【完結】スキルが美味しいって知らなかったよ⁈

テルボン

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第26章 楽しいばかりが人生ではないそうですよ⁉︎

382話 消えた3人

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 空中公国月の庭モーントガルテンは、今や姿を隠す事無く大陸の上空を横断している。
 各国にその存在を認知させる為でもあるけど、不可視結界はいざという時以外には使わない事にしたのだ。

「アラヤ君、後2時間程でゴーモラに到着予定です。サナエさんが、礼服を受け取りに来てと言ってましたよ?」

「うん、分かった」

 アヤコと入れ替わる形で、アラヤは管制室からサナエの下に向かう。
 冥界の国ゴーモラで行われる式典に呼ばれたので、それに合わせてサナエが礼服を新調したのだ。

「あ、やっと来たわね!細かい調整をするから着てみて?」

 部屋に入るなり、サナエが赤子を抱きながら真新しい礼服を差し出してきた。

「それにしても、ネガトの方が選ばれるとは思わなかったわ。彼女はてっきり、相手をもてはやすソルテの方が好みな気がしてたんだけどね」

「まぁね。でも波長が合ったのかもよ?」

 着こなし具合を確認していると、寝ていたヨウがぐずつき始めた。

「おっと、起きちゃったね。調整はしておくから、そこにあるドレスを風の大精霊エアリエル様に渡してくれる?」

 今回はエアリエルも参加するらしく、彼女用のドレスも新調していたらしい。

「うん。じゃあ、後でね」

 ドレスを持ち部屋から退出する。到着前ということもあり、みんなバタバタしている。

「あ、大公様」

 廊下でおめかしした子供達と遭遇した。タオとハル今も師匠呼びだけど、人犬オレオの娘ハナとポッカ村出身のリズ達は、バスティアノの教育方針でアラヤを大公呼びになっている。

「ミネルバ様は、もう月の庭ここにはお戻りにならないのですか?」

 どうやら、ラエテマ王国に親善大使の公務で一時的に戻っているミネルバを心配しているらしい。
 王女という垣根無く、みんなが彼女と仲良くしてくれている事はありがたい。

「そんなこと無いよ。7日後には迎えに行く予定だからね」

「良かった~!でも、あのお兄ちゃんは帰って来なくても良いけどー」

 彼女の護衛として付いているリッセンは、子供達からかなり嫌われている様だ。まぁ、彼女への会話や態度に口出ししていたから無理もないが。

「タオ、贈呈予定の絵画はできているの?」

「はい、サナエさんの念写を元にして描いた風景画と女王の肖像画は完成してます」

「良かった。タオの絵画なら彼女もきっと喜ぶよ」

 みんな着々と準備を終えているな。

 自室に戻ったアラヤは、出迎えたエアリエルにドレスを渡した。

『新作か!どれ、着てみるとしよう』

 エアリエルは早速、新作ドレスへと着替えだす。オシャレに目覚めて以降、彼女の美しさは止まる事を知らない。

『どうした、浮かない顔をしているな?』

「うん、ちょっとね」

『居なくなった3人か…』

 それは3日前。急なことだった。


       ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


 アシヤが持ち帰った禁呪魔導書【躍動の藤黄とうおう】で、全ての禁呪魔導書(カオリの複製本も含む)が揃った。
 なので大精霊達との約束通り、火の大精霊ムルキベルの寝床へと焼却処分する為に向かった。

『良くやった、アラヤ。全大精霊を代表して、其方に感謝を述べる』

 頭を下げる大精霊に恐縮しながら、全ての魔導書を差し出した。
 ムルキベルは其れ等を、自らのマグマへと引き込んだ。
 魔導書はそれぞれの色の炎を見せて燃え尽きていく。

『これで、我等大精霊の力を強制的に使う者は現れなくなった訳だな』

「ええ、そうですね」

 ムルキベルは知らないが、天変地異を引き起こす禁呪魔導書は、後はカオリのカメラアイの記憶内だけとなった。
 これは、彼女を知るエアリエルは黙認している。
 それは無論、彼女が悪用しないと信じているからだ。

