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第1章 チュートリアル編
第3話 ステータスボードはハイテク機器
しおりを挟む俺とミーコが森の中を探索するために歩き始めて30分。
永遠と変わらない周囲の景色に少しばかりうんざりしてきていた。
どこを見ても非現実的な大きさを誇る木々やド派手な植物。
異世界に来たときは度肝を抜かれたが、そろそろ順調に慣れ始めている。
「ミーコ、疲れてないか? なんなら俺の肩にでも乗るか?お前は意外と小さいんだし、いけそうな気がする」
「みゃーお」
「まだ大丈夫か。疲れたらすぐ言えよ」
確実にインドア派であった俺だが、意外とまだ疲労を感じていない。
先ほどのエイティとの戦闘の際も思ったが、日本にいたときより体が丈夫になっているような気がした。
あんな戦闘と言う名の運動をすれば、3分と経たないうちに息切れ必須なはずなのに。
いやー、もしかして死んだ時に体作り変えられたとか?……いや、まさかな。
ま、別にこれといって支障もないし、むしろこの世界で生きてくにはちょうどいいからそこまでに気にすることもないか。
「おっ、そーだ。暇だしとりあえずステータスボード弄ってみるか。この道も慣れてきたし、歩きながらでも大丈夫そうな気がする。さっきは興奮しすぎて冷静じゃなかったし、なんか見えてくることあるかも。ミーコ、少しの間、周囲の警戒頼めるか?」
「みゃ」
「ははっ、心強いな!」
俺は辛い森を歩きながら、心の中でもう一度「ステータスボード」と唱える。
すると当然のごとく、眼前に映し出される透明な板。
なんか俺、この世界にきてから地味に独り言多くなったような……だ、だってこんなよく分からん場所で、話し相手もいない状況で心細いんだよ……。
まあミーコのおかげで正気では入られてるけどさ!
言い訳をしながら、俺は相変わらない名前やスキルなどの情報を見た。
そしてなんとなく、スキル《怪力》の文字に触れる。
「あっ」
すると、ネットでよくあるリンクのように新しい文字が書かれるページに移動する。まるでPCやタブレット使っているような錯覚にも陥る。
「これ、スキルの詳細じゃないか。……ん? なになに……」
・・・
スキル《怪力》
受動的スキル。
全身のパワーが飛躍的に向上する。スキル《豪腕》の上位互換。レア度は上の下。
・・・
「パッシブスキルか……だから、あんな風にいきなり力持ちになったんだな」
スキル《豪腕》もクリックしてみるが、詳細画面にはリンクしない。どうやら自らが保有するスキルしか詳細を知ることはできないようだ。
レア度が上の下というのは高いのか低いのかよくわからない。一応、上に区分されているのだが、下と書かれているとどうにも弱いイメージを持ってしまう。
だけど、パワーが飛躍的に向上するっていうのは日常でも意外と使いやすいものか?
さっきの戦闘でもこれがなければ絶対死んでたし。
……まあ、パワーの調節がうまく出来るようにならないとな。
歩き始めた当初、スキル《怪力》をより知るためなんとなく近くの巨木にタックルを仕掛けてみた。
すると折れるほどではなかったが、随分ダメージが入ったのだ。……あと三回くらい同じようにタックルをかませば折れそうなほどに。
「ミーコのスキルについても見てみないとな」
「にゃおっ」
俺は《怪力》の詳細を右上にある×ボタンを押し、閉じる。そしてミーコのスキル《魅了》をクリックした。
・・・
スキル《魅了》
能動的スキル。
敵を硬直状態にする。持続時間は敵とのレベル差によるところが大きい。(使用者側のレベルが高く、差が大きいければ大きいほど持続)スキル《洗脳》の下位互換。レア度は中の上。
・・・
どうやら俺の《怪力》の詳細に書かれていた受動的とは正反対だろう能動的スキルであるらしい。
いやいや、ミーコの《魅了》は俺にとってパッシブスキルだから! ……という一人芝居はさておき。
「レベル差が鍵になってくるんだな。さっきの戦闘、おそらくミーコはLv.1だったよな……? それなのに意外と効くもんなんだ。敵が弱かったってことか」
俺は頭を悩ませる。
異世界はこういうものなのかもしれない。
そう自分を納得させ、最後に一番気になっていた固有のギフトの文字を見る。
スキルの詳細など誰かに聞くものだとばかり思っていたが、こんな簡単にクリックするだけで分かるなんて予想外だった。
いや、冷静に考えれば試してみようという気になるかもしれない。
……俺はどこか焦っていたのだろう。勝手に異世界に来させられて。
「それじゃ、固有ギフトの魔物大好きモンスターマニアも見てみるか」
俺は文字に触れた。
「……あれ? 詳細画面が現れない?」
「みゃ?」
俺は何度も繰り返し魔物大好きモンスターマニアの文字をタップするが、反応がない。
もしかして固有ギフトはステータスボードじゃ詳細がわからない?
