魔物大好き《モンスターマニア》は気づけば華麗にモフモフ天下無双していました

王子様の白馬

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第2章

第18話 白いたまごの秘密とは

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 白いたまご。
 なぜ他の色のたまごと比べて、格段に値段が安いのだろうか。

 疑問に思った俺は、真っ直ぐとベニートを見据えながらそれを問う。

「ここにあるたまごカードって、全部レアなものなんですよね? もちろん、この白いたまごカードも」
「ええ、そうです。……――白いたまごカードはですね、天邪鬼あまのじゃくが過ぎるんですよ」
天邪鬼あまのじゃくが……過ぎる?」
「はい」

 ベニートは深く頷き、しみじみと言葉を続けた。

「この白いたまごカード。これは――【孵化させることができる人間が限られている】んです」
「え……そ、それって」
「はい、一応販売可能なカードとしてお客様方の前に提示いたしますが、孵化しない可能性というのもございます。むしろ、ほとんど孵化しないといっても過言ではございません。そしてちなみに――返品返金は不可です」
「そ、それは……まじか?」
「はい、マジでございます」

 ベニートはわざわざ真面目な店員風の物言いで答える。……いや、店員なんだけどね。

 いやいや、まて。孵化しない可能性すらあるカードをわざわざ購入する酔狂なやつなんでいるのか!?

 疑問がさらに膨らみ、俺は眉間のシワに人差し指を当てる。

「え、えっと……それ、買う人いるんですか? 孵化しないかもしれないのに……」
「もちろんいらっしゃいます」

 思いのほか真っ直ぐとした視線を向け、ベニートは断言する。
 俺は続ける彼の言葉に耳を傾けた。

「このたまごカードは、孵化さえすれば他のどのカードのモンスターより多くの可能性を秘めたテイムドが生まれるんです。そう、言葉にすればってわけです」
「レアの中の……レア」

 俺は生唾を飲み込み、言葉を繰り返す。
 俺自身が思っている以上に、真面目な表情をしているかもしれない。

 ――これは、ガチでしっかり聞いておかなければならない! なんせ、レア中のレア、だもんな!

 それを見たベニートは困った様子で曖昧に笑い、話し始めた。

「テイムドモンスターが、持ち主の資質や性格、育て方等に多大な影響を受けているということはご存知ですか?」
「ええ、友人から聞きました」
「それならば話は早い。……このたまごカードの色は白。そう――つまり何色にも染まる白というわけで。他のテイムドモンスターよりも、テイマーからの影響をどのたまごカードよりも受けやすいんです」

 俺は相槌を打ち、考え込む。

 テイマーからの影響。
 たしかにクリスの青いテイムドたちは見た目が変わっていたが、ベニートが強く言うほど大切なものなのだろうか。

 その心の中の疑問が伝わったのか、ベニートは真面目な様子で語り始める。

「テイムドが強いとテイマーも強いと認識されている。扱われるモンスターが強ければ強いほど、高みへと登ることが可能。これが現在のの世間の認識です。……けれど、それは全くの正反対と言っても過言ではない。――――テイマーの素質が高い人こそ、おのずと強いテイムドが育ち、集まってくるんですよ」
「――!」
「もちろん、テイムドの系統やレア度も大切です。ですが――例えばレア度最高の金色たまごから孵化したモンスターと、最低ランクのたまごから孵化したモンスターがいるとします。前者を育てたのはテイマーの資質がほとんどない人間、後者を育て上げたのは最高の素質を持つ人間。……この場合パーカーさん、あなたは両者が戦った場合、どちらが勝つと考えますか?」
「…………えっと……」

 この質問の仕方から言って、後者が勝つということなのだろうと予想がつく。
 けれど、そこまてテイマーの素質というものは大切になってくるのだろうか?

 俺は恐る恐る答える。

「えっと……【最高の資質を持つテイマーが育て上げた最低ランクのたまごから生まれたテイムド】が勝つというわけですか?」
「はい! そうです! それほど、テイマーの素質というものはテイムドに色濃く反映されるんです」
「へえ! …………………………やっぱりこの世界は面白いな」
「なにかおっしゃいましたか?」

 ぽつりと小さく呟いた俺の言葉は誰の耳にも届かなかった。
 しかし、その声の小ささと比例して、俺の表情は今までにないほど生き生きとしたものになっているに違いない。

 ……すごい! エクセレント! ワンダフル! そこまでテイマーがテイムドの成長に介入するだなんて、思わなかったぜ! クリスの言葉を聞いたときは、外見が多少変わったり、使えるスキルの傾向が多少影響するのだとは思ってたけど……。
 文字通り、自分色に染め上げるってやつだな!

 そんなワクワクさの滲み出る俺を見て、ベニートもハキハキと答える。

「つまりっ! ――白いたまごカードは孵化さえすれば、持ち主の心が反映されたような素晴らしいテイムドが育つわけなんですよ。その素質は他のカードから生まれたテイムドとは比べものにならない。そういうことなのです」
「へえ! それはたしかに魅力的ですね。リスクを犯してでも買いたくなる人もいることが分かる。ギャンブルみたいなもんですね。まあ、素質がなければ意味ありませんが」
「ええ……本当にその通り。この白いカードを購入することは文字通りギャンブルなんです。なんせ、孵化率はたった0.1%ですから」

 …………。

「はい? いま、何パーセントって……」
「0.1%です」

 ……うん、こりゃ無理だ。そんな超超超低確率にかけるなんて、ギャンブルよりもタチが悪い。

 そんな俺の気持ちを汲み取ったのか、ベニートは苦笑いを浮かべていた。

「それは……うーん。たしかに挑戦してみたくはありますが、30万払わなければいけないというのがね。今の俺にはちょっと難しいです。それなら普通に一般のテイムドカードを購入した方がいいですし」
「違いありません。――ですけれど、このカードは今朝入荷したばかりなんです。見せるのはパーカーさんが初めてで。いつも3日と経たず、売れてしまうんです」
「は!? な、なんでですか……孵化しない可能性の方が高いのに!?」

 聞き捨てならない言葉を耳にし、思わず身を乗り出す。
 ベニートは肩をすくめながら答えた。

「……コレクターがいるんですよ。この都市に。それもたくさん」
「こ、コレクター……」
「彼らは【永久に孵化することのないたまごカード】という存在を珍しがってコレクションするんです。あとはたまに、研究者の方が孵化する方法などの研究のために購入されていくことが多いですね」

 それは盲点だったと思った。
 たしかに視点を変えてみれば、面白いだろう。

 だが結局のところ、孵化させるために購入した人間はほとんどいないというところか。

「それに大前提として流通数が極端に少ないですしね」

 ベニートの言葉にようやく納得がいった。
 数が少ない希少なカードなら、たしかにレアとして売り出しても問題はないだろう。
 だが、孵化することがほとんどないという極端な短所があるから、この値段というわけだ。

 特定の購入者がいるのならば、より値段を釣り上げるべきなのではとも思う。
 けれどこのカードはほぼ孵化しないということで、カードとしての存在価値がない。
 そんな商品を、Monster Card Shopが超高額で売るわけにはいかないだろう。

 俺が顎に手を当て考え込んでいると、ベニートから声をかけられる。

 ――それはひどく真剣なものだった。

「パーカーさん。あなたはテイムドモンスターを育てるにあたって、一番大切なことはなんだと考えますか?」
「一番、大切なこと……。うーん、ええと……テイムドとの絆とか、触れ合い、とか……ですかね?……なんかめちゃくちゃ臭いこと言っちゃってるような気がするけど……」
「ははっ、さすがですね! パーカーさんがテイムドを大切にしていることがよく伝わる回答です」
「あはははは……ありがとうございます」

 俺は若干照れながら、頭を掻く。
 真剣な面持ちで嘘偽りのない言葉を伝えられ、少しだけ照れたからだった。

 それに、ベニートは俺の精神論すぎる答えを笑わないでいてくれたし! 俺が出会うやつは、いい奴ばかりだ……!

 感動を滲ませながら、再度話し始めたベニートへと意識を向ける。

「パーカーさんのいうことは最もです。テイムドとの絆を深めれば深めるほど、成長もすると主張する人も多い。……もちろん逆にとにかくスキルが大切だ、精神論なんて語っている暇があればとにかくレベル上げをするべきと主張する方もいらっしゃいます」
「――そうなんですね」
「そう、どちらも大切なんです。……ですが、僕は――やはりテイムドを大切にしてくださるお客様に購入していただきたい。僕は人間ですが……テイムドモンスターたちにも同じように幸・せ・を感じて欲しいんです。健やかに……暮らして欲しいんです」

 ベニートの言葉はまるで魂からの叫びのようだった。
 声を張り上げているわけでもないのに、ずしりと俺の心に響く。
 それは限りなく近い思いが、俺自身の胸にあるからだってた。

 だからこそ、俺は陳腐な言葉を語るわけでもなく、頰に弧を描いた。
 そして出来る限り真っ直ぐな感情を込めて、彼を見つめた。

 すると――。

「パーカーさん。ひとつ、提案があります」
「……提案……ですか?」

 しん、と部屋の中は静まり返っている。
 そんな中、ベニートはただひたすら真面目な様子で「はい」と頷く。

 そして。

「………………――――この白いたまごカード、育ててみてはいただけませんか?」

 運命の歯車がひとつ、動き始めた予感がした――。

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