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第1章 チュートリアル編
第16話 セントラルダンジョン
しおりを挟む「セントラルダンジョンを攻略すること?」
「ああ」
ドリルは頷く。
ギルドのランクとかあげるなら、クエストや依頼をたくさんこなす……とかじゃないのか?
ダンジョンは何層まで潜ったとかで強さのレベルを測ることが出来るかもしれないが……でも。
俺は理解が追い付かず、考え込みながら彼を見据えた。
「そう難しく考えることじゃない。ダンジョン攻略でランクを上げる。言葉通り、簡単なことだ」
「そう、ですか」
「ここ、中央都市セントラルバーンにある通称【セントラルダンジョン】は、全7階層にある」
七階層か。
意外と浅いもんなんだな。
そんなことを思いつつ、ドリルの話に耳を傾ける。
「一般的なダンジョンに比べて階層が少ないと思ったか?」
「は、はい」
「そうなんだ。このセントラルダンジョンは普通のダンジョン――つまり自然発生したダンジョンとは全く別のものなんだ。そう、セントラルダンジョンは人工的なもので、人の手によって作られたんだ」
「ひ、人の手によって……」
俺は思わず鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
人工的に作られたなんて……そのような技術がこの世界にはあるのかということを聞かされ狼狽える。
「セントラルダンジョンの階層にはそれぞれフロアボス――つまりはボスモンスターが存在している」
「……さっき言ってらっしゃった【狩猟モンスターカード】に属するモンスターの一種類ですよね」
「そうだ。このモンスターは各階層から次の階層に行くまでの道を守護している。ゆえに、このボスモンスターを倒さなければより深く潜ることはできない」
つまり、各階層ごとにいるのであれば全部で7種類のボスが存在しているわけか。
俺は納得しながら息を詰めてドリルの話に聞き入る。
「ボスモンスターを倒しても、また自動的に再ポップするのが人工的に作られたこのダンジョンの魅力の一つだ。時間が経てば、またボスモンスターは現れるんだからな」
「だからテイマーのランクに利用されている訳ですね」
「その通りだ」
ドリルは腕を組み、肯定の意を示すように大きく首を縦に振った。
「さて、本題に移ろう。階層が7つに分かれているということを考えれば、おのずと分かってしまうだろう。1階層目を突破したときG級テイマーはF級へと昇格する。2階層を突破すればE級に上がり3階層を突破すればD級へ……単純すぎて笑えないか?」
「……そうですね」
4階層を突破すればC級。
5階層を突破すればB級。
6階層を突破すればA級。
そして7階層――最下層を突破すれば、晴れてS級テイマーに認定されるということか。
そのフロアのボスモンスターを倒せばランクが上がる。
明確で分かりやすいランクのシステムだ。
「お前にはまず、第1階層を攻略してもらう。……とは言っても、この階のモンスターの強さはフート草原とそう変わらない。1階層、そして2階層くらいはお前の実力と才能があれば楽に突破できるだろう。……さっきは見くびっていたから、ボスモンスターと遭遇すれば瞬殺されるなんて事を言ったが」
「ほんとですか? ……また、大きい口を叩いて俺に発破をかけようとしてるわけじゃ……」
「んなわけねぇだろ。これはほんとのほんとだ。……1階層を突破してもF級、2階層でもE級になるだけだぞ? G級、E級、F級は下級テイマーだし、その辺にごろごろいる」
そう言ってドリルは視線を待合の椅子に向けた。
多くのテイマーらしき人間が寄り集まっている。
……あの人たちは、みな下級テイマーなのだろうか。
「3階層を突破してD級になればようやく中級テイマーってもんだ。ちなみにDとCが中級で、BとAになれば上級だ。上級テイマーは今のところ、この国に20人ちょいしかいない。それだけB級になるための5階層からがヤベえってことだ」
「5階層の壁、か。……ええと、S級は……」
「ああ、S級は特級だ。先刻も言ったが、この国には5人しかいない」
5人の特級テイマーか。
選ばれた力を持つテイマーたちだよな。
その中に獣士隊の三獣士リーダーだというラフェール・オリビエさんがいるのだろう。……ドラゴン使いの、な。
いやあ……是非とも会ってみたい。ドラゴンをモフモフさせて欲しい。……いや、ドラゴンはモフモフではないから……スベスベとか?
なんか俺、変態くさいな。
「そんなに特級――S級になれる人が少ないほど、セントラルダンジョンの最下層は攻略が難しいんですか?」
「ああ。……あの階層のボスモンスターはドラゴンだからな。それも、ただのドラゴンではなく数ある種族の中でも最強と謳われる黄龍――黄金のドラゴンだからな」
「黄金の……」
金ピカに光っているのだろうか?
……それはだいぶ見てみたい。気になる話だ。
だが、S級になるためにはそれ相応の努力と時間が必要になるだろうし、すぐに見に行けるわけじゃないからな。頭に留めておくだけでいいか。
俺は、一つ疑問に思ったことを口にした。
「そういう情報って、ギルドの職員さんだからこそ詳しいんですか? ほかのフロアのボスモンスターについても詳しい情報とかあったり……」
「ギルドの職員だからダンジョンについて精通してるっていうのも間違いではないな。だが、このセントラルダンジョンに関しては公に情報も知られていることだ。……フロアのボスモンスターな。1階層は大したことない。――ゴブリンの長、ゴブリンロードだ」
◯
俺は【垂れ耳ラピット亭】に戻ってきていた。
ギルドのおっさん、ドリルにダンジョンに関する説明を受けたあと、ちょうど昼食の時間帯だった。
1時間の戦闘で思ったよりも精神が疲弊していたので、帰り際に屋台でいくつか美味そうなものを購入した。
宿の部屋でミーコとともにひっそりと食べることにしたのだ。
肉体的疲労は昨日と同様、ほとんど感じていない。
インドアの申し子といっても過言ではない俺なのに、ほんとどうしてしまったのだろうか?
帰ってきた俺はそのままパタリとベッドに伏した。
片手にミーコのカードを持ち、すぐに生体化してやる。
「ああ、精神が疲れた。色々刺激が強すぎるんだよな」
「みゃ」
「それに、ギルドでは知らんやつに絡まれるし」
テイマー認定のクエストで最高記録を出してしまったばかりに、帰る際には見知らぬ人間にたくさん話しかけられた。
褒めてくれる奴もいれば、逆に鋭い目で睨んでくる奴もいた。
ドリルは帰り際に「明日も来い」と言われた。
どうやら最高記録塗り替えについてや、ダンジョン挑戦についての話だろう。
……そういえば、レアなモンスターのたまごカードについての話はどうなったんだ。
明日にでもまた聞いてみることにしよう。
俺は屋台で購入した飯をつまみながら、とりあえず身の回りの整理整頓でもしようと考える。
とにかく無心でモンスターを狩りまくっていたため、カードやドロップアイテムに関してはほぼ確認していなかったのだ。
俺はまず、ずだ袋に入れていたカードの束を取り出した。
同時にバインダーも呼び出し、今日の成果を確認することにした。
No.2 スパイクマウス ×2枚
No.4 ラピット ×3枚
No.5 マッドフォックス ×3枚
No.6 スリープゴート ×4枚
No.8 キャタピラン ×3枚
No.9 オオサソリ ×1枚
No.11 タランチャー ×4枚
No.14 マタンゴ ×3枚
No.15 ゴブリン ×1枚
No.16 コボルト ×2枚
No.23 コケッコー ×1枚
No.27 フロッグバルーン ×2枚
No.39 ブラックレトリバー ×2枚
No.131 クレイジーナポリタン ×1枚
これに加え、クエストの最中に登録したスパイクマウス1枚とマッドフォックス1枚もある。
これで34枚なわけだ。
まだ未登録であるNo.8キャタピラン以下9種類、全てバインダーに登録することに決めた。
そういや、ユニークモンスターに会うことはなかったな。さすがに初心者向けのフート草原じゃ出ることはないのか?
俺はカードを次々にバインダーのくぼみに入れていく。そしてマタンゴを登録したその時――。
《カードが10種集まりました。よって、天啓によりスキルの取得が可能となります》
どうやらまた、スキルを獲得できるようだ。
こんなに順調にカード集めとスキル取得しまくっていいのだろうか。
通常10種類集めたら一つスキルを貰えるところ、俺はどうやら5枚種類毎に貰えてしまう。
完全にチートであるし、ズルだ。
他人にそんなことを漏らすわけにはいかないだろう。
ドリルにも俺が5種類毎にスキルを獲得できること、さらにそのスキルは人間用のものではなくモンスター用の二文字スキルであることは伝えていない。 ……というか、伝えられない。
そんなことを言えば何か秘密でもあるんじゃないかと探られ、しまいには異世界人だということがバレてしまうかもしれないのだ。
「スキル取得、か。あと5枚未登録カードあるから、2つ一緒にスキル貰うか」
俺は残りのカードを全て登録した。
先ほどと同じく、機械的な声でスキル取得可能だということを伝えられる。
「んじゃ、スキルを頂きますか」
「みゃっ」
隣で鳴き声を上げたミーコを腕に抱き、ステータスボードの【取得】をタップした。
「あー、なんか……二つスキルが与えられるからか余計にあったかいな」
「にゃ」
「……ミーコもあったかいのか」
室内にいてもどうやら光が現れるらしい。
数十秒後、温かな光は消える。
新たな力が宿ったというような感覚は覚えないが、スキルは追加されているのだろう。
俺はステータスボードに視線を移す。
・・・
識別No.4548714【パーカー】
固有ギフト:魔物
スキル一覧:《怪力》《瞬足》《挑発》《強堅》
・・・
新しいスキルは――《挑発》というものと《強堅》というものらしい。
俺の心の中のイキリ心と、外面の我慢強さ(?)が見事に表されているラインナップだ。
「……名前的に大体想像はつくな。せっかく貰ったスキルだし、早速詳細も見てみるか。……どれ」
俺はそれぞれのスキルの文字に触れる。
・・・
スキル《挑発》
能動的スキル。
半径30メートル以内にいる敵の意識を引きつける。敵に対し、使用者への怒りや憎しみを植え付けさせることが発動のきっかけとなる。レア度は下の上。
・・・
スキル《強堅》
受動的スキル。
肉体の耐久値を高める。スキル《強剛》の下位互換。レア度は中の上。
・・・
「どっちもいいスキルだな。《挑発》はミーコの《誘引》と合わせれば、わざわざモンスターを探して歩き回らなくてよくなる。レベルアップとかカード収集の効率も上がるな」
「にゃおっ」
「それに《強堅》は俺が拳で戦う時に守りが固いほうが絶対いいだろうし…………って、なんで俺、テイマーなのに肉弾戦を前提として考えてるんだ。どうしたっておかしいだろ……」
俺は自分の思考がどんどん好戦的に染まっていっているような気がして、思わず頭を抱えた。
「はあ……マジでモンスター化したらどうすればいいんだ。……悩んでいてもしょうがないか」
「みゃ?」
「そうだな。前向きにいかないと。――とりあえずカードの整理は終わったし、次にドロップアイテムをどうにかせねば」
俺は大きくため息をついたあと、中身に詰め込みすぎたせいで形が変形しているショルダーバッグを目の前に置いた。
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