3 / 50
第1章 チュートリアル編
第2話 ネーミングセンスをください
しおりを挟む「なんだ? ドロップアイテムってやつか?」
俺だって多少異世界転移や転生などには理解がある。ガチオタってほどじゃないが、弟に勧められるがままにライトノベルってやつも読んだ。結構好きだった。
弟は俺が全国動物らぶらぶ愛好会のメンバーのように、漫画やアニメの愛好会みたいなものに入ってたりするらしい。……とまぁ、今はそんなことどうでもいいか。
俺は地面に横たわるバトルアックスと謎の紙のようなものの側に足を運んだ。白猫は俺の足元を離れないようにしてついてくる。やっぱり猫様最高に可愛い……。
「これは……カードか? なんかさっきのイエティもどきが書かれてるけど」
手のひらにちょうど収まるサイズの紙は触ってみると意外としっかりしており、まるでトランプのようだった。
「モンスターNo.12……エイティ。ってイエティじゃねえのかよ。なんだよエイティって……」
カードの文字は俺でも読めた。
日本語なのは流石におかしいから、もしかして見る人が分かる言語に自動で翻訳されているのかもしれない。ここは恐ろしいバケモノが出るような異世界だ。普通じゃありえないこともまかり通る。
俺はモンスターの描かれているカードを裏返した。全体が赤く塗られており、中心には黒い蛇のようなマークが描かれていた。
俺はとりあえず勝った記念にと、カードをスキニーパンツのポケットに入れる。
「あとは……このバトルアックスか。軽いけど邪魔だな。だけど、一応持っておくか。またバケモノ出てきたらヤバイし」
「みゃーおっ!」
「ははは……そのときはまた俺を守ってくれるのか! ありがとうな!」
ほとんど表情は変わってないはずなのに、白猫が嬉しそうにしているように見えた。
「……っとそういえば、さっき白猫がエイティ? だっけ、あれを動けなくさせたのは何だったんだ? ……もしかして異世界の能力……」
ありえる。
以前借りたライトノベルでは、主人公やその周囲の人間たちが魔法や能力を使っていた。
しかも戦いの前に読んでいた手紙には、転移のために特典をくれると書かれていた。
「もしかして、俺がこいつを軽々扱えるのも……その能力なのか」
拾い上げたバトルアックスに視線を向ける。それは俺の身長と同じくらいの大きさで、見るからに重力感がある。こんなものを軽々使えている人がいれば、俺も二度……いや三度見はするに違いない。
「みゃーお」
足元で鳴く白猫を見下ろすと、いつのまにか先ほど読んでいた手紙持ってきていた。エイティが来る前、適当に地面に置いていたのだ。
「おお。見つけてきてくれたのか、偉いな」
「にゃっ」
俺は足元にある手紙を拾うと、もう一度文面を眺めた。
「あれ。さっきは無かった文字、増えてねえ?」
繰り返し読んだはずの手紙には『追伸』と書かれた文章が増えていた。
俺はその文字を目で追う。
『ギフトとスキルはどうだ? いい感じだったんじゃないか? あと、おそらく近くにいるはずであろう猫。あいつはお前についていきたいと私に頼み込んできたから、おまけとしてモンスターに変えて送り込んでやった。その猫の初期スキルの《魅了》は大したものだろう。……ああ、言い忘れていた。ギフトやスキルを確認したければ心の中で“ステータスボード”と言えば出てくるぞ』
ステータスボードか。
あれだよな? よくゲームにも出てくるHPやMPとか、そういう感じの。不思議と心惹かれるのはなんでだろう。ロマンか? ロマンなのか?
