魔物大好き《モンスターマニア》は気づけば華麗にモフモフ天下無双していました

王子様の白馬

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第2章

第12話 依頼を受けてみるか

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 クリスと楽しく飲んだ(※酒ではない)次の日。
 俺はなんとなく依頼というものを受けてみようと考え、ギルドを訪れることにした。

 昨日クリスから聞いた際、『依頼を一度も受けずにダンジョン攻略するなんて、前代未聞だな』と聞かされたのが決め手だ。

 正確には“そういう人間”も少なからずいるらしい。
クリスによれば、あの国の英雄ラフェール・オリビエもその一人のだと。

 彼は依頼を一度も受けることなく、半年後にはダンジョン6階層まで到達したのだという。
 ダンジョンは深くなれば深くなるほど、出現するモンスターの数も増え、強くなっていくらしい。
 かと言って、出現するモンスターの種類には限りがあるし、スキルを増やす為には外でレベルを上げるべきなのだ。

「ラフェールさんは元々強いテイムドを持っていたし、才能も突出していたからな」

 クリスはそう言っていた。

 スキルがなくともダンジョンを攻略できる実力があったのだろう。

 ラフェールはダンジョンでひとしきりレベルを上げたあと、外界でいっきにモンスター狩りをするつもりだったのかもしれない。
 他の追随すら許さない強さえあれば、どんなモンスターでも狩れるだろう。

 ……思ったんだけど、セントラルダンジョンがあるくらいなんだから、テイマーはあそこでレベル上げとかした方が安全なんじゃないか?

 ふと湧いた疑問をぶつけると、クリスは――。

「セントラルダンジョンはレベルを上げるために作られたものじゃないからな。あれは、ただ強さのレベルを図るために作られたものなんだ。……あの基準があるからこそ、ギルドはテイマーに合った依頼を任せることができる……といって話したが、これも受け売りなんだけどな」

 ――などと言っていた。

 外で新種のモンスターを見つけるテイマー。
 これを育てるために必要なだけで、ダンジョンの攻略を目標とすることは手段と目的が逆転してしまうことと等しい。


 ……とまあ、こんな話を語り合った。

 さて、ギルドにやってきた俺は依頼が貼ってある掲示板の前に立つ。
 百面相しつつも、己のランクに見合った依頼表を探す。
 隣で同じように眺めていた男は、受注する依頼が決まったのか紙を剥がし、そのまま受付へと持っていった。

「なるほど、ここの紙を剥がして持っていく寸法なんだな」

 俺は一枚紙を剥がす。

【踊り花の採取(F級~)、報酬は一株ごとに300ルブ】

 踊り花というものがどういうものか分からないが、F級テイマー対象のものならば大丈夫だろう。
 それに中々報酬もいい。並んでいる依頼も数さえこなせればしっかりと稼げる仕事がなかなか多いなと感じた。

 今まではモンスターの討伐ばかりしていたため、採取や調査などやってみたかったのだ。
 だからこそ今回は採集に挑戦してみようと思った。……皆が受けたがらない依頼とかだったら、説明を聞いた後に断ればいい。

 俺は紙を手にも持ち、受付の方へと向かう。
 だが――。

「なんだ、今日はドリル休みなのか」

 いつもの席には受付嬢が座っていた。
 そのために、近場の暇そうな受付の元へと行く。

「すみません、依頼を受けたいんですけど」
「そ、そうですかっ! わ、分かりましたっ」

 ……何故かその受付の女性は焦っている様子がうかがえる。

 ――ああ、俺が記録更新したからか。

 公布された新聞の影響を思い出し、苦笑いを浮かべた。

「俺、実は依頼を受けるの始めてでして――――」

 受付嬢に依頼内容の説明等を受け、俺はフート草原へと向かうことになった。

 いざ、出撃だ!





 早速、はじめての依頼を受けた俺はフート草原へとやってくる。
 草花の自然な香りがして、思わず深呼吸をした。

「ミーコ! 活躍期待してるぞ!」
「みゃおっ」

 昨日のことで少しだけ落ち込んでいたミーコは、いつも以上にやる気を見せている。
 今日はいいところを見せてくれるだろう。

 実のところ、依頼を受けたのは【新しいスキル】を手に入れるためという理由もあった。

 狩猟モンスターカードを売りに行くのはその帰りでいい。

「たしか、踊り花ってやつはフート草原の少し北にある川辺に咲いているんだったな」
「にゃ」
「……おっ! そろそろ川付近に着いたぞ。これから川沿いを歩いて見つけてくだけだな」
「みゃーおっ」

 鳴きながらミーコは、軽い足取りで暖かな日差しの下を駆け回っている。

「モンスターが見えたら、すぐに《魅了》か《幻惑》使っていいからな。……と、その前に《誘引》使って引き寄せるか?」
「にゃ」
「……うん、そうだな。とりあえず花の採取が先か。邪魔をされちゃ、それこそ本末転倒だ」

 そうして周囲に目的のものが生えていないか探していると、赤く小さくのびのびと咲く花を視界で捉えた。
 俺はそばにより、受付嬢の言っていた花の特徴に当てはまっていることを確かめる。
 そして花が目的のものだと確信に至り、採集を始めた。

 そうだ……《空間収納》は……やめとくか。とりあえず、ずだ袋に入れて、それごと異空間に収納しておけばいい。

 そんなことを考えていると、俺の後ろの方でミーコが警戒心を露わに「にゃお」と強い声で鳴いた。

「……――っ!?」

 急いで振り返る。
 するとそこには――。

「キュワアアア!!!」
「……新たなモンスター発見だな!」

 気味の悪い奇声をあげた“お化けキノコ”が石のように固まっていた。
 俺は採集していた踊り花を袋にしまい、ついでにそれごと異空間へポイっと投げ捨てる。

「んじゃ、いっちょやるか!」
「にゃおっ」

 そう言って俺は、いつも通りモンスターにグーパンを決めた。
 モンスターはあっけなく地面に伏せ、黒い靄に包まれる。
 そして――。

《ピロン!》

 最近では聞き慣れた電子音が流れる。

 おっ! 来たか! ……実のところ、ゴブリンロードを倒したとかにミーコのレベル20になるんじゃないかと思ってたんだけど、あと少し足りなかったんだな。

 この世界では己で経験値を確認することができない。
 与えられる経験値はある程度決まっているらしいので、自分で計算していけということなのか。

《テイムドモンスターのレベルが一定に達しました。よって、天啓によりスキルの取得が可能となります》

 俺はその声を耳にし、周囲の注意確認を行ったあと、ミーコのスキル取得に至った。





 一通り採集が終わり、俺たちの手元には数種類のモンスターカードと花の入った袋があった。
 数時間の間、採集をしつつ、向かってきたモンスターを返り討ちにしていた。
 フート草原北の川沿いにきたのは初めてだったためか、見たことのないモンスターがおり、俺はホクホク気分で帰路へつく。

「今日初めて会ったのは……No.3 フッケバインとNo.12 エント、No.14 マタンゴ……くらいだな」
「みゃお」

 そう言いながら、俺は新たに手に入れたカードをバインダーに登録し始める。
 昨日のダンジョンで手に入れたカードで19種類。
 あと一枚で新たなスキルが手に入る。

 ちなみに、ドリルにゴブリンロードのカードを見せてダンジョン1階層クリアの確認も行った。
 ……とは言っても、なんかのシステムでダンジョンに傷んだ人物が攻略出来たか出来なかったか、確認することが出来るらしい。

 あくまでカードの確認をしている……って感じだな!

 俺はそんなことを思っていると――。

《カードが20種集まりました。よって、天啓によりスキルの取得が可能となります》

 天啓として、声が聞こえる。

「スキル……今度はどんなやつがくるか。楽しみだな」
「にゃおっ」

 呟きながら俺はステータスボードを開き、【取得】の文字をタップする。

 いつも通りの天からの光を受け、そして次第に光も消えていく。

 ……よし! いざ、チェックしてみよう!

 俺は意気込みながら、視線をステータスボードに移した。

・・・

識別No.4548714【パーカー】
固有ギフト:魔物大好きモンスターマニア
スキル一覧:《怪力》《瞬足》《挑発》《強堅》《無臭》《空間収納》

テイムドモンスター【ミーコ】LV.20
HP:200/200
MP:200/200
スキル一覧:《魅了》《誘引》《俊足》《幻惑》《浄化》

・・・

「む、《無臭》か……。なんでさっきからこんな……」
「にゃお」
「ミーコの新しいスキル《浄化》もそうだけど、これは俺が心の声が届いているっていうことなのか?」

 この世界に来てから一番……地味に心底辛いこと――風呂がないってことに決まってる!!

 心の奥底で愚痴を言っていることが、分かってしまったのだろうか。
 布で全身を拭きながら、毎日のような『湯船に浸かりたいなぁ』とこぼしていることがスキルにまで影響してしまった!

 ……ああ、なんて恐ろしいんだ。いっそのこと《風呂》とか《湯船》みたいなスキル、ないかな……。

 あり得ないと言っても過言ではない想像をする俺。

 スキルの詳細は歩きながら確認するとして、俺はセントラルバーンへと戻るためにミーコを呼ぶ。
 そして歩き出そうとした時だった――。

「…………んじゃ……!」
「……やめっ……っ、……です……か……」

 密かに聞こえる諍いの声。
 耳を澄まし、近場にあった岩場の陰からのその現場を覗いてみる。

 そこには真っ黒な装束を身に纏ったいかにも怪しい男と、どう見ても初心者丸出しの駆け出しテイマーがいた。
 なぜそれが分かるのかといえば、俺同様に安っぽい装備が比較的新しいからだ。……あとは、頼りなさが滲み出る雰囲気だな。

「……な、なんだろう……」
「……みゃ?」

 俺は囁くような小さな声で困惑を宿しながら呟く。
 俺は密かに二人の様子を伺った。
 この場に出ていくのを躊躇うのは、頭の中に危険信号が点滅しているからだ。

「……っやめろ! そ、それは僕のテイムドだ!」
「………………――――知らぬ」

 黒装束の男は、初心者テイマーの生体化したテイムド――茶色っぽい毛並みをしたラピッドのようなモンスターを無理やり奪っているように見えた。

 こ、これ……やばい犯罪現場なんじゃないか!?
 か、関わりたくないけど……テイムドを奪うのは……。

 緊迫した様子の男二人を陰から眺め、思考する。

 そういえば数日前、ギルドに獣士隊のネラがやってきていた時に言っていたことを思い出す。

 ーー『初心者狩り』

 これはいかにもそれなんじゃないか!!

 俺は小さく息を呑み、いまだ諍いの治らない男たちに視線を向ける。

 ……これは止めるべきか。でも、ネラさんからは初心者がわざわざ首を突っ込むな的なやつ、感じ取ったし……。で、でも――。

 見て見ぬ振りはできない。
 俺がいても、何にも役に立たないかもしれない。暴力的な方向においてはスキルでどうにかなるかもしれないが、正直なところ人に向けてスキルを使うのは好ましいところではない。
 ……荒くれには反射的に使ってしまったけどな……。

 でもやっぱり――。

 黒装束の男が右手に隠し持っていた刃物を振り上げた瞬間。

「くそっ!」
「にゃお」

 ――気づけば俺は岩陰から飛び出していた。

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