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第2章
第17話 はじめてのたまごカード
しおりを挟むスキル《風拳》を取得した俺。
取得したときは、また拳で闘うスキルなのかとどんよりした気分に陥った。
さらに詳細を見てからも、いまいち理解できなかったのだ。
・・・
スキル《風拳》
能動的スキル。
拳での攻撃を風に変える。拳と風の密着力がアップする。レア度は中の上。
・・・
拳の攻撃が風に変わるというものを文章にされても理解はできない。
それに加え、拳と風の密着力だ。――意味不明すぎて笑った。
あだが、数度実験的に使用してみればかなり有用なスキルなのだと分かった。
――これは、遠距離攻撃も可能になるスキルだったのだ!
――。
――――。
さて、俺の風の拳が向かってくるのを呆然とした目で眺めていたレイアネット。
そのまま見事体にクリーンヒットし、彼女はそのまま力を受けて後ろの壁にぶつかる。
ドゴンと激しい音を立ててぶつかったサキュバスは、そしてそのまま――落下した。
『…………ぐ』
体に受けたダメージによってうまく《念話》が使えないのだろう。
レイアネットは床にうつ伏せに倒れたまま、ゆっくりと顔を上げる。
『……ま、た…………暇が、あっ……だら…………きな、さ…………ぃ』
「――はい」
俺が頷くと、サキュバスは自嘲したように鼻で笑い――そして消えた。
黒の靄に包まれていくレイアネットをみならがら俺はこのダンジョンの不思議さに大きく息をついていたのだ――。
◯
1階層と同様に、俺はレイアネットがいた部屋の隅にあった帰還装置によってダンジョン地上部へと戻った。
そしてミーコをカードへと戻したあと、そのままギルドへと足を運んだ。
ギルドではドリルが鎮座し、待機していた。
「ダンジョンに行くなら、先に俺に知らせてからにしろ!」
細かくガミガミと叱られ、俺は真っ白な灰になった……。うん、今度からはきちんと前もって知らせておこう。
どうやら俺がダンジョン2階層攻略に乗り出したことは、転移装置の機能によって知らされていたらしい。
さすが、人口ダンジョンだ。
けれどある程度叱られ終えると、ドリルは呆れたように笑ってくれた。
「……お前さんはほんと――規格外だなぁ」
「いえ、それほどでも!」
真面目な顔つきで答えると、「アホか」と言って頭を瓦割りのようにチョップされた。……い、痛いぜ。
そしてそしてそして!!
見事ダンジョン2階層のボスモンスターを倒した俺は、F級のカードと交換にE級のテイマーカードを手に入れた!
こうして目に見えるものを与えられると、少しだけ異世界に慣れたのかなと思った。
帰り際、ドリルはニヤリと口角を上げながら俺に伝える。
「パーカーさんは次には3階層を目指すんだろう? 中級テイマーになる試験の前に、もう何匹かテイムドがいる方がいいんじゃないか?」
なにか企みを含んだその口調に、訝しげにドリルを見つめる俺。
けれど、冷静に考えればそうかもしれない。
ずっともう1匹はテイムドを仲間にしたいと思っていたので、ある意味ちょうどいいタイミングの可能性も……。
しばらく顎な手を当てて考え込んでいた俺は、決心したように顔を上げた。
「……たしかにそう、かもですね。今からMCSに行ってみます。売りたいカードもなかなか増えてきましたし」
「そりゃいい! ……ここだけの話――お前さんは白いたまごがお似合いだぞ」
「…………え? どういう」
「いやいや、なんでもない!さあさあ行った行った! ……いいカード、見つけてこいよ」
ドリルはなにかを誤魔化したようにも見えたが、礼を言ってギルドを出る。
白いたまごとか言ってたよな、ドリル。
……そりゃ、一体どういう意味なんだ?
というか、たまごってみんな白じゃないのか。
次々と疑問が浮かんでくるが、どうやらすぐにMCSについてしまったらしい。
目の前には熱を集めるだろう相変わらず真っ黒な建物。
新たなモンスターとの出会いを考え、少しだけ高揚する気持ちを抑え、俺はその扉をくぐった。
「いらっしゃいませ」
以前と同じように育ちの良さそうな店員が声をかけてきて、思わず首を折って小さくお辞儀を返す。
そしてそのまま俺がカードの売買をしたいという用事を伝えると、そのまま奥に通される。
「お待ちしていました、パーカーさん」
個室にはすでにベニートが待ち構えまえていた。
変わらない童顔は相変わらずだ。
「ええと、ベニートさんこんにちは」
昼を少し過ぎた時間。
朗らかな笑顔で俺を出迎えたベニートは「どうぞ、お先に」と着席を促す。
「それで今日は――カードの売買ですね。以前は買い取らせていただいただけでしたが、今回は新たなカードの購入を予定している…………お間違いはございませんか?」
「――はい!」
「……っ! ありがとうございます! パーカーさんのために、最高品質のカードをご用意させていただきますね!」
「え……」
さ、最高品質って…………たしかにレアなカードには惹かれるけど…………一体いくらするんだ?
即払いじゃなくて、ツケは出来るのか? しゃ、借金背負うことになるけど……。
若干顔を青くさせながらも、俺は苦笑いを浮かべた。
そのあとは以前と同じだった。
先に売りたいカードの取引を行うこととなり、登録済みの種類の狩猟モンスターカードを出す。
ダンジョン1階層で手に入れたカード。
踊り花の依頼によって手に入れたカード。
そして――先ほどのダンジョン2階層の狩猟カード。
合計100枚は軽く超えている。
それを全て検分したベニートが顔を上げて言った。
「ええと数は123枚で――合計66,800ルブとなります」
「おぉ! 5万ルブは越えたんだな!」
「はい、割合的には半数以上がゴブリンのカードです。ゴブリンのカードは単価が安めなのですが、その次に多かったリザードマンのカードはそこそこいい値段するんですよ」
「へえ!」
俺はベニートの雑談やら小話を聞き、情報収集しながら相槌を打つ。
そして金とカードの交換が済み、とうとうその時がやってきた! 戦じゃ戦じゃ!
「さて、パーカーさんはテイムドのたまごカードをお探しとのことですが……特にどのようなものがご希望でいらっしゃいますか?」
「き、希望……ええと、出来ればレアなものがいいんですけど、やっぱりお高いですからね……んー」
「そうですね、レアなものは高いものが多いです。……ですが、レアなカードとはいっても卵が孵化するまではどんなモンスターが産まれるかどうかなど分からないんですけどね」
「………………――え?」
い、今なんて言った?
中身が――――分からない?
「す、済みませんベニートさん。今、中身が孵化するまで分からないっておっしゃいましたか? え、選べるんじゃ……ないんですか?」
「はい、選ぶことはできませんよ。もちろんレアなカードから産まれるテイムドは、レアな子たちばかりです。けれど、当店ではそのレアな子たちがどのような種類なのかは全て運任せになっています。……もしかして、知りませんでした?」
俺は初耳な話に顎が外れそうなほど、滑稽な表情であんぐりと口を開けていたに違いない。
それをみてベニートも逆に驚いている様子だった。
――もしかすれば様子から察するに、この世界の一般常識なのかもしれない。
焦った様子のベニートは、俺に対してたまごカードの主な説明をしてくれた。
まあ確かに大量のモンスターがいる中で、卵だけみてその種類を言い当てることは難しいかもしれない。
もちろん卵の形や大きさ、色によって分かる事も多いだろうが100%確実に言い当てることは難しいだろう。
地球の動物ならまだしも、ここは未知なるモンスターすらいる異世界なのだから。
「えっと、大体は分かりました」
ベニートの説明を聞き終わった俺。
たまごカードというものは、先刻も言われた通りかなりランダムな品物らしい。
モンスターの種類を知ってからテイムドにしたいのならば、他人から買い取ったり、生体化テイムド専門店に行くべきなのだという。
ただ、一つ。
たまごカードで1から――いやたまご孵化からだから0の方が近いかも――育て上げたテイムドの方が、強く、そして懐きやすいのだ。
だからこそ、タイマーのほとんどは手間がかかるもののカード孵化から始めるのが主なのだという。
さて、そんなこんなで俺の目の前に置かれたカードは5枚。
テイムドモンスターカードの形状とほぼ同じだ。ただ、描かれているモンスターが卵なだけだ。
全てレアなテイムドのカードらしく、どうしたか輝いて見えた。
「えっと、カードは一括じゃなくても大丈夫なんですよね?」
「はい、パーカーさんに限っては問題ございません。あなたは将来を見込まれていますし、たった数日でダンジョン2階層まで攻略されたという実績もございます。さらに、ギルドのドリルさんのお墨付きですから!」
「は、はあ」
曖昧に頷いた俺は、カードを見下ろす。
左から黒、赤、金、銀、白のたまごカードだ。
「こちらは左からお値段、黒130万ルブ、赤230万ルブ、金2,300万ルブ、銀1400万ルブ、白30万ルブです」
「は、はい……」
な、なんかすごい値段が聞こえた気がするんだが。
冷や汗を流しながら、ベニートに視線を向ける。
当の本人は満悦の笑みで俺を眺めていた。……なぜそんなにも嬉しそうなんだ。
「この中央の金のたまごカードは、本当に特別なんですよ。貴族や王族に好まれており、選ばれたものしか飼うことが出来ないモンスターが産まれると。見た目も神々しい個体が多いそうです」
「そ、そうなんですね」
「はい! ですが僕のオススメは――この黒のカードですね。パーカーさんは黒髪ですし! それに、黒のたまごカードから産まれるテイムドは攻撃力に特化している個体が多いですし」
そんな話を聞きながら、俺はたまごカードをじっと見つめる。
白。
ドリルは白がいいと言っていた。
それに、どうして――。
「あの、一つ質問なんですけど」
「はい? なんでございましょうか?」
「なぜ、白のそれは30万ルブなんて値段なんですか?」
俺はずばり、気になっていたことを切り出した。
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