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異変

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「玲、これを持っていけ」

「これは……手帳っすか?」

「よく読んで頭に叩き込んでおけ。……ここから先は危険な道になるだろうからな」

ご主人様は参加はしたくてもできない状態。

「相手はウイルスみたいな存在だからな。人間、人外全て侵食させる」

「ウイルス……あの時見た黒いのっすか」

「そうだ。それが全身に回るとゾンビ化する厄介な奴だ」

そして玲にネックレスを出すよう指示すると十字架のネックレスをポケットから出した

「お前に持たせておいて良かったな。待っていろ」

十字架のネックレスに魔力を注ぎ込む。
この特殊な十字架のネックレスは一家特有である
十字架に耐性が無くなると支給される代物。
身を守る大事な物。

「これなら少しのウイルスは避けれる。」

膨大な魔力を持つ一家は護身用に持たせてくれる。
ただ、玲のご主人様は今回の戦いに必須な人物。
さっきの話からして理解出来た。
こんなウイルスが入ってまだ平静としていられるこのご主人様の姿は……

「ありがとうございます。無鹿様」

無鹿(ムロク)と名乗るこの男は頭を撫でた。

「しばらくの間だが、お前を出す。意味はわかっているな?」

「はいっす。スーリヤの捜索っすね。」

「あぁ。くれぐれも……あの男だけには近寄るな。分かったな?」

「はいっす!特徴は昔見たあの男と同じっすね。」

長い黒い髪の男
玲もあの時確かに見た。
真っ黒な……

「玲、ただしひとつ。」

玲は真面目な顔をした。

「俺の特訓を受けてもらう。魔法以外も全てだ」

「えっ」

顔を青ざめる。地獄の特訓と思うと怖い。
それにあの男に対抗するほど強くはない。援護用だ

「説明しながら特訓場行くぞ。」

「え、今からっすか!?」

「あいつは昔よりさらに強くなっている。遅れるな」

折りたたみ式の椅子を持たせては起き上がり
よくなったのか普通に歩く
体調が優れないのに大丈夫なのだろうか
マントを羽織ると、玲にもマントを1つ投げる。

「行くぞ」

「は、はいっす!」

自分も羽織り2人でフード被ると椅子を持って走って行った

「では歩きながら質問する。100%合ってなくても問題ない」

「はいっす!」

緊張をしてしまう。今回の対抗戦のための知識だろう

「あの男によってばら撒かれた未知のウイルスには勿論だが、魔法の一種だ。その属性は何だと思う」

「……闇」

「正解。では、これから貴様に習わせる事は?」

「……まさか!」

玲は途中で足を止める。
無鹿は振り向いて軽く笑った

「そうだ。貴様が思っている奴だ。言ってみろ」

「光属性……それもウイルス対抗手段でありあの高難易度な!?」

「正解だ。」

そして、前を向き外に出ては改めて振り向いて言った

「これより、レンにウイルス対抗手段である特殊な光魔法を伝授する。」

「はい!ありがとうございますっす!」

深々とお辞儀をしてスイッチを入れる。
真面目にしないといけない
これはやり遂げなければならない。
そして俺が助けなきゃ

「王を必ずお守り致します!そのようにこのレンが精進致しますっす!」

辛い。
ウイルスが侵食しつつある王がこんな普通にして居られるのが。
誰よりも辛いはずなのに
俺が強くならなきゃ
そして俺が王を守らなきゃ

「では早速特訓場へ向かう」

「はいっす!」

2人は歩いていく。
そして着いた先はいつも兵を鍛えている訓練場

「光魔法をしてみろ」

普通に光魔法を王が出すと
玲も繰り出した

「それを更に濃ゆくさせる」

魔力をかなり消費する
かなりの光に目がやられそうになる。
王は簡単にやり遂げる。

「そこに万魔を入れろ。しかもお前がいつも俺に出すものより濃ゆくだ」

「え!?」

「それほど難しいってことだ」

万魔は普通の魔法より倍以上に使う魔法。
黄色い光だったのが無鹿が出すものはあっという間に青い光へ変わった

「これがウイルス対策で1番簡単な奴だ」

「1番簡単!?」

玲はびっくりする。

「俺は光属性が得意では無い。だからそれを受け継いだお前に教えてやっている。」

これが出来なければ誰も助けられない。
そして無鹿は低い声でハッキリ言った

「あれは絶対に出すな」

あれ……
それは魔力を過剰に出すことによって浮かぶ痣。
無鹿の血族は必ず出さないようにと下している。
出すとなると、殺される

「視力と命中率は良し。あとは攻撃と近距離だ」

王は強い。
これこそ、近距離と長距離……両方いける男

「まずはそれを習得した後、その上にそいつを作りながら攻撃する。作る隙が無い場合にだけ使用しろ」

難しい。作るのだけでも精一杯。
汗が出る。

「……もう少しリラックスしろ!」

手に力が入る。全身に
作るのに必死になる。
こんなに魔力を使って、残りが少ない
全て使い果たすのは致命的。
それを教えてもらった為言われた通りにするも、それが難しい

「っ!!む、無理っす!!」

「止め」

やめた途端ゆっくり無くなっていく

「座れ」

「え、でももう……」

「座れ」

仕方なく地面に座らされ、無鹿も地面に座った。

「魔力を全身に回らせろ」

「……」

大人しくやろうとしても今までより厳しいためか行き渡らない。

「それが普通にできるようなったら、普段からもそれをして生活しろ。家事や掃除、物持ちまで全て出来るまでだ。お前ならすぐ出来る。」

それが出来るまでは自分が分からなければならない。
やればきっとすぐ出来るのだろう。
いつも無鹿はそうだった。
けど彼は間違ったことは言わない

「俺が良しと言うまでは強化を続ける。出来た途端お前を人間界に送り込む。そして、あの男を事前調査しろ」

「はいっす」

玲は大きな声で返事をした。
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