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第3章 スキルが美味しいって知らなかったよ⁈
038話 ロック鳥(2)
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荷馬車を隠した洞窟へと帰り着くと、二人が既に待っていて、ニヤリとドヤ顔を見せている。アラヤも卵を取り出して見せて、ドヤ顔を決め込んだ。
「捕まえられるかとヒヤヒヤしたぜ」
「明るかったら、危なかったでしょうね」
「とにかく、怪我も無く大成功だね。後は朝になったら出発するかな。軽く夜食を食べたら、寝るとしようか」
「店長、日が昇る前に出た方が良いと思います」
「うん、分かった。睡眠は短めにしよう」
三人は、上機嫌で夜食の準備を始めたのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
フユラ村から東へと進んだ森。そこで野営をする団体があった。
彼等は冒険者で、ギルドに来たフユラ村の住民の依頼、ゴブリンキングの討伐を受けてこの地まで来ていたのだ。
「…ったく!肝心のキングは居なかったじゃないか!」
全身鎧の剣士が、愚痴をこぼしながら大剣の手入れをしている。彼はギルドが階級分けしているAランク冒険者、名をトーヤ。独身30歳の盾役兼剣士である。大剣を盾がわりにも使用する無謀者である。
「まぁ、居た形跡も、被害者達の骸を埋葬した跡もあったんだ。誰かに先を越されたという事だろう」
冷静な口調で分析するのは、狩人らしき細身の男。彼もAランク冒険者で、名をスタン。41歳と少し年配の弓使い。歳の割に動きは機敏である。
「なぁ、村人達には、俺達がやったって言っても良いんじゃね?報酬貰っちまおうぜ?」
手柄の横取りを提案する、三本のナイフをジャグリングしながら暇を潰している盗賊風の男。彼はBランク冒険者で、名をザップ。29歳の元盗賊で、索敵と罠の解除と設置を得意としている。
「それは駄目ですよ~。そもそも、報酬はギルドに預けられてます。ひょっとしたら、その方達が既に受け取りに向かっているかもしれませんよ~?」
やんわりとした口調で止めるのは、紺色のローブを纏った魔術士の女性。彼女もAランク冒険者で、名をフロウ。行き遅れを気にする自称33歳。ゆったりとした口調と振る舞いには似合わない、攻撃魔法を得意とする。
「まぁ、とりあえず、村人達に安全を報告するのが先だろう。なぁ、リーダー?」
剣士がそう話を振ると、剣の素振りをしていた青年が手を止める。凛々しい顔つきと細身ながらにも鍛えられている体。その姿はまさに好青年剣士。彼がこのチームのリーダーであるアルバスだ。歳もまだ20と若いが、早くから実力が認められてAランク冒険者となった。
「ああ、トーヤの言う通りさ。先ずは報告が先だろう。だけど警戒は怠るなよ?村人達の話では、二百年前のオークロード出現といろいろと被るんだろう?」
「確か、前の記録では北にある古い遺跡に現れたんだよな?」
「話によると、その際も近くの村が襲われて子供が攫われたとか。その時はロードまで進化してたらしく、冒険者にもかなり被害者が出たらしい」
「でも、今回はキングで既に討伐されたからな。その時と同じというのは、ちょっと飛躍しすぎだろう」
「正確には、時期が一番被っているんだと思うよ?」
「起きたのか、アニ」
焚き火の側で横になっていた一人の少女が起き上がる。彼女はBランク冒険者のアニ。16歳でまだまだ小柄な体格をしているが、戦うスタイルは拳闘士で、このチームの近接戦担当の一人である。
「話がうるさくて寝れないよ。しかも気になっちゃってね。…確か前も、緑龍月だったって言ってたよね。それって、二百年前に世界各地でフレイ美德教とフレイア大罪教が、勇者と魔王の誕生を祝った月だよね?」
「つまり、オークロード出現も、勇者と魔王の出現と関係してたって言うのかい?」
「ハハッ、んなわけねぇだろ?」
「それは、オークロードを討伐したのが、勇者の一人だったからそう考えてるんだろう?」
「でも~、確かに魔王は一人足りなかったのよねぇ?どちらの教団も七人の召喚に成功したって公表してたのに、確か暴食の魔王が不在だったんじゃなかった~?」
「オークロードが魔王の一人だったりして。なんてね?」
「ふ、ふん。そんなお伽話、いちいち覚えてねぇよ。たまたまだろ、たまたま」
