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第2章
第22話 やはりネーミングセンスを所望する
しおりを挟む俺は顔を歪ませ、うんうんと唸る。
「名前なまえナマエ……うーん」
以前、ミーコに名付けをした際も思ったが、俺はネーミングセンスというもののかけらもないと自覚している。
だからこそ、今回もこちらをキラキラとした目で見つめてくるベニートが期待するような素晴らしい名前はつけることができないだろう。……うん、直感でいくしかない!
俺はずんぐりとした体をもつペンギンを見る。
ペンギンは台に乗っているためか、目線が近い。
ぼんやりと目が合うと、一つピンとくる名前があった。それは――。
「――そうだっ…………お前の名前は【ペンペン】だ!」
「………………え」
俺の斜め後方から声が聞こえる。
ギョッとしたような、潰れた声だった。
……明らかに、「こいつネーミングセンスなさすぎじゃないか?」というイントネーションが混ざっていたように感じる。
いや、気のせいだ。気のせいということにしておこう。
俺は首だけ振り向き、ベニートへと口を開く。
「こいつの名前はペンペンだ! 俺はそう決めました」
「…………まあ、いいんじゃないでしょうか。……ペンペンとは意外と発音してみると言いやすいみたいですし、キャッチーで親しみが出る気がします、はい」
「ベニートさん、優しい言葉をありがとうございます。ただ、大丈夫です。自分のネーミングセンスの酷さはきちんと理解していますから」
「あ、はい」
俺が力説しつつしみじみと語ると、ベニートは納得したようにさらりと受け入れてくれた。
……それはそれである意味ひどいな!
俺は振り返っていた顔をペンギン――新たな仲間、ペンペンへと向ける。
そして恐る恐る尋ねた。
「お前の名前は今日からペンペンだ! ……それでもいいか?」
……拒否られたら、寝込みそうだ。モンスターにも愛想を尽かされるほどのネーミングセンスってことが証明されちまうし……。
そんなモヤモヤとしながら不安げな表情で見つめていると、ペンペンは――。
「クェッ!」
小さく鳴き、手の方の羽(これからはシンプルに羽と呼ばせてもらう)を小刻みに上下に動かし、背中の方の羽(翼も呼ばせてもらう)を大きくはためかせた。
最初は怒っているのかと思ったが、よくよく見てみると――。
「お前……よ、喜んでくれてるのかっ!」
「クッエェェ!!」
「ああ、新たな友よ! お前は優しいやつだな」
「クェッッ」
ペンペンは上機嫌だった。
先ほどまでのぼーっと放心したような様子は一体どこへ行ってしまったのだろうと思うほどだ。
それほど俺の決めた名前が気に入ってくれたのだろう。……それはそれでどうかと思うが。
ペンペンはひとしきり俺の手を甘噛みしたあと、ようやく落ち着いたようだった。
「パーカーさん、ペンペンはすごく賢いみたいですね。きちんと人間の言葉を理解できているようです」
「……えっと、そうですかね? 今はまた、初めて現れた時みたいにぼけーっもしてますけど……」
「ははっ。そういう性格のテイムドもいますよ! 普通のテイムドは人間の言葉は断片的に理解することができない個体が多いんです」
「そうなんですか!」
「ええ。だからこそ、テイマーとテイムドは相互理解を高めるために積極的にコミュニケーションを取る必要があるわけです」
俺はタメになる話を聞き、何度も頷く。
ミーコは初めから俺の話を完璧に理解できるようだったし、こういう小さいけど意外と大切な豆知識は重要だったりする。
人前でミーコと完璧なコミュニケーションをとったりすると、悪目立ちする可能性もあるからだ。
……とは言っても、もう新聞に載ってしまうという悪目立ちはしているのだけどな!
「さて、それではペンペンのステータスチェックをしてみてください。私は今から白たまごが孵化したという報告をボスにして来なければなりませんので」
「えっ、わざわざ……ですか!?」
「はい、もちろんです。白いたまごから孵化するのだって公式によればすでに10年近く前……ラフェールのドラゴンか孵化して以来なんですから」
「…………ま、まじか。わ、わかりました……お願いします」
ラフェールという英雄が孵化して以来なんて聞いてねえぞ!
俺が聞いたのは、ラフェールのドラゴンも白いたまごから孵化したという話だけで。
……俺は完璧にこのMCSのボスと、ベニートの口車に乗せられたのだ。意図してなのかどうかは不明だが。
己の失敗を学ばないお馬鹿さに呆れてものが言えなくなりそうだが、仕方がない。
すでに生まれてしまったのだし……それに――。
「愛しいペンペンに出会えたんだから、まっいいか!」
「……?」
俺はにやけた顔でペンギンのペンペンに視線を移した。いやぁ、このお腹の毛並み……めちゃめちゃふわふわだぜ!
羽の部分がツルッ! カサッ! という表現をするならば、腹はモフモフ以外にありえない!
「……ええと、パーカーさん?」
「あ、すみません。少しトリップしていました。……えっと、俺はここでペンペンのステータスのチェックなどをすればいいんですね?」
「そうです。この部屋は先刻も申した通り、自動修復機能がありますからスキル使いたい放題です。この場には監視もいませんので、お好きに性能をお確かめください」
「はい、わかりました」
……監視がいないというのは正直簡単に鵜呑みにするわけにはいかない。
故に、手の内をさらけ出しすぎることはやめたほうがいいだろう。
かといって、この自由空間を好きにできるはずなのに遠慮しすぎるのも馬鹿馬鹿しい。
適度に、だな。
そんなことを考えていると、ベニートは頭を下げて「10分後にお迎えにあがります」と言ってたこの空間から出て行った。
白い空間で出入り口かあるのかどうかも疑問だったが、よく見れば隅の方に壁と同じく白い扉があった。
さて。
「よし、ペンペン。お前のステータスはーっと」
俺はステータスボードを呼び出す。
ペンペンをテイムドは指定する……というような行為はしていないけれど、きちんと登録されているのだろうか――。
・・・
テイムドモンスター【ペンペン】LV.1
HP:10/10
MP:10/10
スキル一覧:《浮遊》
・・・
「おお! 俺のステータスボードにきちんと登録されてるな。ミーコにペンペンっと」
俺はペンペンの1番モフっていた際に喜んでいた腹をくすぐる。
すると。
「クェックェ!」
ぼけっと机に立っていたペンペンは小さく喜びの雄叫びをあげた。
普段はあまり感情豊かではなくのんびりしてそうに見えるが、ある一定量の感情に達すると途端に元気になるように見える。
「お前も可愛いな。……それにしてもスキルが《浮遊》って。翼があるから飛行出来そうなのに、《浮遊》って……」
俺はそう呟きながら、スキル詳細を見る。
すると――。
・・・
スキル《浮遊》
中動的スキル。
100キロ以内の物体を浮かばせることができる。その中に己は含まれない。レア度は下の上。
・・・
俺はその詳細を見た途端、愕然とした。
これはなんて――。
「――なんて理想的なスキルなんだ! ペンペンが持つのにぴったりかもしれない!」
「……クェ?」
俺はペンペンに尋ねる。
「お前はこの翼で飛ぶことは出来るか? それと、水の中を泳ぐこととか出来たりしないか?」
「クェグエッ」
「おっ、やっぱり出来そうなんだな。まだやってみたことはないんだったら、とりあえずここで飛んでみてくれないか?」
「……クェ」
「め、めんどくさいって……」
どうやらペンペンは非常に腰が重いテイムドかもしれない。
俺はペンペンに飛んでもらうべく、お腹をモフモフと撫でる。すると、ペンペンは嬉しそうだった。
「クェッ」
「ようやく飛んでくれる気になったか! よかったよかった。それじゃあ頼む」
心の中で、役得だなどといかがわしい(?)ことを考えていたことをペンペンは知る由もない。
そんな中、ペンペンはそのまん丸の体で軽くジャンプをした。そして、そのままパサパサと翼が動く。
ペンペンの元いた場所のそばには小さな旋風が巻き起こり、ふわりとずんぐりとした体は宙に浮く。
「す、すごい! ペンペンが輝いて見えるぜ。まるで天使みたいだ」
「クェッ」
舞い上がったペンペンは、宙を自由に移動する。
時たま旋回したり、羽を羽ばたくのをやめ落ちるかと思えばギリギリで浮き上がったり、自由自在に飛行を楽しんでいる様子だった。
「ペンペン、俺に《浮遊》をかけて運んでくれないか?」
「グエ」
「お願いだよ。あとで、きっちりお返しするから」
もちろん例はお腹モフモフに決まっている。……ペンペンもそれを望んだいるんだしな!
ペンペンは嬉しそうに雄叫びを上げる。
すると俺の体をふわりと重力に逆らうようにして浮き上がる。
「お、おぉ……こ、怖いな意外と」
そんな小心者の独り言を漏らしていると、ペンペンは俺のそばへとやってくる。
俺は翼のはばたく邪魔にならぬよう、ペンペンの愛らしい手(羽)を握った。
そしてペンペンは自由に移動する。
右へ、左へ、上へ、下へと。
最初の方は恐怖心の優っていた俺だったが、次第に慣れてくると楽しくなっていた。
新たな仲間はマイペースだが、面白くて可愛らしい。
ますますテイマー生活が楽しみになってきた俺だった。
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