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8章 鍛冶屋と共和国
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しおりを挟む騎士団長「だがここの壁・・・他の場所と少し質感が違うような・・・?」
加治屋(・・・・・・・・・。)
騎士団長はそう言いながら加治屋を隠している土の壁を、コンコンと軽く叩いてみた。そして、
本物の岩を軽く叩き出して何かを探り始めた。
加治屋(何でこんな所で執念深くなるんだよ!?)
加治屋の思いとは裏腹に、騎士団長はジリジリと加治屋自身を追い詰めに来ていた。その時。
金田「おい、何やってんだ・・・騎士団長殿?」
不意を突かれたその声に反射的に騎士団長は、腰に差した剣の柄を掴みながら素早く反転した。
騎士団長「・・・金田・・・。どこまで我々の邪魔をするつもりだ・・・?」
そこには崖の頂上に仁王立ちしている金田が、余裕綽々の表情で騎士団長をなだめようとしていた。
金田「まぁまぁそう言うなって!久しぶりに会ったんだ。積もる話もあるだろ?」
騎士団長「そんな物・・・俺には・・・無い!」
そう言いながら騎士団長は瞬時に剣を引き抜き、金田の方へ向けた。
金田「・・・何をそんなに焦っている?あれか?お前の上司がいい加減我慢の限界なのか?
まぁお前の上司って言っても、共和国の国王の事なんだけど。」
騎士団長「そうではない。我々は魔王軍を討伐する為に日々研鑽を重ねている。
裏ダンジョンの解放はそのついでだ!あくまで我らのターゲットは魔王軍ただ一つ。」
金田「相変わらず真面目に真面目を塗りたくった言い方だな・・・?その割にはプライドは無駄に高く、
相手に対して横柄な態度をとりがち・・・。どれが本当のお前なんだろうな?」
騎士団長「無駄話で時間を稼いでいるつもりか?そんな事をしても共和国軍全軍がここの店主、
加治屋孝則を捕縛する。そして金田・・・。お前が手放した勇者の武具を全て手に入れ、魔王軍を壊滅させる!」
金田「時間稼ぎも何も・・・、その探してる奴なら直ぐ近くにいるんだが?」
加治屋(・・・・・・はぁぁぁ?)
金田の突然の暴露に加治屋は心の中で発狂しそうになっていた。
騎士団長「・・・この近くにだと?いや、何故お前はその様な事を俺に教える?」
金田「いやぁ、お前俺がここに来なかったら、確実にそいつを半殺しにしそうだったからな。
そんな怒気を感じて俺がここに来た。俺がいればお前は好き勝手には出来ない・・・違うか?」
騎士団長「・・・・・・・・・。」
騎士団長は無言のまま答えなかった。
金田「まぁ、その他諸々については下に降りて話そうや!・・・それで良いよな加治屋?」
加治屋「・・・勝手に決めんなよ。俺が苦労して壁作ったのに・・・。」
騎士団長「本当にいたのか・・・。」
・・・・・・・・・・・・
その後、加治屋・騎士団長・金田を含めた3人は話し合うとの条件で、裏庭の地面に戻って来ていた。
騎士団長「さぁ店主・・・。さっさと武具を共和国軍に渡して貰おうか?」
加治屋「・・・無い。」
騎士団長の問いかけに加治屋はただそれだけ、無いと短く答えた。
騎士団長「無い?それはどういう意味だ?まさかどこかへ売ったのか?そうならどこへ売ったのか言え。」
金田「おい、さっきも言っただろ。偉そうにするんじゃないって。」
騎士団長「・・・どうして武具が無いんだ?」
加治屋「お前達に・・・共和国軍に渡す武具は無いって言ってんだ。既に先客がいる。
将来的にそいつに託すつもりだ。」
騎士団長「将来的に・・・ではまだ渡す予定では無いのだろ?ならば限定的に貸し出しを・・・。」
加治屋「・・・何だろうな?つい最近同じ様なセリフを聞いた気がするな・・・。
あいつ・・・あんたの考えを予測でもしてたのかな?」
騎士団長「・・・金田。こいつはまともに話す気は無いのか?」
金田「だから俺がいるんだ。そうじゃないとお前容赦なしに切りかかってただろ?」
騎士団長「・・・・・・・・・。」
金田「・・・いや、あんたが来る前、あんたと同じ騎士団長を名乗る人間が来ててな。
そいつも勇者の武具を渡せと言って来た。」
騎士団長「それはおかしい。共和国軍の騎士団長はたった一人しか存在しない名誉ある称号。
・・・まさか、その偽者に勇者の武具を!?」
加治屋「・・・いや、俺はそいつに武具を隠して貰う様に頼んだ。」
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