5 / 35
第1章 奇跡の村娘降臨
第4話 砦戦
しおりを挟む
先頭を歩いていたアルテは、動き易くなる為にテーブルクロスで雑に巻いただけのワンピースを引き裂いた。胸はサラシ状に巻き、下半身をフンドシの要領で隠す。最後に残った布を腰巻にする。砂漠の踊り子といった様な格好になった。
恥ずかしげも無く素っ裸になるアルテを見ないように後ろを向くアレックスは、後ろでずっとふてくされているリリムと目が合った。
「何よ、私ってそんなに魅力無い?」
「悪魔相手には欲情するわけ無いだろ」
「昔からこの辺りの男達は皆、一度として私に逆らわないわ。たった一人残ったアンタみたいな童貞には興味ないし~。サキュバス達を引き連れて、全て搾り出して終おうかしら」
「ぼ、僕は悪魔には屈しない!」
「アンタはその妙な御守りに助けられているだけじゃない。それを外してみなさいよ。直ぐにでもアンタを快楽の虜にしてあげるわよ?」
「だ、誰が外すか!?」
耳まで真っ赤になって首に下げている御守りをギュッと握り締める。
「フフッ、興味あるくせに。まぁ、いつでも呼びなさい。手助けくらいはしてあげるわよ」
リリムは真っ赤な少年を飛び越えて、着替え終わったアルテに抱きつく。
「ねぇ、ナイトバロンの砦に本気で乗り込む気?」
「ああ。この体の持ち主アルテに体を貰った恩は返さないと、俺の気がすまん」
「私もアイツは嫌いだけど、魔族同士で潰し合うのは嫌なのよね~周りから何か言われそうだし」
「だから、お前は付いて来なくていいって言ってるだろ?それに、魔族に世間体は関係無いだろ。気に入らなかったから潰したでいいじゃないか」
「アルテさん、それはこいつが【傍観砦のリリム】だからですよ」
「どういうことだ?」
「ちょっと、アンタはすっこんでなさいよ」
アルテに抱き付いたまま、矢のような形の尻尾でブンブンと振り払う。それを簡単に躱してアルテの前に出る。
「リリムはこの辺りでは有名なんですよ。人を襲わない、ただ傍観しているだけの悪魔って。強いて悪さをあげれは、サキュバスとインキュバスの群れで夜中に魔法で眠らせて人々の精気を奪っていくこと。男だけ奪えば、女性が欲求不満になるのでしょうが、男女どちらからも精気を奪うため、朝目が覚めたら人々はただスッキリしているだけ。無害の悪魔って思われているんです」
「べ、別に私だって本気になれば村の一つや二つ、簡単に消せるわよ。ただ、私は殺しを快楽だと思えないだけ」
「だからこそ、悪魔同士で潰し合う行動を取れば、人間の味方をしていると思われます」
「何度も言うが、俺一人で行けば済む話だろ?」
「駄目よ、貴女が死んじゃったら私も死んじゃうんだから」
「僕もアルテさんに死んでほしくないです。それに、僕も強くなりたいので置いて行かないで下さい」
「あーもう好きにしろ。ヤバくても助けないからな。自分の身は自分で守れよ?」
「はいっ!頑張ります!」
俄然やる気になるアレックスはアルテの先を歩き出す。綺麗な美女を守る騎士にでもなったかの様だ。
「私の事は守ってよね~?」
「ふざけろ」
額をデコピンされてリリムは蹲る。涙目になって痛いじゃないと言いながらも、再び抱きつくのだった。
一時間程進んだところで、森を抜けることが出来た。そこからは草木の少ない丘が広がっている。道も荒れていて、砕けた岩や木片が至る所に散乱している。
「ナイトバロンはこの辺の町や村を襲うから、昔依頼された冒険者達が砦を攻めた事があるわ。結果は惨敗。ナイトバロンはこれといった強い部下のモンスターは居ないけれど、軍隊並に統率が取れた戦い方をするわ」
「ほう、軍隊か。面白そうだな」
「ナイトバロンも当然強いわよ。特に騎馬戦は注意ね。接近戦は貴女が負ける訳は無いけど、素早い移動攻撃は戦いづらいと思う」
「上等だ。受けてやるさ」
