【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

文字の大きさ
69 / 418
第5章 自重が足りてないって言われたよ⁈

065話 可愛い子には旅をさせろ?

しおりを挟む
   酒樽を馬車に積み込み終えたところに、バルガスさんが一般評価の葡萄酒樽を担いでやってきた。

「ほらよ。約束の樽だ」

「ありがとうございます」

    樽を受け取り荷台に乗せる。その様子を見ていたバルガスが、顎に手をやりニヤリと笑う。

「ソーリン、今から街を出るには遅い時間だ。今日は泊まっていくといい。夕食も用意してやる」

「よろしいんですか?」

「ああ、大歓迎だ」

「ソーリン、それなら俺だけで街に行ってもいいかな?商工会ギルドにお金を下ろしに行きたいんだ」

「それなら、ギルドには私も用があるので、一緒に馬車で行きましょう」

「アラヤ、私達は農園や酒蔵を見学しているわ」

    アヤコさんとサナエさんは、葡萄酒ができる工程に興味が湧いたらしく、街中には行かないらしい。
    二人で商工会ギルドへと向かっていると、未だに捜索隊の兵が街中を見回っているのが見える。諦めて帰ればいいのに。

    商工会ギルドは繁華街の真ん中にあった。馬車を横にある駐輪場に停めて入り口に向かうと、隣の建物の方で歓声が上がる。

「隣は冒険者ギルドですね。見てみます?」

「いや、いいよ。用事を済ませよう」

    気にはなっても、用はないからね。何かに巻き込まれるのも勘弁だ。
    二人はそのまま商工会ギルドに入り、アラヤは銀行に向かい、ソーリンは受付へと向かう。

「いらっしゃいませ。本日はどういった御用件でしょうか」

「私はバルグ商会のソーリンと申します。新しい契約人員の登録をお願いします」

「それでは、商工会の会員証とグラーニュ領商業・運輸業許可証の提示をお願いします」

    対応した受付嬢が写し書きをしていると、別の受付嬢が入って来た。うんざりした表情を見せて、手には束になった封書を持っている。

「預かり物受け取りに行ってきたけど、隣でまだやってるよ~」

「ちょっと、お客様来てるんだから」

「あっ、すみません…」

「いえ、お気になさらず。それよりも今の話、冒険者ギルドで何かあったんですか?」

「あ、えっと、隣の冒険者ギルドではよくある事なんですけど、討伐クエストの回収素材を賭けた殴り合いです」

「殴り合い⁈普通は、素材を換金して山分けじゃないんですか?」

「他のギルドならそうでしょうけど、コルキアの冒険者ギルドには鑑定士が不在でして、素材は山分けではなく奪い合いなんですよ」

    そんな事でよくギルドが成り立つな。後々対立する可能性があるなら、まともにチームも組めないだろうに。

「それもこれも、ヴェストリ商会が街中の鑑定士を引き抜いて回ってるからなんですけどね」

「そうなんですか、それは災難ですね」

    ヴェストリ商会は、鑑定士が足りないとはいえ、かなり強引に人材を集めているみたいだな。

「あら、お客様はバルグ商会の方?それなら、丁度お預かりしてる封書があるんですよ」

   今しがた手に持っていた封書の束から、それを見つけ出してソーリンに手渡す。

「冒険者ギルドを使って、早馬で来た速達の封書ですよ」

   送り元を見ると、ガルム=バルグと書かれている。ソーリン達の移動日数を予測して、この街に送ったのだろう。予定日数よりだいぶ早く着いたけど、入れ違いにならずに受け取れて良かった。それにしても、父がわざわざ何の封書だろう?
    その場で封を切り、中に入っていた手紙を読む。

《どうだ、初めての旅は順調かな?規格外なアラヤ君がいるから、大抵の事は何とかなると思うが、あまり目立たないように自重してくれと偶には注意するように。あと、新ルートの確保中にすまないが、無事にこの封書を受け取ったら、次のルートを王都に変えてほしい。アラヤ君達と私に、ミネルバ王女からのお呼びがかかっている。私は一足先に王都にて待つので、気をつけて向かってくれ。追伸  王女への土産物として、高級葡萄水を持参してくれ》

