殺人計画者

夜暇

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前提条件(計画について)

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◯????【 12月31日 午後11時00分 】

 私は今、暗い部屋の中で佇んでいる。
 光を放つはパソコンのスクリーンのみ。私はそれを真っ直ぐに見据えた。ブルーライトが瞳に鋭く突き刺さる。
 スクリーンのデスクトップ上に大きく表示された文書。それは、私が考えた一つの殺人計画であった。
 この計画が実態となり、現実の世界でこれから始まる。初めに、この計画を進める上での前提条件について、確認していきたい(ここでいう条件は特に重要となる)。キーを叩き、以下の四点を文書の末尾に入力し始めた。
 一点目。「日時について」。時間の主軸は二〇二〇年の一月十日。この日、もしくはこの日に向けて、登場人物達は縦横無尽に騒ぎ回る。
 二点目。「舞台について」。計画上での大きな舞台は東京都S区、西街という場所。多種多様な店が所狭しと並んだ繁華街である。大手の家電量販店やデパートはもちろんのこと、アンティークショップやブティック、居酒屋や風俗店、更には大規模な古着屋、種類豊富な園芸店、大衆小売店等数多く存在し、訪れる者は後を絶たない。
 三点目。「登場人物について」。主人公と呼べる人物は複数人存在する。各々が己の目線で、己の時を過ごしていく。彼ら彼女らの行き着く先はハッピーエンドか、バッドエンドか、それとも。…それは、物語が進むうちに分かることだろう。

 パソコンの横に置かれているコーヒーカップを手に取り、未だ仄かな熱を保っているコーヒーを啜った。口内に広がる苦味と風味、またカフェインの効果も相まって、自然と出ていた欠伸が落ち着いてきた。
 さて。最後の四点目が、特に大切な前提条件だ。
 計画上では全て上手く進む想定だが、現実というものは人の予想を容易に裏切り、また上回る。諸行無常、何が起こるか分からないものであるからこそ、計画の成功…自らの目的である「殺人」を成し遂げるためには、登場人物達の無駄の無い、的確な動きが必要不可欠である。
 しかし、まとまりの無い登場人物達ほど、頼りない物は無い。計画の趣旨に外れた事を仕出かす可能性もある。それが大きく響くことになったら。最高の形?有終の美を飾る?そんなもの、夢のまた夢だ。それだけは何としても避けたい。
 したがって、かのフランス革命の混乱を収束させた偉大な先導者、ナポレオン・ボナパルトのように、この計画に関わる全員を上手く先導しなければならないのである。
 故に、四点目。「私も登場人物の一人として、参加しよう」か。彼らを正しい道へ進ませるための、殺人計画者として。
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