魔物大好き《モンスターマニア》は気づけば華麗にモフモフ天下無双していました

王子様の白馬

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第2章

第11話 久方ぶりの再会

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 地上波と戻ってきた俺は、その足でギルドへと向かった。
 ミーコはやはり終始気落ちしているように見えた。
 ……あとで思いっきりモフモフ撫でてやるからな。

 カード化したミーコを【ホルダー・カニョリーノ】に入れ、ダンジョンの徒歩3分圏内にあるギルドまでやってくる。

 廃校舎のような建物に足を踏み入れる前に、ふと己の服装を顧みた。

 ゴブリンロードとの戦闘のせいで、体全体が煤けている……ように見える。
 とは言っても宿のある商店街地区へ戻ってから、再度セントラル地区へやってくるのは非常に面倒だ。

「それに、よくいかにも戦闘後って感じの人が歩いてることもあるし……まあ、とりあえずこのままでいいか。あとで体拭こう……」

 俺はとりあえずのところ手で全身を払っておいた。

 比較的綺麗好きを自負している俺としては苦渋の選択だが、めんどくささには変えられん!

 そして、ようやっとギルドの中にお邪魔する。

「……えーっと……ドリルさんは……」

 受付の方に視線を向けると、ドリルは誰も対応していない様子だった。
 俺はそのまま彼の元へと足を運ぶ。

「すみません」
「……んっ? お、パーカーさんじゃねえか! あれ、ダンジョン攻略は……その様子から察するに、今しがた終わったみたいだな」
「はい。汚くてすみません。とりあえず報告とか、色々……」
「おう。んじゃ、とりあえず報告を聞こう」

 ドリルは書類仕事の途中だったのか、資料を均等に揃えるよう机の上で軽く均す。
 そしてそれを隅に置いたあと、俺の方へと顔を向けた。

「……初めてのダンジョン、どうだった? 攻略、成功したか?」
「――はい。それはもう、おかげさまで」
「そりゃよかった。F級へ昇格おめでとう」

そう言いながら、ドリルは側にあったパソコンのような機械を操作する。
そして何か確認し終わったのか、新しいカード――F級テイマーのカードを寄越してきた。

同時に俺は以前貰っていたG級のテイマーランクカードを渡す。

「ありがとうございます……」
「お前さんの実力から鑑みて、心配はしてなかったけどな。……で、感想の方は?」

 俺は声が詰まる。
 感想と言われても、とりあえず大変だったということしかあまり頭に残っていない。
 これでも意外と緊張していたのだ。

「……大変でした、本当に。それから……んー、暗かった? ……ですかね」
「なんだそりや」

 冴えない答えを返す俺に、ドリルは苦笑いを浮かべる。
 俺も釣られて笑う。

「あとは……そう……そうだ! 俺、めちゃくちゃ運が悪かったんですよ!」
「運が悪い? ……どうした? ボス部屋の前で転移陣に引っかかって、最初の地点に巻き戻されてましたか?」
「そ、それはたしかに嫌ですね……じゃなくて! ゴブリンの巣ですよ! ゴブリンの集落に当たってしまって」
「ま、まじか!? そ、そいつは災難だったな……。だが! パーカーさんはゴブリンの集落殲滅が出来たってことか!! そりゃ、凄い!」

 ドリルは鼻息荒く、俺の肩を強く叩いた。

 い、いてえ……。もう少し優しくしてくれ。俺を労ってくれる誰かどこかにいないものか……。

 そんなことを考えながら徐々に涙目になっていく俺を見て、ようやくドリルは叩くのをやめてくれた。

「集落のゴブリンたちはなによりも攻撃的だからな。当たってしまえば、どちらかが完璧に破れるまで戦わなきゃならねえ」
「本当にそうでした……はぁ」
「それになにより、数が多すぎる。対多数系のスキルを持っていなきゃ、戦うのは容易ではない。しかし、基本的に初心者テイマーのテイムドが持っているスキルといえば、サシでやる為のものばかりだ」
「……え? そ、そうだったんですか!」

 俺は何気に初耳の情報を聞き、驚愕の面持ちでドリルの話に口を挟む。
 ドリルは腕を組みながら、ゆっくりと縦に頷いた。

「スキルはその人の資質や経験、そして周囲の状況に応じて付与されるものだ。戦闘経験のないテイムドが強力なスキルを持っている……という可能性は極めて低いだろう。特に対多数系のスキルなんて、なかなかレアなものが多いんだ」
「すごく、興味深い話ですね……」
「そうか? パーカーさんはすでに知ってると思ってたよ。だからこそ、認定クエスト最高記録を叩きだせたんだとばかり……。いや、お前さんは田舎から出てきたばかりだったな」

 ドリルはそう言って頭を掻いた。

 ドリルの言っていることを整理すると……良さげなスキルを持っていない初心者テイマーのテイムドたちでは、有象無象と湧き出るゴブリンたちに太刀打ちできないってことだな。

 確かに俺自身が二文字スキルを持っていなかったら、絶対にやられていただろう。
 ミーコが持っているのは補助スキルばかりなのだから。

 …………あれ? 今更なんだが…………もしかして、早急に攻撃可能なテイムドが必要なんじゃないか?

 もし仮に、人前で戦えと言われたとしたら……俺には俺自身しか攻撃手段がない。
 早いうちに攻撃可能なテイムドを育成し始めなければ、いつか必ず周囲の人たちに怪しまれることとなるだろう。

 ドリルは俺の目の前でなにかしらペラペラと話し続けている。
 けれど俺は、引きつり笑いを浮かべながら上の空であった。





 あの後、今回の狩猟モンスターカードをすべてドリルの前に提示した。

 ――86枚。

 今回俺が倒したモンスターは86匹だった。

 一番はじめに出会ったバレットウォーリアンが1匹。
 ボス部屋の前で邂逅してしまったミミックが1匹。
 そして今回の目玉――ではなく、目標だったゴブリンロードが1匹。

 最後に、集落にうじゃうじゃいたゴブリンが――83匹。


 ドリルはそれを見て、白目を剥きかけていた。あまりの数に。
 そして同時に「ああ、災難だったな」とや、優しく慰めてくれた。
 ……どうやらゴブリンの集落以外の道を進むことが出来れば、もう3種類は新たなモンスターと出会うことが出来た可能性があったらしい。本当に――不運だ。

 俺は背中に哀愁を漂わせながら、自分のいる宿【垂れ耳ラピット亭】へと戻ってきた。
 今日は早く体を清めてから休もう――そんなことを考えながら宿の中へ入ろうとする直前。

「おーい! パーカー!」
「…………ん? この声は……」

 俺の名前を呼ぶ声。

 ちょ、やめてくれ! パーカーって単語はつい昨日、新聞の一面を飾ったんだぞ! バレるだろ!

 ……という心の叫びは届かなかったらしい。
 声の主は俺の名前を再度呼ぶ。

「…………~~っ!」

 俺は勢いよく振り向き、声の主――クリスの首根っこを掴んで宿の中へと逃げ込んだ。

「パ、パーカー。と、突然襟元掴むなんてあんまりだろう」
「いや、クリス。全てはお前が悪い。俺の名前が昨日の新聞の紙面を飾ったって知らないのか! 最悪なことにな!」
「……え? そ、そうなのか。俺、新聞読まないんだ。知らなかった。すまないな」
「…………はぁ」

 俺は脱力しながらため息をつく。

 そういえばクリスはこう見えて天然だったんだよな……。悪気があるわけじゃないところが、また難しい。怒りどころが分からんくなってきてしまったぞ。

 俺は頭を抱えた。

「……それでクリス。久しぶり――いや、数日ぶりだな!」
「ああ、そうだな。俺、パーカーと会ったあとギルドの依頼で遠出してたんだ」
「そうなのか! ……そういえば俺、まだ依頼は受けたことないよな……」
「テイマー登録して数日なんだから、そういうこともあるだろう」

 そう言うクリスを宿の食堂へと案内する。
 【垂れ耳ラピット亭】の食堂は、密かに昼間も開かれている。
 食事を取ることは出来ないが、金さえ払えば飲み物を提供してくれるのだ。……このことを知っているのは宿に泊まったことのある客くらいしかいないのだが。

 俺たちはテーブルにつき、近くにいた料理人見習いの少年に飲み物を頼んだ。
 俺はコピ、クリスはオランジュのジュースというものを頼んだ。
 注文した品を見ると、オランジュのジュースというものは橙色をしている。……これは、オレンジジュースだな。

 クリスの頼んだ飲み物の可愛らしさに思わずくすりと笑ってしまいそうになったが、なんとか堪える。

 さて――。

「そういえばパーカーは、今日何していたんだ? ……見た限り、戦闘してきたってことは分かるけど……」

 クリスはどこからどう見ても身綺麗とは言えない俺を見てそう言った。

 確かに今の俺は頭の先からつま先まで煤けている。
見るも無残な……というほどではないがな。

「ああ、ちょうどダンジョン1階層の攻略をし終わって、ギルドに行ってきた後なんだよ」
「そうなのか! ……って、もうダンジョン挑戦しているのか!? す、すごいな……」

 クリスは目を瞬かせ、俺を真っ直ぐ見つめた。

「そ、そうなのか? 俺にはよく分からんけど、ドリルは――あ、ギルドで俺の担当してくれてるやつは当然のように『行ってこい! 頑張れよ!』って送り出してくれたけど……」
「へえ、そうなのか。そういえば、さっき新聞の一面を飾ったって言ってたけど、それに関係あったりするのか? ……お前、一体なにやったんだ?」
「…………ああ、えっと。な、なんか……テイマー認定のクエストで……最高記録? 出した……みたいな……」

 俺は苦々しい面持ちでしどろもどろに白状する。
 するとクリスは――。

「――は? え、ま、お、お前……それは真実か!?」

 クリスは机を叩きつけて、立ち上がる。

 ……この反応、ギルドでドリルの隣に座っていた受付嬢さんそっくりだな……。

 内心そんなことを思いながら、俺は曖昧に頷く。

「う、うん。まあ……」
「なんでそれを先に言わない! くそっ。先にギルドに寄ってから来れば、手土産の一つでも準備してきたのに」
「いやいや、それは申し訳ないって。その驚いた反応だけで、お腹いっぱいだよ」

 尋常じゃないほど驚愕していたクリスは、かなり頭に血が上っているようだった。……もちろん、良い意味(?)で。

 俺が記録更新した際、セントラルバーンにはおらず、そして新聞が出回ってからも同じく。
 帰ってきてふらっと寄った俺のところでその話を聞かされた。そんな感じだろう。

 ……クリスはやっぱり面倒見がいいな。
 ギルドに寄る前に俺のところに来てくれるなんて。
 俺が誘拐されたということと、めちゃくちゃ田舎者なのだということを勘違いしてのことだろうが、それにしても……心底いいやつなんだな。

 そんなことを考えていると、クリスは肩を開く。

「今度美味い酒を持ってくる」
「……お前、16なんだろ?」
「成16は立派な成人だろ。だから問題はない」
「そうか……」

 やっぱりこの世界は日本と価値観が違いすぎる。

「それにクリス、お前今頼んだのジュースじゃないか。酒、飲めんのか?」
「失礼だな。飲めるさ、飲めるに決まってるだろ。大人の嗜みだ。…………個人的にはジュースの方が好きだけどな」
「――――お子様舌」

 こっそりと呟くとどうやら聞こえていたらしく、クリスは顔を真っ赤にして怒った。

 俺の中の悪魔(?)が顔を出した瞬間であった。
 ……こんなところをミーコに見られてしまったら嫌われかねないから、気をつけなければ!


 俺のテイマー認定の結果と、ダンジョン攻略達成を自分のことのように喜んでくれるクリスを横目で見る。

 ――それでもこの世界はなんだか温かい。俺はこの世界てなんとかやっていけそうだ。

 小さく笑って机にあるコピを一口飲んだ。


・・・

【本日の狩猟モンスターカードの成果】

◇ No.13 ミミック
◇ No.15 ゴブリン ×83
◇ No.94 ゴブリンロード
◇ No.108 バレットウォーリアン

以上。

・・・

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