「おや、ザップは意外と信じてるようですね?流石はフレイア教の信者ですね」
「なっ⁉︎信じてねーよ!しかも、信者じゃねーし!」
「まあまあ。とにかく討伐は済んでるし、勇者や魔王の公表もされていない。僕らは気にする事無いよ」
アルバスは皆んなを落ち着かせながら、洞窟の中の事を思い出していた。
洞窟の奥にあった見た事の無い一室。散らばっていた見慣れない机と椅子だった。
まさかな…。
数千年前から続いていると言われる、二柱の神による勇者と魔王の召喚の話。途中からは、二柱の神ではなく二つの教団自体が召喚を行なっていると噂されている。
ただ、勇者や魔王の存在は、世界各地に文献や由来の品々が展示されている事で、信憑性があるのだ。
「さぁ、初めに俺とスタンが見張りをするから、皆んなはもう休んでくれ」
「了~解」
各自、自分の休みやすいスタイルで寝始める。アルバスは、かいた汗を拭いて見張りの為に装備を着直した。
明日、村人達の不安が取れればいいのだが。彼は、大事な子供達を奪われた恨みの復讐が、既に空振りに終わった事をどう告げたものかと不安になっていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
翌朝。
振動と共に誰かが自分を揺らしている。
「店長、起きてください!」
「あれ、もう朝かい?」
「寝過ごしちゃったんですよ!早く、ここから避難しますよ!」
アラヤに揺すり起こされた店長は、辺りを見回す。場所は荷馬車の荷台で、昨日の寝た場所のままだ。
「御者は?」
御者台を見ると、不慣れな手綱さばきでザックスが馬を操っている。
「モドコさん!起きたなら、変わってくれよ!」
「おお、すまない!」
直ぐに荷台から御者台へと移ると、今の現状が分かった。
既に洞窟からは出ていて、荷馬車は追われている。あの巨大な鳥の魔物、ロック鳥にだ。
「あいつ、また大岩を落とす気だぞ!」
見上げると、雄鳥の声が聞こえた。急いでアラヤが荷台のホロの上に登る。
『貴様等か‼︎我の子供を攫ったのは‼︎』
足に掴んでいた巨石を、馬に目掛けて落としてきた。
「グラビティ!ムーブヘイスト‼︎」
落とされた岩を軽くして、馬車自体の速度は上げる。そして、続け様にサンダーランスに一点突貫の技能付与で大岩を破壊する。
「マズイですね!来た入り口へと向かえません!このまま北へ向かって下りますよ!」
砕けた岩の破片で、あちこちで山道が破壊される。破壊の規模が大きいよ!
どうにかして、ロック鳥を止めなければ、俺以外の皆んなはペシャンコにされる。
うん?それなら、助かる方法はこれしか無い。
「ここは俺に任せて先に行ってください‼︎」
「馬鹿野郎!村にはお前の帰りを待つ人が居るんだろうが!」
はい。よくある死亡フラグだけど、言ってみたいセリフだったんだよね。ザックスさんも被せてくるし。死ぬ気はさらさら無いよ?
アラヤは荷馬車から飛び降りて、ロック鳥へと向かっていく。ロック鳥は、近付いてきたアラヤを叩き落そうと羽ばたきの風圧を浴びせる。その間にも馬車は進んで行き、アラヤの視界から見えなくなった。
『貴様だけでも、食べねば怒りは収まらん‼︎』
「エアカッター!」
この大きさに、風の刃は切り傷程度にしかならない。連続で放っても、羽ばたきの風圧で消されてしまう。完全にレベル負けしてるな。
「フレイム!フレイム!フレイム!」
ならば燃やそうと考えたが、ロック鳥の羽根は耐熱性が高く燃え難い。広がる前に羽ばたきで消されてしまう。
『フハハハハ!無駄だ‼︎』
「まぁ、時間稼ぎはもう十分みたいだね。ダークブラインド!」
ロック鳥の視界を奪って、首裏へとしがみつく。
「ウォータ!サンダーランス‼︎」
ロック鳥の両目に、ウォータを掛けてからのサンダーランスをお見舞いする。
『グァァァァァッ‼︎目がっ‼︎目がーっ‼︎』
流石にこれは効いたようで、苦しんでるその間にアラヤは退却させてもらった。
今の俺には、逃げるが勝ちだろうからね。
先に行った荷馬車には意外と直ぐに追いついた。だって、変な遺跡で停まってたからね。
「おう、マジで無事に帰って来るとは…アラヤは凄いな!」
「逃げるので精一杯でしたよ。それよりも、ここは?」
「前に話したろ?立ち入り禁止されてる肝試しした遺跡さ」
二人は遺跡の入口を見ている。まさか、こんな時に入ろうとか考えてないよね?少しは落ち着いて、ヤブネカ村に帰ろうよ?
結局、少し探検することに決まるのだった。
「捕まえられるかとヒヤヒヤしたぜ」
「明るかったら、危なかったでしょうね」
「とにかく、怪我も無く大成功だね。後は朝になったら出発するかな。軽く夜食を食べたら、寝るとしようか」
「店長、日が昇る前に出た方が良いと思います」
「うん、分かった。睡眠は短めにしよう」
三人は、上機嫌で夜食の準備を始めたのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
フユラ村から東へと進んだ森。そこで野営をする団体があった。
彼等は冒険者で、ギルドに来たフユラ村の住民の依頼、ゴブリンキングの討伐を受けてこの地まで来ていたのだ。
「…ったく!肝心のキングは居なかったじゃないか!」
全身鎧の剣士が、愚痴をこぼしながら大剣の手入れをしている。彼はギルドが階級分けしているAランク冒険者、名をトーヤ。独身30歳の盾役兼剣士である。大剣を盾がわりにも使用する無謀者である。
「まぁ、居た形跡も、被害者達の骸を埋葬した跡もあったんだ。誰かに先を越されたという事だろう」
冷静な口調で分析するのは、狩人らしき細身の男。彼もAランク冒険者で、名をスタン。41歳と少し年配の弓使い。歳の割に動きは機敏である。
「なぁ、村人達には、俺達がやったって言っても良いんじゃね?報酬貰っちまおうぜ?」
手柄の横取りを提案する、三本のナイフをジャグリングしながら暇を潰している盗賊風の男。彼はBランク冒険者で、名をザップ。29歳の元盗賊で、索敵と罠の解除と設置を得意としている。
「それは駄目ですよ~。そもそも、報酬はギルドに預けられてます。ひょっとしたら、その方達が既に受け取りに向かっているかもしれませんよ~?」
やんわりとした口調で止めるのは、紺色のローブを纏った魔術士の女性。彼女もAランク冒険者で、名をフロウ。行き遅れを気にする自称33歳。ゆったりとした口調と振る舞いには似合わない、攻撃魔法を得意とする。
「まぁ、とりあえず、村人達に安全を報告するのが先だろう。なぁ、リーダー?」
剣士がそう話を振ると、剣の素振りをしていた青年が手を止める。凛々しい顔つきと細身ながらにも鍛えられている体。その姿はまさに好青年剣士。彼がこのチームのリーダーであるアルバスだ。歳もまだ20と若いが、早くから実力が認められてAランク冒険者となった。
「ああ、トーヤの言う通りさ。先ずは報告が先だろう。だけど警戒は怠るなよ?村人達の話では、二百年前のオークロード出現といろいろと被るんだろう?」
「確か、前の記録では北にある古い遺跡に現れたんだよな?」
「話によると、その際も近くの村が襲われて子供が攫われたとか。その時はロードまで進化してたらしく、冒険者にもかなり被害者が出たらしい」
「でも、今回はキングで既に討伐されたからな。その時と同じというのは、ちょっと飛躍しすぎだろう」
「正確には、時期が一番被っているんだと思うよ?」
「起きたのか、アニ」
焚き火の側で横になっていた一人の少女が起き上がる。彼女はBランク冒険者のアニ。16歳でまだまだ小柄な体格をしているが、戦うスタイルは拳闘士で、このチームの近接戦担当の一人である。
「話がうるさくて寝れないよ。しかも気になっちゃってね。…確か前も、緑龍月だったって言ってたよね。それって、二百年前に世界各地でフレイ美德教とフレイア大罪教が、勇者と魔王の誕生を祝った月だよね?」
「つまり、オークロード出現も、勇者と魔王の出現と関係してたって言うのかい?」
「ハハッ、んなわけねぇだろ?」
「それは、オークロードを討伐したのが、勇者の一人だったからそう考えてるんだろう?」
「でも~、確かに魔王は一人足りなかったのよねぇ?どちらの教団も七人の召喚に成功したって公表してたのに、確か暴食の魔王が不在だったんじゃなかった~?」
「オークロードが魔王の一人だったりして。なんてね?」
「ふ、ふん。そんなお伽話、いちいち覚えてねぇよ。たまたまだろ、たまたま」
「おや、ザップは意外と信じてるようですね?流石はフレイア教の信者ですね」
「なっ⁉︎信じてねーよ!しかも、信者じゃねーし!」
「まあまあ。とにかく討伐は済んでるし、勇者や魔王の公表もされていない。僕らは気にする事無いよ」
アルバスは皆んなを落ち着かせながら、洞窟の中の事を思い出していた。
洞窟の奥にあった見た事の無い一室。散らばっていた見慣れない机と椅子だった。
まさかな…。
数千年前から続いていると言われる、二柱の神による勇者と魔王の召喚の話。途中からは、二柱の神ではなく二つの教団自体が召喚を行なっていると噂されている。
ただ、勇者や魔王の存在は、世界各地に文献や由来の品々が展示されている事で、信憑性があるのだ。
「さぁ、初めに俺とスタンが見張りをするから、皆んなはもう休んでくれ」
「了~解」
各自、自分の休みやすいスタイルで寝始める。アルバスは、かいた汗を拭いて見張りの為に装備を着直した。
明日、村人達の不安が取れればいいのだが。彼は、大事な子供達を奪われた恨みの復讐が、既に空振りに終わった事をどう告げたものかと不安になっていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
翌朝。
振動と共に誰かが自分を揺らしている。
「店長、起きてください!」
「あれ、もう朝かい?」
「寝過ごしちゃったんですよ!早く、ここから避難しますよ!」
アラヤに揺すり起こされた店長は、辺りを見回す。場所は荷馬車の荷台で、昨日の寝た場所のままだ。
「御者は?」
御者台を見ると、不慣れな手綱さばきでザックスが馬を操っている。
「モドコさん!起きたなら、変わってくれよ!」
「おお、すまない!」
直ぐに荷台から御者台へと移ると、今の現状が分かった。
既に洞窟からは出ていて、荷馬車は追われている。あの巨大な鳥の魔物、ロック鳥にだ。
「あいつ、また大岩を落とす気だぞ!」
見上げると、雄鳥の声が聞こえた。急いでアラヤが荷台のホロの上に登る。
『貴様等か‼︎我の子供を攫ったのは‼︎』
足に掴んでいた巨石を、馬に目掛けて落としてきた。
「グラビティ!ムーブヘイスト‼︎」
落とされた岩を軽くして、馬車自体の速度は上げる。そして、続け様にサンダーランスに一点突貫の技能付与で大岩を破壊する。
「マズイですね!来た入り口へと向かえません!このまま北へ向かって下りますよ!」
砕けた岩の破片で、あちこちで山道が破壊される。破壊の規模が大きいよ!
どうにかして、ロック鳥を止めなければ、俺以外の皆んなはペシャンコにされる。
うん?それなら、助かる方法はこれしか無い。
「ここは俺に任せて先に行ってください‼︎」
「馬鹿野郎!村にはお前の帰りを待つ人が居るんだろうが!」
はい。よくある死亡フラグだけど、言ってみたいセリフだったんだよね。ザックスさんも被せてくるし。死ぬ気はさらさら無いよ?
アラヤは荷馬車から飛び降りて、ロック鳥へと向かっていく。ロック鳥は、近付いてきたアラヤを叩き落そうと羽ばたきの風圧を浴びせる。その間にも馬車は進んで行き、アラヤの視界から見えなくなった。
『貴様だけでも、食べねば怒りは収まらん‼︎』
「エアカッター!」
この大きさに、風の刃は切り傷程度にしかならない。連続で放っても、羽ばたきの風圧で消されてしまう。完全にレベル負けしてるな。
「フレイム!フレイム!フレイム!」
ならば燃やそうと考えたが、ロック鳥の羽根は耐熱性が高く燃え難い。広がる前に羽ばたきで消されてしまう。
『フハハハハ!無駄だ‼︎』
「まぁ、時間稼ぎはもう十分みたいだね。ダークブラインド!」
ロック鳥の視界を奪って、首裏へとしがみつく。
「ウォータ!サンダーランス‼︎」
ロック鳥の両目に、ウォータを掛けてからのサンダーランスをお見舞いする。
『グァァァァァッ‼︎目がっ‼︎目がーっ‼︎』
流石にこれは効いたようで、苦しんでるその間にアラヤは退却させてもらった。
今の俺には、逃げるが勝ちだろうからね。
先に行った荷馬車には意外と直ぐに追いついた。だって、変な遺跡で停まってたからね。
「おう、マジで無事に帰って来るとは…アラヤは凄いな!」
「逃げるので精一杯でしたよ。それよりも、ここは?」
「前に話したろ?立ち入り禁止されてる肝試しした遺跡さ」
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