「王女から…?とにかく、アラヤさんにも読んでもらおう」

    丁度、引き出しが済んだアラヤがやって来たので、父からの手紙を渡す。

「王女…という事は、一色香織が絡んでるのか?う~ん…帰ったら二人に相談しなきゃな」

「どういう事なんです?王女と面識が?」

「いや、王女となんて面識は無いよ。面識があるのは、王女の御友人だね」

「それはそれで、凄い気がしますけど。とにかく、次の移動先は王都ですね」

「そうと決まれば、早く戻って準備を整えておくか」

    二人が帰ろうとすると、受付嬢がアラヤを引き止めた。

「あの、バルグ商会の鑑定士のアラヤ様ですよね?」

「はい、そうですけど」

「大変申し上げ難いのですが、コルキアは今鑑定士不足の状態でして、アラヤ様のお力添えを頂く事はできませんでしょうか?」

「すみません、明日には出発する予定なので。鑑定士なら、街の入り口にも居たじゃないですか。彼等に頼んで下さい」

    関わる気が無いアラヤは、即断る事にした。一度でも引き受ければ、次から次へと頼まれる事は目に見えている。こればかりは仕方ないよね。

「そうですか、残念です…」

    落ち込む受付嬢を背に、少し罪悪感を抱えながらも農園へと帰った。

「お帰りなさい。遅かったですね。もう食事の準備は出来てますよ」

    農園に着くと、アヤコさんが玄関先で待っていてくれた。三人で食事場所の広間へと向かう途中で、手紙の事を話す。

「なるほど。どういった経緯からアラヤ君の情報を得たのかは分かりませんが、彼女と会う良い機会ですね。是非、私も参加したいです」

「もちろん、二人共に連れて行くよ」

    アヤコさんは、会う事自体には賛成のようだ。
    広間に着き、扉を開けると既に全員が座って待っていた。

「おう、遅いぞ。空いてる席に座れ」

    またしても飛び飛びに空いている席。しかも、バルガスさんとクレアの間は当然かのように空席だ。

「今度はソーリンが…」

    ソーリンに座るように進めようとしたら、ソーリンは一目散に空いてる席へと座った。
    逃げやがったな。アヤコさんを見ると、コクンと頷き二人の間の席へと迷わずに座った。
    いいの?と思ったけど、バルガスさんもクレアも何も言わないので大丈夫みたいだな。アラヤは残された席に座ると、隣の席の人物が初めて見る従業員だと気付いた。

「貴方がアラヤ?明日から、よろしく頼むね」

「はい?」

「その娘はクララ。私の娘だ。これからよろしく頼む」

    その同じような語り方には、直ぐに親子という事は納得できた。よく見れば姿も人狼ヒューウルだし。ただ、内容には疑問符が残る。

「クララをお前達の旅に連れて行ってもらう」

「は?初めて聞きましたけど?」

「うむ、今言ったからな」

「いや、そうじゃ無くて、どうして連れて行く事になってるんですか?」

    クレアは、連れて行く理由を聞かれたら何故か首を傾げる。

「可愛い子には旅をさせるのは、当然だと思うのだが?」

「いや、それなら一人で行かせなよ…って、それは違うかもしれないけど、何で俺達となの⁈」

「お前達となら、安心して任せられるからな」

「だからって、相談も無しに決めないでくださいよ」

「私達も反対です。彼女にもバルガス様の家族紋が刻まれているんですよね?これから先の場で、それが原因で奴隷を連れていると思われる可能性があります。私達は彼女を奴隷扱いしたくありませんし、彼女が虐げられるのを見たくありません。ですから反対します」

    アヤコさんが、アラヤの気持ちを代弁するかの様にきっぱりと断りを入れる。しかし、クレアはそれを笑い飛ばした。

「アハハハ!大丈夫!その心配は無い!クララには家族紋は入れて無いし、私以上に変身できるからね!」

「変身⁈」

「クララは、私と元冒険者の人間との間にできた混血ハーフでね。私が狼と狼人ライカンスロープに変身できるように、この子は今の人狼ヒューウルから狼と狼人ライカンスロープに変身できる。亜人族が嫌われる場なら、狼になって従獣扱いで充分通せるよ」

    断る理由を論破され、これは断れない流れへとなったようだ。実際に成れるよと、クララは銀狼の姿へと変身する。

「よろしく頼むね、ご主人様」

   滑らかで、モフモフの体を擦り寄せてくる。あ、これダメなやつだ。
    アラヤの手は、吸い込まれるように彼女の毛並みを撫でてしまう。
    モフモフの誘惑に、アラヤは簡単に屈してしまったのだった。

    
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

処理中です...