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第三章 運命にカウンターを
閑話 初めての感情
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第一王子として幼い頃から英才教育を受けてきた。
政治、経済、歴史、帝王学…来る日も来る日も勉強漬けの毎日。城に来た同世代の子どもが外ではしゃぐ声を羨ましく思ったのは一度や二度じゃない。
でも、尊敬する父上のように立派に国を治めたい。
この国が…この国住む民の楽しそうな笑顔が好きだから。
その一心で泣き言も言わずに自分を律してきた。
自分を殺して生きてきた。全ては王になる為に。
そんな中で後継者教育として父上について視察しに行ったアストンフォーゲル辺境伯領。
王国一の港を持つ交易の拠点だ。
その圧倒されるほど大きな港とどこまでも続く大海原、領民や異国の人々の笑い声が響く活気あるれる街。自分の理想が詰まった街だった。
そんな開放的な雰囲気に当てられてか、多忙なスケジュールに嫌気がさした俺は、護衛をまいて街へ飛び出していた。
そこで、荒くれ者に襲われそうになった俺を助けてくれたのはある少女だった。
『私も貴方と同じよ。迷子になってしまったみたい。』
そう言って彼女が笑う。
太陽に薄い蜂蜜色の髪が透ける。吸い込まれそうな大きな翡翠の瞳に強く惹きつけられた。
私も貴方と同じ。特別な意味なんてない。それでも、彼女は王子としてではなく一個人の自分を見てくれている気がして嬉しかった。
危険を顧みず自分の身を投げ打ってでも助けてくれた彼女。怖かっただろう出来事を笑い飛ばせる彼女は強かでそんな所も良いなって思う。
透けるような白い肌、喋り方や纏う雰囲気からどこかの貴族か裕福な商家の娘ではないかと考えて調査を始めた。
パーティーやお茶会など社交界にも積極的に参加し、彼女を探した。
気づけば時が過ぎて彼女を見つけられないままエレノア学院へ入学することになった。
同級生には、彼女と思しき令嬢はおらず、半ば諦めかけていた時だった。
下級生の入学式で彼女に出会った。
薄い蜂蜜色の髪に翡翠の瞳。友人であろう令嬢に笑いかける笑顔…何故かずっと探し求めていた彼女だと本能的に理解した。
「どうかしたのか?」
「……!アリーヤ王子殿下!
ご機嫌よう、お会いできて光栄でございます。」
廊下の先に彼女を見つけて声をかければ、驚いたように目を見開いて形式ばったカーテシーをする。
「ああ、こんにちは。
学院では、そんな畏まらなくても大丈夫だ。
私のことはアリーヤと呼んでくれ。」
「はい。アリーヤ様。」
「それより、こんなところで何をしているんだ?
新入生は教室に集合だと聞いたが。」
「お恥ずかしながら迷ってしまったようですわ。」
あの日の彼女も迷子だと言っていた。
変わらないな、彼女は。
「ははっ、君はまた迷子になっているんだね。」
「え?」
彼女が困惑した顔をしている。
しまった。急過ぎてしまったかな?
「いや、昔、視察で行った街で迷子になってね。
君に似た少女に助けて貰ったんだ。それでつい……
いきなり悪かったね。」
「いえ!大丈夫ですわ。」
んー、どうやら忘れてしまってるようだな…
結構、前のことだし仕方ないか…
「良ければ案内しよう。」
「いえ!大丈夫です!アリーヤ様のお手を煩わせる訳には参りませんわ。」
取り敢えず、少しずつ距離を縮めよう。
案内を提案すると彼女は大袈裟な程動揺する。
ぶんぶんと首を横に振って辞退しようとしている。
「大丈夫だ。」
「おーい!ティア!」
「あ、レオお兄さまがいらしたのでもう大丈夫です!ありがとうございました!」
遠くから走ってくる見知った顔に気づいた彼女はそそくさと背を向けて行ってしまう。
ふむ。また名を聞き忘れてしまった。
しかし、レオンの妹君だったのか。
それにしても、貴重なチャンスを逃してしまった。
レオンと並んで歩く背を眺めながらため息をつく。
彼女を見ると胸がぎゅーっと締め付けられドクドクと鼓動が速くなる。
誰にも感じなかった初めての感情だ。
でも、直ぐに分かった。これが恋なのだと。
あの日から彼女を忘れたことは一度だってない。
彼女は忘れてしまっているようだが。
苦しい時も辛い時も悲しい時も…彼女の笑顔を思い出して頑張ってきた。
嬉しい時やふとした時に彼女とのことを思い出していつか会える日を楽しみ生きてきた。
焦っていてはダメだ。事を損じる。
なに、時間はまだまだあるんだ。ゆっくりと仲を深めていけば良い。
取り敢えず、次会ったときにはちゃんと彼女の口から名前を聞こう。そう決意した。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
最後までお読み頂きありがとうございます!
更新に時間が空いてしまい申し訳ございません…
今回は、入学式アリーヤ視点です。
どうやら、街で会ったスティアの事をずっと忘れずに思っていたようです。
ですが、日記帳をもつスティアには避けられ、シスコンのレオンには妨害され、中々仲を深めることは難しそうですね…
日記帳とは、違う動きを見せ始めた世界をスティアはどう生きるのでしょうか。
また、破滅しない為に、なんやら、ミラたちにザマァするためにはどうするのか。
是非、お楽しみに!