固有ってついてるくらいだし、普通のスキルとは全く別のものなのか。
俺は小さくため息をつき、ステータスボードを閉じる。
スキルの詳細を見ること以外に、これといって目新しいものはなかった。
森の中をただひたすら歩いていると時間感覚がなくなってくる。
エイティと戦闘してから一度もモンスターと邂逅していない。
もしかして、この場所はモンスターですら来ないような密林地帯なのではないかなどと嫌な予感が頭をよぎる。
「手紙の主もどこに飛ばされるか分からないみたいなこと言ってたし、これから先誰とも会わず、野垂れ死んだらどうしよう」
「……みゃー」
「そうだよな、先のこと考えていても仕方ねえ! 今は気力も有り余ってるし、とりあえず出来る限りのことしなきゃな。……とは言っても歩き続けることしか出来ないんだが!」
持ち前のそこそこポジティブシンキングで、折れそうな心を立て直す。
そうして歩き続けてから、体感時間で1時間ほど経った。
途中から肩に乗り、俺の頭に自分の頭を乗せて眠っていたミーコが飛び降りる。
歩きながらも触っていた右手のモフモフがなくなり、内心がっかりする。
「しゃー!」
ミーコは警戒するように小さく鳴いていた。野生の勘みたいなものが働いたのだろうか。
俺は立ち止まり、耳をすませる。
ガサガサと草が揺れる音がする。
俺は警戒心を限界まで高め、近場の巨木の陰に隠れた。
左手で掴んでいたドロップアイテムのバトルアックスを両手で持ち、いざというときのために構える。
このアイテム、モンスターの使用する武器のためか無駄な装飾が一切されていない。
ゆえに非常に使いやすく感じていた。
……というのとスキル《怪力》があっての物種だが。
俺自身、モンスターに興味はあるが積極的に戦闘したいとは思っていない。
命を投げ出すことはミーコを庇って死んだときだけで十分だ。
息を殺し潜んでいると、向こうから現れたのは人間だった。
男?
それも一人……結構若いな。俺と同じくらいか。
こういう場所って普通ならパーティとか組んで探索するもんじゃないんだろうか?
ゲームとかだとモンスターとソロで戦うのはよほど奇特な人間か、物語の主人公と相場が決まってる気がするけどなぁ。
同じ人間をみてホッとした俺は、相変わらず息を潜める。目立たないように行動するのは昔から結構得意だった。
俺はなんとか自分の存在をギリギリまで現さないようにしつつ、男から情報を引き出そうとするという方針に決める。
近くで拾った小石を自分のいる場所から離れた所へと投げる。
「おい、誰かそこにいるのか?」
予想通り、男は俺の石の落ちた場所に意識を向ける。
男は鮮やかな金色の髪と緑の瞳を持っており、物語でいう貴族のような容姿をしていた。
おいおい……こんなあっさり騙されるなよ。この男、もしやそんなに強くない? こんなに簡単に素人の騙されるんじゃなあ。
馬鹿な方が俺的には助かるけど……すぐ死なないか、心配だぞ。
「いつまでも隠れていられるとは思うなよ。私のテイムドたちが襲いかかる前に出てくる方が賢明だ」
テイムドとはテイムドモンスターのことだろうか。
んー、少し可哀想に思えて来た。
この男くらいなら勝てる気がする。油断する気は更々ないけど。
ミーコは俺と同様に、呆れたような目で若い男を見ているような気がする。
俺は意を決し、まだ人のいない方へと意識を向けていた男の前に姿を現した。
「……やぁ、こんにちは! あれ、もしかしてこんばんはか?」
「に、人間!? なぜそんな所から現れる……さ、さっきこっちから物音がしたはずだ! もしかして人の皮を被ったモンスターか!」
いや、人の皮を被ったモンスターって……ひどい言われようだな。
俺、残虐なのとかグロテスクなのはあんま得意じゃないし。
安心安全安定の3安スリーアン大好きなんですけど。
「いえいえ、モンスターなんかじゃありませんよ! 俺のどこをどう見たらモンスターなんですか。ちゃんとした人間ですよ」
男は大きく目を見開き、じっと俺を見つめる。
その様子がひどく間抜けに見えて、俺は笑いを堪えた。
こいつ……天然なのかもしれない。
「た、たしかにお前は人間のように見えるな。もしかして、私と同じテイマーか?」
「ええと……あなたはテイマーなんですか?」
「ああ、というかテイマー以外【終焉の森】に入るものなどいないだろう」
ほう、ここは【終焉の森】っていうのか。
終焉って……なんとなくヤバイ雰囲気ばりばりなんだが。
「……それならここにいる私がテイマーでないわけがないですよね? あなたはテイマー以外この森に入るものなどいないって自ら仰ったんですから」
「た、たしかに矛盾してるな。すまない、焦ってしまったようだ」
……この男はやはり天然か馬鹿正直なのかもしれない。少なくとも今の段階では悪い奴には思えない。
「いえいえ、こちらこそ驚かせてしまってすみません。あ、あと一つ」
「……ん、なんだ?」
「俺はテイマーじゃないです。というか、しいていうなら…………迷子です」
「……んん?」
男は目を数回瞬いたあと、悩むように金髪の髪を抱えていた。
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