【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第25章 喰う、それは生きる為ですよ⁉︎

360話 快楽睡眠

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 大河の底にある神殿遺跡。
 水流は既に元の激流となっていたが、遺跡の辺りを囲む結界はまだ健在だった。

水の大精霊アーパス様達、遅いわねぇ?』

 入り口で待つクラーケンと水の眷属竜ガルグイユは、結界を張っていた無属性精霊のマイマイを確保していた。

『ぼ、ぼ、僕を食べたら、水流でみんなバラバラになりますよ⁉︎』

 マイマイは、ガルグイユの大きな口を見上げて震えている。

『別に食いはしない。我をあのアラヤ達小僧達と一緒くたにするな』

 そもそも、小さ過ぎて食べた気にもならないと言いたい気持ちは飲み込む。

『…確かに遅いな』

 確認しに中に行きたいが、この場を任された身であるから、動く訳にもいかなかった。


 当のアーパス達はというと、バアルゼブル化したアラヤが掛けた結界がようやく解除されたところだった。

『終わった…ということかしら?』

 アーパス達は、結界内に居た間、外の事は何も分からなかった。

『終わったのなら、アラヤが帰ってくる筈…』

「もしくは失敗して、バアルゼブルに体を乗っ取られた可能性も…?」

 アゲノルの予想に、アーパスやハウン達は顔を見合わせプッと吹き出して笑った。

『いやいや、それは1番無いでしょ!簡単にあのデブから主導権奪えちゃう子なのよ?』

「アゲノル様、アラヤ様と離れ過ぎてお忘れの様ですね?」

「リーダー、アゲノル様もご冗談を言うのだな?」

 散々な言われように、アゲノルは恥ずかしくなった。だって、俺はその分身体な訳だし。

『冗談はさておき、帰ってこないところを考えると、例のかもしれないわね?』

「はい、確かに快楽睡眠中の可能性が高いですね」

「あの、快楽睡眠って何ですか?」

 皆が当たり前のように納得しているので、ミュウは不思議に思い尋ねた。

「そうか、ミュウにはまだ説明していなかったね?」

 アゲノルが説明をすると、ミュウだけでなく黙って聞いていたリアナも驚いた顔をしている。

「つ、つまり、暴食王様達は技能スキルを奪う事ができるんですか⁉︎ただ、その代償に睡眠状態になると…」

「…オラ、驚きで言葉が無いぞ…」

 技能を奪えることは、魔王達以外には前例が無く有り得ないみたいだし、知らないのは当然だよね。
 ミュウが知らないという事は、嫉妬魔王のコウサカは、国では無下に奪っていなかったってことなのかな?

「でも仮に、今が快楽睡眠中だとすると、召喚魔法陣の阻止には成功したって事だよね?」

「そう…だと思われますが、同時に動けなくなっていらっしゃるかと…。一度、外に出て探すべきだと思います」

「だよね。えっと、それならばこの遺跡を出なきゃだけど…。オードリーはテレポートはできる?」

「すみません、まだ習得できていません」

 つまり、今この場にいるテレポート持ちはアゲノル、ハウンだけという事だ。
 しかし、アゲノルとハウンの2人は誓いの契約の為にアーパスから余り離れる事はできない。

『アゲノル、ハウンには一度アラヤの配下の2人を外に出してもらいましょう。契約は一時的に解除するわ。でも貴方は残ってね?私達は、この娘を連れて遺跡を動かすわよ?』

「は、はい?」

『フフ、海底遺跡の増築よ!』

 どうやらアーパスは、水の力を使い遺跡を流し、元の海底遺跡と繋げる考えらしい。
 だが、遺跡の崩壊を防ぐためにもリアナと契約している無属性精霊の協力は不可欠だ。
 それで、リアナを懐柔するべく、アーパスは優しく話し始めた。

『リアナ、貴女に私の加護をあげるわ。だから、私達と一緒に暮らさない?』

「へ?ええっ⁉︎お、オラと暮らす⁉︎で、でも、オラはこの神殿の護人なんだぞ。ここを、離れられないんだぞ⁉︎」

『大丈夫よ、この神殿ごと移動するから。ただ、一応貴女の許可が欲しいからね?』

「い、一緒に…」

 アーパスの差し出された手に、リアナは今までのぼっち生活を思い出す。ハッキリ言って楽しみなど皆無で、義務感に似た罠のチェックや掃除の日々。
 比べるまでもなく、天秤はあっさりと傾いた。

「よ、よろしくお願いする…だぞ」

 リアナは恐る恐るアーパスの手を取る。
 するとギュッと握り返され、抱き寄せられた。

『フフ、ええ、よろしくね?』

 その笑みに呆けるリアナは、そのままアーパスに抱き抱えられて移動する。

「そ、それでは、私は彼等を地上へと移し、アラヤ様を探します」

「ああ、頼むよハウン」

 ハウンはアゲノル達に別れを告げて、オードリーとミュウを連れてテレポートした。
 行き先は、地上で最も近い位置にあったムシハ連邦国の1つの国、イガタニ国のヨトシハ街に指定した。
 この街は、グルケニア帝国とラエテマ王国と隣接する街、つまり国境街だ。
 ハウンは、フレイア大罪教の仕事で国渡りをした際にこの街に来た事があるのだ。
 しかも、その際に訪れたフレイア神殿跡の巡礼地を座標に選んだ。