『また大精霊同士で集う機会を作ろうぞと、エアリエルに伝えておいてくれ』

「分かりました」

 アシヤは、ムルキベルの土産(ドラゴン肉)を受け取り、モーントガルテンへと帰国した。
 すると、アラヤに気付いたカオリが寄ってきた。

「大丈夫だった?」

「うん、カオリさんが記憶している事は知らないみたいだった。知っていたとしても、ムルキベル様も、エアリエルみたいに悪用しないと信じてくれるさ」

「カメラアイで覚えた事は、忘れたくても忘れられないのよね…。コレは、私が墓場まで持って行くしかないわ」

 技能スキルとしてのカメラアイには容量に限界が無い。
 絶えず情報整理している脳とは別に記憶しているらしい。

「ああ、そういえばアヤコさんが、帰ったなら直ぐに管制室に来てと言っていたわよ?」

「なんだろう?」

「ゴーモラから通信が来たって言ってたわ」

 アラヤが管制室へと向かうと、入れ替わるようにしてカオリの下にアシヤがやって来た。

「大丈夫だったんだね?良かった」

「ええ。自衛策として覚えたことだけど、いざ私だけが使えるとなると、怖くてしょうがないわ」

「地下通路で禁呪魔導書をしばらく保有していたドワーフは、言語理解持ちじゃなくて解読に時間が掛かった上に、内容を理解しても悪用しようと考える奴じゃなかった。書き写しも暗記もしていないようだから、彼の事も放置して大丈夫だろうね」

 アシヤ達は、店主のドワーフをマンモンから救った後、彼がどこまで禁呪魔導書の危険性を理解しているかを確認していた。

「だけどそもそも、禁呪魔導書を作り出した奴って、どんな奴だったんだろう?」

「私が思うに、巫女だったと推測しているの。キッカケは分からないけれど、使われている術式には必ず精霊言語が含まれている。つまりは加護を得ていた人物。ただ、どんな接点があったか分からないけど、悪魔の呪詛言語まで入っているの。…魔導書には、厄災の悪魔の詳細と召喚方法も記載されている。其れ等を踏まえると、祭壇を利用した召喚方法を思い付くのは、神殿に近しい者に限られているもの」

 禁呪は、属性魔法術式、精霊言語術式、呪詛言語術式の3つ以上の複合魔法であるらしい。
 太古に、其れ等を持ち合わせていた者を考えれば、当時の巫女、即ち魔王ということになるだろう。

「そうかもね。でもまぁ、7つの神殿に支えていた巫女が、それぞれに作ったとは考えられないけど…。対抗策として作り合ったならあり得るのかな?」

「さぁね。どちらにせよ、後世にはいい迷惑だったって事よ。でも、それも今日で終わったわけよね?」

「そうだね」

 アシヤの返した笑顔に、カオリはこの時少しだけ違和感を感じた。

「アシヤ殿、準備が終わりました」

 そこに、ベルフェル司教が現れた。

「何処か行くの?」

「うん。彼と今から、大罪教教皇様の下に禁呪魔導書消滅の報告にね?」

 アシヤはそう言って、ベルフェル司教と共に出て行った。
 身柄が捕虜扱い(戦犯)のダフネも連れて、3人はこの後姿を消したのだった。

 丁度来たゴーモラからの通信で後回しになっていたが、3人の行方は分からないまま、忽然と消息が途絶えてしまったのだ。


       ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆   ◇


『私の大気感知にも、アラヤの水中感知にも反応は無い。きっと何らかの理由で気配を完全に消しているのだろう。仮にも貴方の分身体だ。無事でいる事は間違いないだろう』

 エアリエルは、心配し過ぎるなとアラヤを後ろから優しくハグする。
 確かに、ステータスは落ちているとはいえ、自分の分身体が事件に巻き込まれたくらいで負けるとは思えない。
 となると、3人は何らかの理由で姿を隠している説が1番正しい気がする。

『今は、ネガトの結婚を祝う事を優先したらどうだ?』

 確かに、エアリエルの言う通りだ。方法は違うとはいえ、彼等は自分から生み出された同じ分身体だ。

「そうだね。今はヌル虚無教団の様な脅威的な存在はいないから、アシヤ達なら大丈夫だろうね。彼等を探すのは、ネガトをちゃんと祝ってからにするよ」

 アラヤは衣装を正し、ゆっくりと振り返る。

「うん、花嫁より目立ってしまう事、間違い無しだね?」

 気持ちを切り替えたアラヤは、ようやくエアリエルの新しいドレス姿をじっくりと鑑賞できたのだった。
 
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