【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第10章 いつのまにか疑われた様ですよ⁈

147話 テレポート

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「カオリさんも起きた事だし、テレポートの検証を始めようか!」

 アラヤ達は、カオリの仮死状態デスタイムが終わったと同時に集まって、全員で検証を行う事にしていた。

「カオリさん、今テレポートについて、分かっている事は?」

「起きて早々に全く…。はぁ、魔導書で分かっているのは、構造術式と魔素変換値は…この説明は省くわね。魔法の属性は光属性魔法ね。テレポートとは固有の生命体を魔力により魔素体まで微粒子化し、遠方まで飛ばした後で再構築する魔法。目的地移動できるのは1人から3人まで。その理由は、1人増える度に消費魔力が人数分倍数になるから。魔力消費量は距離と人数で変わると思ってね。因みに、術者が一度も行った事の無い場所には行けない。今のところ、魔導書で分かるのはここまでかしら」

「3人かぁ~。しかも馬車とかはダメなんだね」

「ええ。せいぜいバックパックと装備品までよ」

 3人でも充分凄い事なのだが、できれば馬車事行きたいよね。移動先で馬車を準備するのは難儀しそうだし。

「馬車は、亜空間に収納出来れば問題無いのでは?」

「「「あっ」」」

 アヤコの指摘に、確かにとアラヤ達は頷いた。収納スペースが問題だが、今は皆が亜空間収納持ちなので、空きの多い人に担当してもらうとしよう。

「大罪教団には、大人数で移動できるゲートという魔法があります。それは馬車さえも運べますよ」

「何それ⁈どうやったら手に入る?」

「すみません。大司教様しか、使える方を知りません。あのお方は全属性魔法の超越者ですので、直接お伺いしたら分かるかもしれません」

 アフティ、それはぬか喜びだよ。大司教に会ってまで手に入れたくはない。しかも、簡単に伝授してくれる筈もない。

「そんな手元に無い魔法を考えるより、今はテレポートに集中しましょうよ?」

 確かに話が脱線してしまった。気持ちを改めて、テレポートを使用してみよう。

「先ずは、カオリさんと俺とアヤコさんの3人で製作所まで行ってみよう」

「分かったわ。それじゃあ、私(術者)に触れて?」

 アラヤとアヤコはカオリと手を繋ぐ。本来なら杖等を使って魔法陣的な術式を描かないといけないのだが、カオリに至っては術式と詠唱は省略するので、両手が塞がっていても大丈夫なのだ。そして、習得する為に感覚共有はもちろん繋いである。

「テレポート」

 カオリが唱えると足元に魔法陣が現れて、白い光が3人を包む。景色が白の光で見えなくなったが、ものの2、3秒で直ぐに光は収束して消えた。

「も、もう着いたのか。確かに早いな」

 辺りを見渡すと、3人は製作所の入り口前に居た。工場長が、突然現れた来客に見間違いか?と目を擦っている。

「消費魔力は150。1人につき50の消費ね。次はどうするの?」

「次はガーベルク領地の関所の手前に飛んで見よう」

「分かったわ」

 直ぐ様テレポートをして消えた為、工場長は疲れが溜まって幻でも見たかと、今日は仕事を早仕舞いする事に決めた。

「どう?エニシダの街からは2日の距離だけど」

 アラヤ達は、関所の門番を遠くから確認して、間違いなくガーベルク領に入って来た時の関所だと分かった。アラヤ達は2日と考えているが、一般的には馬車で4日の距離である。

「魔力消費は150。さっきと変わらないわ。まだ影響が出ない距離みたいね?」

「2日くらいの距離は1人当たり50ですね。では一度皆が待つ宿屋に戻り、次は5日の距離のコアノフ山の天然温泉にしましょう」

 まだまだアラヤ達は習得できないので、カオリに魔力電池を渡して、一度魔力を回復させる。習得できるまでは彼女に頼るしか無い。
 因みに、彼等は1人50と考えているが、魔術の素養の技能で消費量は半減している。つまり、本来なら1人100の魔力消費が正しい数値だ。分別の勇者の仲間であるサラは、テレポートを使用する際が多い事を想定して、大量のマジックポーションを常備していた。

「お帰りなさい。どうだった?」

 宿屋に帰ると、サナエ達が夕飯を用意して待っていた。

「2日以内の距離なら、1人魔力消費50ってとこ。次は夕飯後にコアノフ山に向かってみるよ。魔法の方は、後1、2回くらいで覚えられそうなんだけどね」

 お腹空いているのも、習得できない理由かもねと、アラヤは腹一杯に食べる。
 すると、俄然できそうな気がしてきた。肉料理に使用された肉がベヒモス肉だったからだろうか?

「さぁ、温泉に向かおう」

 お腹が落ち着いたところで、3人で再びテレポートする。
 アラヤ達が出現したのは温泉の真上で、3人共に温泉に落下した。

「ぶ、ぶわぁっ⁉︎」

 移動先を、温泉に浸かっている事を思い出して考えてしまったことが原因だと思う。
 だけど、何となくテレポートの感覚を理解できた。腹一杯のおかげかな?