 神殿跡地よりもだいぶ手前にテレポートしたハウン達は、近くの森に姿を隠した。
 開けた場所でのミュウの姿は余りにも目立つからだ。

「リーダー、先ずはどうやってアラヤ様を探すのだ?我々の感知能力では、せいぜいあの街までがやっとだぞ?」

「それは分かっているわ」

 元々、アラヤがバアルゼブルの姿で消えた際、どこに向かったかすら分からない状況だ。
 スニス大陸のどの場所に居るかなど、感知できるのは風の大精霊エアリエルかアラヤくらいだろう。

「微精霊に聞きましょう。精霊には精霊の繋がりがある。アラヤ様なら、精霊達にも認知度が高い筈よ?」

「なるほど、やってみよう!」

 運良く、3人共に精霊視認と精霊言語持ちだ。ミュウには闇の契約精霊パートナーもいる。

「お願い、エアリエル様の伴侶たるアラヤ様を探して!」

 ハウン達は各属性の魔力を放出し、微精霊達を集める。

「えっ⁉︎」

 ところが、集まり出た精霊達は、愉悦の表情で、ダラダラとその場から動こうとしなかった。

「これはまさか、快楽睡眠⁉︎各属性の精霊達まで⁉︎」

 ハウン達は、ようやく地上の異変を感じ取った。
 先程から、鳥や獣達の鳴き声すら聞こえない。

「まさか…生き物全て⁉︎」

 ハウン達は神殿跡地に急いだ。跡地と言っても巡礼地でもある。
 少なくとも管理をする為の団員が、1人は常駐しているかもしれないからだ。
 案の定、1人の年配の団員が、部屋の床に倒れていた。やはり快楽睡眠の様だ。

『おお、君達か!』

 突然、背後から声が聞こえて振り返ると、光の大精霊ミフルと光の眷属竜ベレヌスが現れた。

「「「ミフル様!」」」

『魔力の大量放出を感じて来たんだ。いやぁ、おかげで探す手間が省けたよ』

「あ、あの、我々はアラヤ様を…」

『うんうん、分かっているよ!私が連れて来た』

 眷属竜ベレヌスがハウン達の前に屈み、背中に乗せられているアラヤとヨハネスが見えた。

「「「アラヤ様‼︎」」」

 急ぎアラヤを背から下ろして寝かせる。
 既に姿はバアルゼブルから元の姿に戻っている。そして、想定通りの快楽睡眠中だった。

「ミフル様、アラヤ様を守っていただき、誠にありがとうございます!」

 ハウン達が深々と頭を下げると、ミフルは頭を横に振った。

「いや、むしろ彼に我々は救われた。感謝するのはこっちだよ。それにしても、君達は寝ていない上に覚えているんだね?」

「え?」

 ミフルは、スニス大陸全土で起きたことを3人に教えた。

「そ、そんなことが…」

『ああ、あれはまさに神の御業と呼…』

「「流石はアラヤ様!」」

 目を輝かせるハウンとオードリー。未だ寝ているアラヤを称賛しだした。

『ハハハ、見方を変えれば大厄災とも言える集団睡眠も、君達からすれば偉業に過ぎないんだね?まぁ、確かに世界消滅に比べたら、多少の記憶消失と強制催眠は許されるべき厄災だよね』

 問題なのは、いつ目覚めるかという点だけど。

『なるほど、君達やアーパスは、結界内に居たから微精霊達から記憶を奪われずに済んだんだね?ということは、他にも結界を張って免れた者が居るかもしれない。ただ、善人なら良いのだけど…』

 悪人がこの集団睡眠を免れたのなら、無防備な今の世界では悪事のヤリ放題だといえる。

「快楽睡眠が終わるのは、対象にもよりますが、軽い場合で早くて3日くらいです。長い場合は…予測できません」

 そもそも、今回のケースは今までとは違う。直接食べた訳じゃないようなので、今までより早いかもしれない。

『指揮していたアラヤ君はともかく、精霊や生き物達はある程度は軽いかもしれない。しばらくは私が監視するしかないか。君達はこれからどうするんだい?』

「私達は、アラヤ様を連れて一度アーパス様と合流します。その後は、アーパス様にお願いして、浮遊邸のあるソードムへと向かうつもりです」

『そうか、じゃあ、また遊びに行くよと、エアリエルにもよろしくと伝えておいてくれ』

「承りました」

 ミフルは笑顔で手を振り、ベレヌスと共に帝国の空へと飛び立って行った。

「さて、私達も急ぎましょう。ただ、テレポートは術者を入れて3人までです。ですので、オードリーはここで待っていてくださいね?」

「…仕方ないな」

「必ず後から迎えに来ますから」

 自身が、テレポートを使えないのだから仕方ない。飛竜や馬も今は睡眠中だし、魔物であるミュウを残す訳にもいかない。
 そう、仕方ないのだと、1人残されたオードリーは、自分の努力の足りなさを後悔するのだった。
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