【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

文字の大きさ
345 / 418
第23章 力のご利用は計画的にらしいですよ⁉︎

341話 ベヒモス奪還作戦

しおりを挟む
 オモカツタの街の騒動は、街の人々達には半ば夢を見た感覚でしかなかった。
 というのも、そのほとんどの人が思考停止により無気力症だったからだが、気が付いた時に寝起きの感覚に近かったからの様だ。

「ん~それにしても凄い状態よねぇ、コレ」

 街長でもあるグスタフは、防壁の外側の土地がにより5m幅で抉れているのを見ていた。

「まるで、巨大な竜巻が街だけに直撃したみたいよね~。まさかねぇ?」

 見上げる先には空に浮かぶ島、空中公国月の庭モーントガルテンが見える。
 その可能性はあるのだけど、それ以上は恐ろしさもあって口にすることができなかった。

「グスタフ様、近隣に被害はございませんでした!」

「此方も同じく、被害は見受けられませんでした!」

 調査を終えた兵士達の報告を聞き、グスタフは馬へと騎乗した。

「被害無いなら帰るわよ~」

 街にあった結界だけを、ピンポイントで風の衝撃により削っていたとしたら、そんな事が狙ってできる存在は大精霊しかいない。

(絶対に敵にまわしちゃダメよね~。ベヒモスより怖いわぁ~)

 触らぬ大精霊になんとやらねと、モーントガルテンに追及する事はしないと決めたのだった。


 一方、地下街の被害は甚大で、商業施設と研究施設の大半が戦いに巻き込まれて倒壊していた。

「アラヤ殿、素晴らしいですな!以前よりもかなりの硬度の封土ですよ!」

 施設の高所で作業しているアラヤの手際に、教団員達が称賛している。

「ええ、ベヒモスが2しなければなりませんからね」

 崩落箇所は全てアラヤにより復旧していて、外壁の鉱石の内側には見えない様に魔力粘糸の網が入っている。
 コレならば、魔法による地震にも効果があるだろう。

 下で待っていた勇者ウィリアムが、降りて来たアラヤを迎え入れる。

「お疲れ様。もう敵は全て捕らえたんだ。君は少し休んだ方が良いよ?」

「ウィルさん、ありがとう。ひと段落した事だし、そうするよ」

 渡されたタオルを受け取り汗を拭う。ウィリアムはすっかり、アラヤに気を許してくれている。

「カザックさんは忙しそうだね?」

「そりゃあね。冒険者達を割り振って、地下街のクエストが大量に出たから管理でまたしばらく動けないと思うよ」

 冒険者ギルドマスターの彼は、前回もだったが、今回も冒険者達の冒険には関係ないクエストへの不満を聞かされているに違いない。

「ベルフェル司教殿の葬儀には、参加できないかもしれないね…」

「そうですか…」

 ベルフェル司教は、倒壊した建物に埋まった状態で発見された。
 もちろん、これはアラヤが分身体の遺体を仕込んだものだ。
 世間的には、ヌル虚無教団との戦闘中に死んだ事にしようと考えたのだ。
 その方が、この街のフレイア大罪教支部の教団員達にも、教団に不信感が生まれずに良い筈だ。

「…捕虜からは何か情報を?」

「セパラシオン司教様が取り調べをしているけど、誰一人として口を割らないらしい」

「リーダーらしき人が居たよね?手掛かりになりそうな物を何か持っていなかったのかな?魔導書や地図とか」

「ん?いや、捕まえた際には杖と薬ぐらいだったかな。鑑定士が仲間を調べたけど、収納技能スキル持ちは居なかったようだよ?」

 禁呪魔導書も無しか。幹部の1人なら、ひょっとして所持しているかと思ったんだけど。
 いや、他にも仲間が居てソイツが所持している可能性もあるか。

「ともかく、対策前にも関わらず、ベヒモスをヌル虚無教から守れたのは大きい」

「…そうだね。でも、まだ警戒は解けない。モザンピアの事もあるからね」

「大丈夫、俺がベヒモスは死守する」

 ウィリアムは、自身の胸元をドンと叩き任せてくれと笑顔を見せた。

「…なら安心だ。それじゃ、俺は一度国に帰るよ。また後でね」

「ああ、後で」

 アラヤはテレポートを使い、モーントガルテンへと帰還した。

「お帰りなさいませ、ご主人様」

「はぁ~、疲れたよクララ。…それで、作戦は上手くいったのかな?」

「マジでギリギリだったと、ニイヤ様が騒いでいましたが、無事に成功した様です。今は皆様、広場に居られますよ?」

「そっか。なら、彼等が帰る前に挨拶しなきゃね」

 アラヤはそのまま広場へと向かった。
 広場に着くと、アラヤの姿を見て皆が集まってきた。
 ラエテマ王国親善大使であるミネルバ達は、どうやら仲間の配慮でこの場には居ないようだ。