三人が丘を登って行くとやがて砦が見えてきた。閉ざされた門の前に、武装したゴブリンが二体門番をしているのが分かる。
「どうします?裏から周りこっそり潜入しますか?」
「馬鹿言え。このまま正面から殴り込む。力で恐怖を与える輩は、同じように力で潰せばいい。いい訳できない程にな」
そう言って道端の石ころを広い、門に向かって投げる。物凄い勢いで飛んだ石ころは門に大きな音で当たるなり粉々になる。
門番のゴブリン達は驚き、こちらに気付いた。だが、一体は門の中に入り、もう一体はショートソードを構えたままゆっくりと道を降りてくる。
「どうやら、一体は上に報告に行ったわね」
「別に構わねぇよ。アレックス、行くか?」
「はいっ!」
アレックスは、駆け上り降りてくるゴブリンの前に立った。構えて斬り合うも、一瞬でアレックスが斬り倒す。この程度は何の問題も無い様だ。
ギイイィィッと門の扉が開かれる。その奥から、隊列を組んだゴブリン達が行進してくる。数は30体くらいだ。
「アレックス、付いて来い。取り零しはお前がやれ!」
「はいっ!」
アルテは走り出した。その後をアレックスとリリムが追う。正面から飛び込んだアルテは技能を試してみる。あらゆる角度からの斬撃や刺突を【白刃取り】を使用して掴み、折る。武器破壊を繰り返す。
(何だ?両手で掴む必要が無く、片手や指でも掴むことが可能だ。一度掴むと相手の武器に伝わる力がゼロになってる?おいおい、一度掴めば武器を奪い放題じゃねーか)
次々と掴んで武器を奪い捨てて行く。ゴブリン達は慌てふためき隊列を乱す。そこへアレックスが斬り込んで行く。ゴブリン達を一方的に蹂躙する。
開始3分足らずで最初の戦闘は終了した。間を置かずして第2隊が現われた。今度は弓矢部隊もいる。
「悟、技能使い過ぎてMP切れにならないでよ?マインドダウンしたら意識飛ぶからね!」
飛び交う矢をかわしながら、アルテもそれはそうだと頷いた。
リリムは高く飛び上がり部隊の後ろに回り込む。
「いい加減、私も踏ん切りつけるしかないわね~。さぁ眠りなさい【スリープミスト】」
両手を突き出すと、薄紅色の霧が吹き出してゴブリン達を包み込む。霧を浴びたゴブリンから途端にバタバタと倒れて眠りだす。
「眠ったやつはアレックス、トドメを刺せ。俺は残りを片付ける」
難無く第2部隊も撃破した。三人はそのまま門を潜る。中は開けていて、左右に通路が別れている。
「どっちだ?」
「確か、左手の通路は食堂と地下牢とかだったかしら。右手の通路は軍議の間、謁見の間、客間、玉座ね。ナイトバロンは右手だと思うわ」
「じゃあ、僕は左手に向かいます。僕の索敵技能にモンスターとは違う生命体の反応が四つあるので村の生き残りの方がまだ囚われているかもしれませんから」
「恐らく女達ね。強姦されて種付けされる為に連れて来られたんだわ」
「なら俺も向かう。コイツの体が何か訴えてやがる」
感という訳では無く、右手に向かおうとした時に体が躊躇したのだ。
「分かりました。皆で向かいましょう」
アレックスの索敵を頼りにどんどん進む。現われるゴブリンをアルテが【瞬歩】で近づき、声を出す前に仕留めて行く。
地下に進む階段を見つけ降りて行くと、血の匂いが漂ってくる。始めに目に付くのは拷問部屋。使用されたばかりなのか、石床に大量の血液が溜まっている。
アレックスが部屋の先を指差す。
「そこに居ます」
三人は慎重に近づく。シクシクとすすり泣く声が聞こえてくる。格子越しに見えてきたのは、裸にされて部屋の隅で固まる様に集まって泣く女性達だ。
「皆さん、助けに来ました!」
アレックスが格子扉の鍵を壊す。女性達は恐怖の表情が消えぬまま、こちらを見る。その中の一人が立ち上がる。
「う、嘘・・・・。お姉ちゃん?!」
アルテの体が打ち震える。自然と涙が零れ落ちた。まさか・・・・妹が居たのか?!悟は体が自分の意思と違う反応をすることに、只々狼狽えることしかできなかった。