「お前の能力は《魅了》なんだな。その美しさに違わぬぴったりなスキルだ」
「みゃお!」
「おおそうか、俺のも早速見てみないとな。まぁ、さっきの戦闘からみて予想通りなら――」
俺はトクトクとはやる心臓を抑えながら、早速心の中で「ステータスボード」と唱える。
「おお……すごいな、これ」
すると、自分の目の前に文庫本2冊ほどの大きさの透明な板が現れた。そこには日本語でなにやら文字が書かれている。
どうやら俺自身の情報らしく、早速眺めてみることにした。
・・・
識別No.4548714【NO NAME】
固有ギフト:魔物大好き
スキル一覧:《怪力》
テイムドモンスター【白猫】LV.3
HP:30/30
MP:20/30
スキル一覧:《魅了》
・・・
「おお! 本当に書かれてる。【NO NAME】ってたしかに自分の名前思い出せないけど。あれ? だけど、俺のHPとかMPは書かれてないな……しかもモンスターマニアって。たしかに生き物全般大好きだし、魔物にも興味あるけど……識別ナンバーってのは、日本でいうマイナンバー的ななにかか?」
俺は眉間にシワを寄せ、少し考え込む。
「白猫のMPが20/30なのは、スキル使ったからか? ということは一回使用毎に10減るのか。白猫のレベルは3か。さっきの戦闘で経験値とか入ってたりするのか?」
分からないことはまだまだたくさんある。
けれど、自分で考え込んでいても仕方がない。誰か教えてくれそうな人に聞いてみるべきだと思った。
魔物大好きモンスターマニアがどんな固有ギフトなのかよく分からないし、手紙の主も特典とか言っているのだ。
謎ばかりな分、一応周囲警戒すべきか? ……口が固い人探して聞いてみるべきかもな。
杞憂の可能性はあるけれど、下手をこいてとっ捕まったら嫌だし。
「……っとそれよりも、名前決めるべきだよな。【NO NAME】じゃカッコつかないだろうから。思い出すべきなのかもしれないが、正直名前に未練もないし……名付けてくれた親には悪いが。白猫も【白猫】じゃあ可哀想すぎる」
俺は白猫の近くにしゃがみこみ、名前を考える。
正直言って、ネーミングセンスはゼロを超えてマイナス100くらいだと自覚している。よくサークル仲間に笑われたのだ。
けれど、周囲には俺以外に誰もいないし背に腹は変えられん!……いや、別にそんなことないとか言わないでね、そこは。
「うーん…………よし、決めた! お前の名前はミーコだ。そんな感じの鳴き声だからな」
「……みゃー」
「そうかそうか! 気に入ってくれたか」
少しばかり不満そうな雰囲気を出している気もしないが、俺はこいつをミーコだと名付けた。顎を指でくすぐると、少しばかり機嫌が良くなったようだ。
「ステータスボードも名前が【白猫】から【ミーコ】に変わってるな」
自動時に変更されるステータスボードは予想外にハイテクで。俺はなんだかテンションが上がる。
「あー、俺の名前どうしよう…………もういっそ、パーカー着てるから【パーカー】でいいか。なんちゃって」
そう言ってため息をつき、落としていた視線をステータスボードへと移す。
「……ってうっそ……マジで【パーカー】に変わっちゃってるんだけど。冗談ですよステータスボードさーん」
当然なんの反応もない。
「そうか、えーっとやっぱり藤四郎にしようかな。それともアレクサンドラとかの方がいいか」
……ステータスボードは相変わらず【パーカー】の字を映している。
いや、純日本人なのにパーカーはないだろう。それくらいネーミングセンスない俺だってわかるぞ。さっきはアレクサンドラとか言ってたが!
どうしても頑固なステータスボードに白目を剥きそうだが、これも俺自身の油断で招いたことだから仕方ない。諦めるしかないのか。
「はぁ。もういいや、パーカーで! どうぞこれからパーカーとお呼びくださいまし……ってなんか一人で言ってて寂しくなってきた……」
俺はわずかに哀愁を漂わせながら、白猫のミーコーを撫でる。
ああ、これで心のHPは満タン回復だ。
ちなみにパーカーは普通の洋服のパーカーのイントネーションではなく、【パ】だけにアクセントをつける方にしようと心の中で決意した。そっちの方が、まだマシな気がする。パーカーさんとか海外の方でも苗字で見るし。
「ミーコ。そろそろ動こうか。遭難したときはあまりその場を動かない方がいいとか言うけど、多分そういうのはこの世界で通じない気がするし」
「にゃあ」
「エイティ倒して少し腹も減ってきたし、とりあえず誰かいないか歩いてみるしかねえな」
俺、パーカーと白猫のミーコはとりあえず森の探索を始めることにした。
0
あなたにおすすめの小説
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします
ランド犬
ファンタジー
異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは
――〈ホームセンター〉
壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。
気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。
拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます
水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。
勇者、聖女、剣聖――
華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。
【戦術構築サポートAI】
【アンドロイド工廠】
【兵器保管庫】
【兵站生成モジュール】
【拠点構築システム】
【個体強化カスタマイズ】
王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。
だが――
この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。
最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。
識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。
「今日からお前はレイナだ」
これは、勇者ではない男が、
メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。
屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、
趣味全開で異世界を生きていく。
魔王とはいずれ戦うことになるだろう。
だが今は――
まずは冒険者登録からだ。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる