【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第16章 昨日の敵は今日の友とはならないよ⁉︎

224話 囮

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 王城の頂上に移動したアヤコは、辺りを1番見渡せる場所を探す。
 身を隠す物は無いが、反りだった三角屋根に身を置くと、望遠眼で先ずは東区を調べる。
 は、遠目から見ても直ぐに分かった。
 東区の建物を、生体反応だけを追う様にして壁を蹴り破る姿が見えた。
 馬頭の悪魔は、避難していない人々を追っているらしく、貧民街を荒らし回っていた。
 対して、冒険者や兵士達の位置は、まだ離れた位置にある。

「サナエちゃん、ハウン、東区の貧民街に例の馬頭の悪魔を視認。目標は今、貧民達を追って貧民街を横断中。例のを使用して、兵士達が到着するまで時間を稼いで下さい」

「「了解」」

 東区に飛んだ2人は、屋根伝いに走りながら倒壊で埃が上がる建物を見つけると、逃げ惑う貧民達の後ろに立った。

「⁉︎何だ、あんた達は⁉︎」

 2人に気付いた貧民達が驚き身構える。

「落ち着いて。この先に向かえば、冒険者と兵士が居て助けてくれるわ」

「何だって?彼奴らに助けを求めろというのか⁉︎」

「彼奴等なんかに頼るものか!俺達は…」

「いいから行きなさい‼︎」

 威圧を込めて声を荒げると、尻込みしながらも彼等は指示した先に逃げ出した。
 今は悠長に説得している間も無いし、煩わしい因縁を聞くつもりも無い。

「ハウン、アラヤゴーレム2型を出して」

「はい」

 アラヤゴーレムとは、アラヤが脱皮したその中に、ハルのゴーレムを入れた物を指す。
 そして2型の特徴は、ヘイストの魔鉱石が内蔵されたゴーレムで、近くの強い魔力から一定距離を逃げる設定がされている。

 2人は魔力制御で気配を消してから、アラヤゴーレム2型を通路に設置した。

『2人共、直ぐに後方へ隠れて下さい』

 急ぎ建物内に隠れた2人は、馬頭が囮に食い付くのを待った。
 しかし10秒も待たずに、住宅の壁を蹴破り現れた馬頭は、アラヤゴーレムを発見するなり4本腕で掴み掛かる。
 ギリギリのところで躱したアラヤゴーレムは、直ぐ様走り出した。
 その速度は、初撃の馬頭の速さに順応したらしく、後を追う悪魔に追いつかれ無い絶妙な距離を維持して走っている。

「上手くいったわね」

「ですが、やはりアラヤ様の姿というのは…どうしても助けに入りたくなりますね」

「そうならない為に、わざとらしい笑顔のアラヤにしたんでしょう?」

 知らない者が見たら、挑発とも取れる笑顔のアラヤの表情は、仲間が本人と間違えない為に態と変顔に近い状態なのだ。まぁ、それでもハウン達には本人に見えなくもないのかもしれない。