恥ずかしげも無く素っ裸になるアルテを見ないように後ろを向くアレックスは、後ろでずっとふてくされているリリムと目が合った。
「何よ、私ってそんなに魅力無い?」
「悪魔相手には欲情するわけ無いだろ」
「昔からこの辺りの男達は皆、一度として私に逆らわないわ。たった一人残ったアンタみたいな童貞には興味ないし~。サキュバス達を引き連れて、全て搾り出して終おうかしら」
「ぼ、僕は悪魔には屈しない!」
「アンタはその妙な御守りに助けられているだけじゃない。それを外してみなさいよ。直ぐにでもアンタを快楽の虜にしてあげるわよ?」
「だ、誰が外すか!?」
耳まで真っ赤になって首に下げている御守りをギュッと握り締める。
「フフッ、興味あるくせに。まぁ、いつでも呼びなさい。手助けくらいはしてあげるわよ」
リリムは真っ赤な少年を飛び越えて、着替え終わったアルテに抱きつく。
「ねぇ、ナイトバロンの砦に本気で乗り込む気?」
「ああ。この体の持ち主アルテに体を貰った恩は返さないと、俺の気がすまん」
「私もアイツは嫌いだけど、魔族同士で潰し合うのは嫌なのよね~周りから何か言われそうだし」
「だから、お前は付いて来なくていいって言ってるだろ?それに、魔族に世間体は関係無いだろ。気に入らなかったから潰したでいいじゃないか」
「アルテさん、それはこいつが【傍観砦のリリム】だからですよ」
「どういうことだ?」
「ちょっと、アンタはすっこんでなさいよ」
アルテに抱き付いたまま、矢のような形の尻尾でブンブンと振り払う。それを簡単に躱してアルテの前に出る。
「リリムはこの辺りでは有名なんですよ。人を襲わない、ただ傍観しているだけの悪魔って。強いて悪さをあげれは、サキュバスとインキュバスの群れで夜中に魔法で眠らせて人々の精気を奪っていくこと。男だけ奪えば、女性が欲求不満になるのでしょうが、男女どちらからも精気を奪うため、朝目が覚めたら人々はただスッキリしているだけ。無害の悪魔って思われているんです」
「べ、別に私だって本気になれば村の一つや二つ、簡単に消せるわよ。ただ、私は殺しを快楽だと思えないだけ」
「だからこそ、悪魔同士で潰し合う行動を取れば、人間の味方をしていると思われます」
「何度も言うが、俺一人で行けば済む話だろ?」
「駄目よ、貴女が死んじゃったら私も死んじゃうんだから」
「僕もアルテさんに死んでほしくないです。それに、僕も強くなりたいので置いて行かないで下さい」
「あーもう好きにしろ。ヤバくても助けないからな。自分の身は自分で守れよ?」
「はいっ!頑張ります!」
俄然やる気になるアレックスはアルテの先を歩き出す。綺麗な美女を守る騎士にでもなったかの様だ。
「私の事は守ってよね~?」
「ふざけろ」
額をデコピンされてリリムは蹲る。涙目になって痛いじゃないと言いながらも、再び抱きつくのだった。
一時間程進んだところで、森を抜けることが出来た。そこからは草木の少ない丘が広がっている。道も荒れていて、砕けた岩や木片が至る所に散乱している。
「ナイトバロンはこの辺の町や村を襲うから、昔依頼された冒険者達が砦を攻めた事があるわ。結果は惨敗。ナイトバロンはこれといった強い部下のモンスターは居ないけれど、軍隊並に統率が取れた戦い方をするわ」
「ほう、軍隊か。面白そうだな」
「ナイトバロンも当然強いわよ。特に騎馬戦は注意ね。接近戦は貴女が負ける訳は無いけど、素早い移動攻撃は戦いづらいと思う」
「上等だ。受けてやるさ」
三人が丘を登って行くとやがて砦が見えてきた。閉ざされた門の前に、武装したゴブリンが二体門番をしているのが分かる。
「どうします?裏から周りこっそり潜入しますか?」
「馬鹿言え。このまま正面から殴り込む。力で恐怖を与える輩は、同じように力で潰せばいい。いい訳できない程にな」
そう言って道端の石ころを広い、門に向かって投げる。物凄い勢いで飛んだ石ころは門に大きな音で当たるなり粉々になる。
門番のゴブリン達は驚き、こちらに気付いた。だが、一体は門の中に入り、もう一体はショートソードを構えたままゆっくりと道を降りてくる。
「どうやら、一体は上に報告に行ったわね」
「別に構わねぇよ。アレックス、行くか?」
「はいっ!」
アレックスは、駆け上り降りてくるゴブリンの前に立った。構えて斬り合うも、一瞬でアレックスが斬り倒す。この程度は何の問題も無い様だ。
ギイイィィッと門の扉が開かれる。その奥から、隊列を組んだゴブリン達が行進してくる。数は30体くらいだ。
「アレックス、付いて来い。取り零しはお前がやれ!」
「はいっ!」
アルテは走り出した。その後をアレックスとリリムが追う。正面から飛び込んだアルテは技能を試してみる。あらゆる角度からの斬撃や刺突を【白刃取り】を使用して掴み、折る。武器破壊を繰り返す。
(何だ?両手で掴む必要が無く、片手や指でも掴むことが可能だ。一度掴むと相手の武器に伝わる力がゼロになってる?おいおい、一度掴めば武器を奪い放題じゃねーか)
次々と掴んで武器を奪い捨てて行く。ゴブリン達は慌てふためき隊列を乱す。そこへアレックスが斬り込んで行く。ゴブリン達を一方的に蹂躙する。
開始3分足らずで最初の戦闘は終了した。間を置かずして第2隊が現われた。今度は弓矢部隊もいる。
「悟、技能使い過ぎてMP切れにならないでよ?マインドダウンしたら意識飛ぶからね!」
飛び交う矢をかわしながら、アルテもそれはそうだと頷いた。
リリムは高く飛び上がり部隊の後ろに回り込む。
「いい加減、私も踏ん切りつけるしかないわね~。さぁ眠りなさい【スリープミスト】」
両手を突き出すと、薄紅色の霧が吹き出してゴブリン達を包み込む。霧を浴びたゴブリンから途端にバタバタと倒れて眠りだす。
「眠ったやつはアレックス、トドメを刺せ。俺は残りを片付ける」
難無く第2部隊も撃破した。三人はそのまま門を潜る。中は開けていて、左右に通路が別れている。
「どっちだ?」
「確か、左手の通路は食堂と地下牢とかだったかしら。右手の通路は軍議の間、謁見の間、客間、玉座ね。ナイトバロンは右手だと思うわ」
「じゃあ、僕は左手に向かいます。僕の索敵技能にモンスターとは違う生命体の反応が四つあるので村の生き残りの方がまだ囚われているかもしれませんから」
「恐らく女達ね。強姦されて種付けされる為に連れて来られたんだわ」
「なら俺も向かう。コイツの体が何か訴えてやがる」
感という訳では無く、右手に向かおうとした時に体が躊躇したのだ。
「分かりました。皆で向かいましょう」
アレックスの索敵を頼りにどんどん進む。現われるゴブリンをアルテが【瞬歩】で近づき、声を出す前に仕留めて行く。
地下に進む階段を見つけ降りて行くと、血の匂いが漂ってくる。始めに目に付くのは拷問部屋。使用されたばかりなのか、石床に大量の血液が溜まっている。
アレックスが部屋の先を指差す。
「そこに居ます」
三人は慎重に近づく。シクシクとすすり泣く声が聞こえてくる。格子越しに見えてきたのは、裸にされて部屋の隅で固まる様に集まって泣く女性達だ。
「皆さん、助けに来ました!」
アレックスが格子扉の鍵を壊す。女性達は恐怖の表情が消えぬまま、こちらを見る。その中の一人が立ち上がる。
「う、嘘・・・・。お姉ちゃん?!」
アルテの体が打ち震える。自然と涙が零れ落ちた。まさか・・・・妹が居たのか?!悟は体が自分の意思と違う反応をすることに、只々狼狽えることしかできなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
33
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる