせてしまいました。お怪我などされなかったですか」
「そ、そんな。私は全然大丈夫です」
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セインは思わず呟いた。小さなランプ一つの明りは薄暗く、それほど顔ははっきり見えなかったが、ムキムキの筋肉を持つ、その大男にはなんとなく見覚えがあった。
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