「良かった!もう、結界が解けたならこっちにも連絡しなさいよ!」

「まぁ、私は信じてるから心配はしてなかったけどね?」

 連絡が取れなかった事で、みんなに心配をかけてしまったとつくづく思う。


「これは、ご無事で何よりです暴食魔王殿!盟主自らの活躍、感動しましたぞ!」

 冥界の国ゴーモラの宰相、ジョスイが感動を大袈裟に表現する。

「いやいや、もう時間が無さ過ぎて、「このままでは女王陛下にお叱りを受ける!」と泣き叫んでいたじゃないか」

 ニイヤのツッコミにジョスイは慌てふためく。

「ごめん。今回はいろいろとイレギュラーな事態が重なっていたからね。対応が悪かったと思うよ、すまない」

「いやいや、謝らないで下さい!結果的に、ベヒモス奪還作戦は無事に成功したわけですから!」

 頭を下げるアラヤを直ぐに止めるジョスイは、アヤコに助けを求めた。

「アラヤ君、まだ双方の報告をまとめていません。一度整理したいのですけど、良いですか?」

「そうだね、軽く食べながら話そう」

 アラヤ達は、とりあえず大食堂へと移動した。
 すると、風の大精霊エアリエルが待っていたようで、アラヤに笑顔を見せる。
 アラヤは隣の席に座り手を添える。

「ただいま。心配掛けたかな?」

『フフ、アラヤならあの程度、心配するほどでは無い。だが、無事で何より』

 うん、少しは心配してくれたようだね。そりゃあ、大精霊に比べたら俺なんてか弱いからね。 

「では、今回の件をまとめたいと思います。よろしいでしょうか?」

 席に着いたみんなに、紅茶と焼き菓子が配られ、さっそくアラヤと分身体達が手を伸ばしている。

「先ず、オモカツタの街を突如包んだ結界ですが、情報遮断の魔道具結界だったようです」

「ああ、それはベルフェル司教が張ったものだった。彼はヌル虚無教団側だったようだ」

「うわー、おっさん、やっぱりそっち側だったかぁ」

「狸だったわけね」

「結界を調べていたら戦う羽目になった」

「じゃあ、アラヤが結界を破壊したのね?」

「まぁね。魔道具はサンプルとして幾つか回収したよ」

 地中に埋められていた結界魔道具は箱型で、魔法陣が描かれた面に窪みが幾つかあり、魔石を埋めて発動する物だった。
 全て拾うとバレるので、3個程回収したのだ。

「ベルフェル司教の目的は、おそらくモーントガルテンの介入を阻止したかったのでしょう。ただ、首謀者のダフネ=トランスポートとの連携は無かったように見受けられます」

「確かに。俺達が、ヌル虚無教団の動きに気付いて対策をしていた事を彼女に伝えていたら、タイミングも戦力も変えていただろうね」

 教会でカザック達と会って話をしていた時に、ベルフェルは動こうと思えば動けた筈だ。
 何故か放置して、街中に無気力症が出だしたタイミングで結界を起動したとみえる。

「結果として結界は解かれたわけですが、この結界が無ければ、先に潜入する予定だった私と宰相さんとポルカの計画を変える必要はありませんでした」

「それで、仕方無しに自然洞穴側から来ていた俺達と合流したんだな?」

「はい。元々の私達の計画は、日数を掛けて施設の侵入でしたが、今回は洞穴側から地中を掘っての侵入に変更になりました」

 ニイヤ達に合流したアヤコとジョスイ達は、自然洞穴内に横穴を掘り進め、施設とは反対側のベヒモスの背後に回っていたのだ。

「ベヒモスを発見した私達は、先ずは露出部である右耳と右足部の付け根まで穴を掘り進め、幾度も氷結させ破壊。ベヒモス本体は、ポルカを仲介にしてゴーモラのリリルカが本土に召喚サモンしました。本土の贄数にはまだ余裕もありましたし、ベヒモスに大量に魔力が集められていたおかげで、召喚に必要な条件は楽できましたよ」

 当初の計画では、魔力供給は分身体と大量の魔力電池で賄うつもりだった。その手間が省けたのは時間的にも幸運だった。

「しかし、切り離しのタイミングが遅れていたら危なかったでしたよ⁉︎妙な結晶が飛び込んで来ましたから!」

「それに地震な。本体が消えて空洞化していたから、危うく生き埋めになるところだったぜ」

「ああ、あの時は君達の姿が一瞬見えて焦ったよ。急いで隠さなきゃってね」

 だからこそ、率先して封土の復旧にアラヤは取り組んでいたのだ。証拠隠滅の為に。

「結果的に、ベヒモスの露出部はそのままで、本体だけを奪う計画は成功でした。魔力が枯れて壊死するのは2、3ヶ月くらいでしょうね」

「いやぁ、我らがゴーモラの守護神たる1柱を取り返して頂き、誠に感謝しております!」

 つまり、アラヤ達はオモカツタに着いた時点で、ベヒモス奪還作戦を計画、即座に始動し、誰にも怪しまれずに完遂したのだった。

 もちろんコウサカには、ベヒモスはゴーモラ国土の守護以外の目的の使用は禁ずる条件を出してある。

 ヌル虚無教団からはベヒモスを守り、ゴーモラとの友好を深める。
 ウィリアム達に多少の背徳感はあるものの、ヌル虚無教団に対抗する為の一手を打てたのではないかと、アラヤ達は喜ぶのだった。
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

処理中です...