『囮君は、北区に向かい馬頭を引きつけています。その途中に冒険者らしきパーティーが居る様です。2人は急ぎ、ギルマスが居る東区入り口に囮君の進行修正をお願いします』

「クララじゃないんだから、あの速さに追いつくのは難儀なんだけど⁉︎」

 愚痴をこぼしながらも、2人は全力で先回りする。屋根から飛び降りると、間の悪い事に冒険者パーティーの1人と鉢合わせてしまった。

「わ、わ、わ、わ⁈何⁉︎あ、あれ?貴女は確か…」

 サナエと目が合ったその冒険者は、【弦月の牙】の拳闘士アニだった。

「ああ、話は後にしましょう⁉︎今は急いでいるので!」

 サナエは彼女の手を取り建物の中に入る。ハウンが代わりに、魔法攻撃によりアラヤゴーレムの行く道を壊して進行方向を強制的に変える。

「えっと…アラヤ君の奥様…でしたよね?」

 窓から外を見ているサナエを、確かめるようにジロジロと観察している。

『ちょっと、アヤ⁉︎これ、どうするのよ?』

『…すみません、少し目を離してしまいました。取り敢えず、ハウンが囮を誘導しますので、サナエちゃんは彼女をパーティーに戻してなんとか抜け出してください』

 なんとかってどうするの?絶対難しいじゃないの⁉︎文句を言おうとしたら、ヒョコッと顔を覗かれた。

「あの…?」

「あ、ごめんね。確か、アニさんよね?仲間の人は近くに?」

「はい。この近くの魔物討伐をしています」

「あ、そうだ!リーダーにコレを渡してくれないかな?」

 サナエは、ボイスボムの魔鉱石爆弾を取り出して彼女に渡して説明を始める。

「…ってなるわけ。だからガトリルという悪魔を見かけたら、これを使ってからなら楽に倒せるわ。私は丁度、冒険者や兵士にコレを渡して回っているところだったの」

 丁度良かった。このまま別れられると考えたサナエだったが、アニは首を傾げている。

「ごめんなさい、私、普段から格闘一本なんで、魔道具や魔鉱石の使い方良く分からないんですよね。リーダーに直接説明してもらえますか?」

「ええっ…?わ、分かったわ」

 結局、サナエはアニと一緒に仲間と会う羽目になった。

「おお、久しぶりだね!サナエさんだったかな?デピッケル鉱山以来だね!」

「え、ええ。皆さん、お元気そうで何よりです。実は…」

「君が居るって事は、アラヤ君は?」

「あ、アラヤも来てはいるのですが、今は…」

「そうか!近くに居るならば心強いな!」

「そんな事よりも、コレを…」

「おい、リーダー!今、直ぐそこに大型の魔物が居るぞ‼︎」

 サナエが、魔鉱石爆弾の説明に入ろうとする度に邪魔が入る。

「馬頭の魔物…いや、悪魔の様だ!物凄い勢いで誰かを追っているぞ⁉︎」

「あ、それは…」

「皆んな、行くぞ‼︎」

 有無を言う間も無く、パーティーメンバー達に連れられて屋根の上へと上がる。

「あれか!」

 案の定、馬頭が建物を破壊しながらアラヤゴーレムを追っている。ハウンが一生懸命に進路修正を試みている様だが、アラヤゴーレムの機動力は予想を上回っており、破壊した通路をも飛び越えて行く。

「追われているのはアラヤ君じゃないか⁉︎」

 当然、こうなるよね~。サナエはハァ~っと頭を抱えてしまう。

「皆んな、彼を助けるぞ!」

「待って下さい!」

「「「えっ?」」」

 サナエの静止に、弦月の牙の全員が驚く。目の前の事態は、明らかに直ぐに助けに入るべき状況だからだ。

「彼は今、南区に避難する人達が狙われないように、囮を買って出てくれているんです。それも、ギルドマスターが来るまでの間ですが」

「いや、だからといって、彼1人が囮になる必要は無いだろう⁉︎」

「あの悪魔は、S級クラスの強敵らしいですよ?現に、アラヤも逃げるだけで手一杯です。貴方達は、あの馬頭の速さに順応できます?」

「それは…」

 馬頭の動きは遠目からも、速く力強い事は分かる。それを見事に躱しているアラヤ(ゴーレム)の動きを、自分達ではできない事も。

「しかし、放ってはおけん!俺は行くぞ!」

「リーダーが行くなら、当然俺達も行くさ」

「仕方ないわねー」

「スタン、援護を通常の倍はやらなきゃ。あ、普段から援護少ないから4倍かな~?」

「アニは、今回は接近戦は止めといた方が良いぞ?相手はお前より、手数も力も倍だからな?」

「「何を~⁉︎」」

 弓使いと拳闘士の2人は緊張感無く喧嘩を始める。彼等らしい緊張の解し方なのかもしれないが。

『もうっ!どうするのアヤ⁉︎一緒に戦う流れになっちゃってるんだけど⁉︎』

『ごめんなさい、その場合は、トーマスさんが到着するまで、サナエちゃんには彼等を守っていただくしかありません。ハウンに、トーマスさんを呼びに行かせます』

 目の前では、アルバス達が屋根を飛び移り始めた。これはやるしか無さそうだ。

「あー、もう、仕方ないわ。…そう、仕方ないわね!」

 彼等を死なせない為にも、全力でやるしか無いとサナエは決心した。故に、ここからは戦舞姫としての舞台の見せ場にするわと、【戦士達の鼓舞】を始めるのだった。


 一方、指揮を取る筈だったアヤコは、王城内を駆けていた。

(まさか、あの距離で気付かれるとは思いませんでした。相手も望遠眼持ちという事ですね)

 サナエ達に指示を出した後、彼女は反対の西区の様子も観察していた。東区で、サナエがアニと遭遇する前、アヤコは西区の上空で浮かぶ羊頭と目が合ってしまった。

(マズイ‼︎)

 かなりの距離があるにも関わらず、羊頭はアヤコに向かい歌を歌おうとしたので、咄嗟に耳を塞ぎ城内に逃げ込んでいたのだ。

 その直後に、城内に追手を。その追手から逃げながら、サナエとハウンに念話でやり取りをしていたのだ。

 追手は、洗脳された用心棒らしき剣士が2人。洗脳でリミッターが解除されているらしく、剣士達は投げ込まれた際に折れた腕の痛みにも、アヤコの放つ麻痺矢を受けても尚、平然として後を追って来ていた。

(ここは私1人で切り抜けるしかありませんね)

 洗脳が解けるかは不明だが、色々な手で彼等を行動不能にしなくてはならない。アヤコは2人を上手く誘導しながら、誰も居なくなった王城を駆け回るのだった。
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