政治、経済、歴史、帝王学…来る日も来る日も勉強漬けの毎日。城に来た同世代の子どもが外ではしゃぐ声を羨ましく思ったのは一度や二度じゃない。
でも、尊敬する父上のように立派に国を治めたい。
この国が…この国住む民の楽しそうな笑顔が好きだから。
その一心で泣き言も言わずに自分を律してきた。
自分を殺して生きてきた。全ては王になる為に。
そんな中で後継者教育として父上について視察しに行ったアストンフォーゲル辺境伯領。
王国一の港を持つ交易の拠点だ。
その圧倒されるほど大きな港とどこまでも続く大海原、領民や異国の人々の笑い声が響く活気あるれる街。自分の理想が詰まった街だった。
そんな開放的な雰囲気に当てられてか、多忙なスケジュールに嫌気がさした俺は、護衛をまいて街へ飛び出していた。
そこで、荒くれ者に襲われそうになった俺を助けてくれたのはある少女だった。
『私も貴方と同じよ。迷子になってしまったみたい。』
そう言って彼女が笑う。
太陽に薄い蜂蜜色の髪が透ける。吸い込まれそうな大きな翡翠の瞳に強く惹きつけられた。
私も貴方と同じ。特別な意味なんてない。それでも、彼女は王子としてではなく一個人の自分を見てくれている気がして嬉しかった。
危険を顧みず自分の身を投げ打ってでも助けてくれた彼女。怖かっただろう出来事を笑い飛ばせる彼女は強かでそんな所も良いなって思う。
透けるような白い肌、喋り方や纏う雰囲気からどこかの貴族か裕福な商家の娘ではないかと考えて調査を始めた。
パーティーやお茶会など社交界にも積極的に参加し、彼女を探した。
気づけば時が過ぎて彼女を見つけられないままエレノア学院へ入学することになった。
同級生には、彼女と思しき令嬢はおらず、半ば諦めかけていた時だった。
下級生の入学式で彼女に出会った。
薄い蜂蜜色の髪に翡翠の瞳。友人であろう令嬢に笑いかける笑顔…何故かずっと探し求めていた彼女だと本能的に理解した。
「どうかしたのか?」
「……!アリーヤ王子殿下!
ご機嫌よう、お会いできて光栄でございます。」
廊下の先に彼女を見つけて声をかければ、驚いたように目を見開いて形式ばったカーテシーをする。
「ああ、こんにちは。
学院では、そんな畏まらなくても大丈夫だ。
私のことはアリーヤと呼んでくれ。」
「はい。アリーヤ様。」
「それより、こんなところで何をしているんだ?
新入生は教室に集合だと聞いたが。」
「お恥ずかしながら迷ってしまったようですわ。」
あの日の彼女も迷子だと言っていた。
変わらないな、彼女は。
「ははっ、君はまた迷子になっているんだね。」
「え?」
彼女が困惑した顔をしている。
しまった。急過ぎてしまったかな?
「いや、昔、視察で行った街で迷子になってね。
君に似た少女に助けて貰ったんだ。それでつい……
いきなり悪かったね。」
「いえ!大丈夫ですわ。」
んー、どうやら忘れてしまってるようだな…
結構、前のことだし仕方ないか…
「良ければ案内しよう。」
「いえ!大丈夫です!アリーヤ様のお手を煩わせる訳には参りませんわ。」
取り敢えず、少しずつ距離を縮めよう。
案内を提案すると彼女は大袈裟な程動揺する。
ぶんぶんと首を横に振って辞退しようとしている。
「大丈夫だ。」
「おーい!ティア!」
「あ、レオお兄さまがいらしたのでもう大丈夫です!ありがとうございました!」
遠くから走ってくる見知った顔に気づいた彼女はそそくさと背を向けて行ってしまう。
ふむ。また名を聞き忘れてしまった。
しかし、レオンの妹君だったのか。
それにしても、貴重なチャンスを逃してしまった。
レオンと並んで歩く背を眺めながらため息をつく。
彼女を見ると胸がぎゅーっと締め付けられドクドクと鼓動が速くなる。
誰にも感じなかった初めての感情だ。
でも、直ぐに分かった。これが恋なのだと。
あの日から彼女を忘れたことは一度だってない。
彼女は忘れてしまっているようだが。
苦しい時も辛い時も悲しい時も…彼女の笑顔を思い出して頑張ってきた。
嬉しい時やふとした時に彼女とのことを思い出していつか会える日を楽しみ生きてきた。
焦っていてはダメだ。事を損じる。
なに、時間はまだまだあるんだ。ゆっくりと仲を深めていけば良い。
取り敢えず、次会ったときにはちゃんと彼女の口から名前を聞こう。そう決意した。
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最後までお読み頂きありがとうございます!
更新に時間が空いてしまい申し訳ございません…
今回は、入学式アリーヤ視点です。
どうやら、街で会ったスティアの事をずっと忘れずに思っていたようです。
ですが、日記帳をもつスティアには避けられ、シスコンのレオンには妨害され、中々仲を深めることは難しそうですね…
日記帳とは、違う動きを見せ始めた世界をスティアはどう生きるのでしょうか。
また、破滅しない為に、なんやら、ミラたちにザマァするためにはどうするのか。
是非、お楽しみに!
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