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第1章 チュートリアル編
第4話 二文字スキルと四文字スキル
しおりを挟むしばらく考え込んでいた男は、ようやく顔を上げる。
「……迷子? 一体どういうことだ」
考えても分からないようで、思考を放棄した男は俺に視線を向けた。
このような事態を想定して、あらかじめ言い訳を考えておいたのだ。歩いてるだけじゃ、暇だったからな。
俺はさも被害者づらをして悲しげに口を開いた。いや、勝手に転移されていたというわけでは被害者なんだが。
「実はですね……俺、人攫いにあってしまったらしいんです。その人攫いたちも追っ手がかかっており、結局逃げるのが自分たちだけで手一杯だったらしく……気がついたらここにいました」
そう、これがおそらく最上級の言い訳だ。
なにせ、俺は嘘をついていないのだから!
だって、手紙の主がこの異世界に送り込んだのはある意味人攫いからの延長みたいなもんだし。
気がついたらここにいたというのは、全くもってその通りだ。
「それで【終焉の森】にか!? そ、それはお気の毒に……」
「ま、まあ……そうですね」
同情されるほどの場所だったのか。……よし、手紙の野郎、今度会ったら八つ裂きにしてくれよう!
純粋に心配してくれているらしく、男の素直さが伝わってくる。少しだけいたたまれない。
さっきまで心の中だ馬鹿にしてた。ごめんな、金髪くん。
「えっと俺、だからというわけじゃないんですけど、どこか人里にいきたいんです。近くに人が集まるような街とかありませんか?」
「……それなら中央都市セントラルバーンが森を抜けて1時間くらい歩けばあるぞ。私もそこからギルドの依頼を受けてきたんだ」
「セントラルバーン……ギルド……」
中央都市というくらいだから、国の中心なのかもしれない。そこなら情報もたくさん集まるはずだ。
それにギルドというのは、冒険者が集まるファンタジー小説定番のアレだろうか。
「人攫いにあって同情する。一緒について行ってやりたいのだが、私には信用して任せてもらった依頼がある。放棄するわけにはいかない。だが、少し待ってくれれば、一緒に行けるが……」
「是非、お願いします!」
金髪男の言葉に俺は全力で頷いた。
「あ、そういえば自己紹介していませんでしたね。俺、パーカーって言います」
「パーカー? 変わった名前してるな……服装もそうだけど、そのテイムドと……戦斧。あ、すまない。俺はクリストファー・アボットだ。一応こう見えても伯爵家の三男だ。だが、気軽にクリスって呼んでくれれば嬉しい」
ほお。貴族っぽいと思っていたが、まさか本当に貴族様だったとは。
クリスは俺自身より、俺のミーコとバトルアックスに興味津々のようだった。
なんだよ、俺にもっと注目しろよ。
ミーコと武器に完全に負けてるって、なんか悲しくなるだろ!
たしかに俺は別に特別目を惹くところもない至って普通の黒髪青年(21歳)だ。
弟に「女子の間では黒髪ピアスで黒縁メガネ男子がモテるんだって」と唆され、ワクワク気分で両耳ピアス開けちゃった系の勘違いフツメンだけどさ!
……そのあと黒縁メガネも買ってきて掛けたのに、全くモテなかったというのは今でも心の傷だから触れないでくれ。
俺は涙を飲んでクリスに顔を向ける。
「……はい、分かりました。えっと、こいつはミーコ。俺の……相棒です」
さっき苦楽を共にしたんだ。俺たちは既に相棒と言っても異論はないだろう。ミーコもなんだか嬉しそうにしてるし。
「あ、敬語じゃなくいい。私はただのテイマーだからな。そのミーコ……素晴らしいテイムドだな。真っ白で、見た目は少しケット・シーっぽいか? よくここまで育て上げられたな! 毛並みも素晴らしいし、もしかしてパーカーは一流のテイマーなのか?」
「いや、さっきも言ったけど違う。えーっと……あの、話の腰を折って悪いが。一つ質問いいか?」
タメ口を許された俺は、クリスからこの世界の情報を少しでも引き出そうと質問をする。
なるべく怪しまれないように実行しなければいけない。そう、この世界でミーコと共に穏やかな生活を送るために!
「ああ、いいが……」
「……テイマーって、どんな感じの職業 ?あとミーコってやっぱり目立つのか?」
俺はずっと疑問に感じていたことを聞く。
テイマーは魔物を飼ってる奴みたいな感じのことはニュアンスで大体わかる。育てたモンスターで戦ったりするんだろう。
けれど、出会った時のクリスの物言いからそれだけではないように感じ取れた。まるで、この森にいる人はテイマーでなければおかしいというように。
もう一つはミーコの特異性についてだ。
これは先程からクリスが前のめりで突っ込んでくるものだから気になった。
ミーコは俺と同じ日本人……いや日本猫だしな。
「ああ。そのテイムドは見るからに知能が高そうだしな。さっきから私のことを見極めようとしてることがびしびし伝わってくる」
「そ、そうか」
俺はミーコを褒められて少し有頂天になりかける。
今のでクリスの好感度がちょっと上がったぞ。
そんな照れたように鼻の下を擦る俺をみて、クリスは苦笑いを浮かべた。
「あー、もしかしてパーカー。お前相当の田舎者か? テイマーがどんな職業か知らない奴なんて、果ての村に住む奴らくらいしかいないだろう」
「あ、ああ。お前のいう中央都市? から遠く離れた所に住んでたんだ」
嘘ではない。
俺は遠く離れた異・世・界・からきたのだから。
「そうか、それなら知らなくても当然だ。……テイマーっていうのは自分の育てたモンスターと共に世界を冒険する人間のことだ。正式なテイマーとして活動するならギルドで認定をもらわなければならない。……どんな感じかと言われたら、危険な仕事と言わざるをえないな」
俺はこくりと息を飲む。
「モンスターと戦うから危険ってこと?」
「少し違うが、まあ似たようなもんだろう。これはお前も知ってるだろうが、モンスターと人間では取得できるスキルが違う。人の授かるスキル……四文字スキルはあくまで戦闘補助や全く戦闘に関わらないものがほとんどだろう?」
はい? お、俺……普通にさっき直接戦闘に関わったけど……むしろこのバトルアックス振り回しまくってましたけど。ってか四文字スキルってなんですか?
……という心の声を顔に出さないように心がけ、とりあえず頷く。表情は全力で強張ってるに違いない。
クリスが言ってるのは恐らくこの世界の常識なのかもしれないので、質問は返さない。
「二文字スキルみたいな戦闘能力を持つモンスターと違って私たちは弱いからな。テイムドに守ってもらっていても、少し油断するだけで死んでしまうことも多い」
「……テイマーは大変な職業なんだな」
俺はしみじみと呟いた。
「ああ。だがその分実りも多い。強いテイムドモンスターを育てた人間には権力も金も集まる。S級テイマーとなれば、世界に名を馳せるのは間違いない。だから皆、一流テイマーを目指して中央都市にやってくるんだ」
これぞハイリスクハイリターンってやつだと俺は思った。
「夢のある仕事ってやつだなあ。命だいじにか、ロマンを求めるか……たしかにテイマーになろうとするやつの気持ちも分かる」
ご丁寧に説明ありがとうと、俺は心の中で礼を言う。
いやー、初めて出会ったのがクリスで良かったわ。こんなに懇切丁寧に説明してくれる人間は世の中探しても中々いないぞ。多分。
ただ、一つ疑念が残る。
「あのさ……二文字スキルとか四文字スキルってどんなものがあるんだ? なにが違う?」
「お前、スキル持ってないのか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが……」
俺は気まずげに頭をかく。
クリスは少し探るような視線を向けたあと、何故か何か納得したように頷いた。
なんだ! 今、何を思った!!
反射的に声を出しそうになるが抑える。
まあ、何か勘違いをしてくれているならそれでいい。
「……まぁいい。二文字スキルはモンスター専用として天から与えられるスキルだ。代表的なやつだとやっぱり《投擲》や《俊足》……あとは《豪腕》とかだな」
あれ《豪腕》って、俺の持ってる《怪力》の下位互換だったよな。名前的には《豪腕》の方が強そうだななんて思ってたけど、こういうところで名前が出るくらいのスキルなのか。……てかこれがモンスター専用のスキルってこと?
「四文字スキルは私たち人間に与えられるスキルだ。そうだな……戦闘に関わるものだと《HP回復》や《速度付与》か。だが基本戦闘に関わらない《料理上手》みたいな《上手シリーズ》が一般的だな」
「あ、あははは」
いや、そんな文字数多そうなの聞いたことないんですけど!!
人間は普通四文字スキルを与えられるんだよな。
それじゃあモンスタースキルしか持ってない俺ってなに。人間辞めちゃった感じなのか!?
「ちなみに私は《手先器用》のスキルも持っている。この弓も自分で調整している。レア度中の上だ。なかなか凄いだろ!戦闘にも多少なりとも関わるからな」
クリスは背負っていた弓を親指で指した。
俺は愕然とした面持ちで苦笑いを浮かべる。
クリスはそれを気にした様子もないようだ。
「あ、あのさ。モンスター専用の二文字スキル? ってやつを持ってる人間はいないのか?」
「パーカーは面白いこと考えつくんだな。まあ世界を探せばいるかもしれないが、私の知る限りそんな人間は聞いたことないぞ。まあ、もしいれば会ってみたいものだ」
クリスは大げさに肩をすくめた。
「そ、そうだな」
「《俊足》で飛び回って《投擲》で遠距離攻撃しつつ《豪腕》で近距離攻撃する人間か。……ある意味人間辞めてるって言えるしなんか笑えるな」
いやいや全然笑えねえよ! 意味不明だ。なにかの手違いだろう。
……って、これからもしスキルとか増える方法あるなら、俺のやつはモンスター専用ばっかりになるのか? ……それは、やめてほしい。
「こんなに詳しく聞いてくるってことは、パーカーはテイマー目指してるのか?」
「ええっと、まあそうだな」
正直、憧れる。テイマーってやつになってみたい。
ロマン求める人生を今世では送りたい。
だって俺は、生き物大好きなんだ!!
この世界の生き物を知りたいし、モフモフしたり撫で撫でしたい!!
だが――命をかけると言われて少し怖気付いた所もある。
エイティとの戦闘みたいなことが日常茶飯事になるのだ。
それにミーコを危険に晒すことになるかもしれない。
俺はそう思い、腕の中に右手で抱えていたミーコに視線を向ける。
「みゃー」
ミーコが鳴いた。「一緒にがんばろうよ!」という感情が伝わってくる。
穏やかでありながら、ワクワク楽しそうで――。
俺はその鳴き声を聞き、小さく笑った。
――テイマーになってみよう。そう心の中で決意が固まった瞬間だった。
「あ、そういえば……テイマー以外の冒険者っていないのか?」
「……ん? なにを言ってる? 逆に聞くが、テイマー以外の冒険者ってなんだ?」
な、な、なんだと!?
俺は異世界に来てミーコと出会った瞬間と同じくらい、強い衝撃を受けた。
――どうやらこの世界にはラノベとかの王道的な冒険者はいないようです……。がっくり。
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