「もうっ、服が濡れちゃったじゃない!」

 全身が濡れて服が透け下着と肌色が見える2人に、アラヤは思わず生唾を飲む。
 いかんいかん、少しムラッとしてしまった。今はそんな事を考えている場合じゃない。カオリの仮死状態がいつ来るかわからないから、今は早くテレポートをモノにしなければならない。

「ニョホホ~、透け透けとはそそるの~っ」

 背後から聞き覚えのある声が聞こえて振り向くと、アヤコに下半身を氷漬けにされたバナンがいた。温泉で溶けるとはいえ、結構痛冷たそうだ。

「ひ、久しぶりですね、バナンさん」

「おおぅ、久しぶりじゃの。…ちと、息子の感覚が無くなってきた様じゃ…」

 冷たさでげんなりし始めたバナンを、アラヤは慌てて救助する。あのいやらしい目つきが不快だと言っても、彼に対して嫁達は手厳し過ぎやしないかな。

「ふぅ、蘇った。息子も無事じゃ…」

 アラヤ達も服を脱ぎ、結果的に混浴となった。濡れた服は亜空間に収納して、後で洗わないとね。

「お前さん達が街を出てからの、街はだいぶ騒がしくなったぞ?」

「何かあったんですか?」

「街長が、領主のピロウズ辺境伯に呼び出されてから帰ってこんのじゃ。何やら、エルフ捕獲を黙っていた挙句に逃げられた事が辺境伯にバレたんじゃと」

「へぇ~、そんな事になってたんですか…」

 ハウン達が行った裏工作が原因だろうな。まぁ、イシルウェが無事に逃げられたなら良かった。

「じゃあ、エルフはまだ捕まっていないんですね?」

「まぁ、今はの。しかし時間の問題じゃろうなぁ。辺境伯が本腰を入れて捜索させているからのぉ」

「それはまた、近くの街や村は騒々しくなってそうですね…」

 イシルウェと離れてしばらく経つ。国に帰る事は無理だろうが、流石に近隣の街や村には居ないとは思う。

「らしいのぅ。そこの美人さんみたいな金髪の住民は、片っ端から取り調べを受け取るそうじゃ。お前さんも気を付けるんじゃぞ?」

 バナンはカオリを見てニカッと笑う。確かに、カオリもこの領地内に居ると危険かもしれない。

「そろそろ帰ろうか。皆んな待ってるだろうし」

 アラヤ達は着替えを取り出して帰り支度をする。それを眺めていたバナンは、用意していたのか酒を取り出して飲み始めた。

「バナンさん、酔い潰れて溺れないで下さいよ?その前に、街まで1人で帰れますか?」

「ああ、問題無い。近くに泊まれる野営地があるからの。そこで寝てから帰るつもりじゃ」

 おそらく、アラヤ達が作った野営シェルターだろう。こういう点では、かなり役に立っているかもしれない。

 テレポートを彼から見えない場所でしようと、その場から離れようとした時、バナンが手酌をしながら呟いていた。

「東にあるメドウ村で、馬子の娘が拐われたらしいの。真偽は分からんが、まだ捜索隊はあの村までは行ってないようじゃ。無事に逃げきれると良いがのぅ」

 超聴覚で聞こえたバナンの独り言の後に、アラヤ達はテレポートで宿屋に帰還した。

「お帰り。温泉、私も入りたいんだけど、また行ける?」

 着替えを用意して待つサナエとクララを見て、3人は今更ながらに当初の目的を思い出した。

「あっ!肝心の魔力消費量は⁉︎」

「往復で480だから…1人80ね。う、私の魔力量でも連続しては流石にキツイわね」

「大丈夫、私も帰りで何とか習得できましたから。あ、でもサナエちゃん。向こうには今バナンさんが居るよ?」

「えっ?じゃあいいや…」

「私も遠慮します…」

 サナエとクララは諦めるらしい。バナンさん、ただのスケベなおじいちゃんなのに、何故か嫌われたな…。
 アラヤは気付いていないが、彼女達は彼の視線に舐めまわされる感覚を感じていたのだ。

「とにかく、3人がテレポートを習得出来たね。次はペアを変えてする練習と、感覚共有で他人の行った場所にテレポート出来るかを試そう」

「あ、あの、アラヤ様とアヤコ様もテレポートを⁈」

 ハウン達は、アラヤ達の話について来れないでいた。まぁ、無理もないね。

「感覚共有って技能なんだけど…」

 ハウン達にも、感覚共有の万能性を教えると、この技能自体がハウン達も知らない、とても希少な技能だと分かった。

「だからひょっとしたら、俺達が知らないハウン達の行った事がある場所にも、テレポートで飛べるかを試したいんだ」

「何処か、行きたい場所がお有りですか?」

「ムシハ連邦国の方だけど…」

「それなら、オードリーとファブリカンテが向こうの出身地です」

「そっか、それは良かった。じゃあ、ムシハ連邦国とは違うけどメドウ村って…行った事ある?」

「その村は隣のアルローズ領ですよね?村の近くにあるフレイア神殿になら、私が行った事があります」

 アヤコとカオリは、アラヤの考えに気付いて、溜め息をついた。それと同時に、彼が次にやりたい事を察した。

「アラヤ君、私達は身の回りの準備をしておきます。魔力電池を沢山補充してから向かって下さいね?」

「にいや、焦る前に先ずは感覚共有でテレポートできるかを試してからでしょ?」

 それはそうだと、試しにハウンの寝室へとテレポートを試みる。結果は成功した。

「…皆んな、これから俺がやろうとしている事は、国家転覆罪に当たるかもしれない。もちろん、反対したいなら言って欲しい。皆んなはどう思う?」

「別に大丈夫じゃない?」

「ご主人様が考えた事に反対しませんよ?」

「我々も異存ございません。元々、我々教団は一国に縛られていませんので」

 アラヤの皆んなは嫌がるかもという不安等、杞憂に終わった。

「分かった!それなら、事は一刻を争う。ハウン、早速向かうとしよう!」

 アラヤは彼女の手を掴み、感覚共有を使用する。ハウンは体験した事の無い感覚に、驚きつつも、アラヤに手を掴まれた事に幸せを感じた。

「行ってきます」

 アラヤとハウンの2人は、アルローズ領のフレイア神殿へとテレポートで姿を消した。 
 宿屋の窓から漏れた光が収まると、外はすっかり夜の闇に包まれ始めていた。
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